37 / 46
四章 結実
4−7
しおりを挟む
朝、目が覚めると奏くんから『今日は頑張ろうな』とメッセージが来ていた。
とうとう受験当日になった。
今日は朝からみぞれ混じりの空模様で、だいぶ冷え込んでいる。
「茉莉絵ちゃん、忘れ物はない? 受験票は持った?」
「何回もチェックしたから大丈夫。お母さん今日は車出してくれてありがとね」
「娘の大事な受験の日だものね。送るといってもバス停五個分だからすぐだけどね」
「混雑したバスに揺られながら行かなくて良いっていうだけで、助かります」
「じゃ、行こうか」
これから雪になるみたいだから、交通の乱れが心配だなって思ったけど、お母さんが車で送ってくれることになったので助かった。
今はまだみぞれだから、バスに遅れとかはないと思うけど、帰りは雪に変わってそうだし、ダイヤの乱れとかありそう。
「帰りも迎えに来るから頑張ってね」
「はーい。送ってくれてありがとう。頑張ってくるからね」
早めに送って貰ったため、教室はまだ三人しか来ていなかった。
奏くんも早く来るタイプっぽいから、今頃別の教室にいるのかな。
ちょっと他の教室見に行きたいと思いつつも遊びに来てるわけじゃないんだからと我慢する。
窓側の席だったため、試験が始まるまで外をのんびり眺め、気持ちを落ち着かせる。
大丈夫。今まで勉強したことを思い出せばきっと受かるはず。落ち着いて問題を解いていこう。
奏くんと色違いの鉛筆を机の上に並べると、初詣に行った時のことが思い出される。
照れながらも私から貰った鉛筆があれば頑張れそうって言ってたな。
私も頑張れそうだよ、奏くん。
チャイムが鳴り、試験監督の人が入ってくると、教室内が静まり返り、一気に緊張が増していく。
注意事項の説明があり試験が開始すると、カリカリと紙に鉛筆が滑る音が聞こえてくる。
一時限目の国語は、得意科目なため、ここで点を稼がなければと集中し、体感九十点くらいは取れたんじゃないかなと予想する。答え合わせをしていない段階だから分からないけど、出来たと思う。
二限目の数学に入ると、奏くんとビデオ通話をしながら勉強したことが思い出された。
奏くんは、数学が得意だから、今頃スラスラと問題を解いてるんだろうなと思いながら進めていく。
あっ、これ奏くんがスマホ越しに教えてくれた問題だ。
綺麗な字をノートに書いて丁寧に説明してくれたから良く記憶に残ってる。
奏くん、ありがとね。
他の教科もそれなりに答えることが出来たが、やはり社会が足を引っ張りそうだと思った。
社会は、こっちだった気がするけど、こっちだったっけ……というように悩むことが多々あり、あまり点数が期待出来ない。
正直自信がないけど……他の教科でどうにかならないかなと神頼みのような感じになってしまった。
「お疲れ様。試験どうだった?」
「ただいま。んー……社会以外は出来たと思う」
迎えに来てくれた車に乗り込みながら今日の報告をする。
受かりそうって自信を持って言えないところが残念だけど……
「そっか。でも、お母さんは大丈夫だと思うな」
「どうしてそう思うの?」
「だって、あんなに勉強頑張ってたじゃない」
「そうだけど……」
頑張った人がみんな大丈夫だったら、みんな受かっちゃうよ。
お母さんって昔から謎の自信があるんだよね。
でも、そのポジティブさが今は救いかもしれない。
「帰りにケーキでも買って帰りましょうよ。頑張ったご褒美に」
「やった! 疲れたから甘いもの食べたかったんだよね」
ケーキ屋さんへ向かう途中で奏くんにメッセージを送る。
『お疲れ様。あとはゆっくり休んで結果を待とうね』
奏くんは、心配することなく受かりそうな気がするんだよね。
私に勉強教えてくれるくらいにちゃんと理解してるし。
『お疲れ。夜、ビデオ通話していいか?』
水曜日じゃないのに……試験終わったから、労おうってことかな。
『もちろん。それじゃ、いつもと同じように二十一時ごろでどうかな?』
『了解』
やっと勉強から解放され、緊張した心も解放された感じがする。
気持ちが軽くなったところで、奏くんとお話し楽しみだな。
「また奏くん? 嬉しそうな顔してるわよ」
「もー、やだ。顔に出過ぎるのどうにかしたいー!」
「それが茉莉絵ちゃんの良いところなんだから、気にしないの」
「うー」
スマホを見ながらにやけてしまってたみたいで、本当に恥ずかしい。
ケーキ屋さんにつくとフルーツタルトとモンブランのどちらにするか悩み、モンブランを買うことにした。
舌触りが滑らかで濃厚な栗の感じが美味しいんだよね。下にあるクッキーと一緒に食べるのが良く合うし。
「私は、苺のショートケーキにするね。お父さんとお兄ちゃんはチーズケーキを買っていきましょう」
「はーい」
「そうそう、今日寒いし疲れてるだろうと思ってお風呂沸かして来たから、帰ったらすぐ入れるからね」
「助かるー! ゆっくり温まりたかったんだよね」
本当に、気がきく家族で感謝しきりだ。
家に帰り、音楽を掛けながらゆっくりと湯船に浸かると眠気に襲われる。
長湯しすぎたかなと上がるとお茶とケーキの準備が整っていた。
甘やかされすぎて良いのかなと心配になる程、至れりつくせりな午後だった。
とうとう受験当日になった。
今日は朝からみぞれ混じりの空模様で、だいぶ冷え込んでいる。
「茉莉絵ちゃん、忘れ物はない? 受験票は持った?」
「何回もチェックしたから大丈夫。お母さん今日は車出してくれてありがとね」
「娘の大事な受験の日だものね。送るといってもバス停五個分だからすぐだけどね」
