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四章 大好き
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柊真の部活がない帰り道、手を繋ぎながらゆっくりと歩く。
後何回こんなふうに帰ることが出来るのだろう。
「美月、最近よく学校休んでるけど、大丈夫か?」
「あー、風邪を拗らせちゃって、熱をよく出しちゃうんだよね」
「そっか……。ダイエットやめるって言ってたけど、また痩せたな。風邪のせいか?」
「うん……。体調崩しちゃってから食欲があまりなくて……」
「熱出してたなら仕方ないけど……早く体調元に戻るといいな」
手も足も痩せ細って頬も痩けてきてしまって……可愛くないよね。
体調を元通りにか……それはもう叶わないの。
そう思いながらも、私は今日も柊真に嘘をつく。
「そうだね。早く良くならないとね」
視界の端に夏祭りのビラが貼ってあるのに気付くと、ちょうど柊真も同じようにそちらの方を向いた。
「あ、そうだ。七月にある夏祭り行くだろ?」
「うん。私も柊真に行くか聞こうと思ってたんだよね」
「じゃ、夕方の六時ごろから行かないか?」
「そうだね。あまり早く行きすぎても暑いしね」
暑いと体力も奪われて長く歩けないから、少し暑さが落ち着いてきた夕方からでちょうどいいと思った。
それでも、長く歩き回るのは無理だと思うから、ちょくちょく休憩をとることにはなると思うけど。
柊真にはバレないように、適当にかき氷が食べたいとか言って休憩を挟もう。
「あー、美月は浴衣だよな?」
「うん。そのつもりだけど、柊真はどうするの?」
「俺はどうするか。動きやすいのは普通の服だけど、美月が浴衣ならそれに合わせるか」
「やった! 浴衣デートだね。楽しみだなー」
「それまでにちゃんと飯食べて体調治しとけよ?」
「はーい」
この時期になると、店には浴衣やそれに合うような髪飾りなどが店頭に並ぶ。
浴衣用に何か髪飾りでも買って帰ろうかな。
「柊真、あのお店見ていってもいい? なんかあるかなって見たくて」
「おー、行くか」
ピンで止めるタイプのもあれば、簪など、色々な種類があって、どれにするか悩んでしまう。
浴衣は淡いピンク色で白で花の絵が描かれているものなため、髪飾りもパキッとした濃い色じゃなくて、優しい色にしたい。
沢山ある髪飾りの中から一つ手に取り、髪に当てる。
ペールグリーンのガラス玉が使われ、2本垂らされた葉っぱの飾りがシャラリと揺れ、とても可愛い。
ガラス玉の中には桜が入っていて、浴衣のピンクともあっていると思った。
「それにするのか?」
「うん。浴衣とも合うし可愛いから」
「おっけー。じゃ、買ってくるから適当に見て待ってて」
そういうと、柊真は私の手から簪をするりと抜き取り、会計へと向かった。
流石に柊真に買ってもらうのは悪いし、お小遣いもたくさん持ってきていたから、自分で払おうと柊真の後を追う。
「えっ⁉︎ 待って、自分で買おうと思ってたから……」
「いいから。俺が美月を着飾りたいんだよ。俺が買った簪つけた美月と夏祭り行きたいっていう俺の我儘な?」
「そんなの我儘なんかじゃ……」
「俺の我儘だって。甘えとけ」
「うん……ありがとう」
「じゃ、ちょっと待っててな」
「うん」
こんな酷い嘘をついている私にこんなに優しくしてくれなくていいのに。
ごめんね、柊真。
その簪は、一度しか付けることが出来ないの。
それでも、夏祭りの日につけていくから、最後まで大事にするから……
「お待たせ。他にもなんか欲しいのあったか?」
「ううん。大丈夫だよ」
「そっか。ほら、簪な。大事にしろよー」
「ありがとう……。本当に嬉しい。夏祭り楽しみにしててね?」
「浴衣だけじゃなくて、楽しみが増したな」
でも、バイトとかしてないのに、買ってもらって大丈夫だったのかなと後から聞いたら、「じいちゃんの肩揉みしたりしてお小遣い稼いでたから」と言っていた。
それなら尚更私に使うのは持ったない気もするけど……私がこれ以上気にしたら折角買ってくれた柊真に悪いし、素直に受け取ることにした。
「美月、ケーキ食べて帰ろうぜ」
甘いものが好きなわけでもないのに、どうして急にケーキ食べて行こうなんていうんだろう。
これも私のため……?
