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四章 結実
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夏が終わり秋に入ると、受験が身近になり、周りも少し焦りの色が見え始める。
休み時間になると参考書を読む人や過去問を解く人が出てくるようになった。
「みんな大変そうだなー」
呑気な声を上げたのは、結衣だった。
結衣は、指定校推薦が決まっている為、気楽で羨ましい。
「私は、家に帰ってから勉強してるから、休み時間とかは友達とお喋りしてメリハリをつけたいなって思ってるけど、勉強する人の気持ちも分かるかな」
「最近、少し教室内ピリついてきたよね」
「まぁ、受験控えたクラスはこんなもんじゃないかな。全員が第一志望に受かるわけじゃないからね……。合格発表があった後の方が雰囲気微妙かもしれないなと思ってるよ」
「えー、怖いこと言わないでよ」
もし、私が第一志望を落ちたとしたら、クラスで喜んでいるクラスメイトを祝ってあげられるのだろうか。
そうならない為にも悔いがないように勉強を頑張らないと。
「そういえば、高校の文化祭行ってきたんでしょ? お兄ちゃんのクラス見に行ったの?」
「行ってきたよ! お兄ちゃんのクラスはねー。なんと、執事カフェで、男子がスーツ着て、女子も男装しててね、楽しかったよ!」
「うわっ、なにそれー、写真とかないの? お兄さんの執事とか女の子やばかったんじゃない?」
「あー……女の子の列が凄かったね……。一緒に写真撮ってもいいですか? とか聞かれてたけど、笑顔の圧で断ってたよ」
「想像できるわー」
「来年は、私もここで文化祭の準備とかしてたりするのかなとか思っちゃった。まだ受かってもないのにね」
「そういう想像は自由だからいいんだよ。ポジティブでいこうよ」
「うん、そうだね」
可愛い制服を着て、高校生活を奏くんと一緒に満喫したい。
お友達を作って放課後遊びに行ったり、バイトもしたい。
今から高校生活が楽しみだな。
そういえば、来月クリスマスだけど……流石にデートはだめだよね。
人混みとか行って風邪ひいたら大変だし、デートを楽しむ余裕もないかもしれないし。
来月は受験かーと思いながらデートするのも心から楽しめなさそうな気がする。
プレゼントくらいならあげてもいいかな。
何がいいかな。高いものはあげられないけど……うーん。
手袋とかネックウォーマーとかが無難かな。すぐ使ってもらえそうだし、いいかもしれない。
早速、週末にお母さんと買い物に行くと、一つのネックウォーマーに目が留まる。
内側はクリーム色のフリース生地で外側がネイビーの毛糸で編んであり、奏くんが好きな色だし似合いそうだと思い、即決して購入してしまった。
「茉莉絵ちゃんって、あまり買い物悩まないよね。自分の服とかもすぐ決めるよね」
「目に留まると頭から離れなくなっちゃうんだよね。一目見て気にいっちゃったら、他のは良いかなって思っちゃうんだよね。多分他のを色々見ても、結局これに戻ってきちゃうんだろうなって思うから」
「お母さんは、優柔不断だから、あれもこれもいいわーってなって決められなくて、結局何も買わずに帰ってくるとかあるから、そういうところは羨ましいわね」
「お母さんは……買い物長いよね。お父さんいつも良く付き合ってくれるね」
「お父さんは、お母さんとデートであればなんでもいい人なのよ」
「はいはい」
女の人の買い物に付き合うの好きじゃない男性多いと思うけど、お父さんはすごいな。
ただでさえ、お母さんは買い物が長いのに、文句も言わずに付き合うなんて。
私はすぐ決まるから、奏くんと買い物に行ったとしてもそんなに待たせることはないと思う。
今年のクリスマスは丁度土曜日で良かった!
いつも通りクッキーを連れて公園に行って、サクッとプレゼント渡そう。
◆ ◆ ◆
クリスマスを三日後に控えた水曜日。いつものようにビデオ通話をしながら勉強をしていた。
画面越しに奏くんを眺めながら、クリスマスとか意識してなさそうだなと思う。
付き合ってもいないのに、クリスマスプレゼントとか変かな?
でも、もう買っちゃったし、いいよね……?
「あ、そうだ。今度の土曜日だけど、予定入ってて行けないんだ」
クリスマス……予定あったんだ。家族とどこか行くのかな。
どうして予定がないって勝手に思い込んでたんだろう。
普通に公園で会うつもりでいたから、少し言葉に詰まってしまった。
「え……あ、そうなんだ。それじゃー……えーっと、その日は家の近くの公園で遊んでこようかな」
「じゃ、今日はこの辺で勉強終わりにするかな」
「そうだね。今日もお疲れ様」
「茉莉絵もお疲れ。じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
はぁ……通話が終わった途端にため息が漏れてしまう。
プレゼントどうしよう。大分過ぎちゃうけど、来週渡そうかな……
◆ ◆ ◆
「あれ、茉莉絵ちゃん、今日はお洒落していかないの?」
「今日は……奏くんは用があるみたいだから、すぐそこの公園に行くだけだからいいの」
「それは残念ね」
「うん……じゃ、行ってきまーす」
土曜日はいつも髪を巻いたりしてるけど、今日は梳かしただけで、あとはマスクをして帽子を被ったやる気のない格好。
誰かに会うわけじゃないし、良いよね。
冬になり、朝はだいぶ冷え込むため、散歩の時間も少しずらして十一時ごろから行くようにしている。
日が出てれば、寒さもだいぶ和らぐからね。
休み時間になると参考書を読む人や過去問を解く人が出てくるようになった。
「みんな大変そうだなー」
呑気な声を上げたのは、結衣だった。
結衣は、指定校推薦が決まっている為、気楽で羨ましい。
「私は、家に帰ってから勉強してるから、休み時間とかは友達とお喋りしてメリハリをつけたいなって思ってるけど、勉強する人の気持ちも分かるかな」
「最近、少し教室内ピリついてきたよね」
「まぁ、受験控えたクラスはこんなもんじゃないかな。全員が第一志望に受かるわけじゃないからね……。合格発表があった後の方が雰囲気微妙かもしれないなと思ってるよ」
「えー、怖いこと言わないでよ」
もし、私が第一志望を落ちたとしたら、クラスで喜んでいるクラスメイトを祝ってあげられるのだろうか。
そうならない為にも悔いがないように勉強を頑張らないと。
「そういえば、高校の文化祭行ってきたんでしょ? お兄ちゃんのクラス見に行ったの?」
「行ってきたよ! お兄ちゃんのクラスはねー。なんと、執事カフェで、男子がスーツ着て、女子も男装しててね、楽しかったよ!」
「うわっ、なにそれー、写真とかないの? お兄さんの執事とか女の子やばかったんじゃない?」
「あー……女の子の列が凄かったね……。一緒に写真撮ってもいいですか? とか聞かれてたけど、笑顔の圧で断ってたよ」
「想像できるわー」
「来年は、私もここで文化祭の準備とかしてたりするのかなとか思っちゃった。まだ受かってもないのにね」
「そういう想像は自由だからいいんだよ。ポジティブでいこうよ」
「うん、そうだね」
可愛い制服を着て、高校生活を奏くんと一緒に満喫したい。
お友達を作って放課後遊びに行ったり、バイトもしたい。
今から高校生活が楽しみだな。
そういえば、来月クリスマスだけど……流石にデートはだめだよね。
人混みとか行って風邪ひいたら大変だし、デートを楽しむ余裕もないかもしれないし。
来月は受験かーと思いながらデートするのも心から楽しめなさそうな気がする。
プレゼントくらいならあげてもいいかな。
何がいいかな。高いものはあげられないけど……うーん。
手袋とかネックウォーマーとかが無難かな。すぐ使ってもらえそうだし、いいかもしれない。
早速、週末にお母さんと買い物に行くと、一つのネックウォーマーに目が留まる。
内側はクリーム色のフリース生地で外側がネイビーの毛糸で編んであり、奏くんが好きな色だし似合いそうだと思い、即決して購入してしまった。
「茉莉絵ちゃんって、あまり買い物悩まないよね。自分の服とかもすぐ決めるよね」
「目に留まると頭から離れなくなっちゃうんだよね。一目見て気にいっちゃったら、他のは良いかなって思っちゃうんだよね。多分他のを色々見ても、結局これに戻ってきちゃうんだろうなって思うから」
「お母さんは、優柔不断だから、あれもこれもいいわーってなって決められなくて、結局何も買わずに帰ってくるとかあるから、そういうところは羨ましいわね」
「お母さんは……買い物長いよね。お父さんいつも良く付き合ってくれるね」
「お父さんは、お母さんとデートであればなんでもいい人なのよ」
「はいはい」
女の人の買い物に付き合うの好きじゃない男性多いと思うけど、お父さんはすごいな。
ただでさえ、お母さんは買い物が長いのに、文句も言わずに付き合うなんて。
私はすぐ決まるから、奏くんと買い物に行ったとしてもそんなに待たせることはないと思う。
今年のクリスマスは丁度土曜日で良かった!
いつも通りクッキーを連れて公園に行って、サクッとプレゼント渡そう。
◆ ◆ ◆
クリスマスを三日後に控えた水曜日。いつものようにビデオ通話をしながら勉強をしていた。
画面越しに奏くんを眺めながら、クリスマスとか意識してなさそうだなと思う。
付き合ってもいないのに、クリスマスプレゼントとか変かな?
でも、もう買っちゃったし、いいよね……?
「あ、そうだ。今度の土曜日だけど、予定入ってて行けないんだ」
クリスマス……予定あったんだ。家族とどこか行くのかな。
どうして予定がないって勝手に思い込んでたんだろう。
普通に公園で会うつもりでいたから、少し言葉に詰まってしまった。
「え……あ、そうなんだ。それじゃー……えーっと、その日は家の近くの公園で遊んでこようかな」
「じゃ、今日はこの辺で勉強終わりにするかな」
「そうだね。今日もお疲れ様」
「茉莉絵もお疲れ。じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
はぁ……通話が終わった途端にため息が漏れてしまう。
プレゼントどうしよう。大分過ぎちゃうけど、来週渡そうかな……
◆ ◆ ◆
「あれ、茉莉絵ちゃん、今日はお洒落していかないの?」
「今日は……奏くんは用があるみたいだから、すぐそこの公園に行くだけだからいいの」
「それは残念ね」
「うん……じゃ、行ってきまーす」
土曜日はいつも髪を巻いたりしてるけど、今日は梳かしただけで、あとはマスクをして帽子を被ったやる気のない格好。
誰かに会うわけじゃないし、良いよね。
冬になり、朝はだいぶ冷え込むため、散歩の時間も少しずらして十一時ごろから行くようにしている。
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