【完結】余韻を味わう りんご飴

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』

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三章 新しい経験

3−5

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 「柚木、休憩の時間だ。裏行っていいよ。カフェラテ作って持っていってやるよ」

 「はーい。あ、ねぇ、それ作ってるところ見ててもいい? ちょっとどうやって作ってるのか興味あるんだよね」

 「まぁ、別にいいけど……」

 隣で碧くんがカフェラテを手際よく作っていくのを見ていると、徐々に形になっていくさまが面白い。
 碧くん絵上手そうだな。じゃないと、顔とか可愛くできないもんね。

 「3Dテラアートを作るコツはミルクを硬めに作ることだな。で、ラテを先の尖ったピックで掬って顔を描けば出来上がり。意外と簡単だろ?」

 「んー、工程は簡単に見えるけど、これ絵心とかセンスとかがないと無理な気がする」

 「柚木は絵下手なのか?」

 「下手っていうほどではないけど、普通かな? 何描いてるのか分からないってレベルではないと思うけど、こんな可愛いのは描けないかな」

 「それはちょっと気になるかも。あとで柚木もラテアート挑戦してみるか?」

 「え? いいの?」

 「何事も挑戦してみないとだからな。柚木も練習してお客様に出せるようになれれば、こっちも楽になるからな」

 「じゃ、お言葉に甘えて挑戦してみたいです」

 「了解。じゃ、あとで俺の休憩の時に、作ってもらおうか。俺が責任持って頂きます」

 「う、可愛く作れるように頑張ります」

 ラテアートなんて作る日来るとは思ってもみなかったな。
 自分で出来るようになったら、家でお母さんに作ってあげたりしたいな。

 「じゃ、ゆっくり昼食べてな」

 「ありがとー」

 ロッカーからお弁当を取り出すと、見たことないお弁当箱だった。
 保温ジャーかな? 何が入ってるんだろうと開けてみると、ビーフシチューが入っていた。
 美味しそう……
 一口食べると、ちょうど良い温かさですぐに食べられるなと思った。
 ロールパンが二個添えてあり、量的にもちょうどよく、さすがお母さん。
 これとは別にサラダとフルーツまで別の容器に入れてあり、バランス考えてくれたんだなとありがたく思った。

 毎週末これだと大変だと思うから、時々はコンビニで適当に買うことにしようかな。
 んー、でもお母さんは駄目って言いそうかも。
 まぁ、提案するだけしてみよう。お母さんの負担を少し減らしてあげたいしね。
 でも、自分で作るっていう選択肢がないあたりが甘えてるのかな。

 だって、バイトの前に疲れたくないんだもん……

 先ほど作ってもらったカフェラテを飲む前に、いろんな角度から写真を撮ってお母さんに送った。

 『碧くんが作ったラテアートだよー! すごい可愛いでしょ? あとで私も作らせてくれるって』

 『男の子なのに、こんな可愛いのが作れるのね。いろはも作らせてもらえるなんて良い経験出来るわね。失敗しても記念に写真撮ってきてね』

 『はーい』

 飲むのが勿体無くて、少し口をつけて一口だけごくりと飲み込む。
 まだ原型を留めているけど、飲むにつれて少しずつ崩れていってしまい、お腹ぽっこりパンダさんはいなくなってしまった。

 ラテアートが可愛ければ可愛いほど、飲むのが勿体なさすぎる。
 からになったカップを見つめながら、もう少し眺めてから飲めば良かったかなと思った。
 けど、それだと冷めちゃうし、いつまでも残しておくことはできないから仕方ない。

 「休憩ありがとうー。碧くん、交代しよ」

 「おかえり。じゃ、作るか?」

 「うん」

 「まずは、ラテをこの辺くらいまで入れて、そう。ミルクは硬めに泡立てて、そうだな、そんなもんかな」

 「ここからがセンスが問われる作業だー」

 「乗せる量を気にしながら、バランスよくだな……まぁ……なんだ、その少し崩れた感じも味があって良いんじゃないか?」

 「……可愛くない」

 教えてもらって、さっき作ってもらったパンダの写真を見ながらなんとか真似して作ってみたが、なんかバンラスが悪く顔も歪んでしまった。

 「初めてなんだから、しょうがないだろ。上手くできたら俺のメンツが潰れるだろ」

 「うー……。とりあえず、初めて作った記念として写真は撮っておく。お母さんにも送ってねって言われてるし」

 「じゃ、俺も撮っておくか」

 「えっ⁉︎  なんで⁉︎」
 
 「柚木の成長がわかるようにだよ。昔はこんなの作ってたのに、成長したなーってわかりやすいだろ?」

 「こんなの呼ばわりされてる」

 「あ、悪い。まぁ、俺が美味しく頂きますので」

 「不恰好なパンダさんで申し訳ないですが」

 「飲んだらどうせ崩れるんだし、気にしすぎるなよ? 初めてなんだから。それにいきなり3Dはよくなかったかもな。次からは普通のラテアートの練習するか」

 「うん、それがいいかも。普通のラテアートをお客様に出せるようになってから、3Dのほうも練習したいかな」

 「了解。じゃ、休憩行ってくるな」

 「はーい。ごゆっくり」

 私は可愛いカフェラテを作ってもらったのに、碧くんには不恰好なカフェラテを飲ませることになっちゃったなーと思ったけど、碧くんが気にするなって言ってたし、これ以上はウジウジと考えるのは止めよう。

 次は普通のラテアートか。よく見かけるラテアートといえば、葉っぱの形してるやつだよね。
 どんなふうに描いてるのか教えてもらうの楽しみだな。
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