11 / 46
一章 再会
---悠視点②---
しおりを挟む
家に帰り、すぐに母さんを問い詰める。
「いろはが帰ってきてること、なんで言ってくれないんだよ!」
「何怒ってるのよ。別にそれくらいいいじゃない。あなたを驚かせたいなんて、いろはちゃん可愛いわねー」
「くそっ、言ってくれれば……」
「言ってたらなんだっていうのよ」
「……っ」
言ってくれてれば……いろはが帰ってくる前に栗原と別れていたかもしれない。
いろはを忘れるために、彼女と付き合ったから……
はぁ。俺、最低だ。
翌日から部活が再開され、朝練のため、体育館でバッシュを履いていると、隣に充が座った。
「昨日さ、いろはちゃんと帰ってたな?」
「あぁ……」
「まさか、いろはちゃんがこっちに戻ってくるなんて思わなかったし、同じ学校に通うなんてな……」
「あぁ……」
「もー、お前そればっかり。悪かったよ。俺もまさかこんなに早く再会するなんて思ってなかったから、無責任なこと言って……」
「あぁ……」
何を言ったところで、現状は変わらない。
いろはのことが好きなのに、俺は栗原と付き合っている。
いろはもきっと勘違いしているはずだ……俺が好きなのはいろはなのに。
「で、どうするんだ? 付き合って間もないけど……栗原のこと少しは好きになったりとか……」
「ないな。付き合って一月も経ってないのに、数年分のいろはへの想いが簡単に消えるわけないだろ」
「だよなー……まじで、ごめん」
「いや、俺も……はぁ、自業自得だ」
「やべっ、集合だ。とりあえず、今は部活頑張ろうぜ」
「そうだな」
モヤモヤした気持ちを晴らすように部活に打ち込み、顔を洗いスッキリさせたところで、教室へと向かう。
丁度、俺の教室から出てきたところだった鈴木がすれ違いざまに「宮本くん、おはよー」と声をかけて去っていった。
きっといろはに会いに行ったんだろうなと思ったら、予想通りだった。
一限目が終わると、充の彼女である佐々木がいろはに声をかけてID交換しているのを見て、これでいつでもいろはに連絡が取れるなと思った。
小学生の頃はお互いスマホを持っていなかったから、連絡手段もなく、中学に上がってスマホを買ってもらったが、親を通じてID聞くのもなんかなと思い、聞けずにここまできてしまった。
佐々木がいろはを昼に誘ってくれた時は、ありがたいと思った。転校してきたばかりで、高校で友達もいない状態だから、もし、一人だったら俺が一緒にと思っていたから。
隣で、いろはと佐々木が水族館の話をしていて、またクラゲを見てそうだよなと思って話を聞いていたら、充が話に割って入って驚いた。
まさか、行くと言い出すとは……何を考えてるんだか。
後で問い詰めようと廊下に出ると、今度は佐藤が日曜日一緒に行くと言い出した。
何を言ってるんだと思っていたら、次は栗原も行くといいだし、次から次へとなんなんだと思った。
いろはも断るに断りにくいと思ったんだろう。知らない人間が二人増えて困っていただろうに、了承してしまった。
俺がもう少し立ち回れれば良かったんだけどな。ごめんな、いろは。
最近、栗原との関係をどうするか悩んでいる。
お試しで付き合ったけど、そろそろやめようと伝えようかと何度か思った。
だけど、まだお試しで付き合うことになって一月も経っていない。俺の勝手に振り回していいんだろうか。
「あれ、悠はバスケやらないのか?」
「今はいいや」
昼を食べた後は、だいたい体育館でバスケをして遊んでいるが、今日はなんかする気になれなかった。
「そういえば、さっきなんでいろは達の話に割って入った?」
「あー、あれな。俺のせいで、栗原と付き合うことになっちゃっただろ? でも、悠はずっといろはちゃんのことが好きだっただろ? だから、いろはちゃんと遊ばせてあげたいなーって思って……まぁ、こんなことになっちゃったけど」
「はぁー、お前、次からはもう少し考えろよな」
「悪かったってー」
「当日は、瑠奈がいろはちゃんの相手すると思うから、お前は……まぁ、適当に頑張れな?」
「人ごとだと思って……はぁ、どうすっかなー」
水族館行った後とかに、栗原にははっきりと言った方がいいんだろうか。
いつまでも俺の都合に付き合わせてる方が時間の無駄だし、やっぱり早めに言ったほうが栗原のためにもなるよな。
日曜日は、電車とバスの時間をスマホで調べて乗り継ぎが良い感じになるように家を出ると、丁度隣からいろはが出て来たところだった。
動きやすいようにスニーカーを選んだんだろうなとか、水色のショートパンツが似合ってるなとか、一目見ただけでいろはへの想いが駆け巡る。
「おはよう」と満面の笑みを向けてくれる彼女を思わず抱きしめそうになるも、今の俺には彼女がいるからと思いとどまる。
待ち合わせ場所に着くと、充と佐々木、栗原が来ていた。
いろはと栗原は今日初めて話すから、自己紹介するのはわかっていたが、俺と付き合ってるとわざわざ言うとは思わなくて、反応しそうになるのをなんとか堪える。
いろはも特に気にした様子は見せず、栗原と仲良くしたいと言っていた。
俺の彼女と仲良くか……いろはにとって、俺って本当にただの幼馴染なんだよな。
はぁ……
「いろはが帰ってきてること、なんで言ってくれないんだよ!」
「何怒ってるのよ。別にそれくらいいいじゃない。あなたを驚かせたいなんて、いろはちゃん可愛いわねー」
「くそっ、言ってくれれば……」
「言ってたらなんだっていうのよ」
「……っ」
言ってくれてれば……いろはが帰ってくる前に栗原と別れていたかもしれない。
いろはを忘れるために、彼女と付き合ったから……
はぁ。俺、最低だ。
翌日から部活が再開され、朝練のため、体育館でバッシュを履いていると、隣に充が座った。
「昨日さ、いろはちゃんと帰ってたな?」
「あぁ……」
「まさか、いろはちゃんがこっちに戻ってくるなんて思わなかったし、同じ学校に通うなんてな……」
「あぁ……」
「もー、お前そればっかり。悪かったよ。俺もまさかこんなに早く再会するなんて思ってなかったから、無責任なこと言って……」
「あぁ……」
何を言ったところで、現状は変わらない。
いろはのことが好きなのに、俺は栗原と付き合っている。
いろはもきっと勘違いしているはずだ……俺が好きなのはいろはなのに。
「で、どうするんだ? 付き合って間もないけど……栗原のこと少しは好きになったりとか……」
「ないな。付き合って一月も経ってないのに、数年分のいろはへの想いが簡単に消えるわけないだろ」
「だよなー……まじで、ごめん」
「いや、俺も……はぁ、自業自得だ」
「やべっ、集合だ。とりあえず、今は部活頑張ろうぜ」
「そうだな」
モヤモヤした気持ちを晴らすように部活に打ち込み、顔を洗いスッキリさせたところで、教室へと向かう。
丁度、俺の教室から出てきたところだった鈴木がすれ違いざまに「宮本くん、おはよー」と声をかけて去っていった。
きっといろはに会いに行ったんだろうなと思ったら、予想通りだった。
一限目が終わると、充の彼女である佐々木がいろはに声をかけてID交換しているのを見て、これでいつでもいろはに連絡が取れるなと思った。
小学生の頃はお互いスマホを持っていなかったから、連絡手段もなく、中学に上がってスマホを買ってもらったが、親を通じてID聞くのもなんかなと思い、聞けずにここまできてしまった。
佐々木がいろはを昼に誘ってくれた時は、ありがたいと思った。転校してきたばかりで、高校で友達もいない状態だから、もし、一人だったら俺が一緒にと思っていたから。
隣で、いろはと佐々木が水族館の話をしていて、またクラゲを見てそうだよなと思って話を聞いていたら、充が話に割って入って驚いた。
まさか、行くと言い出すとは……何を考えてるんだか。
後で問い詰めようと廊下に出ると、今度は佐藤が日曜日一緒に行くと言い出した。
何を言ってるんだと思っていたら、次は栗原も行くといいだし、次から次へとなんなんだと思った。
いろはも断るに断りにくいと思ったんだろう。知らない人間が二人増えて困っていただろうに、了承してしまった。
俺がもう少し立ち回れれば良かったんだけどな。ごめんな、いろは。
最近、栗原との関係をどうするか悩んでいる。
お試しで付き合ったけど、そろそろやめようと伝えようかと何度か思った。
だけど、まだお試しで付き合うことになって一月も経っていない。俺の勝手に振り回していいんだろうか。
「あれ、悠はバスケやらないのか?」
「今はいいや」
昼を食べた後は、だいたい体育館でバスケをして遊んでいるが、今日はなんかする気になれなかった。
「そういえば、さっきなんでいろは達の話に割って入った?」
「あー、あれな。俺のせいで、栗原と付き合うことになっちゃっただろ? でも、悠はずっといろはちゃんのことが好きだっただろ? だから、いろはちゃんと遊ばせてあげたいなーって思って……まぁ、こんなことになっちゃったけど」
「はぁー、お前、次からはもう少し考えろよな」
「悪かったってー」
「当日は、瑠奈がいろはちゃんの相手すると思うから、お前は……まぁ、適当に頑張れな?」
「人ごとだと思って……はぁ、どうすっかなー」
水族館行った後とかに、栗原にははっきりと言った方がいいんだろうか。
いつまでも俺の都合に付き合わせてる方が時間の無駄だし、やっぱり早めに言ったほうが栗原のためにもなるよな。
日曜日は、電車とバスの時間をスマホで調べて乗り継ぎが良い感じになるように家を出ると、丁度隣からいろはが出て来たところだった。
動きやすいようにスニーカーを選んだんだろうなとか、水色のショートパンツが似合ってるなとか、一目見ただけでいろはへの想いが駆け巡る。
「おはよう」と満面の笑みを向けてくれる彼女を思わず抱きしめそうになるも、今の俺には彼女がいるからと思いとどまる。
待ち合わせ場所に着くと、充と佐々木、栗原が来ていた。
いろはと栗原は今日初めて話すから、自己紹介するのはわかっていたが、俺と付き合ってるとわざわざ言うとは思わなくて、反応しそうになるのをなんとか堪える。
いろはも特に気にした様子は見せず、栗原と仲良くしたいと言っていた。
俺の彼女と仲良くか……いろはにとって、俺って本当にただの幼馴染なんだよな。
はぁ……
33
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
クルーエル・ワールドの軌跡
木風 麦
青春
とある女子生徒と出会ったことによって、偶然か必然か、開かなかった記憶の扉が、身近な人物たちによって開けられていく。
人間の情が絡み合う、複雑で悲しい因縁を紐解いていく。記憶を閉じ込めた者と、記憶を糧に生きた者が織り成す物語。

思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる