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四章 行き着く先は

---悠視点⑦---

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 表彰式が終わるとすぐにいろはの元へと向かった。
 充が後ろから「おいっ! どこ行くんだよ!」と声をかけてきていたが、止まることはなかった。

 優勝し高揚した気持ちが後押しし、ストレートに好きだと伝えることが出来た。
 これには、いろはも驚いたようだったが、好きだという言葉が聞けて、思わず抱きしめてしまった。

 本当に今日は最高の日だ……

 一旦いろはと別れ、みんなの元へ戻ると「ったく、どこ行ってたんだよ。もうみんな着替え終わってるぜ」と充に叱られてしまった。

 「悪い……どうしてもいろはに伝えたいことがあってさ」

 「え、それってまさか?」

 「告白してOK貰った」

 「まじかよ‼︎  悠、良かったな! いやー、まじかー、やっとかー。なんか自分のことみたいに嬉しいもんだな」

 「充にも迷惑かけたな」

 「いや、俺は迷惑なんてかけられてないけど、まっ、とりあえずおめでとな」

 「あぁ、ありがとう」

 大会が終わり、一旦家に帰ると、打ち上げのために店へと向かう。
 コーチの奢りとのことで、金かかりそうだけど大丈夫か? と心配だったが、友達のやってる焼肉食べ放題の店だから気にせず食べろと言われ、それならと気兼ねなく肉を堪能した。
 流石に部員全員は無理だったらしく、ベンチメンバーまでが呼ばれたが、まぁ、これはしょうがないよな。

 打ち上げが終わり、母さんに「今からいろはの家寄って帰る」とメッセージを送る。
 じゃないと、まだ帰ってこないのかと催促の連絡が来てしまうから……いろはの家なら遅くなっても文句は言われない。

 「悠くん、お疲れ様。今日は本当に格好良かったわー。おめでとう」
 
 「ありがとうございます。いろは、いますか?」

 「あの子ったら、声かけたのに返事がないから見に行ったら、寝ちゃってたのよね。部屋行って起こしてあげてね」

 そういうと、おばさんはリビングへと戻っていった。
 え……いろは寝てるのに部屋いっていいのか? 信用されてるみたいだけど、一応俺も男なんだけど……

 一応、部屋のドアをノックするも返事はなく、静かにドアを開けるといろはが丸まって横になっていた。
 無防備であまりの可愛さに思わず抱きしめたい衝動に駆られるが、我慢しそっと頭を撫でるとスリッとすり寄ってきたため、ドキリと心臓が大きく音を立てた。

 いろはも違和感を感じたのか勢いよく起き上がると目眩を起こして倒れそうになったため、すぐに支えると何故俺がいるのだろうと驚いていた。

 流石におばさんが部屋まで通すとは、いろはも思わなかったよな。

 おばさんも俺のことが好きだと言った時に、自分もなのだと言われ、我慢ができずに抱きしめてしまった。
 すぐに手を離すことが出来ず、もう少しこのままでというと、いろはは身を委ねてくれた。
 抱きしめながら、静かにいろはと付き合えたことを噛み締めた。

 いろはがずっと俺を好きだったと聞いた時に、ずっと後悔していた。
 こちらに戻ってきた時に、俺が栗原と付き合っていたと知ってどれだけ傷ついたのだろうか。

 だから、栗原とは手を繋いだこともなければ、キスをしたこともないとしっかりと伝えることにした。
 もしかしたら、恋人らしいことをしていたんじゃってきっと不安に思っているだろうと思ったから。

 案の定、言葉にしなくても気にしていたみたいだったから、ちゃんと伝えられて良かったと思った。

 これからは、寄り道せず、ただいろはだけを見つめ大事にしていこう。
 もう、こんなすれ違いはしたくない。

 ◆ ◆ ◆

 インターハイは惜しくも二回戦で敗退してしまったが、本当に良い経験になった。
 流石にインターハイ本選なだけあって、どの高校も強く、ダブルスコアなんてできるわけもなく、どの試合も接戦だった。
 負けて悔しくないわけではないが、やり切った感があり、試合終了の笛が鳴った時、清々しい気持ちになった。
 みんなの顔を見ると、誰も涙を流すことなく、笑顔だったため、みんなやり切ったのだと思った。

 インターハイも終わり、約束していた夏祭りの日になり、着慣れない浴衣で足が開かないなと歩きづらさを感じながら、いろはを迎えにいった。

 どんな浴衣だろうか。子供の頃は帯の後ろがヒラヒラしていて金魚のようで可愛らしかったけど、流石にそれは小学生までだよな。

 今は……少し大人っぽい浴衣だったりするんだろうか。
 期待に胸を膨らませてインターフォンを鳴らし、出てきたいろは、優しい色合いの浴衣で、とても似合っていた。
 帯の桜模様が凝っていて、作り帯じゃなかった。これはおばさんが頑張ったんだろうな。

 祭り会場につけば、いろはがすぐにりんご飴の屋台に目が釘付けになっているのに気付き、思わず笑いそうになるもグッと我慢し、買おうかと声をかけた。

 いろはがりんご飴を俺との思い出だと話すように、俺にとってもりんご飴はいろはとの大事な思い出だった。

 祭りでりんご飴を見るたびに、いろはとの楽しかった日々を思い出しては、恋しくなり、それでも一人で食べる気にはなれずに買うことはなかった。

 四年ぶりのりんご飴は、いろはの隣で……
 離れていた期間を思い出し、思わず目頭が熱くなるも、誤魔化すように「美味いな」と声をかけた。

 手を繋ぎ家まで送ると、もうお別れかと寂しさが押し寄せる。
 隣の家で、いつでも会えるのに、祭りの後のこの寂しさはなんなのだろうか。

 だから、思わずいろはを呼び止めて、振り向きざまにキスをしてしまった。
 本当にそっと触れるだけの一瞬だけだったが、唇の柔らかさに堪らなくなった。
 これ以上は駄目だと、「おやすみ」と一言だけ声をかけてすぐに家に帰った。

 家に入るとしゃがみ込み頭を抱える。

 「俺、まじで何やってんの⁉︎」

 手に持った齧りかけのりんご飴を見て……俺のファーストキスはりんご飴味ってことかなと思った。
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