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二章 嫉妬

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 家に帰り、早速お母さんに浴衣の着付けをお願いする。

 「お母さん、夏休みにお祭りあるでしょ? 浴衣きて行きたいなって思ってるだけど、着せてくれる?」

 「いいわよ。お母さんもお父さんと浴衣来てお祭り行こうかしら。茉莉絵ちゃんは、奏くんと行くの?」

 「まだ誘ってないんだけど、そうなったらいいな」

 断られたら……お母さんたちについて行こうかな。
 メッセージ送るか悩んだけど、次会った時に直接誘おう。

 あ、奏くんは夏期講習とかあるのかな。
 私は塾に行ってないから、そういうのないんだけど……

 夏期講習だけ行くって場合もあるかもしれないし、ちゃんと確認してから誘おう。
 
 「あっ、茉莉絵ちゃん、明日三者面談よね?」

 「うん」

 「志望校は、桜ヶ丘高校で変わってない?」

 「うん。そのつもりでいるよ」

 「じゃ、明日はその方向で先生とお話ししましょうね」

 「はーい」

 三者面談か。なんか本当に受験生なんだなって感じがしてきた。
 今も過去問解いたり勉強の時間を増やしているから、受験生っぽいと言えばそうなんだけど、なんかまだふわふわしてるというか……

 まだ7月だし、追い込まれた感じがしないからかな。
 年末になれば、焦りが出てきたりするのかな。

 翌日の三者面談では、先生から「クラスの子達と仲良く過ごしていますし、テストの点数もいつも高いです。しっかり勉強しているというのが伝わってきますね。志望校の変更などの必要はなさそうですね。あとは気を緩めず続けていけば、大丈夫だと思います」と言ってもらえた。

 勉強だけは毎日コツコツとやっているから、学校のテストであれば、いつも九十点台だった。
 あとは、本番でちゃんとやれるかどうか。
 少しの音で、集中が切れてるようではだめだと思って、最近は、鉛筆が転がる音や、床に落ちる音などスマホで流しながら勉強している。

 静かな環境で勉強すると、ちょっとの音が気になって集中できないって言うし、試験対策になるかなって思って。
 奏くんは、どんな試験対策してるのかな。
 って、またすぐ奏くんのこと考えちゃう!
 
 さてと、切り替えて、今日も0時まで勉強頑張りますか。

 ◆ ◆ ◆

 土曜日になり、公園に向かうとまだ五十嵐さんは来ていなく、奏くんと獅子丸くんだけだった。
 良かった。五十嵐さんが来る前に、お祭りに誘わなくちゃ。

 「奏くん、獅子丸くんおはよう」

 「おー、おはよう」

 「奏くん、いきなりだけど、夏期講習とかって行く予定ある?」

 まず、夏休み忙しいかどうか確認しなくちゃね。

 「あぁ、8月10日から夏期講習の予定があるけど、それがどうかした?」

 やったっ! お祭りの日と被ってない!

 「あのね、8月8日って空いてる? 良かったら、そこのお祭りに一緒に行きたいなってお誘いなんだけど……」

 「あぁ、この空き地で毎年やってるやつか」

 「うん」

 「その日だったら、特に予定ないから……行くか」

 「やった! 私は浴衣着て行こうと思ってるんだけど、奏くんも……着る? もちろん好きな格好でいいんだけど……奏くんの浴衣姿みてみたいな」

 「浴衣……小さい時に着ただけだから、あるかな。まぁ、あったら浴衣で行くよ」

 「本当⁉︎  楽しみー!」

 「あったら、だからな」
 
 「うんっ!」

 これは、浴衣デートだよね。もう今から夏休みがめっちゃ楽しみ!

 そういえば、今日五十嵐さんが来るって奏くん知ってるのかな?
 奏くんが帰ったあとに五十嵐さんと話したから、もしかしたら知らないかもしれない。

 「奏くん、今日……もしかしたら五十嵐さん来るかもしれないんだよね」

 「は……? なんで?」

 「えっと、奏くんと別れた後に、少し五十嵐さんと話してね。従姉妹のわんちゃんを散歩に連れてくるとか言ってたかな」

 「はぁ、マジかよ……」

 俯きため息を吐く奏くんは、心底嫌がってるようだったので、五十嵐さんとの仲を心配しなくても良さそうだなとホッとした。
 あぁ、またこんなこと考えてる。
 恋愛すると自分の嫌なところが見えてくるものなのかな。

 いつも二時間ほど公園で遊んでいる。
 到着してすでに一時間経ったが、まだ五十嵐さんは来ていない。

 あれ……今日は来ないのかな。
 それならその方が嬉しいけど……

 そう思っていると、コーギーを連れた五十嵐さんが現れた。
 
 「佐伯くん、相沢さん、おはよう」

 「……はよ」

 「五十嵐さん、おはよう」

 「今日も佐伯くんと過ごせて嬉しいな。この子はラッキーっていうの。仲良くしてね」

 クッキーと獅子丸くんは、新しく現れたラッキーに駆け寄り、ボールを前に転がしてあげていた。
 二人とも好奇心旺盛で、知らないわんちゃんだとしても怖がることなく近寄って言ってくれるので、すぐ仲良くなれそうだなと思った。

 私と五十嵐さんの関係はクッキーたちには関係ないことだからね。あなた達は楽しく遊んで欲しいな。
 
 「あ、佐伯くん、明日もゲームするの? この前の日曜日楽しかったから、明日も一緒に遊べたら嬉しいなって思ったんだけど」

 え……?
 先週の日曜日は、奏くん用があるからいけないって言ってたの……五十嵐さんと遊ぶ予定が入ったからなの?
 うそ……やだ……どうしよう。泣きそう。

 「いや、明日は……」

 「ごめんっ、私今日はもう帰るね」

 奏くんの話を遮って、急いでクッキーの元へ向かおうとすると、奏くんに腕を掴まれてしまった。

 「待てよ。急にどうした?」

 やばい、今は振り向けない。
 奏くんに背を向けたまま、そっと掴んでいる手を下ろす。

 「またね……」

 そう一言溢し、クッキーの元へ向かった。

 
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