3 / 46
一章 初恋
1−1
しおりを挟む
「ねぇ、茉莉絵ちゃん。このキーホルダー可愛くない? お母さん注文しようと思うんだけど、一緒に買う?」
階段を降りてリビングに向かうと、おはようの挨拶の前に、スマホの画面を見せられる。
「お母さん、おはよう。キーホルダー?」
スマホの画面を覗き込んでみると、肉球や骨などのチャームがついた可愛いキーホルダーが写っていた。
愛犬の名前も入れられるのね。
それに、犬のシルエットまで入れられるなんて、いいじゃん。
「可愛いでしょ? カラーバリエーションも豊富で、どれにしようか悩んじゃうわねー」
「私……このピンクのにしようかな」
「いいじゃない。あなたに合ってるわね。お母さんどうしようかしら。この黄色のにしようかな。お父さんとお兄ちゃんのも注文しちゃおっと」
我が親ながら、本当に仲の良い夫婦だ。
色違いでお揃いのキーホルダー……夫婦どころか相沢家全員でお揃い。
まぁ、可愛いからいいよね。
「ねぇ、隈出来てるわよ。受験生だからって遅くまで勉強しすぎじゃない?」
「受験生に勉強のしすぎってことはないよ。高校落ちた時に後悔したくないの」
「でも……」
「心配してくれて、ありがとう。んー、平日は学校もあるし、0時には止めるようにするよ。土日に時間割けばいいしね」
「それがいいわよ。寝不足は、効率も落ちるって言うしね」
「うん」
今年、中学三年生になり受験に向けて、日々勉学に励んでいる。
そんな勉強漬けの日々を癒してくれるのが……
「クッキー、おはよう。もうご飯は食べたんだね。もう少ししたらお散歩行こうね」
大きな体をしたゴールデンレトリバーのクッキーは、おっとりとした性格だけど、ボール遊びが大好きで、良く走り回っている。
名前は、プレーンクッキーの色みたいだなと思ったので、クッキーと命名した。
安易すぎたかなと思うけど、似合ってるし、可愛いから良いよね。
アニマルセラピーとは良く言ったもので、クッキーとの触れ合いは疲れた私を癒してくれる。
この柔らかい毛並みをブラッシングするだけでも艶々していって楽しいし、大きな体に抱きつけば満たされる気がする。
ただ、爪を切るのだけは出来ないんだよね。
一度、深く切りすぎて血が滲んでしまったことがあってから、怖くて出来なくなってしまった。
また痛い思いをさせたくないし、お母さんとかお兄ちゃんがやってくれるからお任せしている。
「さて、クッキーお散歩に行こうか」
わふっ!と返事をすると自分からリードを咥えてくるお利口さん。
毎朝30分ほどお散歩をして、帰宅してから朝ご飯を食べて学校に行くのが日課になっている。
朝早く起きるのが辛い時もあるけど、クッキーとの時間を減らすことも辛い。
「あ、茉莉絵ちゃん待って。髪結いて行ったほうがいいわよ。外、風強いから、あなたの髪だとすぐ絡まるわよ」
「はーい」
私の髪は、母に似て少し茶色で細く柔らかいため、すぐ絡まるのが難点だ。
そして、母方のおじいちゃんがイギリス人で、身長も高いからか、お母さんも身長が170cmある。
ちなみに、お父さんも身長183cmある為、それが私にも遺伝したみたいで……中学三年生なのに身長が163cmもある。
高校に入ったらもっと伸びそうな気がして、怖い。
男子より背が高い女子なんて、嫌がられるじゃん……
玄関ドアを開けると、びゅうっと風が吹きつけてくる。
本当に風が強い。今日の散歩は体力使いそうだなーと思いながらクッキーをみると、目をキラキラさせて、早く散歩に行こうと言っているようだった。
「ふふっ、お散歩行こうね。今日は風強いけど、良い天気だし気持ちいいね」
「わふっ!」
「良い返事ね」
いつもの河原で、10分ほどボール遊びをして帰路に着くとお兄ちゃんが朝食を取っていた。
「おかえり、早く食べないと時間なくなるぞ」
「そうよ。クッキーは私が見とくから食べちゃいなさい」
「はーい。手洗ってくるね」
クッキーの足を拭いたり、片付けなどはお母さんに任せて朝食を食べる。
隣に座る兄を見る。我が兄ながら……格好良いな。
兄も両親の遺伝子を受け継ぎ、しっかりと高身長で高校二年生でありながら180cmある。
少し堀が深くて、鼻筋が通っていて、手足がスラリと長い。
髪は少し茶色でふわりと柔らかい。
これでモテないわけもなく、バレンタインデーの時には、紙袋を両手にチョコレートを持って帰ってくる。
受け取らなければいいのにと思うけれど、毎回高級店のチョコレートを持って帰ってくるので、ありがたく頂戴している。
兄は、手作りチョコは絶対に受け取らない。
お店で買ってきたチョコなら貰ってやるよというなんとも上からな態度……
イケメンだから許されるのか……
そんなだから彼女が出来ないのでは? と、いうと、出来ないんじゃなくて、作らないんだと言っていた。
今は友達と遊ぶのが楽しいから彼女とか煩わしいらしい。
うーん。男の子ってそういうものなのかなー。
私は……恋がしてみたい。
まだ誰にも心が動かないから、みんなが恋バナしているのを聞いているだけ。
私もきゃっきゃと恋バナしたいな。
彼女たちはキラキラと輝いていて日々楽しそう。
私も恋をしたら、毎日が輝くのかな?
「わふっ?」
「クッキー、お母さんに綺麗にしてもらったんだね。良かったねー」
ふふっ、クッキーがいるんだもんね。私の毎日も楽しいよ。
階段を降りてリビングに向かうと、おはようの挨拶の前に、スマホの画面を見せられる。
「お母さん、おはよう。キーホルダー?」
スマホの画面を覗き込んでみると、肉球や骨などのチャームがついた可愛いキーホルダーが写っていた。
愛犬の名前も入れられるのね。
それに、犬のシルエットまで入れられるなんて、いいじゃん。
「可愛いでしょ? カラーバリエーションも豊富で、どれにしようか悩んじゃうわねー」
「私……このピンクのにしようかな」
「いいじゃない。あなたに合ってるわね。お母さんどうしようかしら。この黄色のにしようかな。お父さんとお兄ちゃんのも注文しちゃおっと」
我が親ながら、本当に仲の良い夫婦だ。
色違いでお揃いのキーホルダー……夫婦どころか相沢家全員でお揃い。
まぁ、可愛いからいいよね。
「ねぇ、隈出来てるわよ。受験生だからって遅くまで勉強しすぎじゃない?」
「受験生に勉強のしすぎってことはないよ。高校落ちた時に後悔したくないの」
「でも……」
「心配してくれて、ありがとう。んー、平日は学校もあるし、0時には止めるようにするよ。土日に時間割けばいいしね」
「それがいいわよ。寝不足は、効率も落ちるって言うしね」
「うん」
今年、中学三年生になり受験に向けて、日々勉学に励んでいる。
そんな勉強漬けの日々を癒してくれるのが……
「クッキー、おはよう。もうご飯は食べたんだね。もう少ししたらお散歩行こうね」
大きな体をしたゴールデンレトリバーのクッキーは、おっとりとした性格だけど、ボール遊びが大好きで、良く走り回っている。
名前は、プレーンクッキーの色みたいだなと思ったので、クッキーと命名した。
安易すぎたかなと思うけど、似合ってるし、可愛いから良いよね。
アニマルセラピーとは良く言ったもので、クッキーとの触れ合いは疲れた私を癒してくれる。
この柔らかい毛並みをブラッシングするだけでも艶々していって楽しいし、大きな体に抱きつけば満たされる気がする。
ただ、爪を切るのだけは出来ないんだよね。
一度、深く切りすぎて血が滲んでしまったことがあってから、怖くて出来なくなってしまった。
また痛い思いをさせたくないし、お母さんとかお兄ちゃんがやってくれるからお任せしている。
「さて、クッキーお散歩に行こうか」
わふっ!と返事をすると自分からリードを咥えてくるお利口さん。
毎朝30分ほどお散歩をして、帰宅してから朝ご飯を食べて学校に行くのが日課になっている。
朝早く起きるのが辛い時もあるけど、クッキーとの時間を減らすことも辛い。
「あ、茉莉絵ちゃん待って。髪結いて行ったほうがいいわよ。外、風強いから、あなたの髪だとすぐ絡まるわよ」
「はーい」
私の髪は、母に似て少し茶色で細く柔らかいため、すぐ絡まるのが難点だ。
そして、母方のおじいちゃんがイギリス人で、身長も高いからか、お母さんも身長が170cmある。
ちなみに、お父さんも身長183cmある為、それが私にも遺伝したみたいで……中学三年生なのに身長が163cmもある。
高校に入ったらもっと伸びそうな気がして、怖い。
男子より背が高い女子なんて、嫌がられるじゃん……
玄関ドアを開けると、びゅうっと風が吹きつけてくる。
本当に風が強い。今日の散歩は体力使いそうだなーと思いながらクッキーをみると、目をキラキラさせて、早く散歩に行こうと言っているようだった。
「ふふっ、お散歩行こうね。今日は風強いけど、良い天気だし気持ちいいね」
「わふっ!」
「良い返事ね」
いつもの河原で、10分ほどボール遊びをして帰路に着くとお兄ちゃんが朝食を取っていた。
「おかえり、早く食べないと時間なくなるぞ」
「そうよ。クッキーは私が見とくから食べちゃいなさい」
「はーい。手洗ってくるね」
クッキーの足を拭いたり、片付けなどはお母さんに任せて朝食を食べる。
隣に座る兄を見る。我が兄ながら……格好良いな。
兄も両親の遺伝子を受け継ぎ、しっかりと高身長で高校二年生でありながら180cmある。
少し堀が深くて、鼻筋が通っていて、手足がスラリと長い。
髪は少し茶色でふわりと柔らかい。
これでモテないわけもなく、バレンタインデーの時には、紙袋を両手にチョコレートを持って帰ってくる。
受け取らなければいいのにと思うけれど、毎回高級店のチョコレートを持って帰ってくるので、ありがたく頂戴している。
兄は、手作りチョコは絶対に受け取らない。
お店で買ってきたチョコなら貰ってやるよというなんとも上からな態度……
イケメンだから許されるのか……
そんなだから彼女が出来ないのでは? と、いうと、出来ないんじゃなくて、作らないんだと言っていた。
今は友達と遊ぶのが楽しいから彼女とか煩わしいらしい。
うーん。男の子ってそういうものなのかなー。
私は……恋がしてみたい。
まだ誰にも心が動かないから、みんなが恋バナしているのを聞いているだけ。
私もきゃっきゃと恋バナしたいな。
彼女たちはキラキラと輝いていて日々楽しそう。
私も恋をしたら、毎日が輝くのかな?
「わふっ?」
「クッキー、お母さんに綺麗にしてもらったんだね。良かったねー」
ふふっ、クッキーがいるんだもんね。私の毎日も楽しいよ。
32
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説

【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる