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二章 絡まる想い
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「それにしても、悠がシロクマ選んだの意外だったな。てっきりエイあたりを選ぶと思ってたから」
「あー……、まぁ、なんでも良かったんだよな。エイは水槽の形的に、小さく作られてたから、パッとしないかなって思ってやめたな」
「あー、ひれとか大きいし、縦長の水槽に入れようとすると小さくしないと入らないもんね。その点、シロクマは座ってる姿が縦型にちょうど良い感じで可愛かったね」
「だな」
良かった。普通に会話できてる……昔に戻ったみたいで嬉しいな。
「いろはは、またクラゲのエリアで写真撮りまくってだろ」
「え? 見てた? 良い感じに写真が撮れたら待ち受けにしようかなって思って、いろんな角度から撮ってみたんだよね」
「だと思った。で、良い写真撮れたのか?」
「えっとね、これ。光のあたりぐらいとかクラゲのゆらっとした感じとか綺麗に撮れてると思わない?」
これは今まで撮った中で一番上手に撮れたんじゃないかと心の中で自画自賛した一枚だ。
後で文字入れしたりして、待ち受けにしよっと。
「どれ?」
そう言いながら、スマホを持った私の手を覆うように握られた手にドキリとしてしまう。
悠はただ写真を見ようとしてるだけ、変に意識しちゃいけないのに……顔が近いよ……
距離の近さに心臓の音が聞こえてしまわないかハラハラしながら、写真を見せた。
「へぇ、よく撮れてるな」
「でしょー? 最高傑作ですよ」
「そんな得意げな顔して……ほんと、変わらないよなー」
そういうと、また頭をポンポンと触る。
もう子供の頃とは違うんだから、そういうの駄目だよ。そう言いたいのに、言葉が出てこない。
心がもう少しだけと甘えてしまう。
はぁ……自分を嫌いになりたくないのにな……
恋してる女子は、みんなこんなに苦しい思いをしてるんだろうか。
小さい頃は、恋って、もっとキラキラと輝いている感情だと思っていたのにな。
過去の私に言ってやりたい。
『未来の私は、嫉妬や甘えでぐちゃぐちゃな恋をしているよ』ってね。
過去の私は、悠に彼女がいるとは想像もしていなかった。
悠の隣にいるのはずっと私だと思っていたから。
どうしてそう思っちゃったのかな。幼馴染って怖いな。
一緒にいた時間が長すぎて、悠を自分のものだと勘違いしていたのかもしれない。
今思えば、なんて傲慢な……
そんなんだから、悠は私じゃなくて、瑞樹ちゃんを選んだんだよね。
ううん。選ぶ選ばないじゃない。私は初めから土俵にも上がっていない。
告白もしてないから、私の想いを悠は知らない。
それは、これからも知られることがない感情。
この想いがいつの日か消化されるまで、ひた隠して生きていく。
高校を卒業すれば大学も別になり、悠への想いも少しは薄れていくはず。
そんな二年後を期待して、今は頑張ろうとぐっと手を握りしめた。
「ただいまー」
「おかえり。水族館は楽しめた?」
「うん、水族館めっちゃ改装されてて、すごい綺麗だったし、楽しかったよ。ほら、キーホルダーも買っちゃった」
みんなで買ったキーホルダーをぷらぷらと揺らしながら見せると、中のクラゲも水に浮いてゆらゆらと揺れていた。
「あら、可愛いわね。クラゲのキーホルダー売ってて良かったね」
「うん。人気No.1らしくて、中に入れる魚とか選べたの。だから、みんなもそれぞれ好きな魚選んで買ったんだけど、まさかの男子三人同じシロクマ選んで、お揃いになってたんだよね」
「シロクマっていうのが男の子らしいわね。女の子たちは何を選んでたの?」
「瑠奈ちゃんはペンギンで、瑞樹ちゃんは……、あっ、悠の彼女ね。瑞樹ちゃんは、途中で具合悪くなって帰っちゃったんだよね」
「あら、大丈夫なの? それじゃ、悠くんが送っていったの?」
やっぱりお母さんもそう思うよね。
私もそう思ったから……
「それが……瑞樹ちゃんが人がそばにいると気を遣って疲れちゃうから一人にして欲しいって言って帰っちゃったんだとか」
「え……、そこは悠くんが送っていくべきじゃないの?」
「うーん、私もそう思ったんだけど、瑞樹ちゃんが断ったからなんとも……」
「そう……、最近の子はそうなのかしらね。お母さんにはよく分からないけど」
「私も分からないけど……まぁ、人それぞれだからね」
「そうね。でも、楽しめたなら良かったわね」
「うん。あっ、この写真みてよー! さっき悠にも見せたんだけど、よく撮れてるって言ってくれたんだから」
「どれどれ? あら、とっても綺麗ね。写真コンテストとかに応募しても良いくらいの出来じゃない?」
「もー、恥ずかしいから親バカ発言やめてよね! 絶対に外でそういうこと言わないでね! まぁ、でも、自分でもよく撮れたなと自画自賛してたから、そう言ってもらえるのは嬉しいけどね。へへ」
「その写真、お母さんにも送っておいて。あとで印刷して写真立てに入れて飾っとくわね」
「はーい」
シャワーを浴びて、ベッドで寛ぎながら漫画を読んでいると、スマホが新着メッセージを知らせてきた。
こんな時間に誰だろう。
ん……悠?
「あー……、まぁ、なんでも良かったんだよな。エイは水槽の形的に、小さく作られてたから、パッとしないかなって思ってやめたな」
「あー、ひれとか大きいし、縦長の水槽に入れようとすると小さくしないと入らないもんね。その点、シロクマは座ってる姿が縦型にちょうど良い感じで可愛かったね」
「だな」
良かった。普通に会話できてる……昔に戻ったみたいで嬉しいな。
「いろはは、またクラゲのエリアで写真撮りまくってだろ」
「え? 見てた? 良い感じに写真が撮れたら待ち受けにしようかなって思って、いろんな角度から撮ってみたんだよね」
「だと思った。で、良い写真撮れたのか?」
「えっとね、これ。光のあたりぐらいとかクラゲのゆらっとした感じとか綺麗に撮れてると思わない?」
これは今まで撮った中で一番上手に撮れたんじゃないかと心の中で自画自賛した一枚だ。
後で文字入れしたりして、待ち受けにしよっと。
「どれ?」
そう言いながら、スマホを持った私の手を覆うように握られた手にドキリとしてしまう。
悠はただ写真を見ようとしてるだけ、変に意識しちゃいけないのに……顔が近いよ……
距離の近さに心臓の音が聞こえてしまわないかハラハラしながら、写真を見せた。
「へぇ、よく撮れてるな」
「でしょー? 最高傑作ですよ」
「そんな得意げな顔して……ほんと、変わらないよなー」
そういうと、また頭をポンポンと触る。
もう子供の頃とは違うんだから、そういうの駄目だよ。そう言いたいのに、言葉が出てこない。
心がもう少しだけと甘えてしまう。
はぁ……自分を嫌いになりたくないのにな……
恋してる女子は、みんなこんなに苦しい思いをしてるんだろうか。
小さい頃は、恋って、もっとキラキラと輝いている感情だと思っていたのにな。
過去の私に言ってやりたい。
『未来の私は、嫉妬や甘えでぐちゃぐちゃな恋をしているよ』ってね。
過去の私は、悠に彼女がいるとは想像もしていなかった。
悠の隣にいるのはずっと私だと思っていたから。
どうしてそう思っちゃったのかな。幼馴染って怖いな。
一緒にいた時間が長すぎて、悠を自分のものだと勘違いしていたのかもしれない。
今思えば、なんて傲慢な……
そんなんだから、悠は私じゃなくて、瑞樹ちゃんを選んだんだよね。
ううん。選ぶ選ばないじゃない。私は初めから土俵にも上がっていない。
告白もしてないから、私の想いを悠は知らない。
それは、これからも知られることがない感情。
この想いがいつの日か消化されるまで、ひた隠して生きていく。
高校を卒業すれば大学も別になり、悠への想いも少しは薄れていくはず。
そんな二年後を期待して、今は頑張ろうとぐっと手を握りしめた。
「ただいまー」
「おかえり。水族館は楽しめた?」
「うん、水族館めっちゃ改装されてて、すごい綺麗だったし、楽しかったよ。ほら、キーホルダーも買っちゃった」
みんなで買ったキーホルダーをぷらぷらと揺らしながら見せると、中のクラゲも水に浮いてゆらゆらと揺れていた。
「あら、可愛いわね。クラゲのキーホルダー売ってて良かったね」
「うん。人気No.1らしくて、中に入れる魚とか選べたの。だから、みんなもそれぞれ好きな魚選んで買ったんだけど、まさかの男子三人同じシロクマ選んで、お揃いになってたんだよね」
「シロクマっていうのが男の子らしいわね。女の子たちは何を選んでたの?」
「瑠奈ちゃんはペンギンで、瑞樹ちゃんは……、あっ、悠の彼女ね。瑞樹ちゃんは、途中で具合悪くなって帰っちゃったんだよね」
「あら、大丈夫なの? それじゃ、悠くんが送っていったの?」
やっぱりお母さんもそう思うよね。
私もそう思ったから……
「それが……瑞樹ちゃんが人がそばにいると気を遣って疲れちゃうから一人にして欲しいって言って帰っちゃったんだとか」
「え……、そこは悠くんが送っていくべきじゃないの?」
「うーん、私もそう思ったんだけど、瑞樹ちゃんが断ったからなんとも……」
「そう……、最近の子はそうなのかしらね。お母さんにはよく分からないけど」
「私も分からないけど……まぁ、人それぞれだからね」
「そうね。でも、楽しめたなら良かったわね」
「うん。あっ、この写真みてよー! さっき悠にも見せたんだけど、よく撮れてるって言ってくれたんだから」
「どれどれ? あら、とっても綺麗ね。写真コンテストとかに応募しても良いくらいの出来じゃない?」
「もー、恥ずかしいから親バカ発言やめてよね! 絶対に外でそういうこと言わないでね! まぁ、でも、自分でもよく撮れたなと自画自賛してたから、そう言ってもらえるのは嬉しいけどね。へへ」
「その写真、お母さんにも送っておいて。あとで印刷して写真立てに入れて飾っとくわね」
「はーい」
シャワーを浴びて、ベッドで寛ぎながら漫画を読んでいると、スマホが新着メッセージを知らせてきた。
こんな時間に誰だろう。
ん……悠?
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