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一章 再会
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すぐ帰る時間になり立ち上がると、悠が「一緒に帰るか?」と声をかけてくれた。
え? 彼女いるのにいいのかな?
私とは幼馴染として変わらず過ごしたいってことなのかな。
お隣さんだから、どうせ帰り道は同じだもんね。
「うん……」
二人で並んで帰るのも久しぶりだなと懐かしく感じながらも、彼女のことに触れることはできなかった。
聞きたいけど、聞きたくない。
彼女とはいつから付き合ってるの? デートはした? 手は繋いだ? キスは……ううん。何も知りたくない。
だから、当たり障りのない会話しかできずに家路についた。
「おかえり、悠くんとは会えたの?」
「うん、同じクラスだったんだよね」
「それは悠くん驚いたんじゃない?」
「すっごく驚いてたね」
「……どうしたの? 嬉しそうじゃないわね」
「何も知らないうちは嬉しかったよ? でも……悠、彼女できてた」
「え……」
「じゃ、私もう部屋行くね」
「えっ、ちょっと……」
これ以上、お母さんと話していると泣いてしまいそうで、部屋へと駆け上がる。
今朝見た悠の彼女を思い出す。スラリと長い手足で身長も私と10cmくらい違うんじゃないかな。
彼女も運動部とかに入ってるのかな。
これから学校に行くたびに二人が一緒にいるところを見ないといけないのかな。
幸いなことに、クラスは違ったみたいだけど。
これでクラスまで一緒だったら、学校に行くのが嫌になってたかもしれない。
もう大会の応援にも行っちゃ駄目なのかな。
でも、友達なら応援くらい行くよね……?
気持ちを隠していれば、幼馴染として昔みたいに話すことは許されるのだろうか。
とりあえずは、女子の友達を作るところから始めないとかな。
見た感じ同じ小学校だった子はいないみたいだったし。
明日から悠は朝練が始まるみたいだから、登校時間はずらしたりする必要もないかな。
もー、お母さんがおばさんから悠のこと聞いてるから、私まで聞いてもいないのに、悠の情報が入ってくる。
彼女でもないのに、悠のことこんなに知ってるのは気持ち悪いよね……
お母さんには釘刺しとかないと。もう悠には彼女がいるんだから、私にそういう情報流さないようにってちゃんと言わないと……
彼女か……だめだ。すぐ二人のこと考えちゃう。
漫画でも読んで考えるのやめよう。恋愛ものはやめて、ミステリー系がいいかな。
それから、お母さんに夕食ができたと声が掛かるまで漫画に没頭した。
「そういえば、部活は入るの?」
「ううん、バイトしようかなって思ってるから部活は入らないかな」
「バイトしたいって前から言ってたものね。まぁ、もう二年生だからバイトくらい経験してもいいかなとは思うけど、遅くなるようなものはだめだからね」
「はーい」
自転車で通える距離で、何かないかなとスマホで探しているけど、ファストフード店ばかり。
私もよく利用するし、嫌いなわけじゃないけど、バイトするならもう少し落ち着いた雰囲気のところがいいなと思っているため、中々バイトが見つからない。
初バイトなんだから、選り好みしてる立場でもないとは思うんだけど……やっぱり、ちゃんと考えて応募しないと、続かないってことになりそうだからね。
「ねぇ、悠くんのことだけど……」
「悠の話はしたくない」
「気のせいってことはない? だって、梢ちゃんから何も聞いてないわよ」
「男の子なんてそんなもんじゃないの? 彼女できたからってわざわざ報告しないでしょ」
「でも……」
「やめて。本当に、悠に彼女ができたの。それは間違いじゃないから、もういいでしょ……」
「分かった。お母さんもしつこかったね。そうだ、一駅先にある水族館が最近リニューアルしたそうでね。お父さんが会社で優待券を四枚貰ってきたの。友達と行っておいで」
「いいの? ありがとう……まだクラスに友達いないから、頑張って作らないとだね」
「まだ期日まであるから、急がなくてもいいし、仲良くなった子と楽しんでらっしゃい」
「はーい」
部屋に戻り、ベッドに寝転がりながら水族館のチケットを見つめる。
悠に彼女がいなかったら、普通に誘ってただろうな……
無駄に引きずってしまった初恋をちゃんと整理することができるのかな。
これ以上拗らせたくないんだけどな……
本当に自分の気持ちなのにままならないな。
一ヶ月間は席替えはしないって言ってたから、それまで悠の隣でいられる。
そう思ってしまう時点でだめなのかな。
でも、悠はモテるから、私以外にも悠のことを好きな人はいっぱいいる。
私はその他大勢の中の一人にすぎない。それなら、忘れられるまでは、気付かれないように恋心を忍ばせよう。
この年まで一度も彼女を作らなかった悠が選んだ相手だもの。きっと素敵な子なんだろうな。
私もこれから悠の幼馴染として彼女と話すことがあるかもしれない。
その時は、変に思われないように、普通に話さなくちゃ。
女の子は勘が鋭いから、私が悠のこと好きだってバレないようにしないと。
きっと、近い距離に自分の彼氏のことを好きな子がいるのは良い気がしないよね。
大丈夫。私ももう幼い子供じゃない。
考えてること全てが表情に出てしまうようなこともなくなった。
笑顔の仮面を被り、愛想笑いも覚えた。
鏡の前で口角を上げる。大丈夫、明日も上手に笑えるから……
え? 彼女いるのにいいのかな?
私とは幼馴染として変わらず過ごしたいってことなのかな。
お隣さんだから、どうせ帰り道は同じだもんね。
「うん……」
二人で並んで帰るのも久しぶりだなと懐かしく感じながらも、彼女のことに触れることはできなかった。
聞きたいけど、聞きたくない。
彼女とはいつから付き合ってるの? デートはした? 手は繋いだ? キスは……ううん。何も知りたくない。
だから、当たり障りのない会話しかできずに家路についた。
「おかえり、悠くんとは会えたの?」
「うん、同じクラスだったんだよね」
「それは悠くん驚いたんじゃない?」
「すっごく驚いてたね」
「……どうしたの? 嬉しそうじゃないわね」
「何も知らないうちは嬉しかったよ? でも……悠、彼女できてた」
「え……」
「じゃ、私もう部屋行くね」
「えっ、ちょっと……」
これ以上、お母さんと話していると泣いてしまいそうで、部屋へと駆け上がる。
今朝見た悠の彼女を思い出す。スラリと長い手足で身長も私と10cmくらい違うんじゃないかな。
彼女も運動部とかに入ってるのかな。
これから学校に行くたびに二人が一緒にいるところを見ないといけないのかな。
幸いなことに、クラスは違ったみたいだけど。
これでクラスまで一緒だったら、学校に行くのが嫌になってたかもしれない。
もう大会の応援にも行っちゃ駄目なのかな。
でも、友達なら応援くらい行くよね……?
気持ちを隠していれば、幼馴染として昔みたいに話すことは許されるのだろうか。
とりあえずは、女子の友達を作るところから始めないとかな。
見た感じ同じ小学校だった子はいないみたいだったし。
明日から悠は朝練が始まるみたいだから、登校時間はずらしたりする必要もないかな。
もー、お母さんがおばさんから悠のこと聞いてるから、私まで聞いてもいないのに、悠の情報が入ってくる。
彼女でもないのに、悠のことこんなに知ってるのは気持ち悪いよね……
お母さんには釘刺しとかないと。もう悠には彼女がいるんだから、私にそういう情報流さないようにってちゃんと言わないと……
彼女か……だめだ。すぐ二人のこと考えちゃう。
漫画でも読んで考えるのやめよう。恋愛ものはやめて、ミステリー系がいいかな。
それから、お母さんに夕食ができたと声が掛かるまで漫画に没頭した。
「そういえば、部活は入るの?」
「ううん、バイトしようかなって思ってるから部活は入らないかな」
「バイトしたいって前から言ってたものね。まぁ、もう二年生だからバイトくらい経験してもいいかなとは思うけど、遅くなるようなものはだめだからね」
「はーい」
自転車で通える距離で、何かないかなとスマホで探しているけど、ファストフード店ばかり。
私もよく利用するし、嫌いなわけじゃないけど、バイトするならもう少し落ち着いた雰囲気のところがいいなと思っているため、中々バイトが見つからない。
初バイトなんだから、選り好みしてる立場でもないとは思うんだけど……やっぱり、ちゃんと考えて応募しないと、続かないってことになりそうだからね。
「ねぇ、悠くんのことだけど……」
「悠の話はしたくない」
「気のせいってことはない? だって、梢ちゃんから何も聞いてないわよ」
「男の子なんてそんなもんじゃないの? 彼女できたからってわざわざ報告しないでしょ」
「でも……」
「やめて。本当に、悠に彼女ができたの。それは間違いじゃないから、もういいでしょ……」
「分かった。お母さんもしつこかったね。そうだ、一駅先にある水族館が最近リニューアルしたそうでね。お父さんが会社で優待券を四枚貰ってきたの。友達と行っておいで」
「いいの? ありがとう……まだクラスに友達いないから、頑張って作らないとだね」
「まだ期日まであるから、急がなくてもいいし、仲良くなった子と楽しんでらっしゃい」
「はーい」
部屋に戻り、ベッドに寝転がりながら水族館のチケットを見つめる。
悠に彼女がいなかったら、普通に誘ってただろうな……
無駄に引きずってしまった初恋をちゃんと整理することができるのかな。
これ以上拗らせたくないんだけどな……
本当に自分の気持ちなのにままならないな。
一ヶ月間は席替えはしないって言ってたから、それまで悠の隣でいられる。
そう思ってしまう時点でだめなのかな。
でも、悠はモテるから、私以外にも悠のことを好きな人はいっぱいいる。
私はその他大勢の中の一人にすぎない。それなら、忘れられるまでは、気付かれないように恋心を忍ばせよう。
この年まで一度も彼女を作らなかった悠が選んだ相手だもの。きっと素敵な子なんだろうな。
私もこれから悠の幼馴染として彼女と話すことがあるかもしれない。
その時は、変に思われないように、普通に話さなくちゃ。
女の子は勘が鋭いから、私が悠のこと好きだってバレないようにしないと。
きっと、近い距離に自分の彼氏のことを好きな子がいるのは良い気がしないよね。
大丈夫。私ももう幼い子供じゃない。
考えてること全てが表情に出てしまうようなこともなくなった。
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