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四章 結実
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「お前……寒いんだから、そんなに足出してんじゃねーよ」
「お兄ちゃんは乙女心がわかってない! お洒落と防寒は相容れないんだよ! それでも厚めのタイツ履いてるんだから良くない?」
「はぁ。茉莉絵は背高いんだから、パンツスタイル似合うだろ。わざわざ寒いのにスカート履かなくても」
あれ、今褒められたのかな。パンツスタイル似合うって思ってくれてたんだ。
えー、やだ。照れちゃう。急にデレないでよー。
「えっと、ありがとう。でも、今日は初デートだから出来るだけ可愛く見られたいんだもん」
「風邪引いても知らないからな」
「心配してくれて、ありがとう」
本当ならバッグも小さくて可愛いのがあるんだけど、今日はクッキーも一緒だからね。色々お散歩グッズも持って行かないといけないから、少し大きめのバッグで可愛いのをチョイスした。
今日はクッキーも新しい首輪とリードを用意した。
とは言っても、買ったのはお母さんだけど。
初デートはクッキーたちも連れて行くと話したら、「それならクッキーもおめかししないとね」とペットショップに出掛けて行き、新しい首輪にリード、おやつを大量を抱えて帰ってきた。
「ネイビーのチェック柄の首輪とは、クッキーもお洒落さんだね」
「わふっ」
新しい首輪を見せびらかすように、鼻をくっと上に向ける。
気に入ったみたいでよかった。
今か今かと奏くんが迎えにくるのを待っていると玄関のチャイムが鳴る。
「きた! お母さん、行ってくるね」
「ちょっと待って、お母さんもご挨拶したいわ」
「えー……奏くん緊張しないかな」
「本当に軽く挨拶するだけよ」
「うーん、いいけど……」
大丈夫かな。急にお母さんを紹介することになっちゃったけど……家に迎えにきてもらってる時点で遭遇するかもしれないとは思ってくれてるかな。
玄関を開けると獅子丸くんを抱っこした奏くんが立っていた。
私があげたネックウォーマーしてきてくれたんだ。嬉しい……
私も奏くんからもらったブレスレットつけてきてるよ。コートに隠れて見えないかもしれないけど。
「まぁまぁ、本当にイケメンくんね」
「え……」
「あら、ごめんなさいね。茉莉絵の母です。いつも娘がお世話になっています」
「え、いえ、こちらこそ、茉莉絵さんにはお世話になってます」
どうしよう、少し焦ってる。いきなりで驚かせちゃったよね。
「お母さん、もういいよね。私たち行くから」
「ちょっと、もう……行ってらっしゃい」
これ以上お母さんの話に付き合わせるのは可哀想だったため、奏くんの手を取り家から離れた。
「急にお母さん出てきて驚いたでしょ?」
「あー、まぁ、ちょっとな」
「挨拶だけしたいって言うから……ごめんね」
「いや、別にそこまで嫌なわけじゃないから気にしなくていいよ」
「ありがと……それにしても、どうして獅子丸君を抱っこしてるの?」
「人の家の前で何かしたら不味いなと思って、念の為抱えといた」
「そうだったんだ。獅子丸くんはお利口さんだから、悪いことしないもんね」
「わんっ!」
「よしよし、良い子だね。あれ、獅子丸くんも首輪新しくしたのかな?」
いつもと違うボルドーカラーの首輪が黒い毛と良く合っていて格好良い。
「これは……母さんが」
「もしかして、奏くんのお母さんも初デートだから獅子丸くんもお洒落しようって言ってた?」
「俺の母さんもってことは、もしかして……」
「そう、うちのお母さんもデートについて行くからおめかししないとねって言って新しい首輪買ってきたんだよね」
「ストラップといい首輪といい、俺らの親考え方とか好み似てるよな」
「本当だね」
本当に考えることが同じすぎてびっくりする。
だから、奏くんともこんなに気が合うのかな。
今日行くドッグカフェは駅とは反対方向にあるため、あまり行ったことがない場所だった。
