12 / 46
一章 初恋
---奏視点②---
しおりを挟む
茉莉絵とIDを交換した日、ちょうど勉強を終えたタイミングでメッセージが届いた。
「お疲れ様。良い夢を」
たったこれだけ。返事をしなくても良い簡潔にまとめられたメッセージ。
返事なんて期待してないんだろうな。
「おやすみ」
俺も一言返した。
勉強した後に、お疲れ様ってメッセージ届くの地味に嬉しいもんだな。
それから、毎日茉莉絵から短いメッセージが届くようになった。
それが三日も続くとそれが当たり前になってしまって、いつもより数分遅いとまだか?と待ってしまうようになった。
切りが悪くて一問解き終わってからとかで、遅くなってるのかなとか思ったりして……
そう思うなら、俺から送ればいいんだろうけど……なんとなく茉莉絵からのメッセージを待ってしまっている。
甘えすぎか?
スマホの新着メッセージの到着を告げる音が鳴り、茉莉絵かなとスマホの画面を見ると……
「今何してるの?」
はぁ、クラスの女子か。
クラスのグループに参加してるから、女子からの個別のメッセージは基本的にスルーしている。
こういうメッセージ送ってくる女子ってなんなの?
マジでうざいんだけど。
俺が何してたっていいだろ。大体受験生なんだよ。勉強してるって想像できないかな。
彼女からのメッセージは未読スルーし、俺が待ってるのはお前からのメッセージじゃないんだけどなと思ってしまう。
すると、またスマホが鳴る。次こそ、茉莉絵か?
そう思って、スマホの画面を見ると、いつもと同じように「お疲れ様」の文字が。
イラついた気持ちが、このメッセージひとつで綻ぶ。
茉莉絵からのこの短いメッセージが、勉強頑張った自分への一番の労いになる。
余計なことは書かず、メッセージのやり取りが不要な短いメッセージ。
俺のこと考えてくれてるんだろうなと思える。良い子だよな。
◆ ◆ ◆
朝起きて、リビングに向かうと母さんが朝食の準備をしながら声をかけてきた。
「奏、残念だったね」
「何が?」
「明日から梅雨入りだって。明日は、茉莉絵ちゃんとデートの日でしょ?」
「デ、デートじゃねーよ。獅子丸の散歩に行ってるだけだろ」
「またまたー」
これは逃げるに限る。急いで洗面所に向かい顔を洗う。
はぁ、梅雨入りか。
明日、会えないのか。運が悪ければ、来週末も雨で会えない可能性も……マジかよ。
「獅子丸、楽しみにしてたところ悪いな。明日は雨だから公園いけないぞ」
「くぅん?」
分かるわけないよなー。
梅雨入りしたばかりなのに、早くあけてくれと願う。
学校の女子たちは、うるさくて好きになれないんだけど、何故か茉莉絵は話しやすい。
お互いに犬を飼ってるっていう共通点があるからかもしれない。
茉莉絵は、明るくて笑顔の可愛い子だと思う。
良く笑うから、こちらも釣られて笑顔になってしまう。
甲高い声も出さないし、声音も心地良い。なんとなく歌上手そうだなと思う。
茉莉絵の笑顔を思い出し、またため息を吐く。
はぁ、明日雨か……
◆ ◆ ◆
翌日、目が覚めて、すぐに雨音が聞こえ、窓の外を見なくても今日は雨なのだということが分かった。
「天気予報外れろよな……」
体を起こすと、隣で寝ていた獅子丸もむくりと顔をあげる。
寝床は別に用意してあるのに、何故かこいつは俺のベッドで寝るようになってしまった。
初めは、小さいから踏み潰さないか心配で中々寝れなかったけど、それも慣れるもんで、今では隣で寝るのが当たり前になった。
「獅子丸。見えるか? 雨が降ってるから今日はお散歩行けないからな?」
獅子丸を抱き上げ、窓の外を見せると、悲しそうに鳴いた。
そんな声出すなよ。俺だって残念だって思ってるんだから。
「はいはい、今日は家で遊ぼうな?」
「くぅん」
元気のない返事をする獅子丸を抱き、リビングへと向かい、ソファーに腰掛ける。
雨が降ってるから、行けないのは当然のことすぎて、連絡する意味がない。
だけど……ちょっと俺からメッセージ送ってみるか。
『今日雨で残念だったな。獅子丸もクッキーと遊べなくて残念そうにしてるよ』
素っ気なすぎたかな……
いや、あからさまに茉莉絵に会えなくて残念っていうのも違うだろ。
なんて返事が来るかなと待っていると……
『私も奏くんに会えなくて残念だよ。クッキーも窓の外眺めて残念がってるよー。来週は晴れてくれるといいな。クッキーと獅子丸くんを思いっきり遊ばせてあげたいね』
マジか……
俺に会えなくてか……
いや、これなんて返せば……俺もとか言っとく? いや、ないない。
『そうだな』
悩みに悩んで送ったメッセージは、この一言だった。
マジで、俺‼︎ もっと他になかったのかよ‼︎
茉莉絵からきたメッセージを読み返し、顔がにやけてしまう。
やばっ。クッションに顔を押し付けて、照れた顔を見られないように隠していると、キッチンから母さんの声が聞こえた。
「ちょっとー、牛乳もうこれしかないの⁉︎ 奏最近牛乳飲み過ぎじゃないのー?」
「……」
いや、まぁ……仕方なくね?
最近は、茉莉絵に身長抜かれないように、牛乳の量を増やしたり、関節柔らかい方が身長伸びるかなとか悪あがきをしたりしている。
流石に……茉莉絵に身長抜かれたら凹むな……
「お疲れ様。良い夢を」
たったこれだけ。返事をしなくても良い簡潔にまとめられたメッセージ。
返事なんて期待してないんだろうな。
「おやすみ」
俺も一言返した。
勉強した後に、お疲れ様ってメッセージ届くの地味に嬉しいもんだな。
それから、毎日茉莉絵から短いメッセージが届くようになった。
それが三日も続くとそれが当たり前になってしまって、いつもより数分遅いとまだか?と待ってしまうようになった。
切りが悪くて一問解き終わってからとかで、遅くなってるのかなとか思ったりして……
そう思うなら、俺から送ればいいんだろうけど……なんとなく茉莉絵からのメッセージを待ってしまっている。
甘えすぎか?
スマホの新着メッセージの到着を告げる音が鳴り、茉莉絵かなとスマホの画面を見ると……
「今何してるの?」
はぁ、クラスの女子か。
クラスのグループに参加してるから、女子からの個別のメッセージは基本的にスルーしている。
こういうメッセージ送ってくる女子ってなんなの?
マジでうざいんだけど。
俺が何してたっていいだろ。大体受験生なんだよ。勉強してるって想像できないかな。
彼女からのメッセージは未読スルーし、俺が待ってるのはお前からのメッセージじゃないんだけどなと思ってしまう。
すると、またスマホが鳴る。次こそ、茉莉絵か?
そう思って、スマホの画面を見ると、いつもと同じように「お疲れ様」の文字が。
イラついた気持ちが、このメッセージひとつで綻ぶ。
茉莉絵からのこの短いメッセージが、勉強頑張った自分への一番の労いになる。
余計なことは書かず、メッセージのやり取りが不要な短いメッセージ。
俺のこと考えてくれてるんだろうなと思える。良い子だよな。
◆ ◆ ◆
朝起きて、リビングに向かうと母さんが朝食の準備をしながら声をかけてきた。
「奏、残念だったね」
「何が?」
「明日から梅雨入りだって。明日は、茉莉絵ちゃんとデートの日でしょ?」
「デ、デートじゃねーよ。獅子丸の散歩に行ってるだけだろ」
「またまたー」
これは逃げるに限る。急いで洗面所に向かい顔を洗う。
はぁ、梅雨入りか。
明日、会えないのか。運が悪ければ、来週末も雨で会えない可能性も……マジかよ。
「獅子丸、楽しみにしてたところ悪いな。明日は雨だから公園いけないぞ」
「くぅん?」
分かるわけないよなー。
梅雨入りしたばかりなのに、早くあけてくれと願う。
学校の女子たちは、うるさくて好きになれないんだけど、何故か茉莉絵は話しやすい。
お互いに犬を飼ってるっていう共通点があるからかもしれない。
茉莉絵は、明るくて笑顔の可愛い子だと思う。
良く笑うから、こちらも釣られて笑顔になってしまう。
甲高い声も出さないし、声音も心地良い。なんとなく歌上手そうだなと思う。
茉莉絵の笑顔を思い出し、またため息を吐く。
はぁ、明日雨か……
◆ ◆ ◆
翌日、目が覚めて、すぐに雨音が聞こえ、窓の外を見なくても今日は雨なのだということが分かった。
「天気予報外れろよな……」
体を起こすと、隣で寝ていた獅子丸もむくりと顔をあげる。
寝床は別に用意してあるのに、何故かこいつは俺のベッドで寝るようになってしまった。
初めは、小さいから踏み潰さないか心配で中々寝れなかったけど、それも慣れるもんで、今では隣で寝るのが当たり前になった。
「獅子丸。見えるか? 雨が降ってるから今日はお散歩行けないからな?」
獅子丸を抱き上げ、窓の外を見せると、悲しそうに鳴いた。
そんな声出すなよ。俺だって残念だって思ってるんだから。
「はいはい、今日は家で遊ぼうな?」
「くぅん」
元気のない返事をする獅子丸を抱き、リビングへと向かい、ソファーに腰掛ける。
雨が降ってるから、行けないのは当然のことすぎて、連絡する意味がない。
だけど……ちょっと俺からメッセージ送ってみるか。
『今日雨で残念だったな。獅子丸もクッキーと遊べなくて残念そうにしてるよ』
素っ気なすぎたかな……
いや、あからさまに茉莉絵に会えなくて残念っていうのも違うだろ。
なんて返事が来るかなと待っていると……
『私も奏くんに会えなくて残念だよ。クッキーも窓の外眺めて残念がってるよー。来週は晴れてくれるといいな。クッキーと獅子丸くんを思いっきり遊ばせてあげたいね』
マジか……
俺に会えなくてか……
いや、これなんて返せば……俺もとか言っとく? いや、ないない。
『そうだな』
悩みに悩んで送ったメッセージは、この一言だった。
マジで、俺‼︎ もっと他になかったのかよ‼︎
茉莉絵からきたメッセージを読み返し、顔がにやけてしまう。
やばっ。クッションに顔を押し付けて、照れた顔を見られないように隠していると、キッチンから母さんの声が聞こえた。
「ちょっとー、牛乳もうこれしかないの⁉︎ 奏最近牛乳飲み過ぎじゃないのー?」
「……」
いや、まぁ……仕方なくね?
最近は、茉莉絵に身長抜かれないように、牛乳の量を増やしたり、関節柔らかい方が身長伸びるかなとか悪あがきをしたりしている。
流石に……茉莉絵に身長抜かれたら凹むな……
32
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
夏の出来事
ケンナンバワン
青春
幼馴染の三人が夏休みに美由のおばあさんの家に行き観光をする。花火を見た帰りにバケトンと呼ばれるトンネルを通る。その時車内灯が点滅して美由が驚く。その時は何事もなく過ぎるが夏休みが終わり二学期が始まっても美由が来ない。美由は自宅に帰ってから金縛りにあうようになっていた。その原因と名をす方法を探して三人は奔走する。
星の見える場所
佐々森りろ
青春
見上げた空に星があります様に。
真っ暗闇な夜空に、願いをかけられる星なんてどこにもなくなった。
*・゜゚・*:.。..。.:*・' '・*:.。. .。.:*・゜゚・*
『孤独女子×最低教師×一途男子』
*・゜゚・*:.。..。.:*・' '・*:.。. .。.:*・゜゚・*
両親が亡くなってから、姉・美月と二人で暮らしていた那月。
美月が結婚秒読みの彼氏と家を出ていくことになった矢先に信じていた恋人の教師に裏切られる。
孤独になってしまった那月の前に現れたのは真面目そうなクラスメイトの陽太。
何を考えているのか分からないけれど、陽太の明るさに那月は次第に心を開いていく。
だけど、陽太には決して表には出さない抱えているものがあって──
真夏を脳裏に焼き付けて
あなたのせい(仮)
青春
高校一年の春、彼女は突然現れた。
亡き姉によく似た彼女は、無遠慮なまでに僕を振り回す。
花火大会も、文化祭も、僕らの中心にはいつだって彼女がいた。
これは、彼女と僕らの一年間の物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる