【完結】愛犬との散歩は、恋の予感

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』

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三章 逢瀬

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 食べ物と飲み物を手に、飲食スペースへと向かう。
 テントが張られ、簡易テーブルと椅子が用意されている。
 人は多かったけど、ところどころ空いてる場所があり、二人だったので、サクッと席に着くことが出来た。

 「期待してなかったけど、この焼きそば思ったより美味しいな」

 「あっ、思った。美味しくて良かったね」

 お祭りの焼きそばって当たり外れが結構大きいと思う。
 麺が柔らかすぎたりするのとかだと外れかーって思っちゃうけど、今日のは普通に美味しかった。
 
 たこ焼きもなんていうかソースが美味しい。そして、外側はカリッとしていて美味しかった。
 今日の屋台は外れなしって感じで、良い感じに楽しめてる。

 「次は、射的か?」

 「そうだね。少し遊んで色々回ったら、かき氷とか食べたいかな」

 「そうだな。回って疲れたら、かき氷食べながら休憩するか」

 「うん」

 たわいもない話をしながら、食事を済ませて早々に屋台を見て回る。
 可愛いうちわやお面などが売っていて、必要ないのに欲しくなってしまう。
 お祭りの雰囲気にテンションが上がって散財しちゃうんだよね。
 お小遣い無駄にしないようにしたいけど……奏くんとの初デートだから、何か記念になるものが欲しいな。

 「あっ、射的も並んでるね」

 「まぁ、祭りはどこも並ぶよな。どれが欲しいか今のうちに決めとけよ」

 「うーん。取れるかな……」

 「茉莉絵が取れなくても、俺が取るから決めとけって言ってるんだよ」

 「え……? 私が欲しいのでいいの? 奏くんが欲しいのじゃなくて?」

 「俺はなんでもいいからな」

 「じゃ、お言葉に甘えて取ってもらおうかな」

 「好きなのどうぞ」

 私だったら絶対取れないけど、奏くん自信ありそうだし……
 あの羊の置物可愛いな。今日の記念に持って帰って机の上に飾ったら勉強も頑張れそうな気がする。
 奏くんにも何か今日の記念をプレゼントしたいけど、何がいいかな。

 「次、俺たちの番だぞ。決まったか?」

 「うん、あの左端にある白い羊の置物がいいな」

 「了解。とりあえず、先に茉莉絵からな?」

 「えっ⁉︎  私から? 本当に下手だからね?」

 「分かったって。でも、もしかしたら自分で取れるかもしれないだろ?」

 うーん。自分で取れるとは思えない。
 それに、自分で取るよりも奏くんに取って貰ったほうが嬉しいって言ったら迷惑かな?

 「とりあえず、頑張ってみるね! 笑わないでね?」

 「笑わないから、やってみ」

 お店のおじさんから五発貰い、構えて一発放つも……掠りもしない。
 狙ってるのに!

 「もっと固定して撃ったほうがいいかも」

 「了解」

 固定してブレないように……うー、下手すぎる。
 全然当たらない。
 結局、羊の置物は小さくて掠りもせず全弾使い切ってしまった。

 次は奏くんだねと後ろを振り向くと、口を押さえて肩を震わせていた。

 「笑わないって言ったのにー!」

 「いや、まさか掠りもしないとは思わなくて……ククッ」

 「だから、下手だって言ったのに」

 「はいはい、俺が取ってやるからみとけよ?」

 そう言うと、私の頭をポンポンして交代した。
 そういうことをさらりとするから、ドキドキしてしまう。
 
 さて、奏くんの射的の腕前はどんなんだろう?

 「……奏くん、うますぎない?」

 なんと奏くんは全弾当てて、そのうち二つを景品として受け取った。
 一つは私が欲しいと言っていた白い羊。もう一つはその隣にあった色違いの黒い羊。

 「だから任せろって言っただろ? ほら、欲しいって言ってた羊だぞ」

 「ありがとう……大事にするね」

 両手で受け取るとそっと指で撫でる。
 奏くんが取ってくれたというだけで、この羊ちゃんは特別なものになった。
 大事にするからね。

 「そんなに大事そうにしなくても……」
 
 「だって、本当に嬉しいんだもん。これ見ながら勉強頑張るね」

 「それなら俺もこれ机に飾って頑張るかな。なんだかんだで、祭りの記念になっていいな」

 「うん」

 奏くんもそう思ってくれたから、私と色違いの羊の置物を選んでくれたのかな。
 
 「よし、次いくぞ」

 そう言うと、自然と手を繋いでくれる。
 今日は、奏くんの全ての行動にドキドキしてしまう。
 奏くんってクールそうに見えるのに、付き合ったら甘やかすタイプなのかな。

 「じゃ、あとは定番の水ヨーヨー取ったりとかするか」

 「うんっ!」

 水ヨーヨーって翌日には萎んじゃうけど、お祭りの間持ってるだけでも可愛くてなんかお祭り気分が上がる気がする。

 水ヨーヨーは、私も奏くんも三個ずつ取ることができたけどそんなに必要ないので、それぞれ好きなのを一つだけ選んで持ち帰ることにした。
 
 次はどこを回ろうかと見ていると、「あれ、佐伯くんだ」と五十嵐さんの声が聞こえた。
 後ろを振り返ると、彼女は、女友達二人とお祭りに来たみたいだった。
 彼女も来てるとは思ったけど、人多いし会場も広いから出会さないかなって思ったんだけどな。

 「うわっ、佐伯くん浴衣じゃん!」

 「まじやばい。イケメン度が増し増しじゃん」

 「佐伯くん、浴衣めっちゃ似合ってるね。えー、一緒に回りたい」

 奏くんの浴衣姿をまじまじと見つめ堪能している雰囲気にモヤモヤしてしまう。
 やだな……
 思わず、繋いだ手に力が入ってしまうが、奏くんがしっかりと私の手を握ってくれて安心させてくれる。

 「悪いけど、俺たちいくとこあるから」

 「相沢さん久しぶりだね。知らない仲じゃないし、一緒に回らない?」

 「え……」

 いやいや、二人で回ってるのわかってるのに、それに割って入ってくるの?
 
 「あれ、美咲、この子知ってるの? 同じ学校じゃないよね?」

 「見たことないから、学校違うと思けけど」

 「えっと、まぁ、色々あって、知り合ったんだよね。中学は別だね」

 「知り合いなら気兼ねしなくて良い感じ?」

 「んー、佐伯くん彼女いないって言ってたし、その子も彼女じゃないよね?」

 「彼女ではないらしいよ?」

 彼女じゃないけど……デートしてるのに。
 彼女じゃなかったら、邪魔してもいいの?
 やだな……せっかく楽しいデートにしたかったのに。
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