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一章 初恋
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「それで……背は私と同じくらいで、ストレートの黒髪がサッラサラなの! 艶々でどんなお手入れしてるのかなって気になった! 後……ピアノを弾いてるからか、指が長くて綺麗なの。顔も整っててクールな雰囲気でね……えっと、とりあえず格好良い」
そう、結局彼は格好良いのだ。
これじゃ、見た目だけに惹かれてるみたいで、不純かな……
「まぁ、そんなに素敵な人なのね。お母さんも見てみたいわー。写真とかないの?」
「まだ……ID交換とかもしてないから、写真なんてないよ」
「あら、随分奥手なのね」
「え……?」
え、流石にID交換は早いと思ってたんだけど、お母さんからしたら奥手になるの?
うーん。
「だって、彼のこと好きになっちゃったんでしょ?」
「うん……」
「それなら、連絡手段は必須でしょ? 少しずつアピールしていかなくちゃ」
「でも、彼も受験生だし、私も勉強があるから、あまり積極的に動くのは……」
そう、勉強の邪魔はしたくないし、私も受験に響くようなことはしたくない。
彼のことは……好きだと思う。ただ、思いを伝えようとは思っていない。
今はただ彼と話ができればそれで……
「もう、折角茉莉絵ちゃんが恋をしたのに、受験が邪魔をするのね」
「邪魔って……」
「仕方ないわね。流石に受験なんて放っておいてとはお母さんも言えないから……。でも、ID交換はしても良いんじゃないかしら? ほら、勉強を励ましあったりとかできるわけでしょ?」
「うーん、確かに?」
「毎日お疲れ様とかお休みとか短いメッセージを送るだけでも楽しいと思うのよね」
「それくらいならしてもいいかも?」
長文打ったり、メッセージのやり取りが長く続くような感じだと、勉強の邪魔になっちゃうけど、寝る前に「お疲れ様」や「お休み」くらいであれば、邪魔にならないかもしれない。
「次、会った時に聞いてみようかな」
「うんうん、それがいいわね」
「ねぇ、お母さん」
「んー?」
「彼の顔がタイプでほぼ一目惚れに近いんだけど、これって不純かな?」
「そんなこと気にしてるの? 初めましての人の中身なんて知る由もないんだから、はじめに目から入ってくる情報で相手に好感が持てるかって当たり前のことよ。それが、清潔感だったりイケメンだったりってね。それに惹かれたからって何が悪いの?」
「そ、そうかな?」
「それに、彼の見た目だけが好きなんじゃないんでしょ? 初めはそこに惹かれたのかもしれないけど、徐々に他の部分も見えてくるはず」
「うん。初めは見た目が好みだったからなんだけど、話しやすい人だなとか、獅子丸くんの事優しく抱き上げた時とか大事にしてるんだなとか、彼のちょっとした仕草全てに目が行っちゃうの」
「もー、ベタ惚れね。これで受験生じゃなければ、もっと応援出来たのに」
「それは、まぁ、仕方ないかなー。彼に彼女が出来ないことを祈りつつ、散歩で勉強の息抜きする感じになるかな……」
「言うのは簡単なのよね。そのうちどんどん気持ちが膨らんでいって、告白してしまいたくなるものよ」
「……そうなのかな」
そうなったら、私はどうしたらいいんだろう。
溢れそうな気持ちに全体重をかけて蓋をしてどうにかなるのだろうか。
彼の邪魔をしたくない。
私も勉強に身が入らなくなって、受験に失敗するなんてことはしたくない。
二人で同じ高校に合格して、気持ちを伝えられたら……はぁ、そんなに上手いこと行くのかな。
こればっかりは、誰にもわからないか。
私が今できることは、受験勉強をしっかりすること。
受験に合格できなければ、何も始められない。
「それじゃ、そろそろ部屋に戻るね。勉強しなくちゃ」
「はーい。ちゃんと0時には寝てね」
「うん、寝不足は効率悪くなるからね」
「そうよー。ちゃんとわかってるわね」
机に向かい問題集を開く。
きっと奏くんも今頃勉強を頑張っているはず。私も負けていられない。
彼に誇れる自分でありたい。
◆ ◆ ◆
今までとは違い、土曜日は、一週間頑張ったご褒美のように感じるようになった。
土曜日の午前中に、あの公園に行けば、奏くんに会える。
特に待ち合わせとかしている訳ではないけれど、はじめてあった時と同じ時間に行けば会えるのではと思って行ったら、すでに彼はきていた。
良かった……ちゃんと居た。
「奏くん、獅子丸くん、おはよう」
「あぁ、茉莉絵か。おはよう」
ふふっ、一週間ぶりに会う奏くんも格好良いな。
「クッキー、今日も獅子丸と遊んでやってな?」
「わふっ」
彼がわしゃわしゃとクッキーを撫でる。
クッキーも大人しくそれを受け入れていて、すでに信頼関係が窺えた。
私も獅子丸くんに挨拶して、撫でさせてもらう。
飼い主同士が仲良くしてると、自然と犬達も受け入れてくれるようになるのかな。
広い公園なだけあって、至る所に屋根付きのベンチが設置されている。
最近本当に暑くなってきたから、屋根がありがたい。
クッキー達が遊んでいるのを、座りながら眺めたり、時々一緒に遊んだりと過ごすことが出来るで助かっている。
そう、結局彼は格好良いのだ。
これじゃ、見た目だけに惹かれてるみたいで、不純かな……
「まぁ、そんなに素敵な人なのね。お母さんも見てみたいわー。写真とかないの?」
「まだ……ID交換とかもしてないから、写真なんてないよ」
「あら、随分奥手なのね」
「え……?」
え、流石にID交換は早いと思ってたんだけど、お母さんからしたら奥手になるの?
うーん。
「だって、彼のこと好きになっちゃったんでしょ?」
「うん……」
「それなら、連絡手段は必須でしょ? 少しずつアピールしていかなくちゃ」
「でも、彼も受験生だし、私も勉強があるから、あまり積極的に動くのは……」
そう、勉強の邪魔はしたくないし、私も受験に響くようなことはしたくない。
彼のことは……好きだと思う。ただ、思いを伝えようとは思っていない。
今はただ彼と話ができればそれで……
「もう、折角茉莉絵ちゃんが恋をしたのに、受験が邪魔をするのね」
「邪魔って……」
「仕方ないわね。流石に受験なんて放っておいてとはお母さんも言えないから……。でも、ID交換はしても良いんじゃないかしら? ほら、勉強を励ましあったりとかできるわけでしょ?」
「うーん、確かに?」
「毎日お疲れ様とかお休みとか短いメッセージを送るだけでも楽しいと思うのよね」
「それくらいならしてもいいかも?」
長文打ったり、メッセージのやり取りが長く続くような感じだと、勉強の邪魔になっちゃうけど、寝る前に「お疲れ様」や「お休み」くらいであれば、邪魔にならないかもしれない。
「次、会った時に聞いてみようかな」
「うんうん、それがいいわね」
「ねぇ、お母さん」
「んー?」
「彼の顔がタイプでほぼ一目惚れに近いんだけど、これって不純かな?」
「そんなこと気にしてるの? 初めましての人の中身なんて知る由もないんだから、はじめに目から入ってくる情報で相手に好感が持てるかって当たり前のことよ。それが、清潔感だったりイケメンだったりってね。それに惹かれたからって何が悪いの?」
「そ、そうかな?」
「それに、彼の見た目だけが好きなんじゃないんでしょ? 初めはそこに惹かれたのかもしれないけど、徐々に他の部分も見えてくるはず」
「うん。初めは見た目が好みだったからなんだけど、話しやすい人だなとか、獅子丸くんの事優しく抱き上げた時とか大事にしてるんだなとか、彼のちょっとした仕草全てに目が行っちゃうの」
「もー、ベタ惚れね。これで受験生じゃなければ、もっと応援出来たのに」
「それは、まぁ、仕方ないかなー。彼に彼女が出来ないことを祈りつつ、散歩で勉強の息抜きする感じになるかな……」
「言うのは簡単なのよね。そのうちどんどん気持ちが膨らんでいって、告白してしまいたくなるものよ」
「……そうなのかな」
そうなったら、私はどうしたらいいんだろう。
溢れそうな気持ちに全体重をかけて蓋をしてどうにかなるのだろうか。
彼の邪魔をしたくない。
私も勉強に身が入らなくなって、受験に失敗するなんてことはしたくない。
二人で同じ高校に合格して、気持ちを伝えられたら……はぁ、そんなに上手いこと行くのかな。
こればっかりは、誰にもわからないか。
私が今できることは、受験勉強をしっかりすること。
受験に合格できなければ、何も始められない。
「それじゃ、そろそろ部屋に戻るね。勉強しなくちゃ」
「はーい。ちゃんと0時には寝てね」
「うん、寝不足は効率悪くなるからね」
「そうよー。ちゃんとわかってるわね」
机に向かい問題集を開く。
きっと奏くんも今頃勉強を頑張っているはず。私も負けていられない。
彼に誇れる自分でありたい。
◆ ◆ ◆
今までとは違い、土曜日は、一週間頑張ったご褒美のように感じるようになった。
土曜日の午前中に、あの公園に行けば、奏くんに会える。
特に待ち合わせとかしている訳ではないけれど、はじめてあった時と同じ時間に行けば会えるのではと思って行ったら、すでに彼はきていた。
良かった……ちゃんと居た。
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ふふっ、一週間ぶりに会う奏くんも格好良いな。
「クッキー、今日も獅子丸と遊んでやってな?」
「わふっ」
彼がわしゃわしゃとクッキーを撫でる。
クッキーも大人しくそれを受け入れていて、すでに信頼関係が窺えた。
私も獅子丸くんに挨拶して、撫でさせてもらう。
飼い主同士が仲良くしてると、自然と犬達も受け入れてくれるようになるのかな。
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