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二章 嫉妬
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もうそろそろ帰らないとだ。
奏くんは明日も来れるかな……?
「奏くん、明日も……」
「あっ、佐伯くんじゃん! こんなところで何してるの?」
奏くんに話しかけたタイミングで、別の声が後ろから聞こえた。
振り返ると、奏くんの同級生と思わしき女の子が立っていた。
背が私より10cmくらい低く華奢な彼女は、ボブカットが似合っていて、とても可愛かった。
小さくて羨ましい……
「あー……、犬の散歩してるだけ」
「どっちが佐伯くんの犬なの?」
「ちっこい方」
「可愛いー! 佐伯くん家って子犬飼ってたんだね」
「……」
奏くんと女の子が話してるのをなんとも言えないモヤモヤした気持ちで眺めていたけど、奏くんがあまりにも彼女に対してそっけない態度だったので、ホッとしてしまった。
こんな風に思うのって性格悪いかな……
「じゃ、そろそろ帰るな。獅子丸帰るぞー」
「うん、またね」
明日も会えるか聞こうと思ってたのに聞きそびれちゃった。
でも、明日も会える? って聞いたら、この子も明日来ちゃいそうな気がして言えなかった。
「えっ⁉︎ もう帰っちゃうの? 折角会えたのに」
「帰って勉強する時間なんで。じゃ」
「また学校でねー!」
奏くんと別れ、私たちも帰ろうかとクッキーにリードを取り付けていると、先ほどの女の子が話しかけてきた。
「ねぇ、貴方、佐伯くんの彼女だったりする? 佐伯くんに彼女がいるなんて聞いたことないんだけど」
「え? いや、私はただ愛犬同士が仲良くしてるから、ここで遊ばせてるだけで、彼女では……ないです」
彼女って言えたら良かったけど、実際の私たちは……なんなのだろう。
友達なのかな? 考えてみれば、私、奏くんのことあまり知らないかもしれない。
親の転勤で引っ越してきた男の子。
同じ年で、ミニチュアピンシャーの仔犬を飼っていて、ピアノが弾ける。
お母さんが料理上手で妹さんがいる。
頭が良くて志望校が同じ。
こんなことしか知らないんだ……
「犬を口実にして、うまいこと佐伯くんに取り入ってるんだ。綺麗な顔してずるいことするんだね」
「ずるいこと……」
「だって、佐伯くん、学校で全然女子と話さないのに、こんなところで貴方と話してるなんて……。たまたま犬飼ってただけで、ずるいな」
「……」
確かにクッキーがきっかけで奏くんと毎週末会うことになったから、否定は出来ない。
でも、学校で奏くんが女子と会話しないのは関係ないのでは……
「ねぇ、いつも土曜日はこの時間に会ってるの? 私のいとこが近くに住んでて、犬飼ってるんだよね。私もここに連れてこようかな」
え、やだ……週末の楽しみが、邪魔されてしまう。
でも、違うと言っても彼女は確認しにきそうな気がする……
「うん……」
「やった! じゃ、来週の土曜日、私も来るからよろしくね。私は、五十嵐 美咲っていうの。貴方は?」
「相沢 茉莉絵です」
「相沢さんね。じゃ、また来週ー」
そういうと、彼女は用が済んだとばかりに帰って行った。
あー、もうどうしよう。
でも、彼女は土日じゃなくて、土曜日だけだと思っている。
明日は邪魔されずに過ごすことが出来るけど……はぁ、毎週土曜日は邪魔が入ると思うとため息しか出ない。
私にとって五十嵐さんは邪魔でしかないけど……彼女にとっては、奏くんにアピールするチャンスなんだよね。
やっぱり奏くん学校でモテるんだなー……そりゃそうだよね。
学校での奏くんはどんな感じなんだろう。
はぁ、なんで同じ学校じゃないんだろう。
五十嵐さんは、学校での奏くんを知ってるんだよね。いいな……
明日、奏くんに学校のこととか聞いてみようかなと思っていると、夕方頃に『明日は用ができたから行けなくなった』とメッセージが届いた。
夕食を食べ終え、リビングでクッキーとまったり過ごしていたところだったので、思わず大きなため息が出てしまった。
「あら、茉莉絵ちゃん、どうしたの?」
「え、いや……明日は行けないって奏くんからメッセージが来ただけ」
「それは残念ね。でも、今日はその連絡が来る前から元気がなかったみたいだけど、どうしたの?」
あー……五十嵐さんと会ってから少し凹んでたから、お母さんにはバレちゃったか。
「今日、公園で奏くんのクラスメイトの女の子にあったの」
あまり愚痴を言いたくないんだけど、今日のことは自分の中で留めておくよりも話した方がスッキリしそうだと思い、お母さんに話すことにした。
「まぁ……」
「その子、奏くんのこと好きみたいでね。私と奏くんが毎週土曜日に公園で会ってるって知ると、来週から従姉妹に犬をかりて来るっていうの。その時に、クッキーを口実にして、奏くんに取り入るなんてずるいやり方するねって言われちゃったんだよね」
クッキーをダシにしてるみたいな言い方されたの結構きたなぁ。
まるでクッキーを大事にしてないみたいに言われた気がして……
「それで、落ち込んでいたのね。お母さんは別にずるくないと思うけどね。クッキーそっちのけで奏くんに夢中ってなっちゃうとそれはどうなの? って思うけど。二人ともちゃんと愛犬と遊んであげてるし、犬の散歩のついでに会ってるが正しいんじゃないかなって思うよ」
「そうなのかな」
「もう、そんなことでウジウジ悩まないの。その子からしたら、茉莉絵ちゃんライバルになるんだから、どうしたって嫌な言い方してくるわよ。気にしないの」
ライバル……そうだよね。
彼女は私のライバルだ。週末しか会えない私とは違い、毎日学校で会えるんだよね……
手強そう……
「うん……あとね、その子……私よりも10cmくらい小さいの。男の子って小さい子の方が好きっていうよね」
「それは……人それぞれ好みが……」
「やっぱりお母さんも小さい子が可愛いって思ってるんだっ!」
「えっ! 違うわよ! お母さんだって170cmあるのよ? モデルっぽくて格好良いって言われてたんだから!」
「私は格好良いより、可愛いって言われたい」
「茉莉絵ちゃんは十分可愛いじゃない」
「でも……大きい。奏くんより身長高くなっちゃったらどうしよう!」
「それは……奏くんの成長期に期待しようね」
「そんなぁー」
これ以上身長が伸びない方法とかあるのかな……
まだ身長は伸び続けていて、高校に入る頃には170cmに行ってしまいそう……
奏くんは明日も来れるかな……?
「奏くん、明日も……」
「あっ、佐伯くんじゃん! こんなところで何してるの?」
奏くんに話しかけたタイミングで、別の声が後ろから聞こえた。
振り返ると、奏くんの同級生と思わしき女の子が立っていた。
背が私より10cmくらい低く華奢な彼女は、ボブカットが似合っていて、とても可愛かった。
小さくて羨ましい……
「あー……、犬の散歩してるだけ」
「どっちが佐伯くんの犬なの?」
「ちっこい方」
「可愛いー! 佐伯くん家って子犬飼ってたんだね」
「……」
奏くんと女の子が話してるのをなんとも言えないモヤモヤした気持ちで眺めていたけど、奏くんがあまりにも彼女に対してそっけない態度だったので、ホッとしてしまった。
こんな風に思うのって性格悪いかな……
「じゃ、そろそろ帰るな。獅子丸帰るぞー」
「うん、またね」
明日も会えるか聞こうと思ってたのに聞きそびれちゃった。
でも、明日も会える? って聞いたら、この子も明日来ちゃいそうな気がして言えなかった。
「えっ⁉︎ もう帰っちゃうの? 折角会えたのに」
「帰って勉強する時間なんで。じゃ」
「また学校でねー!」
奏くんと別れ、私たちも帰ろうかとクッキーにリードを取り付けていると、先ほどの女の子が話しかけてきた。
「ねぇ、貴方、佐伯くんの彼女だったりする? 佐伯くんに彼女がいるなんて聞いたことないんだけど」
「え? いや、私はただ愛犬同士が仲良くしてるから、ここで遊ばせてるだけで、彼女では……ないです」
彼女って言えたら良かったけど、実際の私たちは……なんなのだろう。
友達なのかな? 考えてみれば、私、奏くんのことあまり知らないかもしれない。
親の転勤で引っ越してきた男の子。
同じ年で、ミニチュアピンシャーの仔犬を飼っていて、ピアノが弾ける。
お母さんが料理上手で妹さんがいる。
頭が良くて志望校が同じ。
こんなことしか知らないんだ……
「犬を口実にして、うまいこと佐伯くんに取り入ってるんだ。綺麗な顔してずるいことするんだね」
「ずるいこと……」
「だって、佐伯くん、学校で全然女子と話さないのに、こんなところで貴方と話してるなんて……。たまたま犬飼ってただけで、ずるいな」
「……」
確かにクッキーがきっかけで奏くんと毎週末会うことになったから、否定は出来ない。
でも、学校で奏くんが女子と会話しないのは関係ないのでは……
「ねぇ、いつも土曜日はこの時間に会ってるの? 私のいとこが近くに住んでて、犬飼ってるんだよね。私もここに連れてこようかな」
え、やだ……週末の楽しみが、邪魔されてしまう。
でも、違うと言っても彼女は確認しにきそうな気がする……
「うん……」
「やった! じゃ、来週の土曜日、私も来るからよろしくね。私は、五十嵐 美咲っていうの。貴方は?」
「相沢 茉莉絵です」
「相沢さんね。じゃ、また来週ー」
そういうと、彼女は用が済んだとばかりに帰って行った。
あー、もうどうしよう。
でも、彼女は土日じゃなくて、土曜日だけだと思っている。
明日は邪魔されずに過ごすことが出来るけど……はぁ、毎週土曜日は邪魔が入ると思うとため息しか出ない。
私にとって五十嵐さんは邪魔でしかないけど……彼女にとっては、奏くんにアピールするチャンスなんだよね。
やっぱり奏くん学校でモテるんだなー……そりゃそうだよね。
学校での奏くんはどんな感じなんだろう。
はぁ、なんで同じ学校じゃないんだろう。
五十嵐さんは、学校での奏くんを知ってるんだよね。いいな……
明日、奏くんに学校のこととか聞いてみようかなと思っていると、夕方頃に『明日は用ができたから行けなくなった』とメッセージが届いた。
夕食を食べ終え、リビングでクッキーとまったり過ごしていたところだったので、思わず大きなため息が出てしまった。
「あら、茉莉絵ちゃん、どうしたの?」
「え、いや……明日は行けないって奏くんからメッセージが来ただけ」
「それは残念ね。でも、今日はその連絡が来る前から元気がなかったみたいだけど、どうしたの?」
あー……五十嵐さんと会ってから少し凹んでたから、お母さんにはバレちゃったか。
「今日、公園で奏くんのクラスメイトの女の子にあったの」
あまり愚痴を言いたくないんだけど、今日のことは自分の中で留めておくよりも話した方がスッキリしそうだと思い、お母さんに話すことにした。
「まぁ……」
「その子、奏くんのこと好きみたいでね。私と奏くんが毎週土曜日に公園で会ってるって知ると、来週から従姉妹に犬をかりて来るっていうの。その時に、クッキーを口実にして、奏くんに取り入るなんてずるいやり方するねって言われちゃったんだよね」
クッキーをダシにしてるみたいな言い方されたの結構きたなぁ。
まるでクッキーを大事にしてないみたいに言われた気がして……
「それで、落ち込んでいたのね。お母さんは別にずるくないと思うけどね。クッキーそっちのけで奏くんに夢中ってなっちゃうとそれはどうなの? って思うけど。二人ともちゃんと愛犬と遊んであげてるし、犬の散歩のついでに会ってるが正しいんじゃないかなって思うよ」
「そうなのかな」
「もう、そんなことでウジウジ悩まないの。その子からしたら、茉莉絵ちゃんライバルになるんだから、どうしたって嫌な言い方してくるわよ。気にしないの」
ライバル……そうだよね。
彼女は私のライバルだ。週末しか会えない私とは違い、毎日学校で会えるんだよね……
手強そう……
「うん……あとね、その子……私よりも10cmくらい小さいの。男の子って小さい子の方が好きっていうよね」
「それは……人それぞれ好みが……」
「やっぱりお母さんも小さい子が可愛いって思ってるんだっ!」
「えっ! 違うわよ! お母さんだって170cmあるのよ? モデルっぽくて格好良いって言われてたんだから!」
「私は格好良いより、可愛いって言われたい」
「茉莉絵ちゃんは十分可愛いじゃない」
「でも……大きい。奏くんより身長高くなっちゃったらどうしよう!」
「それは……奏くんの成長期に期待しようね」
「そんなぁー」
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