民家は隣接していなく、犬の鳴き声とかに考慮した立地なのかなと思った。
「へぇ、変わってるな。普通のテーブルがこたつ仕様になってるのか」
「この時期限定みたいだよ。なんか良いよね」
「寒いからコートは脱げないけど、足元は暖かいから悪くないな」
「犬用のハウスも下に電気カーペットが敷いてあるし、毛布も入れてあるから暖かそうで良かった」
「獅子丸が小さいから一緒のハウスに入れるのもなんか可愛いな」
「ね! めっちゃ可愛い。もう写真撮らずにはいられないよ」
本当にもこもこハウスが可愛すぎだし、餌入れや水飲み用の器も肉球の形をしていたりと凝っていて、お気に入りのお店になった。常連になりそう。
写真をいろんな角度から撮っていると、店員さんが紅茶とフレンチトーストを持ってきてくれた。
冷たいアイスとフルーツ、暖かいフレンチトーストが良い感じ。
「お客様、よろしければお写真お撮りしましょうか?」
「え?」
「愛犬と一緒に写真を撮られるお客様も多くいらっしゃいますので、宜しければと」
撮りたい……奏くんとの初デートに記念写真撮りたいな……そう思いながら、奏くんの方を見ると「お願いします」と一言言って、スマホを手渡していた。
二人でハウスの隣にしゃがみ込み写真を撮って貰い、すぐにデータを送ってもらう。
めっちゃ良い写真だ……クッキーも獅子丸くんも可愛いし、奏くんも格好良い!
もー、これ印刷して机に飾ろうっと。いや、大きく印刷して壁に飾ろうかな。
「茉莉絵、いつまでもスマホみてないで食べよう。せっかく温かいのに冷えちゃうぞ」
「あ、うん。頂きます」
「見た感じ甘ったるのかなとか思ったけど、そうでもなかったな。焼きリンゴと一緒に食べるの美味しいな」
「ねっ! ドッグカフェだから味はあまり期待してなかったんだけど、美味しいね」
「獅子丸たちも嬉しそうだし、またくるか」
「うん! ここお気に入りになっちゃった。常連になりそうだよ」
「ここなら常連になってもいいな」
美味しくフレンチトーストを頂き、紅茶も飲んで温まったところで、公園へと向かう。
ドッグカフェの近くにある広い公園なだけあって、多くの犬が駆け回って遊んでいた。
それを見て今にも駆け出しそうな二匹のリードを外してやると、元気よく走り出していった。
「まるでドッグランだな」
「ね。こっち側の公園きたことなかったけど、こんなに散歩させてる人いたんだね。遊具とかもない芝生があるだけだから遊ばせやすいね。奥の方ではキャッチボールとかしてる親子もいるね」
「いつも行ってる公園も広いと思ってたけど、全然広さが違うな。たまにはこっちにも連れてくるか」
「うん、そうしようよ」
クッキーたちの遊び場が増えるのは嬉しいな。
たまには奏くんと二人だけでデートもしたいけど、クッキーと過ごす時間も大事なんて、欲張りすぎるかな。
「こうやって獅子丸たちを連れてのデートも楽しいな。でも……」
「でも……?」
「次は二人でデートしような。その時は、獅子丸たちが行けない場所とかに行くか」
「うん! 楽しみにしてるね」
駆け回っていたクッキーたちが戻ってきて、鼻で鞄をぐりぐりと開けようとしていた。
何が欲しいのかなと、鞄を開けるとフリスビーを口に咥え、投げて? と目をきらきらさせながら見つめてくる。
う……うちの子可愛すぎる……
「よーし、じゃ、獅子丸は俺がボール投げてやるから取ってこい! ほらっ!」
「わんっ!」
小さなボールを懸命に追いかける獅子丸くんを見ながら私もフリスビーを投げる。
「じゃ、クッキー行くからねー。取っておいで」
「わふっ!」
うちの子は体が大きいから走り方が本当に豪快だなと思う。
取りに行った二匹を見つめていると、そっと手が握られる。
「今日は散歩しながらだったから、手繋げなかっただろ? だから、今だけな」
「うん……奏くん。大好きだよ」
「な、急に何を……」
「だって、言いたくなっちゃったんだもん」
「いや、まぁ……俺も好きだけど」
そう言いながら、照れて顔をそらす奏くんは可愛いなとしみじみ思う。
あぁ、本当に大好き。ずっと一緒にいようね。
end.
「お兄ちゃんは乙女心がわかってない! お洒落と防寒は相容れないんだよ! それでも厚めのタイツ履いてるんだから良くない?」
「はぁ。茉莉絵は背高いんだから、パンツスタイル似合うだろ。わざわざ寒いのにスカート履かなくても」
あれ、今褒められたのかな。パンツスタイル似合うって思ってくれてたんだ。
えー、やだ。照れちゃう。急にデレないでよー。
「えっと、ありがとう。でも、今日は初デートだから出来るだけ可愛く見られたいんだもん」
「風邪引いても知らないからな」
「心配してくれて、ありがとう」
本当ならバッグも小さくて可愛いのがあるんだけど、今日はクッキーも一緒だからね。色々お散歩グッズも持って行かないといけないから、少し大きめのバッグで可愛いのをチョイスした。
今日はクッキーも新しい首輪とリードを用意した。
とは言っても、買ったのはお母さんだけど。
初デートはクッキーたちも連れて行くと話したら、「それならクッキーもおめかししないとね」とペットショップに出掛けて行き、新しい首輪にリード、おやつを大量を抱えて帰ってきた。
「ネイビーのチェック柄の首輪とは、クッキーもお洒落さんだね」
「わふっ」
新しい首輪を見せびらかすように、鼻をくっと上に向ける。
気に入ったみたいでよかった。
今か今かと奏くんが迎えにくるのを待っていると玄関のチャイムが鳴る。
「きた! お母さん、行ってくるね」
「ちょっと待って、お母さんもご挨拶したいわ」
「えー……奏くん緊張しないかな」
「本当に軽く挨拶するだけよ」
「うーん、いいけど……」
大丈夫かな。急にお母さんを紹介することになっちゃったけど……家に迎えにきてもらってる時点で遭遇するかもしれないとは思ってくれてるかな。
玄関を開けると獅子丸くんを抱っこした奏くんが立っていた。
私があげたネックウォーマーしてきてくれたんだ。嬉しい……
私も奏くんからもらったブレスレットつけてきてるよ。コートに隠れて見えないかもしれないけど。
「まぁまぁ、本当にイケメンくんね」
「え……」
「あら、ごめんなさいね。茉莉絵の母です。いつも娘がお世話になっています」
「え、いえ、こちらこそ、茉莉絵さんにはお世話になってます」
どうしよう、少し焦ってる。いきなりで驚かせちゃったよね。
「お母さん、もういいよね。私たち行くから」
「ちょっと、もう……行ってらっしゃい」
これ以上お母さんの話に付き合わせるのは可哀想だったため、奏くんの手を取り家から離れた。
「急にお母さん出てきて驚いたでしょ?」
「あー、まぁ、ちょっとな」
「挨拶だけしたいって言うから……ごめんね」
「いや、別にそこまで嫌なわけじゃないから気にしなくていいよ」
「ありがと……それにしても、どうして獅子丸君を抱っこしてるの?」
「人の家の前で何かしたら不味いなと思って、念の為抱えといた」
「そうだったんだ。獅子丸くんはお利口さんだから、悪いことしないもんね」
「わんっ!」
「よしよし、良い子だね。あれ、獅子丸くんも首輪新しくしたのかな?」
いつもと違うボルドーカラーの首輪が黒い毛と良く合っていて格好良い。
「これは……母さんが」
「もしかして、奏くんのお母さんも初デートだから獅子丸くんもお洒落しようって言ってた?」
「俺の母さんもってことは、もしかして……」
「そう、うちのお母さんもデートについて行くからおめかししないとねって言って新しい首輪買ってきたんだよね」
「ストラップといい首輪といい、俺らの親考え方とか好み似てるよな」
「本当だね」
本当に考えることが同じすぎてびっくりする。
だから、奏くんともこんなに気が合うのかな。
今日行くドッグカフェは駅とは反対方向にあるため、あまり行ったことがない場所だった。
民家は隣接していなく、犬の鳴き声とかに考慮した立地なのかなと思った。
「へぇ、変わってるな。普通のテーブルがこたつ仕様になってるのか」
「この時期限定みたいだよ。なんか良いよね」
「寒いからコートは脱げないけど、足元は暖かいから悪くないな」
「犬用のハウスも下に電気カーペットが敷いてあるし、毛布も入れてあるから暖かそうで良かった」
「獅子丸が小さいから一緒のハウスに入れるのもなんか可愛いな」
「ね! めっちゃ可愛い。もう写真撮らずにはいられないよ」
本当にもこもこハウスが可愛すぎだし、餌入れや水飲み用の器も肉球の形をしていたりと凝っていて、お気に入りのお店になった。常連になりそう。
写真をいろんな角度から撮っていると、店員さんが紅茶とフレンチトーストを持ってきてくれた。
冷たいアイスとフルーツ、暖かいフレンチトーストが良い感じ。
「お客様、よろしければお写真お撮りしましょうか?」
「え?」
「愛犬と一緒に写真を撮られるお客様も多くいらっしゃいますので、宜しければと」
撮りたい……奏くんとの初デートに記念写真撮りたいな……そう思いながら、奏くんの方を見ると「お願いします」と一言言って、スマホを手渡していた。
二人でハウスの隣にしゃがみ込み写真を撮って貰い、すぐにデータを送ってもらう。
めっちゃ良い写真だ……クッキーも獅子丸くんも可愛いし、奏くんも格好良い!
もー、これ印刷して机に飾ろうっと。いや、大きく印刷して壁に飾ろうかな。
「茉莉絵、いつまでもスマホみてないで食べよう。せっかく温かいのに冷えちゃうぞ」
「あ、うん。頂きます」
「見た感じ甘ったるのかなとか思ったけど、そうでもなかったな。焼きリンゴと一緒に食べるの美味しいな」
「ねっ! ドッグカフェだから味はあまり期待してなかったんだけど、美味しいね」
「獅子丸たちも嬉しそうだし、またくるか」
「うん! ここお気に入りになっちゃった。常連になりそうだよ」
「ここなら常連になってもいいな」
美味しくフレンチトーストを頂き、紅茶も飲んで温まったところで、公園へと向かう。
ドッグカフェの近くにある広い公園なだけあって、多くの犬が駆け回って遊んでいた。
それを見て今にも駆け出しそうな二匹のリードを外してやると、元気よく走り出していった。
「まるでドッグランだな」
「ね。こっち側の公園きたことなかったけど、こんなに散歩させてる人いたんだね。遊具とかもない芝生があるだけだから遊ばせやすいね。奥の方ではキャッチボールとかしてる親子もいるね」
「いつも行ってる公園も広いと思ってたけど、全然広さが違うな。たまにはこっちにも連れてくるか」
「うん、そうしようよ」
クッキーたちの遊び場が増えるのは嬉しいな。
たまには奏くんと二人だけでデートもしたいけど、クッキーと過ごす時間も大事なんて、欲張りすぎるかな。
「こうやって獅子丸たちを連れてのデートも楽しいな。でも……」
「でも……?」
「次は二人でデートしような。その時は、獅子丸たちが行けない場所とかに行くか」
「うん! 楽しみにしてるね」
駆け回っていたクッキーたちが戻ってきて、鼻で鞄をぐりぐりと開けようとしていた。
何が欲しいのかなと、鞄を開けるとフリスビーを口に咥え、投げて? と目をきらきらさせながら見つめてくる。
う……うちの子可愛すぎる……
「よーし、じゃ、獅子丸は俺がボール投げてやるから取ってこい! ほらっ!」
「わんっ!」
小さなボールを懸命に追いかける獅子丸くんを見ながら私もフリスビーを投げる。
「じゃ、クッキー行くからねー。取っておいで」
「わふっ!」
うちの子は体が大きいから走り方が本当に豪快だなと思う。
取りに行った二匹を見つめていると、そっと手が握られる。
「今日は散歩しながらだったから、手繋げなかっただろ? だから、今だけな」
「うん……奏くん。大好きだよ」
「な、急に何を……」
「だって、言いたくなっちゃったんだもん」
「いや、まぁ……俺も好きだけど」
そう言いながら、照れて顔をそらす奏くんは可愛いなとしみじみ思う。
あぁ、本当に大好き。ずっと一緒にいようね。
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