【完結】余韻を味わう りんご飴

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』

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四章 行き着く先は

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 初めてのバイト代でお母さんにお菓子でも買って……と思っていたけれど、その前に母の日が来ることを忘れていた。

 何あげようかな。雑貨とか食器とか好きだから、そういうのがいいかな。
 お年玉があるとはいえ、あまり高いのをあげるとお母さんが気にしちゃうから、ほとほどのもので可愛いのにしないとね。

 「お父さん、母の日なんだけど、夜ご飯は私がカレー作るから、お父さんは、お母さんとデートしてきてくれない?」

 「それは、構わないが……一人で作れるのか?」

 「酷っ! 普段料理しなくてもカレーくらい作れますー」

 「それなら、父の日もいろはにカレー作って貰おうかな」

 「カレーでいいの?」

 「リクエストして作れるのか?」

 「う……カレーでお願いします。シチューでもいいけど」

 「ルーが違うだけだな。カレーにするよ」

 「はーい」

 よしっ、母の日当日は、お父さんとお母さんがデートしている間に、カレー作りをして、花を飾ったりテーブルセッティングとかも可愛くしないとね。

 プレゼントは、お父さんと出し合って、ティーセットを買った。
 ソーサーは、葉っぱの形をしていて、その上にコロンと丸いカップを置くタイプのもので、見た目が可愛くて即決してしまった。
 せっかくだから、四個セットになっているのを買って、来客用にも使えるようにした。
 お金を出すのが私一人だったら、二個セットにしたけど、お父さんと割り勘だから、四個セットのにしたのだ。

 「あっ、悠、おはよ」

 「はよ」

 「悠は、母の日何あげるか決まったの?」

 「あぁ、母さんは酒が好きだから、父さんがワインを選んでたな。俺は半分出しただけ」

 「ワインか、それは未成年の悠には流石に買えないね」

 「そういうこと」

 「うちはティーセットにしたよ。四個セットのやつ。えーっと四脚っていうっけ」

 「おばさんは、お酒っていうより紅茶って感じだから、良いプレゼントになりそうだな」

 「うん、喜んでくれると思う! で、なんと、夜は私がカレーを作ります!」

 「いろは……料理できたのか?」

 「ちょっと! 普段料理してないだけで、全くできないわけじゃないよ? ほら、カレーは野菜切って、ルー入れるだけでしょ? 流石にこれくらいは出来るよ」

 お父さんといい悠といい、どれだけ私が料理できないと思ってるんだか。
 確かに、普段から料理はしないけども……野菜の皮くらい剥けるし、切れるんだからね。

 「そっか。俺もいろはのカレー食べてみたいけど、流石に母の日にお邪魔はできないし、うちも夜は外食だからな」

 「悠のところは、外で食べるんだね。それもいいね! カレー食べたいなら、部活帰りにうちに寄る日作ってあげようか? その日はうちで食べていけばいいよ」

 「いいのか? 流石に、わがまま言ってる自覚があるんだが……」

 「いいよー。難しいことお願いされてるわけじゃないしね」

 「今度なんか買ってくな」

 「別にいいのに」

 そうはいっても、してもらってばかりは気になるのもわかるから、何を買ってきてくれるのか楽しみに待ってよっと。

 放課後になり、今日は久々に悠の部活を見て帰ることし、廊下を歩いていると珍しく碧くんと出会した。

 「今帰りか?」

 「ううん、今から悠の部活見に行くところなんだ」

 「バスケ部だったか」

 「そうだよー」

 「よく見にいってるのか?」

 「ううん。バイトもあるし、たまに行くくらいかな」

 「そっか。バスケ部期待されてるみたいだし、どんな感じなのか俺も見にいってみるかな」

 「ん? 碧くんも一緒にバスケ部見に行く? あっ、でも、私いつも二階で見てるんだよね」

 「じゃ、俺もそこで見るよ」

 「でもね、二階で見る場合、練習の邪魔になるから私語厳禁なの」

 「あぁ、そういうことか。別に柚木と雑談するために行くわけじゃないから、黙って見てるさ」

 「そう? じゃ、いこー」

 碧くんがバスケに興味があるのは意外だったけど、確かに学校中でインターハイ出場を期待されてるから、気にはなるのかもしれない。

 公立高校だから、いくつも強い部活があるわけじゃない。
 唯一期待できる部活がバスケ部で、みんなが注目しているのがわかる。

 悠たちプレッシャー感じてないといいけど……

 「柚木の幼馴染、彼女と別れたってクラスの女子たちが騒いでたけど……柚木と付き合ってたわけじゃないんだな」

 「え……違うよ。彼女とはこの前別れたみたいだよ……」

 「なんかさ、二人って幼馴染だから仲が良いの当たり前なのかもしれないけど、なんか空気感っていうの? それが似てるっていうか……って何言ってるんだかって感じだけど。まぁ、つまりは二人は特別に見えたってわけなんだけど」

 「特別……」

 私にとって悠は特別だよ。ただの幼馴染とは思ってない。
 ただ、それは私の一方的な想いに過ぎない。

 いつか……特別な関係になれるかな。

 
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