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四章 大好き
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「うわっ、やばいな。めっちゃ美味そうな匂いがする」
「入り口の屋台が焼き鳥はやばいね」
会場に着くと、すぐに香ばしい焼き鳥のタレの匂いが鼻をくすぐった。
これは、着いてすぐに買おうと思ったお客さんも多かったんじゃ無いかな。
「焼き鳥食べながら回らないか?」
「そうしようか。んー、私は一本でいいかな」
「お腹空いてないのか?」
「後でかき氷とかチョコバナナとか食べたいから、焼き鳥は少なめにって思って」
「全部デザートかよ」
「へへー」
柊真はお腹が空いていたみたいで、5本も買っていたが、全然お腹が膨れなくて次は何を食べようかと店を回りながら物色していた。
小さい頃は、みんなで金魚掬いや水ヨーヨー取ったり、紐くじをやったりして遊んでいたなと懐かしく思いながら屋台を眺めた。
「金魚掬いやるか? 祭りに来るたびにやってただろ?」
「ううん。やめとく。それより、向こうにある紐くじやりたいなー」
金魚は育てることができないからやらない。お母さんに世話を押し付けたくないから……
「マジか。あれ子供のおもちゃばかりだぞ? 本当にやるのか?」
「うん。なんか懐かしくなっちゃって」
「まぁ、美月がいいならいいけどさ」
「小さい頃、大当たりのゲームが欲しい! って言ってみんなでやったよね」
「やったやった。まぁ、みんなフリスビーとかお菓子の詰め合わせだのハズレばっかりだったけどな」
「私は、アイスの形をした飛び出すやつだったよねー。あれはあれで子供の頃は遊んでたけど」
「小さい頃はそんなんでも楽しめてたよな」
昔話に花を咲かせながら、向かいにある紐くじの屋台に行くと、「俺もやる」と言ってお金を払っていた。
柊真まで付き合ってくれるなんて優しいな。
「じゃ、私はこれにしたー」
「それじゃ、俺はこれな」
「「せーのっ!」」
あ……これ……思わず「ふふっ」と笑いが溢れる。
「デジャビュかよ。あの時と同じもの引くとか」
「ね? 私もびっくりした。見てみてー」
そう言いながら、アイスの形をしたおもちゃを柊真に向けてスイッチを押すと、スポンジ部分が柊真の頬へぽすんと当たる。
「今でもこんなので楽しめるなんて、本当にあの頃と変わらないな」
「そうかもしれないね。子供っぽいって呆れた?」
「いいや、なんでも楽しそうにしてくれるから見ててこっちも楽しくなるよ」
「え、ちょっと、いきなりデレないでよ……」
嬉しさと恥ずかしさで、顔に熱が集まるのを手を仰いで冷まそうと誤魔化した。
程よい風が吹き、風鈴がチリンチリンと音を響かせ、じんわりとかいた汗を冷ますような涼を感じた。
「次は何やるかー」
「んー、あっ、あれ!」
「えー、今日はどうした? ずいぶん子供っぽいのやりたがるな」
「懐かしいなって思ってね」
そして、私たちが向かったのは輪投げの前だった。
これも子供の頃みんなで誰が一番多く入れられるかって競って遊んだな。
3個受け取り、しっかりと狙いを定めて投げると、全部入れることができ、流石に子供の頃とは違って簡単だなと感じた。
景品は吹き戻しで、これも小さい頃良く遊んだなと思いながら、何度も吹いてはするすると伸びたり丸まったり繰り返すのを楽しんだ。
この後も子供の頃を懐かしむように、射的やボール掬いなどをして回った。
景品の一つに線香花火があったので、最後に隣の公園でする約束をした。
これが、この夏、柊真と過ごす最後の思い出になる。
最後まで目一杯楽しんで、大好きだと伝えよう。
短い間だったけど、柊真と付き合えて幸せだったのだと伝えることは出来ないけれど、好きだという気持ちは伝えることができる。
柊真への気持ちが可視化できるのなら、きっと私の心臓から溢れ出ているだろう。
その気持ちは、苦しいほどに……
「そろそろ休憩しよう。歩き回って美月も疲れただろ?」
「うん。じゃー、かき氷食べながら休もうかな」
「そうだな。俺はついでにお好み焼きとポテトも買うかな」
「ふふっ。焼き鳥食べたのに、そんなに食べれるんだね」
「男なんてこれくらい食べるだろ。美月は、かき氷だけでいいのか?」
「うん。なんか楽しくて胸がいっぱいで」
「楽しいならいいけど、食べないのも心配だな」
「かき氷食べたら、後でチョコバナナも食べるから大丈夫だよ」
両手に食べ物と飲み物を抱えて、飲食スペースに腰をかけると、一気に足が重くなる。
楽しくて気付かなかったけど、足はだいぶ疲労を感じていたみたい……
この後もまだ回れるかな……そう思いながら、そっと足を摩った。
「入り口の屋台が焼き鳥はやばいね」
会場に着くと、すぐに香ばしい焼き鳥のタレの匂いが鼻をくすぐった。
これは、着いてすぐに買おうと思ったお客さんも多かったんじゃ無いかな。
「焼き鳥食べながら回らないか?」
「そうしようか。んー、私は一本でいいかな」
「お腹空いてないのか?」
「後でかき氷とかチョコバナナとか食べたいから、焼き鳥は少なめにって思って」
「全部デザートかよ」
「へへー」
柊真はお腹が空いていたみたいで、5本も買っていたが、全然お腹が膨れなくて次は何を食べようかと店を回りながら物色していた。
小さい頃は、みんなで金魚掬いや水ヨーヨー取ったり、紐くじをやったりして遊んでいたなと懐かしく思いながら屋台を眺めた。
「金魚掬いやるか? 祭りに来るたびにやってただろ?」
「ううん。やめとく。それより、向こうにある紐くじやりたいなー」
金魚は育てることができないからやらない。お母さんに世話を押し付けたくないから……
「マジか。あれ子供のおもちゃばかりだぞ? 本当にやるのか?」
「うん。なんか懐かしくなっちゃって」
「まぁ、美月がいいならいいけどさ」
「小さい頃、大当たりのゲームが欲しい! って言ってみんなでやったよね」
「やったやった。まぁ、みんなフリスビーとかお菓子の詰め合わせだのハズレばっかりだったけどな」
「私は、アイスの形をした飛び出すやつだったよねー。あれはあれで子供の頃は遊んでたけど」
「小さい頃はそんなんでも楽しめてたよな」
昔話に花を咲かせながら、向かいにある紐くじの屋台に行くと、「俺もやる」と言ってお金を払っていた。
柊真まで付き合ってくれるなんて優しいな。
「じゃ、私はこれにしたー」
「それじゃ、俺はこれな」
「「せーのっ!」」
あ……これ……思わず「ふふっ」と笑いが溢れる。
「デジャビュかよ。あの時と同じもの引くとか」
「ね? 私もびっくりした。見てみてー」
そう言いながら、アイスの形をしたおもちゃを柊真に向けてスイッチを押すと、スポンジ部分が柊真の頬へぽすんと当たる。
「今でもこんなので楽しめるなんて、本当にあの頃と変わらないな」
「そうかもしれないね。子供っぽいって呆れた?」
「いいや、なんでも楽しそうにしてくれるから見ててこっちも楽しくなるよ」
「え、ちょっと、いきなりデレないでよ……」
嬉しさと恥ずかしさで、顔に熱が集まるのを手を仰いで冷まそうと誤魔化した。
程よい風が吹き、風鈴がチリンチリンと音を響かせ、じんわりとかいた汗を冷ますような涼を感じた。
「次は何やるかー」
「んー、あっ、あれ!」
「えー、今日はどうした? ずいぶん子供っぽいのやりたがるな」
「懐かしいなって思ってね」
そして、私たちが向かったのは輪投げの前だった。
これも子供の頃みんなで誰が一番多く入れられるかって競って遊んだな。
3個受け取り、しっかりと狙いを定めて投げると、全部入れることができ、流石に子供の頃とは違って簡単だなと感じた。
景品は吹き戻しで、これも小さい頃良く遊んだなと思いながら、何度も吹いてはするすると伸びたり丸まったり繰り返すのを楽しんだ。
この後も子供の頃を懐かしむように、射的やボール掬いなどをして回った。
景品の一つに線香花火があったので、最後に隣の公園でする約束をした。
これが、この夏、柊真と過ごす最後の思い出になる。
最後まで目一杯楽しんで、大好きだと伝えよう。
短い間だったけど、柊真と付き合えて幸せだったのだと伝えることは出来ないけれど、好きだという気持ちは伝えることができる。
柊真への気持ちが可視化できるのなら、きっと私の心臓から溢れ出ているだろう。
その気持ちは、苦しいほどに……
「そろそろ休憩しよう。歩き回って美月も疲れただろ?」
「うん。じゃー、かき氷食べながら休もうかな」
「そうだな。俺はついでにお好み焼きとポテトも買うかな」
「ふふっ。焼き鳥食べたのに、そんなに食べれるんだね」
「男なんてこれくらい食べるだろ。美月は、かき氷だけでいいのか?」
「うん。なんか楽しくて胸がいっぱいで」
「楽しいならいいけど、食べないのも心配だな」
「かき氷食べたら、後でチョコバナナも食べるから大丈夫だよ」
両手に食べ物と飲み物を抱えて、飲食スペースに腰をかけると、一気に足が重くなる。
楽しくて気付かなかったけど、足はだいぶ疲労を感じていたみたい……
この後もまだ回れるかな……そう思いながら、そっと足を摩った。
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