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二章 嫉妬
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クッキーにリードをつけようとしゃがみ込んだところで、奏くんにリードを掴まれてしまった。
「待てって言ってるだろ? って、お前……」
あぁ、見られたくなかったのに、涙が止まらない。
二人は休みの日に一緒に遊ぶような仲だったの?
私と週末ここで過ごしていたことを、奏くんはどう思ってたんだろう……
ただ愛犬同士を遊ばせているついでに私とも話してるだけだったのかな……
どんどん良くない方向に思考がいってしまう。
「ちょっと、二人ともしゃがみ込んでどうしたの?」
やだ……五十嵐さんに見られたくない。
クッキーに抱きつき、顔を埋めて隠すと、慰めるように鼻を擦り付けてきてくれた。
本当に貴方は優しい子ね……
「悪いけど、帰ってくれるか? 茉莉絵と二人で話があるから」
「え……でも、来たばっかりだし……」
「悪いんだけどさ。もしあれなら、俺たちが移動するよ」
「……分かった。今日は帰るね。佐伯くん、また学校でね」
「おう……」
私のせいで、五十嵐さんを帰してしまった。
こんな風に泣くつもりなんてなかったのに……
「ほら、どうした? そんなに泣いて。目が腫れるぞ?」
そう言いながら、ハンカチで涙を拭ってくれた。
その優しさに、余計に涙が止まらなくなり、ポロポロと溢れていった。
「うわっ、お前っ、泣きすぎだっての。仕方ねーな」
言葉では仕方ないと言いつつ、優しく抱きしめて、背を撫でてくれた。
彼はお兄ちゃんだから、妹をあやしてる感じなのかな。
「クッキー、ちょっと茉莉絵と話があるから、獅子丸と遊んでてな?」
「わふっ!」
クッキーは、元気よく返事をすると、獅子丸と掛けて行った。それでも、私が気になるのか何度か振り返り、様子を伺っているようだった。
クッキーにまで心配かけちゃった……だめな飼い主だね。
「少しは落ち着いたか?」
「うん……ごめんね」
「いや、まぁ……驚いたけど。何が泣くほど辛かった?」
「それは……」
私の知らないところで、奏くんと五十嵐さんが遊んでたのが嫌だったなんて、そんな勝手なこと言えない……
だって、私は奏くんの彼女でもないんだもん。彼が誰と遊ぼうと彼の自由なわけで……
女の子と遊ばないでなんて言えない。
「俺は、今から茉莉絵のいうこと全てを受け入れるよ。何を言ってもいい。引かないし怒らないと誓う。お前が泣いた理由を知らずに帰る方が気持ち悪くて無理だ」
「奏くん……」
本当に引かないかな……とっても勝手なこと言うけどいいのかな……
「っと、その前に、今日のおやつ渡しとくか。五十嵐がくるっていってたから、出せずにいたんだよな。茉莉絵の分しかなかったから」
「え? 今日もお母さん作ってくれたんだね。ありがとう。オレンジゼリー美味しそうだね」
「あ、いや、その……今日は母さんじゃないんだ。作ったの」
「え? じゃ、誰が……え? まさか?」
そういうと、奏くんは照れたように、顔を背けながら「俺が作ったんだ」と言った。
お菓子作りなんてしないっていってたのに……私のために作ってくれたの?
「嬉しい……」
「お前なー、また泣くのか?」
「だって……嬉しい……」
一度泣いてしまうと、すぐに涙が出てしまう。奏くんを困らせたくないのに……
「はいはい、泣くほど喜んでくれて、作った甲斐があるよ。とはいっても、ゼリーなんて簡単だからな」
「簡単でもなんでも嬉しいよ」
「よしっ、とりあえず食うか。落ち着いてから話聞くから」
「うん……」
言葉を交わすことなく静かにゼリーを食べながら、クッキーたちが遊んでいるのを眺めていると、次第に気持ちも落ち着いてきた。
こんなことくらいで泣くなんて情緒不安定すぎるでしょ私。
女友達と遊ぶことだってあるよね……
「奏くん……本当に引かない?」
「引かない」
「結構自分勝手なこと言っちゃうかも」
「いいって」
「日曜日……五十嵐さんと遊んだの?」
「は? あー……それか……」
気を悪くさせちゃったかなと心配していると、彼は「なんだそんなこと気にしてたのか」と言った。
そんなこと……そうだよね。別に大したことじゃないよね。私が過剰に反応しすぎなんだよね……
「ほら、また落ち込まない。別に五十嵐と遊ぶ約束してたわけじゃないんだけどな」
「そうなの?」
「俺の友達……透っていうんだけど。透が新しいゲーム買ったから一緒にやろうっていうから、家に行ったんだよ。そしたら、五十嵐もいたんだよなー。あいつがいるって知ってたら行かなかったな」
「そうだったんだ……」
日曜日に遊ぶほど仲が良いのかと思ってしまっていたから、良かった……
私……勘違いで号泣しちゃったの⁉︎ 恥ずかし過ぎる……
奏くんに呆れられちゃったかな。
「そんなに泣くほど嫌だったのか……?」
私の赤くなった目元を、親指で優しく撫でながら問う彼から目が離せない。
「泣くほど……嫌だったみたい。こんな風に泣くつもりなんてなかったのに、ごめんね」
「いや、泣こうと思って泣くやつなんていないだろ。不可抗力だな」
奏くん……泣こうと思って泣く人もいるんだよ。簡単に騙されちゃいそうで心配になる。
「他に気になることは? この際だから、全部言ってみ?」
「え? えっと、それじゃ……奏くんモテるでしょ? 告白とかされるよね?」
なんか、めっちゃ嫌な聞き方しちゃったかも。
面倒くさい女だって思われたかな……聞かない方が良かったかな。
「あー……、モテるって自分で言うとナルシストみたいで嫌なんだけど……まぁ、告白されたことは何回か……」
「やっぱり……」
その中に五十嵐さんみたいにかわいい子いたりしたんじゃないのかな。
付き合おうかなって悩んだ子いなかったのかな。
あ、また良く無い方に考えちゃう。
「まぁ、誰とも付き合うつもり無いから全部断ってるけどな」
誰とも付き合う気がない……
誰とも……それは……私ともってことだよね。
奏くんと付き合えるかもしれないって思ってた自分が馬鹿みたい。
「待てって言ってるだろ? って、お前……」
あぁ、見られたくなかったのに、涙が止まらない。
二人は休みの日に一緒に遊ぶような仲だったの?
私と週末ここで過ごしていたことを、奏くんはどう思ってたんだろう……
ただ愛犬同士を遊ばせているついでに私とも話してるだけだったのかな……
どんどん良くない方向に思考がいってしまう。
「ちょっと、二人ともしゃがみ込んでどうしたの?」
やだ……五十嵐さんに見られたくない。
クッキーに抱きつき、顔を埋めて隠すと、慰めるように鼻を擦り付けてきてくれた。
本当に貴方は優しい子ね……
「悪いけど、帰ってくれるか? 茉莉絵と二人で話があるから」
「え……でも、来たばっかりだし……」
「悪いんだけどさ。もしあれなら、俺たちが移動するよ」
「……分かった。今日は帰るね。佐伯くん、また学校でね」
「おう……」
私のせいで、五十嵐さんを帰してしまった。
こんな風に泣くつもりなんてなかったのに……
「ほら、どうした? そんなに泣いて。目が腫れるぞ?」
そう言いながら、ハンカチで涙を拭ってくれた。
その優しさに、余計に涙が止まらなくなり、ポロポロと溢れていった。
「うわっ、お前っ、泣きすぎだっての。仕方ねーな」
言葉では仕方ないと言いつつ、優しく抱きしめて、背を撫でてくれた。
彼はお兄ちゃんだから、妹をあやしてる感じなのかな。
「クッキー、ちょっと茉莉絵と話があるから、獅子丸と遊んでてな?」
「わふっ!」
クッキーは、元気よく返事をすると、獅子丸と掛けて行った。それでも、私が気になるのか何度か振り返り、様子を伺っているようだった。
クッキーにまで心配かけちゃった……だめな飼い主だね。
「少しは落ち着いたか?」
「うん……ごめんね」
「いや、まぁ……驚いたけど。何が泣くほど辛かった?」
「それは……」
私の知らないところで、奏くんと五十嵐さんが遊んでたのが嫌だったなんて、そんな勝手なこと言えない……
だって、私は奏くんの彼女でもないんだもん。彼が誰と遊ぼうと彼の自由なわけで……
女の子と遊ばないでなんて言えない。
「俺は、今から茉莉絵のいうこと全てを受け入れるよ。何を言ってもいい。引かないし怒らないと誓う。お前が泣いた理由を知らずに帰る方が気持ち悪くて無理だ」
「奏くん……」
本当に引かないかな……とっても勝手なこと言うけどいいのかな……
「っと、その前に、今日のおやつ渡しとくか。五十嵐がくるっていってたから、出せずにいたんだよな。茉莉絵の分しかなかったから」
「え? 今日もお母さん作ってくれたんだね。ありがとう。オレンジゼリー美味しそうだね」
「あ、いや、その……今日は母さんじゃないんだ。作ったの」
「え? じゃ、誰が……え? まさか?」
そういうと、奏くんは照れたように、顔を背けながら「俺が作ったんだ」と言った。
お菓子作りなんてしないっていってたのに……私のために作ってくれたの?