「え……?」
「今、熱ないなら食べられるかなって思ってさ。 少し太らせないとな」
「太らせ……」
「まぁ、普通なら女子に太らせようって言ったら怒られるかもだけど? 美月はちょっと痩せすぎだからな。俺が太らせてやらないとな」
「ふふっ、確かに、女の子を太らせようなんて敵以外の何者でもないからね。私の場合は、まぁ……しょうがないけど。じゃ、折角だし、食べて行こうか」
「よしっ、じゃ、そこの店でいいか? なんか美味しそうだし」
「うん」
食欲があまりなくて、食べれてないから痩せていくのもあるとは思うけど、頑張って食べても体重は増えていってくれないの。
それでも、柊真と食べるケーキはとても美味しかった。
私のことを思って連れてきてくれた柊真を見つめ、心の中でごめんとありがとうを呟きながら微笑んだ。
後何回こんなふうに帰ることが出来るのだろう。
「美月、最近よく学校休んでるけど、大丈夫か?」
「あー、風邪を拗らせちゃって、熱をよく出しちゃうんだよね」
「そっか……。ダイエットやめるって言ってたけど、また痩せたな。風邪のせいか?」
「うん……。体調崩しちゃってから食欲があまりなくて……」
「熱出してたなら仕方ないけど……早く体調元に戻るといいな」
手も足も痩せ細って頬も痩けてきてしまって……可愛くないよね。
体調を元通りにか……それはもう叶わないの。
そう思いながらも、私は今日も柊真に嘘をつく。
「そうだね。早く良くならないとね」
視界の端に夏祭りのビラが貼ってあるのに気付くと、ちょうど柊真も同じようにそちらの方を向いた。
「あ、そうだ。七月にある夏祭り行くだろ?」
「うん。私も柊真に行くか聞こうと思ってたんだよね」
「じゃ、夕方の六時ごろから行かないか?」
「そうだね。あまり早く行きすぎても暑いしね」
暑いと体力も奪われて長く歩けないから、少し暑さが落ち着いてきた夕方からでちょうどいいと思った。
それでも、長く歩き回るのは無理だと思うから、ちょくちょく休憩をとることにはなると思うけど。
柊真にはバレないように、適当にかき氷が食べたいとか言って休憩を挟もう。
「あー、美月は浴衣だよな?」
「うん。そのつもりだけど、柊真はどうするの?」
「俺はどうするか。動きやすいのは普通の服だけど、美月が浴衣ならそれに合わせるか」
「やった! 浴衣デートだね。楽しみだなー」
「それまでにちゃんと飯食べて体調治しとけよ?」
「はーい」
この時期になると、店には浴衣やそれに合うような髪飾りなどが店頭に並ぶ。
浴衣用に何か髪飾りでも買って帰ろうかな。
「柊真、あのお店見ていってもいい? なんかあるかなって見たくて」
「おー、行くか」
ピンで止めるタイプのもあれば、簪など、色々な種類があって、どれにするか悩んでしまう。
浴衣は淡いピンク色で白で花の絵が描かれているものなため、髪飾りもパキッとした濃い色じゃなくて、優しい色にしたい。
沢山ある髪飾りの中から一つ手に取り、髪に当てる。
ペールグリーンのガラス玉が使われ、2本垂らされた葉っぱの飾りがシャラリと揺れ、とても可愛い。
ガラス玉の中には桜が入っていて、浴衣のピンクともあっていると思った。
「それにするのか?」
「うん。浴衣とも合うし可愛いから」
「おっけー。じゃ、買ってくるから適当に見て待ってて」
そういうと、柊真は私の手から簪をするりと抜き取り、会計へと向かった。
流石に柊真に買ってもらうのは悪いし、お小遣いもたくさん持ってきていたから、自分で払おうと柊真の後を追う。
「えっ⁉︎ 待って、自分で買おうと思ってたから……」
「いいから。俺が美月を着飾りたいんだよ。俺が買った簪つけた美月と夏祭り行きたいっていう俺の我儘な?」
「そんなの我儘なんかじゃ……」
「俺の我儘だって。甘えとけ」
「うん……ありがとう」
「じゃ、ちょっと待っててな」
「うん」
こんな酷い嘘をついている私にこんなに優しくしてくれなくていいのに。
ごめんね、柊真。
その簪は、一度しか付けることが出来ないの。
それでも、夏祭りの日につけていくから、最後まで大事にするから……
「お待たせ。他にもなんか欲しいのあったか?」
「ううん。大丈夫だよ」
「そっか。ほら、簪な。大事にしろよー」
「ありがとう……。本当に嬉しい。夏祭り楽しみにしててね?」
「浴衣だけじゃなくて、楽しみが増したな」
でも、バイトとかしてないのに、買ってもらって大丈夫だったのかなと後から聞いたら、「じいちゃんの肩揉みしたりしてお小遣い稼いでたから」と言っていた。
それなら尚更私に使うのは持ったない気もするけど……私がこれ以上気にしたら折角買ってくれた柊真に悪いし、素直に受け取ることにした。
「美月、ケーキ食べて帰ろうぜ」
甘いものが好きなわけでもないのに、どうして急にケーキ食べて行こうなんていうんだろう。
これも私のため……?
「え……?」
「今、熱ないなら食べられるかなって思ってさ。 少し太らせないとな」
「太らせ……」
「まぁ、普通なら女子に太らせようって言ったら怒られるかもだけど? 美月はちょっと痩せすぎだからな。俺が太らせてやらないとな」
「ふふっ、確かに、女の子を太らせようなんて敵以外の何者でもないからね。私の場合は、まぁ……しょうがないけど。じゃ、折角だし、食べて行こうか」
「よしっ、じゃ、そこの店でいいか? なんか美味しそうだし」
「うん」
食欲があまりなくて、食べれてないから痩せていくのもあるとは思うけど、頑張って食べても体重は増えていってくれないの。
それでも、柊真と食べるケーキはとても美味しかった。
私のことを思って連れてきてくれた柊真を見つめ、心の中でごめんとありがとうを呟きながら微笑んだ。
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