【完結】余韻を味わう りんご飴

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』

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一章 再会

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 「あぁ、気になるかな? 碧は息子でね。店の手伝いをしてもらってるんだよ」

 「息子さん……そうだったんですね」

 そう言われると、少し垂れ目なところが似ている気がする。
 店長さんも若い時は、彼みたいな感じだったのかなと思わせるような面影もあるかも。

 悠の黒く硬めの髪とは違い、柔らかい髪をワックスで遊ばせている感じだった。

 うーん、悠とはタイプが違うけど、彼もモテそうな気がする。

 「それで、週何日くらい入りたいとかあるかな?」

 「週3くらいで、土日どちらか出る感じが良いんですが、難しいでしょうか?」

 土日両方だと友達と遊べないから、それだとちょっと困るけど、わがままだったかな。

 「それなら問題ないよ。それじゃ、一旦帰って、履歴書を書いてきて貰ってから、シフトを組もうか」

 「はい! ありがとうございました」

 一度店を出て、帰りに履歴書を買って帰ると、出来るだけ丁寧に記入していく。
 
 「あら、履歴書なんて書いて、どこかに応募するの?」

 「うん。応募っていうか、もう受かってるんだけど、履歴書なかったから、今書いてるところ。書き終わったらまたお店に戻って渡してくる」

 「え? 面接してきたの?」

 「うん。丁度、店の前に張り紙をしている人がいたから話しかけたら、すぐに店長さんが面接してくれたんだ」

 「なんてお店なの?」

 「『木漏れ日』っていう落ち着いた雰囲気の喫茶店だよ」

 「木漏れ日なら昔からある喫茶店よね。お母さんも何度か行ったことあるわよ」

 「え、そうなの?」

 「引っ越す前に、梢ちゃんと何度か一緒に行ったことあるのよ」

 「知らなかった……」

 「まぁ、子供が行く場所じゃないからね。でも、あそこなら安心ね。良いバイト見つかって良かったわね」

 「うん。店長も良い人そうだったし、息子さんも……んー、まだ分からないけど、優しそうな気がする」

 まだ少ししか会話してないから、どんな人かわからないんだよね。
 口数は多くなさそうかな。

 「あ、そうだ。親の同意書にサインが欲しいだけど」

 「そうよね。未成年だから親の許可が必要だものね」

 「あと、銀行の通帳も出しといてー、給料の振り込み先とかも伝えないといけないから」

 「はいはい、待ってね」

 銀行のカードは自分で持ってるけど、印鑑と通帳はお母さんに預けている。
 社会人になったらそういうのも自分で管理したほうがいいかなと思ってるけど、まだ高校生だしいいかなってお母さんに甘えてしまっている。

 店に戻るとシフトが組まれ、私は火・木・土が出勤日になった。
 始めは、碧くんに付いて仕事を教えてもらうようにと言われたので、できるだけ早く仕事を覚えて迷惑をかけないようにしないとと思った。

 さてと、来週からバイトが始まるけど、その前に……明日は水族館かー……
 
 明日の心配をしたところで、何か変わるわけでもないからさっさと寝てしまおう。
 そう思ったのに、うだうだと考えてしまい、なかなか寝付けなかった。

 「おはよう。あら、眠そうね」

 「お母さん、おはよー。んー、昨日寝付けなくて、二時くらいまで起きてたから少し眠い」

 「それなら、まだ時間早いんだし、ゆっくり寝てればいいのに」

 「目が覚めちゃったんだもん。私ももう少し寝たかったな。四時間しか寝れてない……」

 「今日のことが気になって仕方なかったのかしらね」

 「そうかも。とりあえず、今日は悠と彼女のことはできるだけ視界に入れないように、瑠奈ちゃんと楽しむよ」

 「そうね……それがいいわね」

 寝たのが遅かったから八時くらいまで寝ようとアラームをセットしたのにも関わらず、六時に目が覚めてしまった。
 せっかく遊びに行くのに、寝不足か……あくびとかバレないようにしないと。
 
 バスの時間と電車の時間を考えて家を出たら、丁度、悠も出てきたところだった。

 あー……そうだよね。悠も私と同じように考えてこの時間にしたんだよね、きっと。
 待ち合わせしたわけじゃないのに、出会しちゃった……これで別々に行くのは流石に不自然すぎるし……

 「おはよう。悠」

 「おはよ。いろはもこの時間か」

 「うん」

 「じゃ、一緒に行くか」

 「うん」

 今までは、彼女の話題は避けてきたけど、今日は彼女もくるんだから、どんな人なのか少し聞いてみたほうがいいかな。
 でも、惚気話になったらやだな……うーん。

 「どうした?」

 「え?」

 「いや、何か考え込んでるのかなって思ったから」

 「あー……えーっと、栗原さんってどんな人なのかなって。今日初めて遊ぶから、少し聞いておこうかなって」

 「え? どんな人か……普通の女の子じゃないかな。部活はバド部だから、運動はそこそこできる感じじゃないか」

 「普通の女の子……」

 聞いたけど、どんな子なのかさっぱり分からない……
 悠は彼女のこと好き……なんだよね? なんか、友達の話をしているみたいな感じがしてしまう。

 「栗原さんって背が高くて美人さんだよね。私なんて、もう成長期が終わったみたいで、1cmも伸びないから羨ましいな」

 中学の頃に成長期が終わってしまったようで、高校に入ってから本当に身長が伸びなかったのだ。
 お母さんも身長低いから、似ちゃったのかなー。

 「確かに、女子にしては背高いよな。いろはは小さいほうが、いろはっぽいから、そのままでいいな」

 「いろはっぽいって何それ」

 「子供の頃からいろはは小さかったからな。久しぶりに会った時、変わらないなーって安心したんだよな」

 「いや、最後にあったの小学六年生だからね! 流石に違うでしょ!」

 「まぁ……少し成長したなとは思うけど、大きな目も柔らかな髪も小さいのも変わらないな」

 そういうと、悠は私の頭をポンポンと撫でた。
 悠は体だけじゃなく、手も大きくなったね。思わず、もっと撫でて欲しいと手を取りそうになるも、手を握り締めぐっと堪えた。

 水族館に着くと、瑠奈ちゃんと木村くんと栗原さんがきていた。

 「瑠奈ちゃん、おはよう。えっと、栗原さん、初めまして。柚木いろはです。よろしくお願いします」

 ふんわりと女性らしいシフォンのスカートに、それに合わせた可愛いパンプスを履いていて、身長が元から高いのが余計に高さが増し、モデルさんのようだった。

 背の高い悠と並んだら、お似合いだろうな……

 「栗原瑞樹です。宮本くんとお付き合いさせて頂いてます。柚木さんは、宮本くんの幼馴染って聞いたから、私も仲良くしてくれると嬉しいな」

 お付き合いさせて頂いてますか……はっきりとそういう言葉を聞くのを避けてきたから、突き刺さる。

 「あ……私も仲良くしてもらえると嬉しいです。悠の彼女ならこれから会うこともあると思うから」

 彼女なのだから、悠の家に遊びにくることもあるかもしれない。
 そうしたら、隣に住んでいる私と遭遇する機会も増えると思う。彼女とは表面上だけでも良好な関係を築いておいたほうがいい。
 そうは思っていても、彼女と普通に話すのは辛いため、出来れば遭遇しないことを祈った。
 
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