「嬉しい……」
「お前なー、また泣くのか?」
「だって……嬉しい……」
一度泣いてしまうと、すぐに涙が出てしまう。奏くんを困らせたくないのに……
「はいはい、泣くほど喜んでくれて、作った甲斐があるよ。とはいっても、ゼリーなんて簡単だからな」
「簡単でもなんでも嬉しいよ」
「よしっ、とりあえず食うか。落ち着いてから話聞くから」
「うん……」
言葉を交わすことなく静かにゼリーを食べながら、クッキーたちが遊んでいるのを眺めていると、次第に気持ちも落ち着いてきた。
こんなことくらいで泣くなんて情緒不安定すぎるでしょ私。
女友達と遊ぶことだってあるよね……
「奏くん……本当に引かない?」
「引かない」
「結構自分勝手なこと言っちゃうかも」
「いいって」
「日曜日……五十嵐さんと遊んだの?」
「は? あー……それか……」
気を悪くさせちゃったかなと心配していると、彼は「なんだそんなこと気にしてたのか」と言った。
そんなこと……そうだよね。別に大したことじゃないよね。私が過剰に反応しすぎなんだよね……
「ほら、また落ち込まない。別に五十嵐と遊ぶ約束してたわけじゃないんだけどな」
「そうなの?」
「俺の友達……透っていうんだけど。透が新しいゲーム買ったから一緒にやろうっていうから、家に行ったんだよ。そしたら、五十嵐もいたんだよなー。あいつがいるって知ってたら行かなかったな」
「そうだったんだ……」
日曜日に遊ぶほど仲が良いのかと思ってしまっていたから、良かった……
私……勘違いで号泣しちゃったの⁉︎ 恥ずかし過ぎる……
奏くんに呆れられちゃったかな。
「そんなに泣くほど嫌だったのか……?」
私の赤くなった目元を、親指で優しく撫でながら問う彼から目が離せない。
「泣くほど……嫌だったみたい。こんな風に泣くつもりなんてなかったのに、ごめんね」
「いや、泣こうと思って泣くやつなんていないだろ。不可抗力だな」
奏くん……泣こうと思って泣く人もいるんだよ。簡単に騙されちゃいそうで心配になる。
「他に気になることは? この際だから、全部言ってみ?」
「え? えっと、それじゃ……奏くんモテるでしょ? 告白とかされるよね?」
なんか、めっちゃ嫌な聞き方しちゃったかも。
面倒くさい女だって思われたかな……聞かない方が良かったかな。
「あー……、モテるって自分で言うとナルシストみたいで嫌なんだけど……まぁ、告白されたことは何回か……」
「やっぱり……」
その中に五十嵐さんみたいにかわいい子いたりしたんじゃないのかな。
付き合おうかなって悩んだ子いなかったのかな。
あ、また良く無い方に考えちゃう。
「まぁ、誰とも付き合うつもり無いから全部断ってるけどな」
誰とも付き合う気がない……
誰とも……それは……私ともってことだよね。
奏くんと付き合えるかもしれないって思ってた自分が馬鹿みたい。
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