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一章 告知
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今は症状も安定しているため、月二回病院へと通っている。症状が進めば通院頻度も上がるみたいだけど……
お母さんは在宅ケアしてもらってはどうかって言ってくれたけど、この家に悲しい思い出を残したくなかったので、通院を選んだ。
最後は、住み慣れたこの家で迎えるのも……と少しは思ったけど、残されるお母さんとお父さんを思うとその選択肢は取れなかった。
この家では、私と笑い合った記憶だけを残して置いて欲しかったから……
体もろくに動かせなくなったら入院することになっている。その頃には体も激痛が襲っていてモルヒネを打たなければならない状態になるそうだ。
ただ、モルヒネを打つと痛みは感じなくなるが、意識も朦朧としてしまうとのことだった。
最後は意識が朦朧としてか……そのほうが死ぬ恐怖を感じなくていいのかもしれない。
はぁ、また終わりのことばかり考えてしまう。
病は気からって言うのにね。こんなんじゃ病気がどんどん進行していっちゃいそう。
どうにか気持ちを切り替えようと思うのに、なかなか思うようにはいかない。
ため息をつきながら、ベッドにゴロンと寝転がり目を閉じる。
なんかだるいし、このまま寝ちゃおうかな……今は最後ばかりを考えてしまい、気持ちを切り替えれそうにないから、寝て切り替えるのもいいかもしれない。
一時間ほど仮眠をとると、柊真からメッセージが来ていた。
『もうすぐ誕生日だろ? 平日だから部活あるけど、そのあと少し会えないかなって思ったんだけど、夜出て来れたりするか?』
付き合って初めて迎える誕生日だから、柊真も気を遣ってくれてるのかな。
でも、その日は旅行に行ってていないからなー……
『覚えててくれたんだね。ありがとう。でも、その日は、学校休んで家族旅行に行く予定なんだよね。だから夜もいないんだよね。日曜日に帰ってくるから、その時お土産も渡したいな』
『え? 誕生日水曜日なのに、日曜日ってことは、三日も学校休むのか? ちょっと意外だったけど……まぁ、せっかくだから楽しんでこいよ。プレゼント遅れて渡すのもなんかだから、先に渡していいか?』
『今回の旅行はお母さんが張り切っちゃってて、少し長めの旅行になったんだよね。沖縄行ったことなかったから楽しみだな。プレゼント嬉しい……柊真の都合の良い日で大丈夫だよ』
『うちの高校って毎年修学旅行って沖縄だろ? どうせなら別の場所に旅行に行けばよかったのに』
修学旅行か……一緒に柊真と楽しみたかったな。
でもね。その時、私はもうあなたの隣にはいないんだよ。ごめんね……
『修学旅行の下見だとでも思って楽しんでくるよ』
また沈みそうになる気持ちを、柊真が誕生日プレゼントをくれると言っていたことに意識を向け、無理矢理に気持ちを上げる。
プレゼントどんなのだろう。アクセサリーとか髪留めとか? うーん。想像がつかない。
今までは、ただの幼馴染だったからお菓子とかもらってたけど、流石に今年は付き合って初めての誕生日だし、お菓子ということはないと思うけど……まさかね。
弓道部は火曜日と日曜日が休みなため、ちょうど旅行の前日に学校帰りに柊真とデートすることになった。
電車移動にお母さんが難色を示したが、柊真に病気のことを知られるわけにはいかず、無理はしないからと説得して、帰りの迎えは断った。
流石に、親の車に乗ってデートをするのは……無理がある。
◆ ◆ ◆
体調も疲れやすい以外は特に変化もなく安定していたため、変わりない日々を過ごせている。
明日から旅行ということもあり、リビングには大きなキャリーケースが二個並んでいた。
基本的には薄手の服で大丈夫だから、荷物はそんなにかさばらないけれど、サンダルを別に持っていったり、羽織物も入れたり、スキンケア用品も入れたりなどしていると、私とお母さんの荷物は多くなってしまった。
お父さんは荷物が少ないので、空いたスペースに入れれば大丈夫だったけれど。
「お薬とかはお母さんが準備しておいたから、美月は自分の持っていきたいものだけ準備しなさいね」
「はーい。大体準備は終わってるけど、今日帰ってきたら荷物確認するね」
「本当に無理しないのよ? 疲れたら、柊真くんにちゃんと言って座らせてもらうのよ?」
「うん、わかってるよ。無理はしないっていうか出来ないかな。そんなに遅くならないから心配しないで」
「そうね……体調も安定してるみたいだし、大丈夫よね」
「うん」
旅行を明日に控え、お母さんは朝から荷物チェックをしていた。
特に私の薬は忘れているものはないか何度も確認していて、申し訳ない気持ちになった。
今回の旅行は、親孝行だと思って目一杯楽しもう。
家族写真もたくさん撮って、旅行のアルバムも作ろうかな。
あっ、そうだ。柊真の修学旅行の時に役立てるように、手帳にお店の情報とかまとめようかな。
このお店のこの料理が美味しかったとか、ここは見にいったほうがいいよとか……それを見るたびに私を思い出してくれるだろうか。
お母さんは在宅ケアしてもらってはどうかって言ってくれたけど、この家に悲しい思い出を残したくなかったので、通院を選んだ。
最後は、住み慣れたこの家で迎えるのも……と少しは思ったけど、残されるお母さんとお父さんを思うとその選択肢は取れなかった。
この家では、私と笑い合った記憶だけを残して置いて欲しかったから……
体もろくに動かせなくなったら入院することになっている。その頃には体も激痛が襲っていてモルヒネを打たなければならない状態になるそうだ。
ただ、モルヒネを打つと痛みは感じなくなるが、意識も朦朧としてしまうとのことだった。
最後は意識が朦朧としてか……そのほうが死ぬ恐怖を感じなくていいのかもしれない。
はぁ、また終わりのことばかり考えてしまう。
病は気からって言うのにね。こんなんじゃ病気がどんどん進行していっちゃいそう。
どうにか気持ちを切り替えようと思うのに、なかなか思うようにはいかない。
ため息をつきながら、ベッドにゴロンと寝転がり目を閉じる。
なんかだるいし、このまま寝ちゃおうかな……今は最後ばかりを考えてしまい、気持ちを切り替えれそうにないから、寝て切り替えるのもいいかもしれない。
一時間ほど仮眠をとると、柊真からメッセージが来ていた。
『もうすぐ誕生日だろ? 平日だから部活あるけど、そのあと少し会えないかなって思ったんだけど、夜出て来れたりするか?』
付き合って初めて迎える誕生日だから、柊真も気を遣ってくれてるのかな。
でも、その日は旅行に行ってていないからなー……
『覚えててくれたんだね。ありがとう。でも、その日は、学校休んで家族旅行に行く予定なんだよね。だから夜もいないんだよね。日曜日に帰ってくるから、その時お土産も渡したいな』
『え? 誕生日水曜日なのに、日曜日ってことは、三日も学校休むのか? ちょっと意外だったけど……まぁ、せっかくだから楽しんでこいよ。プレゼント遅れて渡すのもなんかだから、先に渡していいか?』
『今回の旅行はお母さんが張り切っちゃってて、少し長めの旅行になったんだよね。沖縄行ったことなかったから楽しみだな。プレゼント嬉しい……柊真の都合の良い日で大丈夫だよ』
『うちの高校って毎年修学旅行って沖縄だろ? どうせなら別の場所に旅行に行けばよかったのに』
修学旅行か……一緒に柊真と楽しみたかったな。
でもね。その時、私はもうあなたの隣にはいないんだよ。ごめんね……
『修学旅行の下見だとでも思って楽しんでくるよ』
また沈みそうになる気持ちを、柊真が誕生日プレゼントをくれると言っていたことに意識を向け、無理矢理に気持ちを上げる。
プレゼントどんなのだろう。アクセサリーとか髪留めとか? うーん。想像がつかない。
今までは、ただの幼馴染だったからお菓子とかもらってたけど、流石に今年は付き合って初めての誕生日だし、お菓子ということはないと思うけど……まさかね。
弓道部は火曜日と日曜日が休みなため、ちょうど旅行の前日に学校帰りに柊真とデートすることになった。
電車移動にお母さんが難色を示したが、柊真に病気のことを知られるわけにはいかず、無理はしないからと説得して、帰りの迎えは断った。
流石に、親の車に乗ってデートをするのは……無理がある。
◆ ◆ ◆
体調も疲れやすい以外は特に変化もなく安定していたため、変わりない日々を過ごせている。
明日から旅行ということもあり、リビングには大きなキャリーケースが二個並んでいた。
基本的には薄手の服で大丈夫だから、荷物はそんなにかさばらないけれど、サンダルを別に持っていったり、羽織物も入れたり、スキンケア用品も入れたりなどしていると、私とお母さんの荷物は多くなってしまった。
お父さんは荷物が少ないので、空いたスペースに入れれば大丈夫だったけれど。
「お薬とかはお母さんが準備しておいたから、美月は自分の持っていきたいものだけ準備しなさいね」
「はーい。大体準備は終わってるけど、今日帰ってきたら荷物確認するね」
「本当に無理しないのよ? 疲れたら、柊真くんにちゃんと言って座らせてもらうのよ?」
「うん、わかってるよ。無理はしないっていうか出来ないかな。そんなに遅くならないから心配しないで」
「そうね……体調も安定してるみたいだし、大丈夫よね」
「うん」
旅行を明日に控え、お母さんは朝から荷物チェックをしていた。
特に私の薬は忘れているものはないか何度も確認していて、申し訳ない気持ちになった。
今回の旅行は、親孝行だと思って目一杯楽しもう。
家族写真もたくさん撮って、旅行のアルバムも作ろうかな。
あっ、そうだ。柊真の修学旅行の時に役立てるように、手帳にお店の情報とかまとめようかな。
このお店のこの料理が美味しかったとか、ここは見にいったほうがいいよとか……それを見るたびに私を思い出してくれるだろうか。
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