【完結】余韻を味わう りんご飴

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』

文字の大きさ
上 下
17 / 46
二章 絡まる想い

2−4

しおりを挟む
 「ねぇねぇ、この円柱型のキーホルダーみんなでお揃いにしない?」

 何を買おうかなとうろうろ店内を回っていると、瑠奈ちゃんが一つのキーホルダーを指差した。

 「どれー? 人気No.1って書いてあるね。この円柱の水槽の中にそれぞれ好きな動物を選んで入れられるんだね。いいかも」

 「へー、いんじゃね? 種類も多いし、みんな好きな動物いそうだよな。俺はシロクマにする」

 「うわっ、佐藤と被った。俺もシロクマにしようと思ってた」

 「まじかよ。お揃いにするなら、いろはちゃんとがよかったー。で、いろはちゃんはどれにするか決まってる?」

 佐藤くんと木村くんはシロクマか、瑠奈ちゃんはきっとペンギンで、瑞樹ちゃんはイルカかなー。
 悠は……エイが好きじゃなかったっけ。

 「私は、クラゲにする。縦長の水槽にこの長い足が良い感じで似合ってると思う」

 「へー、なんかいいな。なんかいろはちゃんっぽい」

 「何それ、適当だね」

 「悠と栗原は何にするか決まったのか?」

 「私はイルカにしようかな」

 「俺は……もう少し考えるから先に買ってきていいぞ」

 瑞樹ちゃんはすでに何にするか決めたみたいだけど、悠がまだ悩んでいたからその場に残っていたので、他のメンバーでレジへと向かった。

 「後で、みんなのキーホルダー並べて写真撮りたい! 絶対可愛いよー」

 「瑠奈ちゃん、それいいね! 水族館をバッグにベンチとかに並べて撮るのもいいし、青空をバックに取るのも綺麗そうだよね」

 「それなら、両方撮ればいいよ!」

 「そうしよう!」

 まだイルカショーが残っているけれど、すでに水族館を満喫して可愛いお土産も買えて満足してしまった。
 最後のイルカショーまであと少し、悠たちまだかな?

 そう思っていると、悠が一人で店から出てきた。

 「あれ? 瑞樹ちゃんは?」

 「え? ここ通らなかったか? なんかやっぱり調子悪いからって先帰ったんだけど……」

 「えっ⁉︎」

 気付かなかった……イルカショー楽しみにしてたのに、先に一人で帰っちゃうくらい具合悪かったんだね。
 
 「悠、送ってあげたほうが良かったんじゃ……」

 「一応、送ってくって言ったんだけど、一人で帰れるって聞かなくてさ。人がそばにいるほうが気を遣って疲れちゃうからってさ……そう言われたら一人にさせたほうがいいかなって思ってさ」

 「そっかー、それならしょうがないよな。そろそろイルカショーだし、行こうぜ」

 確かに具合が悪い時は、余裕がないし、人に気遣うこともできないとは思うけど、彼氏なのだから、悠には甘えても良かったのに。そう思ってしまうのは間違いなのだろうか。

 イルカショーは、シャチとの共演がダイナミックでとても格好良かった。
 スピードを増して高くジャンプする姿は本当に格好良い。あんなに高くジャンプ出来るの凄すぎる。

 夜はライトアップされて、イルミネーションが綺麗なショーに変わるみたいだから、今度はそれを見にきたいな。

 「悠、さっき女子たちがキーホルダー並べて写真撮りたいって言ってたから、お前の見せろよー」

 「え、あぁ……これだけど」

 「うわっ、お前もシロクマかよ……。男子三人でお揃いとかきしょっ」

 「へぇ、悠もシロクマか」

 「いいだろ。ほら、写真撮るんだろ?」

 ベンチにキーホルダーを五つ並べる。
 シロクマ三匹とペンギンとクラゲというアンバランスな写真は私たちの思い出の一ページとしてコルクボードに飾ることにした。

 今日の思い出ようコルクボードを作って、瑠奈ちゃんと一緒に撮った写真やクラゲとかイルカショーとかみんなが自由に見て回ってる時の写真とかも撮ったから貼ろうかな。

 ただ、瑞樹ちゃんの写真が一枚もないことに気付いた。一緒に遊んだのに……体調悪そうだったし、写真に写りたくなかったのかもしれない。

 明日、学校で体調大丈夫か聞いてみようかな。
 いや、そういうのは煩わしいって思われるかもしれないからやめといたほうがいいかな。

 もっと親しかったら、そういうのも気軽に声掛けられたのかもしれないけど、流石に今日一日では、そんなに仲良くなれなかったからな……

 私に気をかけられるより、悠に気にしてもらったほうが嬉しいだろうし、きっと悠が声をかけるだろう。
 私は、不必要に関わらないほうがいいのかもしれない。

 水族館の後は、ファミレスで昼を食べて、カラオケに行って解散となった。

 佐藤くんは、モテ男っぽく歌が上手かったが、木村くんは、ちょくちょく音を外していたけれど、楽しそうに歌っていたので、こちらも楽しい気持ちになった。

 悠は、二曲ほどしか歌わなかったけれど、良い声だなーと聞き惚れてしまった。
 って、そんなこと思いたくないのに……悠のそばにいるといつまで経ってもこの恋心は消えてくれない。

 暫く、悠と遊ぶのはやめたほうがいいかもしれない。

 「いろはちゃん、送って行こうかーって思ったけど、悠の隣の家だったっけ」

 「うん」

 「送る必要ないってまじかよー。隣って普通に悠と帰るだけじゃん」

 「家が隣なんだから、仕方ないだろ。むしろ隣なのに、別々に帰る意味が分からないだろ」

 「はいはい、じゃ、また明日学校でなー」

 「いろはちゃん、今日はありがとー! 楽しかった。また明日ねー」

 「瑠奈ちゃん、こちらこそ遊んでくれてありがとう。とっても楽しかった!また明日学校でね」

 さっきまで賑やかだったのが嘘のように静かに歩き出し。
 少し日が落ちてきた帰り道を歩きながら、何を考えているんだろう……瑞樹ちゃんのこと心配とかしてるのかな。

 家に帰ったらメッセージやりとりとかして……駄目駄目。
 せっかく楽しく過ごしたんだから、最後にこんな風に落ち込んだら駄目だよね。
 楽しく終わらせよう。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...