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三章 逢瀬
---奏視点⑤---
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「奏、ほら、これ持っていきなさい」
母さんは、俺の浴衣の着付けを終えると、財布から五千円取り出した。
「え、いいの?」
「せっかくの初デートだからね。存分に楽しんでおいで」
「母さん……ありがとう」
今日は、獅子丸を連れずにあの公園で初めて二人で会う。
家にいてもそわそわと落ち着かないので、少し早いけど家を出ることにした。
いつものベンチに腰をかけて、茉莉絵が来るまでスマホを弄りながら、どんな浴衣なんだろうと想像が膨らんでいく。
肌が白いから濃い色も淡い色もどちらも似合いそうだな。
そう思っていると、待ち合わせ時間より早く茉莉絵が到着した。
……可愛い。
想像していた何倍も可愛くて、顔が緩みそうになるのを奥歯を噛み締めて、平静を装う。
薄い水色に朝顔と蝶々が描かれた浴衣は茉莉絵にとても良く似合っていた。
髪もアップにまとめて、後毛が軽く巻かれていて……うなじが……やばい、あまり見ないようにしないと。
こんなに可愛いと、逸れたときに変な男に声をかけられそうだと思い、思い切って手を繋ぐことにした。
言い出すのに少し勇気がいったけど、妹と手を繋ぐと思えばなんてことないはず。
妹、妹……と何度も思ってみてもやっぱり相手は茉莉絵なわけで、自分から提案しておいて、照れてしまった。
顔を背けていたから、気付かれてないといいけど……
祭りの会場につくと、すでに多くの人で賑わっていた。
屋台で焼きそばとたこ焼きを食べた後は、射的を楽しんだが、茉莉絵の可愛さに思わず笑ってしまった。
下手だ下手だと言ってはいたけれど、本当に掠りもしないとは思っていなかった。
真剣な表情で狙っている姿は、上手そうに見えるのに、全く掠りもしない。それが可愛くて、つい口元を隠し笑いをなんとか堪えていたが、流石に茉莉絵に気付かれてしまった。
さて、茉莉絵の代わりにあの白い羊を取ろうか。
今日は調子が良かったみたいで、五発とも当てることができた。
そのうち二つは景品として持って帰って良いとのことだったので、一つは茉莉絵のために取った白い羊を、もう一つは色違いの黒い羊を選んだ。
せっかくだから、お揃いにしてもいいかなと思って。
茉莉絵は、「ありがとう……大事にするね」と言い、とても大事そうに受け取った。
そんなに喜んでくれると、取った甲斐があるけど、こんな安いのでそんなに嬉しいものか?
茉莉絵は羊が好きなのかな。
机に飾って勉強を頑張ると言っていたので、俺も机に飾ろうと思った。
これを見るたびに、今日のことを思い出して、勉強も頑張れそうな気がした。
このあとは、水ヨーヨーをやりに行ったが、これは茉莉絵も得意だったようで、三個取ることが出来た。
そんなにいらないからと二個返し、水色の水玉模様のヨーヨーを選んでいた。
それを見て……色違いの水玉模様の水ヨーヨーを取ってしまった。
いや、流石に水ヨーヨーまでお揃いにするとか気持ち悪いか?
もう選んじゃったけど……まぁ、茉莉絵も気にしてなさそうだし、いっか。
次はどこの屋台に寄ろうかと歩いていると、クラスメイトの声が聞こえた。
五十嵐か……中学の奴らに会うだろうとは思ってたけど、よりにもよって五十嵐か。
それに、一緒にいる二人もうるさいから苦手なんだよな……
「相沢さん久しぶりだね。知らない仲じゃないし、一緒に回らない?」
まさか、茉莉絵に一緒に回ろうと提案するとは思わなかった。
友達でもなんでもないだろ……図々しい。
行くところがあると断ると、次は写真を撮りたいという。
まじでいい加減にしてくれ……思わず大きな声が出そうになるが、茉莉絵が手をぎゅっと握ってきたのでハッと我に返理、足早に彼女たちの元から去った。
茉莉絵の前で、格好悪いところを見せるところだったな。
さて、気を取り直して祭りを楽しむかと思っていると、俺が強引に手を引いて歩いてしまったから、茉莉絵が靴擦れを起こしてしまった。
何やってんだよ、俺。
茉莉絵に嫌な思いさせた上に、痛い思いまでさせて……
落ち込みそうになる気持ちを、今は落ち込んでいる場合じゃない、茉莉絵のことを考えないとと気持ちを切り替える。
隣の公園のベンチに腰をかけて、サンダルを脱いで傷をチェックしている彼女を隣で見守る。
結構大きく皮がめくれていて、痛そうだった……茉莉絵、ごめんな。
絆創膏を貼る前に、綺麗にした方がいいと思い、すぐそこにある自販機でミネラルウォーターを買って、足にかけてやる。
俺のせいなんだから、これくらいしないとな。
靴擦れって水に触れるのも痛いよな……はぁ、まじでごめん。
ハンカチで水分を拭き取ろうとしたら、茉莉絵から待ったが掛かった。
なんだろうと思っていると、自分のハンカチを使って欲しいと言った。
俺のハンカチもまだ使ってないから綺麗だけど……雑菌とか心配してるのかな。
そう思っていると、俺のハンカチを汚したくないといった。
そんなことどうでもいいのに。洗濯すればいいだけだろと思ったけど、茉莉絵は頑なに譲らなかったため、彼女からハンカチを受け取り、拭き取ると絆創膏を二重に貼った。
靴擦れは、少しサンダルに当たるだけでも痛いから、二重でも足りないと思うけど……2枚しか持ってきてなかったんだよな。
もう二、三枚多めに持ってくれば良かったな。
次からは念のため五枚持ち歩くか。
母さんは、俺の浴衣の着付けを終えると、財布から五千円取り出した。
「え、いいの?」
「せっかくの初デートだからね。存分に楽しんでおいで」
「母さん……ありがとう」
今日は、獅子丸を連れずにあの公園で初めて二人で会う。
家にいてもそわそわと落ち着かないので、少し早いけど家を出ることにした。
いつものベンチに腰をかけて、茉莉絵が来るまでスマホを弄りながら、どんな浴衣なんだろうと想像が膨らんでいく。
肌が白いから濃い色も淡い色もどちらも似合いそうだな。
そう思っていると、待ち合わせ時間より早く茉莉絵が到着した。
……可愛い。
想像していた何倍も可愛くて、顔が緩みそうになるのを奥歯を噛み締めて、平静を装う。
薄い水色に朝顔と蝶々が描かれた浴衣は茉莉絵にとても良く似合っていた。
髪もアップにまとめて、後毛が軽く巻かれていて……うなじが……やばい、あまり見ないようにしないと。
こんなに可愛いと、逸れたときに変な男に声をかけられそうだと思い、思い切って手を繋ぐことにした。
言い出すのに少し勇気がいったけど、妹と手を繋ぐと思えばなんてことないはず。
妹、妹……と何度も思ってみてもやっぱり相手は茉莉絵なわけで、自分から提案しておいて、照れてしまった。
顔を背けていたから、気付かれてないといいけど……
祭りの会場につくと、すでに多くの人で賑わっていた。
屋台で焼きそばとたこ焼きを食べた後は、射的を楽しんだが、茉莉絵の可愛さに思わず笑ってしまった。
下手だ下手だと言ってはいたけれど、本当に掠りもしないとは思っていなかった。
真剣な表情で狙っている姿は、上手そうに見えるのに、全く掠りもしない。それが可愛くて、つい口元を隠し笑いをなんとか堪えていたが、流石に茉莉絵に気付かれてしまった。
さて、茉莉絵の代わりにあの白い羊を取ろうか。
今日は調子が良かったみたいで、五発とも当てることができた。
そのうち二つは景品として持って帰って良いとのことだったので、一つは茉莉絵のために取った白い羊を、もう一つは色違いの黒い羊を選んだ。
せっかくだから、お揃いにしてもいいかなと思って。
茉莉絵は、「ありがとう……大事にするね」と言い、とても大事そうに受け取った。
そんなに喜んでくれると、取った甲斐があるけど、こんな安いのでそんなに嬉しいものか?
茉莉絵は羊が好きなのかな。
机に飾って勉強を頑張ると言っていたので、俺も机に飾ろうと思った。
これを見るたびに、今日のことを思い出して、勉強も頑張れそうな気がした。
このあとは、水ヨーヨーをやりに行ったが、これは茉莉絵も得意だったようで、三個取ることが出来た。
そんなにいらないからと二個返し、水色の水玉模様のヨーヨーを選んでいた。
それを見て……色違いの水玉模様の水ヨーヨーを取ってしまった。
いや、流石に水ヨーヨーまでお揃いにするとか気持ち悪いか?
もう選んじゃったけど……まぁ、茉莉絵も気にしてなさそうだし、いっか。
次はどこの屋台に寄ろうかと歩いていると、クラスメイトの声が聞こえた。
五十嵐か……中学の奴らに会うだろうとは思ってたけど、よりにもよって五十嵐か。
それに、一緒にいる二人もうるさいから苦手なんだよな……
「相沢さん久しぶりだね。知らない仲じゃないし、一緒に回らない?」
まさか、茉莉絵に一緒に回ろうと提案するとは思わなかった。
友達でもなんでもないだろ……図々しい。
行くところがあると断ると、次は写真を撮りたいという。
まじでいい加減にしてくれ……思わず大きな声が出そうになるが、茉莉絵が手をぎゅっと握ってきたのでハッと我に返理、足早に彼女たちの元から去った。
茉莉絵の前で、格好悪いところを見せるところだったな。
さて、気を取り直して祭りを楽しむかと思っていると、俺が強引に手を引いて歩いてしまったから、茉莉絵が靴擦れを起こしてしまった。
何やってんだよ、俺。
茉莉絵に嫌な思いさせた上に、痛い思いまでさせて……
落ち込みそうになる気持ちを、今は落ち込んでいる場合じゃない、茉莉絵のことを考えないとと気持ちを切り替える。
隣の公園のベンチに腰をかけて、サンダルを脱いで傷をチェックしている彼女を隣で見守る。
結構大きく皮がめくれていて、痛そうだった……茉莉絵、ごめんな。
絆創膏を貼る前に、綺麗にした方がいいと思い、すぐそこにある自販機でミネラルウォーターを買って、足にかけてやる。
俺のせいなんだから、これくらいしないとな。
靴擦れって水に触れるのも痛いよな……はぁ、まじでごめん。
ハンカチで水分を拭き取ろうとしたら、茉莉絵から待ったが掛かった。
なんだろうと思っていると、自分のハンカチを使って欲しいと言った。
俺のハンカチもまだ使ってないから綺麗だけど……雑菌とか心配してるのかな。
そう思っていると、俺のハンカチを汚したくないといった。
そんなことどうでもいいのに。洗濯すればいいだけだろと思ったけど、茉莉絵は頑なに譲らなかったため、彼女からハンカチを受け取り、拭き取ると絆創膏を二重に貼った。
靴擦れは、少しサンダルに当たるだけでも痛いから、二重でも足りないと思うけど……2枚しか持ってきてなかったんだよな。
もう二、三枚多めに持ってくれば良かったな。
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