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三章 逢瀬
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お祭り会場の出口に向かっていると、向こうからお兄ちゃんが友人三人と焼き鳥片手に歩いてくるのが見えた。
「あれ? 妹ちゃんじゃん」
「本当だ。茉莉絵ちゃん、こんばんは」
兄の友人である、瑞樹くんと蓮くんは、良くうちに遊びにきているので、気軽に話かけてくれる。
「瑞樹くん、蓮くん、こんばんは。三人でお祭りきてたんだね。あ、奏くん、こちらお兄ちゃんとお友達の瑞樹くんと蓮くんだよ」
いきなり話かけられたから、奏くんもびっくりしたよね。
私もまさかお兄ちゃんに奏くんを紹介することになるとは思ってもみなかったけど……
「あ、初めまして。佐伯奏です。今日は……妹さんをお借りしています」
「お借りしていますって……ふっ」
奏くんったら、お借りしてますって、お兄ちゃん相手で緊張してるのかな。
大丈夫だよと安心させるように手をぎゅっと握ると、こちらをみて微笑んでくれた。
「うわー、仲良しだね」
「初々しいカップルにあてられるな。翔は妹のデートに鉢合わせするの気不味そうだよな」
「……いや、妹が世話になってるな。まだ、付き合ってはないみたいだが」
「え? そんな感じでまだ付き合ってないとかあり?」
あー……手繋いで歩いてるし、普通に浴衣デートで恋人同士っぽいよね。
付き合ってないんだけど……気持ちは通じてるんだよね。
「えっと、受験生なので……」
「まじかー。受験生だから付き合わないとかってやつ? 真面目過ぎない?」
「うーん。やっぱり今は受験が第一優先かなって思って」
「偉いな。俺たちも見習わなきゃだよなー。来年俺たちも大学受験だからな」
「うわっ、やめろよ! 今からそう言うこと言うなよ」
「そうだな。今は祭り楽しもうぜ」
相変わらず楽しそうだな。賑やかで仲良しな三人を見ているのは結構好きだったりする。
私のことも可愛がってくれるから、お兄ちゃんが三人いるみたい。
「じゃ、お兄ちゃん、私は帰るところだからまたね」
「待て、足どうした? 少し引きずってるだろ?」
「え? あー、靴擦れしちゃって。ゆっくり歩けば大丈夫だから」
向かいから歩いてくるときに、変な歩き方してるなって気になったのかな。
怪我したと思って心配かけちゃったかな。
「瑞樹、蓮、悪い。先帰る」
「「は?」」
「え?」
いきなりどうしたんだろう。この感じだとまだお祭りきてからあまり経ってないっぽいけど。
「茉莉絵、帰るぞ」
「えっ⁉︎」
え? 奏くんが送ってくれるから大丈夫だけど、どうした⁉︎
「その足じゃ歩くのきついだろ。おぶってやるから」
「いやいや、いいから! 奏くんが送ってくれるって言ってるから、私のことは気にせずお祭り楽しんで!」
足は確かに痛いけど、我慢できるし、何より奏くんと一緒に帰りたい……
「うるせーな。黙ってろ。ほら、乗れ」
そういうと、しゃがみ込み背を向けた。
これは……お兄ちゃんと帰らないといけないパターンか……
そう思い、奏くんの方をチラリとみると、眉を下げて困った顔をしていた。
「茉莉絵、お兄さんに甘えよう? 足痛いだろ?」
「でも……」
「また公園で会おうな。でも、その前に通話しながら勉強な?」
「うん、奏くんありがとう」
「またな」
「あっ、待って‼︎ 最後に……一緒に写真撮りたいんだけどいい?」
「え……良いけど……」
「お兄ちゃん……は、気まずいからいいや。瑞樹くん私のスマホで撮ってくれるかな?」
「オッケー。はい、二人とももっと寄ってー」
「流石に、翔には妹ちゃんも頼みにくいか」
「……」
スマホを返してもらい、写真をチェックすると、少し照れたような表情の二人が映っていた。
本当に初々しいカップルみたいだなと自分のことなのに思ってしまう。
最後に、良い記念写真が撮れて良かった。
毎日何度も見返しちゃいそう。
「それ……あとで送って」
「え……うん!今、送るから」
「はやっ、もう来た。ありがとな」
「こちらこそ、ありがとう。それじゃ、奏くん、またね」
「おう、またな」
そうして、奏くんと別れ、お兄ちゃんと帰宅することになった。
もう少し奏くんと居たかったなとため息ばかりが漏れてしまう。
「お前……おぶってもらっておいて、ため息ばかりついてんじゃねーよ」
「だってぇ。奏くんとまだ一緒にいたかったんだもん」
「もう会えないわけじゃないんだから、少しくらいいいだろ。ったく」
「そうだけど……」
流石に、私の足を心配しておぶってくれてるのに、こんな態度良くないよね。
「お兄ちゃん、ごめんね。ありがとう」
「……おう」
「でも、お兄ちゃん、お祭り良かったの? まだそんなに経ってなかったんじゃないの?」
「夜メシ食べに行っただけだから別に構わない。それに、焼き鳥も焼きそばも食べたから別にいい」
「そうなんだ。ご飯食べられたのなら良かったけど」
でも、二人には悪いことしちゃったな。
三人でもう少しお祭り楽しみたかったと思うんだけどな。
二人にも迷惑かけたお詫びをしないとな。
家に着くと、先にシャワーを使わせてもらい、リビングに行くと、消毒液と絆創膏がテーブルの上に置いてあった。
私の周りの男子はどうしてこうも気がきくのだろう。これも兄たる所以か?
「お兄ちゃん、これ、ありがとね」
「おう」
短く返事をすると、お風呂場へと向かっていった。
さてと、奏くんにメッセージを送ろうっと。
『今日はお祭り一緒に行ってくれて、ありがとう。とても楽しかった。最後はお兄ちゃんと帰ることになっちゃったけど、もう少し一緒に居たかったな。今日は勉強はお休みの日にして、早めに寝ようと思います。おやすみなさい』
よしっと、これでいいかな。
楽しかったって言うのともう少し一緒に居たかったと言うのは伝えられた。
こういうことは素直に伝えた方がいいって、奏くんを見ていて感じた。
今日も素直に別れが寂しいって言ってくれたし、私も彼の前ではできるだけ素直でありたいと思った。
「あれ? 妹ちゃんじゃん」
「本当だ。茉莉絵ちゃん、こんばんは」
兄の友人である、瑞樹くんと蓮くんは、良くうちに遊びにきているので、気軽に話かけてくれる。
「瑞樹くん、蓮くん、こんばんは。三人でお祭りきてたんだね。あ、奏くん、こちらお兄ちゃんとお友達の瑞樹くんと蓮くんだよ」
いきなり話かけられたから、奏くんもびっくりしたよね。
私もまさかお兄ちゃんに奏くんを紹介することになるとは思ってもみなかったけど……
「あ、初めまして。佐伯奏です。今日は……妹さんをお借りしています」
「お借りしていますって……ふっ」
奏くんったら、お借りしてますって、お兄ちゃん相手で緊張してるのかな。
大丈夫だよと安心させるように手をぎゅっと握ると、こちらをみて微笑んでくれた。
「うわー、仲良しだね」
「初々しいカップルにあてられるな。翔は妹のデートに鉢合わせするの気不味そうだよな」
「……いや、妹が世話になってるな。まだ、付き合ってはないみたいだが」
「え? そんな感じでまだ付き合ってないとかあり?」
あー……手繋いで歩いてるし、普通に浴衣デートで恋人同士っぽいよね。
付き合ってないんだけど……気持ちは通じてるんだよね。
「えっと、受験生なので……」
「まじかー。受験生だから付き合わないとかってやつ? 真面目過ぎない?」
「うーん。やっぱり今は受験が第一優先かなって思って」
「偉いな。俺たちも見習わなきゃだよなー。来年俺たちも大学受験だからな」
「うわっ、やめろよ! 今からそう言うこと言うなよ」
「そうだな。今は祭り楽しもうぜ」
相変わらず楽しそうだな。賑やかで仲良しな三人を見ているのは結構好きだったりする。
私のことも可愛がってくれるから、お兄ちゃんが三人いるみたい。
「じゃ、お兄ちゃん、私は帰るところだからまたね」
「待て、足どうした? 少し引きずってるだろ?」
「え? あー、靴擦れしちゃって。ゆっくり歩けば大丈夫だから」
向かいから歩いてくるときに、変な歩き方してるなって気になったのかな。
怪我したと思って心配かけちゃったかな。
「瑞樹、蓮、悪い。先帰る」
「「は?」」
「え?」
いきなりどうしたんだろう。この感じだとまだお祭りきてからあまり経ってないっぽいけど。
「茉莉絵、帰るぞ」
「えっ⁉︎」
え? 奏くんが送ってくれるから大丈夫だけど、どうした⁉︎
「その足じゃ歩くのきついだろ。おぶってやるから」
「いやいや、いいから! 奏くんが送ってくれるって言ってるから、私のことは気にせずお祭り楽しんで!」
足は確かに痛いけど、我慢できるし、何より奏くんと一緒に帰りたい……
「うるせーな。黙ってろ。ほら、乗れ」
そういうと、しゃがみ込み背を向けた。
これは……お兄ちゃんと帰らないといけないパターンか……
そう思い、奏くんの方をチラリとみると、眉を下げて困った顔をしていた。
「茉莉絵、お兄さんに甘えよう? 足痛いだろ?」
「でも……」
「また公園で会おうな。でも、その前に通話しながら勉強な?」
「うん、奏くんありがとう」
「またな」
「あっ、待って‼︎ 最後に……一緒に写真撮りたいんだけどいい?」
「え……良いけど……」
「お兄ちゃん……は、気まずいからいいや。瑞樹くん私のスマホで撮ってくれるかな?」
「オッケー。はい、二人とももっと寄ってー」
「流石に、翔には妹ちゃんも頼みにくいか」
「……」
スマホを返してもらい、写真をチェックすると、少し照れたような表情の二人が映っていた。
本当に初々しいカップルみたいだなと自分のことなのに思ってしまう。
最後に、良い記念写真が撮れて良かった。
毎日何度も見返しちゃいそう。
「それ……あとで送って」
「え……うん!今、送るから」
「はやっ、もう来た。ありがとな」
「こちらこそ、ありがとう。それじゃ、奏くん、またね」
「おう、またな」
そうして、奏くんと別れ、お兄ちゃんと帰宅することになった。
もう少し奏くんと居たかったなとため息ばかりが漏れてしまう。
「お前……おぶってもらっておいて、ため息ばかりついてんじゃねーよ」
「だってぇ。奏くんとまだ一緒にいたかったんだもん」
「もう会えないわけじゃないんだから、少しくらいいいだろ。ったく」
「そうだけど……」
流石に、私の足を心配しておぶってくれてるのに、こんな態度良くないよね。
「お兄ちゃん、ごめんね。ありがとう」
「……おう」
「でも、お兄ちゃん、お祭り良かったの? まだそんなに経ってなかったんじゃないの?」
「夜メシ食べに行っただけだから別に構わない。それに、焼き鳥も焼きそばも食べたから別にいい」
「そうなんだ。ご飯食べられたのなら良かったけど」
でも、二人には悪いことしちゃったな。
三人でもう少しお祭り楽しみたかったと思うんだけどな。
二人にも迷惑かけたお詫びをしないとな。
家に着くと、先にシャワーを使わせてもらい、リビングに行くと、消毒液と絆創膏がテーブルの上に置いてあった。
私の周りの男子はどうしてこうも気がきくのだろう。これも兄たる所以か?
「お兄ちゃん、これ、ありがとね」
「おう」
短く返事をすると、お風呂場へと向かっていった。
さてと、奏くんにメッセージを送ろうっと。
『今日はお祭り一緒に行ってくれて、ありがとう。とても楽しかった。最後はお兄ちゃんと帰ることになっちゃったけど、もう少し一緒に居たかったな。今日は勉強はお休みの日にして、早めに寝ようと思います。おやすみなさい』
よしっと、これでいいかな。
楽しかったって言うのともう少し一緒に居たかったと言うのは伝えられた。
こういうことは素直に伝えた方がいいって、奏くんを見ていて感じた。
今日も素直に別れが寂しいって言ってくれたし、私も彼の前ではできるだけ素直でありたいと思った。
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