「混雑したバスに揺られながら行かなくて良いっていうだけで、助かります」
「じゃ、行こうか」
これから雪になるみたいだから、交通の乱れが心配だなって思ったけど、お母さんが車で送ってくれることになったので助かった。
今はまだみぞれだから、バスに遅れとかはないと思うけど、帰りは雪に変わってそうだし、ダイヤの乱れとかありそう。
「帰りも迎えに来るから頑張ってね」
「はーい。送ってくれてありがとう。頑張ってくるからね」
早めに送って貰ったため、教室はまだ三人しか来ていなかった。
奏くんも早く来るタイプっぽいから、今頃別の教室にいるのかな。
ちょっと他の教室見に行きたいと思いつつも遊びに来てるわけじゃないんだからと我慢する。
窓側の席だったため、試験が始まるまで外をのんびり眺め、気持ちを落ち着かせる。
大丈夫。今まで勉強したことを思い出せばきっと受かるはず。落ち着いて問題を解いていこう。
奏くんと色違いの鉛筆を机の上に並べると、初詣に行った時のことが思い出される。
照れながらも私から貰った鉛筆があれば頑張れそうって言ってたな。
私も頑張れそうだよ、奏くん。
チャイムが鳴り、試験監督の人が入ってくると、教室内が静まり返り、一気に緊張が増していく。
注意事項の説明があり試験が開始すると、カリカリと紙に鉛筆が滑る音が聞こえてくる。
一時限目の国語は、得意科目なため、ここで点を稼がなければと集中し、体感九十点くらいは取れたんじゃないかなと予想する。答え合わせをしていない段階だから分からないけど、出来たと思う。
二限目の数学に入ると、奏くんとビデオ通話をしながら勉強したことが思い出された。
奏くんは、数学が得意だから、今頃スラスラと問題を解いてるんだろうなと思いながら進めていく。
あっ、これ奏くんがスマホ越しに教えてくれた問題だ。
綺麗な字をノートに書いて丁寧に説明してくれたから良く記憶に残ってる。
奏くん、ありがとね。
他の教科もそれなりに答えることが出来たが、やはり社会が足を引っ張りそうだと思った。
社会は、こっちだった気がするけど、こっちだったっけ……というように悩むことが多々あり、あまり点数が期待出来ない。
正直自信がないけど……他の教科でどうにかならないかなと神頼みのような感じになってしまった。
「お疲れ様。試験どうだった?」
「ただいま。んー……社会以外は出来たと思う」
迎えに来てくれた車に乗り込みながら今日の報告をする。
受かりそうって自信を持って言えないところが残念だけど……
「そっか。でも、お母さんは大丈夫だと思うな」
「どうしてそう思うの?」
「だって、あんなに勉強頑張ってたじゃない」
「そうだけど……」
頑張った人がみんな大丈夫だったら、みんな受かっちゃうよ。
お母さんって昔から謎の自信があるんだよね。
でも、そのポジティブさが今は救いかもしれない。
「帰りにケーキでも買って帰りましょうよ。頑張ったご褒美に」
「やった! 疲れたから甘いもの食べたかったんだよね」
ケーキ屋さんへ向かう途中で奏くんにメッセージを送る。
『お疲れ様。あとはゆっくり休んで結果を待とうね』
奏くんは、心配することなく受かりそうな気がするんだよね。
私に勉強教えてくれるくらいにちゃんと理解してるし。
『お疲れ。夜、ビデオ通話していいか?』
水曜日じゃないのに……試験終わったから、労おうってことかな。
『もちろん。それじゃ、いつもと同じように二十一時ごろでどうかな?』
『了解』
やっと勉強から解放され、緊張した心も解放された感じがする。
気持ちが軽くなったところで、奏くんとお話し楽しみだな。
「また奏くん? 嬉しそうな顔してるわよ」
「もー、やだ。顔に出過ぎるのどうにかしたいー!」
「それが茉莉絵ちゃんの良いところなんだから、気にしないの」
「うー」
スマホを見ながらにやけてしまってたみたいで、本当に恥ずかしい。
ケーキ屋さんにつくとフルーツタルトとモンブランのどちらにするか悩み、モンブランを買うことにした。
舌触りが滑らかで濃厚な栗の感じが美味しいんだよね。下にあるクッキーと一緒に食べるのが良く合うし。
「私は、苺のショートケーキにするね。お父さんとお兄ちゃんはチーズケーキを買っていきましょう」
「はーい」
「そうそう、今日寒いし疲れてるだろうと思ってお風呂沸かして来たから、帰ったらすぐ入れるからね」
「助かるー! ゆっくり温まりたかったんだよね」
本当に、気がきく家族で感謝しきりだ。
家に帰り、音楽を掛けながらゆっくりと湯船に浸かると眠気に襲われる。
長湯しすぎたかなと上がるとお茶とケーキの準備が整っていた。
甘やかされすぎて良いのかなと心配になる程、至れりつくせりな午後だった。
42
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
夏の決意
S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
咲き乱れろスターチス
シュレッダーにかけるはずだった
青春
自堕落に人生を浪費し、何となく社会人となったハルは、彼女との待ち合わせによく使った公園へむかった。陽炎揺らめく炎天下の中、何をするでもなく座り込んでいると、次第に暑さにやられて気が遠のいてゆく。
彼は最後の青春の記憶に微睡み、自身の罪と弱さに向き合うこととなる。
「ちゃんと生きなよ、逃げないで。」
朦朧とした意識の中、彼女の最後の言葉が脳裏で反芻する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる