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一章 初恋

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 「クッキー、今日は新しいお友達が出来て良かったね」

 「わふっ!」

 「よしよしっ! ご機嫌だねー。私も……新しいお友達が出来て嬉しいよ。一緒だね」

 家に帰って、綺麗に足を洗ってあげて、丁寧にブラッシングをしながら、クッキーに話しかける。
 明日も奏くんくるかな……
 ID交換すれば良かったな。浮かれて大事なこと忘れてた。
 いや、流石に初対面でID交換は怖がられそうだし、聞かなくて正解だったのかも。

 でも、公園に遊びに行ったのに時間がズレてて会えなかったってなったら寂しいし……
 次に会った時、聞いてもいいかな。

 いつもクッキーとの散歩は私の癒しだったけど、それにドキドキがプラスされ、私の日々は充実していった。

 恋のキューピッドは、クッキーとこのキーホルダーね。
 お母さんにも感謝しないと。このキーホルダーが切っ掛けで話しかけられたんだから。
 
 さてと、勉強しますかね。浮かれてばかりもいられないのが受験生ですからね。

 ◆ ◆ ◆

 「ねぇ、茉莉絵ちゃん」

 「ん?」

 夜ご飯を終えた後、まったりとクッキーを撫でながら食休みをしていると、お母さんが何やらニヤニヤと話しかけてきた。
 なんだろう……

 「最近、とても楽しそうね」

 「え……? そうかな?」

 「女の直感が告げるの! 茉莉絵ちゃん、好きな男の子出来たんでしょ?」

 「えっ⁉︎」

 なんで分かるの? え、何も言ってないのに。
 そんなに分かりやすい? 浮かれ過ぎてたかな?

 「もー、やっと茉莉絵ちゃんと恋バナ出来るのね。どんな子なの? お母さん気になるわー。どんな男の子が茉莉絵ちゃんと射止めたのかしら」

 「ちょっと、また彼とは知り合ったばかりで、そんなんじゃ……」

 「まぁ、知り合ったばかりなの? もしかして、一目惚れ? いいわねー、青春ねー」

 「お母さん……」

 「ほら、茉莉絵ちゃんだって、好きな人の話ってしたくない? 惚気話とか楽しいわよー?」

 うっ……確かに恋バナには憧れていたけど、母親とするものだっけ?
 まだ知り合ったばかりだから、友達にも彼のこと言えてないんだよね。
 
 「大丈夫。お母さん口は固いの。女同士の秘密にしましょうね。お父さんが知ったら、気絶しちゃいそうだし、お兄ちゃんも目を光らせそうだもの。うちの男性陣たちは、困った人たちよね」

 「まぁ、お父さんは……納得かな。結婚なんて許さんって言いそうな感じよね。娘を溺愛しすぎでは?」

 「ふふっ、可愛い人でしょ? お母さんが産んだ子だもの、あの人が可愛がらないわけないじゃない」

 「はいはい、惚気ですね。でも、お兄ちゃんは、私に好きな人が出来ても何も言わなさそうだけど」

 「んー、確かに何も言わないと思うけど、相手がどんな男かは気にすると思うわよ。あれで結構シスコンよね」

 「えっ⁉︎」

 私がブラコンなのは自覚あるけど、お兄ちゃんがシスコン……?
 うーん、それはちょっと語弊があるのでは?

 「勉強の時におやつ渡してるでしょ?」

 「チョコとかフィナンシェくれてるね」

 「あれ、お兄ちゃんが、あなたの為に買ってくれてるのよ」

 「えっ⁉︎」

 「受験勉強頑張ってる妹への応援のつもりらしいわよ」

 「そんなこと一言も……」

 「そんなこと言う子に見える? 何も言わずに支えてくれてるのよ。我が息子ながら良い男に育ってるわー」

 「お母さん……」

 お母さんが用意してくれると思ってたおやつはお兄ちゃんが準備してくれてたんだ。
 私のためにわざわざ買ってくれてたなんて……
 
 後で、バイトから帰ってきたらちゃんとありがとうって伝えないと。

 イケメンで、気が利くなんて、お兄ちゃんの彼女になる人は幸せ者ね。
 どんな彼女を連れてくるのか今から楽しみだなー! 仲良くなれるといいな。

 「それで? その彼とはどこで出会ったの?」

 あっ、恋バナは続くのね。
 んー、胸に秘めてるよりも話したほうが楽しいかもしれない。
 よしっ、言っちゃおう。

 「えっとね。土曜日に、クッキーを一つ先の公園まで連れていったんだけど……その時に出会ったんだよね。彼も丁度ミニチュアピンシャーの獅子丸くんを散歩させてたの」

 「あら、彼も犬を飼ってるのね」

 「うん、それでね。えっと、お母さんが買ってくれたキーホルダーあるでしょ?」

 「あぁ、あれね」

 「彼も同じキーホルダーを持ってたの。色はネイビーでね。それが話すきっかけになって、クッキーと獅子丸くんを遊ばせている間お話をしたんだよね」

 「まぁ、それじゃお母さんが恋のキューピッドね!」

 「え? あ、そ、そうかな?」

 確かに、お母さんがこのキーホルダーを見つけて買ってくれたから、お母さんがキューピッドなのかも?
 
 「彼……奏くんって言うんだけど、お母さんがフルートを趣味でずっと続けてるらしくて、彼もね、ピアノを弾けるんだって」

 「まぁ、音楽一家なのね。素敵だわ。家で演奏会とかしてるのかしら」

 演奏会……確かに一家で楽器を演奏するなら、彼がピアノを弾いてそれに合わせてお母さんがフルートを演奏するとかありそう。素敵過ぎない?

 家で楽器の演奏してるって言ってたから、防音室とかもきっとあるんだよね。
 すごいなー。


 
 
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