【完結】余韻を味わう りんご飴

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』

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一章 再会

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 佳奈ちゃんを水族館に誘おうと思ってたけど……うーん。
 せっかく仲良くしようと歩み寄ってくれたんだし、瑠奈ちゃんを誘うことにしよう。

 「瑠奈ちゃん、水族館のチケットもらったんだけど、良かったら一緒に行かない? 四枚もあるから、誰誘おうかなって思ってて」

 「え、いいの? 行く行く! 今週末の日曜日なら部活ないから行けちゃうよ」

 「本当? 私も予定ないから、行こうか」

 「水族館とか久しぶり。しかも、チケット奢りだし。いろはちゃん、ありがとね」

 「こちらこそ、付き合ってくれて、ありがとう」

 一緒に行ける友達ができて本当によかった。こっちに戻ってきてから友達ができるか少し心配だったから……
 
 「なぁ、そのチケット四枚あるなら、俺たちも行っていい?」

 隣から木村くんが思いもよらないことを言ったため、固まってしまった。

 「え……?」

 「ちょっと、盗み聞きやめてよ」

 「いや、盗み聞きって……この距離なんだから普通に聞こえるだろ」

 「聞こえても普通会話に入ってこないでしょ。女子の会話に」

 「悪かったって。いや、チケット四枚あるって言ってたし、二枚余るじゃんって思ってさ」

 「誘われるならまだしも、それは流石に図々しすぎるよ、充」

 「えー……」

 確かにチケットは二枚余る。けど……木村くんと悠を誘って四人でいくのは、まるでダブルデートみたいで気まずいかもしれない。

 「ほら、いろはちゃんだって困ってるでしょ!」

 「え、いや、そんなことないよ」

 咄嗟に、そんなことないと言ってしまったけれど、本心はだいぶ困っていた。
 どうしよう。

 「ほら、気にしてないってよ。悠も行くだろ? 日曜日なら男バスも休みだし」

 「……いろはが良いなら」

 え……良いのかな。
 これは普通に友達と遊びに行くと思えば良いのかな。もうわからなくなってきた……

 「私は大丈夫だけど……みんなが良ければ」

 「えー、いろはちゃん大丈夫? 無理してない?」

 「うん、大丈夫。みんなでワイワイ行くのも楽しそうだね」

 「いろはちゃんが良いなら良いけど……嫌ならいやって言ってね」

 「分かった。ありがとう」

 悠と水族館なんて小学校以来だな。あの時はお互いの家族と一緒に行ったよね。
 幼馴染としての距離感を忘れないように気をつけないとね。
 それでも、日曜日を楽しみにしていい?

 まだ私たちはお弁当を食べていたけど、木村くんと悠はすでに食べ終わり席を立とうとしていた。
 男の子は食べるのが早いなー。

 悠と木村くんが廊下に出たところで、二人に声をかけた男子がいた。
 同じバスケ部の人みたいで、運動部のためか声が大きく、廊下にいるのに何を喋っているのか筒抜けだった。

 「お、悠、充! 今から体育館行くのか? 俺も行くー! あ、そうだ。今度の日曜日みんなでカラオケ行かね? って話があるんだけど、どうよ」

 「いや、日曜日は予定がある」

 「そそ、俺たち予定あるんだよなー」

 「二人して……あー、デートか? ったくよー」

 「いや……友達と出かけるだけだ」

 「そそ、俺ら日曜日は水族館行くんだよなー」

 「男二人で水族館なわけないよな」

 「まぁ、2、2で行くな」

 「何それ、ダブルデートじゃん」

 やっぱりダブルデートって思うよね。やっぱり断ったほうがよかったのかな。
 今からでも遅くないかな……

 「だから、デートじゃないっての。普通に遊びに行くだけだって。まぁ、俺は彼女くるけど、もう一人は悠の幼馴染だから」

 「悠の幼馴染? どんな子?」

 「どんなって……窓側の席で俺の彼女の前に座ってる子だよ。ほら、ボブカットの」

 「あんな子いたっけ?」

 「二年からの転校生だな」

 「あー、だから見たことなかったんだ。あんな可愛い子いたら流石に覚えてる」

 「……そういうことだから、日曜日は無理だ」

 「なら、俺もカラオケやめて、そっち行こうかな」

 「「は?」」

 「いやいや、だって、デートじゃないんだろ? 俺もあの子と話してみたいし、一人増えたって良いだろ?」

 「無理だな。優待券四枚しかないんだよな」

 「はいはい、自分の分はちゃんと払いますよ」

 「お前……」

 バスケ部ってみんなこんなに強引なのだろうか。
 廊下で話している彼らの話を聞きながら、もう一人増えそうだなと思った。

 「宮本くん、あの……それ、私も行っていいかな?」

 「え……?」

 その声に卵焼きを食べようと口に運んだ箸が止まった。
 この声……悠の彼女だ。

 「あ、話が聞こえちゃって。その、佐藤くんも行くみたいな話が聞こえたから、私も行ってもいいか聞いてみようかなって思って」

 「お、それいいじゃん。ちょうど3、3になるし、お前も彼女がいた方が良いだろ?」

 「……他の二人にも聞かないとわからない」

 嘘でしょ……
 休みの日まで二人でいるところを見ないといけないの?
 友達と楽しく過ごしたくて、誘ったのに……

 「いろはちゃーん、この二人も日曜日一緒に行きたいらしいんだけど、良いかなー?」

 ドアのところから大きな声で木村くんに声をかけられ、これを断れる人はいるんだろうかと心の中でゴチる。
 嫌なことがあった時こそ、笑おう。大丈夫。

 「大丈夫だよ。ただ、チケットは四枚しかないけど、大丈夫かな?」

 「良いって言ってたから、その辺は気にしなくて大丈夫だから!」

 「分かった」

 これは、彼女のいる悠と水族館を楽しもうと思った罰なのかもしれない。

 
 
 
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