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一章 再会

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 新しい高校は、白いセーラー服で夏と冬で生地の厚さやデザインが少し違っていた。

 前の学校の制服も可愛かったけど、セーラー服って初めて着るからなんか浮かれちゃうな。
 鏡の前でくるくると回りながら、後ろ姿を確認したりしていると、お母さんが部屋に入ってきた。

 「セーラー服いいわね。本当に、最近の制服って可愛いわよね。羨ましい。お母さんの時もこんな可愛い制服だったらよかったのに」

 「まぁ、そういう時代かもね。セーラー服ってあんまりないから、私も嬉しい」

 「さて、そろそろ行かないとまずいんじゃない?」

 「そうだね。流石に行かないとだね。今日は悠も朝練ないみたいだし、遭遇しないように少し遅めに出ようと思ったんだよね」

 「本当はすぐに会いたかったくせに、意地張っちゃって」

 「悠の驚いた顔が見たくなっちゃったんだもん」

 「悠くん驚くでしょうね。クラス一緒だといいわね?」

 「うーん、流石にクラスまで一緒は無理じゃないかな。期待しないでおくよ」

 「気をつけてね。行ってらっしゃい」

 「行ってきまーす」

 こちらはまだ良い感じに桜が残っていて、風が吹くたびに花びらが舞い上がり、歓迎されているような気持ちになった。
 今週末は雨予報だったから、桜も見納めかな。

 学校へ着くと、担任と一緒に教室へと向かう。
 私のクラスは二年一組か。悠はどこのクラスになったかな。

 担任がドアを開けると、みんなの視線が集中する。
 転校生ってこの瞬間が一番嫌だよね……

 そう思いながら、さっと周りを見渡すと……悠だ。
 同じクラスだったんだ……嬉しい。

 悠は私と目が合うと、目を見開き微動だにしなかった。
 やった! すごい驚いてる! あとで、話しかけてみよう。
 前みたいに話してくれるかな。

 成長した彼を見て、離れていた歳月を感じ、寂しいと思った。
 少年から青年に変わっていく彼を隣で見ていたかったな……

 先生に一言でいいから挨拶するようにと言われ、当たり障りのない挨拶をして席へと移動した。

 「柚木いろはです。四年間、親の転勤で大阪で過ごしていましたが、三日前にこちらに戻ってきました。宜しくお願いします」

 「そういうことだ。元々はここが地元だから、仲良くしてやれよー。柚木の席は、そこの空いてる席だからな。隣は宮本っていうから何かあれば、聞いても大丈夫だからな」

 「はい。ありがとうございます」

 まさか悠の隣の席になるなんて思ってなかった。
 進級初日ということもあり、名前順で席についていたから、隣になれたんだね。
 いまだに、驚きを隠せていない悠の隣に席をかける。
 今すぐ話しかけたい衝動に駆られながらも、ホームルームが終わるのを待つ。

 先生が、教室から出ていくと、すぐに悠が声をかけて来た。

 「いろは……なのか?」

 「うん。四年ぶりだね、悠」

 「なんで……」
 
 なんでってなんだろう。喜んでくれてる感じじゃないけど……戻ってこない方が悠は良かったのかな。
 
 「えっと、お父さんが本社に移動になったから、戻ってこれたの」

 「母さんそんなこと一言も……」

 「驚かせたいから内緒にしてってお願いしてたんだけど、駄目だった?」

 「駄目……じゃない。けど……」

 どうしたんだろう。悠が何を考えてるのか全然読み取ることが出来ない。
 四年の歳月はこんなにも意思の疎通が取れなくなるものなのだろうか。

 どうしたものかと思っていると、悠を呼ぶ声に急激に心が冷えていった。

 「宮本ー、彼女が呼んでるぞ」

 「え、あー……悪い、ちょっと席外すな」

 そういうと、悠は彼女と呼ばれた人の元へと向かった。
 私とは違い、背が高く長く綺麗な髪。
 本当に私とは真逆……そっか、悠の好きなタイプは彼女みたいな人だったんだね。
 それなら、私には一ミリも希望なんてなかったんだ。
 ふわふわと柔らかいボブカットの髪を摘み、髪伸ばせば良かったのかなとか思ったけど、そういうことじゃないんだろうなと思った。

 彼女いつできたんだろう。そんな話おばさんから聞いてないけど……
 男の子だから、いちいちお母さんに報告とかしないのかもしれないな。

 悠と同じクラスで隣の席なんて、転校初日からついてると浮かれていたのに……天国から地獄に落とされた気分だった。
 こんなことになるんだったら、帰ってくるんじゃなかったな……
 向こうで、何も知らずに送られてくる悠の写真を眺めているだけで良かったのに……

 「きみさ、もしかしてだけど……悠の幼馴染のいろはちゃんかな?」

 机の一点を見つめ、涙を堪えていると男子が声を掛けてきた。
 少し茶色く柔らかそうな髪に爽やかな笑顔で、話しやすそうな男の子だった。

 「え? えっと、悠とは幼馴染だけど……」

 「あ、俺は、木村きむら みつるって言って、悠とは同じ部活で、まぁ良く連んでるんだよね」

 「そうなんだ」

 悠の友達がどうして私のこと知ってるんだろう。
 私の話をしてたのかな……どんな話だろう。気になるけど……

 「悠から隣の家に住んでた女の子がいたって話を聞いてたからさ、さっき自己紹介した時に、もしかしてって思ったんだよね」

 「そっか。悠、私の話をしてくれてたんだね」

 「そりゃ、こんな可愛い幼馴染がいたら、話したくもなるだろう」

 「木村くんは、うまいなー。でも、悠のタイプは私の真逆みたいだから……」

 そう言いながら、悠と彼女の方を見る。二人とも背が高くて絵になるな。
 二人を見ていたくなくて、窓の外に目を向ける。今朝は歓迎されているような気分だったのにな。

 「いや、あれは……あー……俺からは何も言えないけど。あれ、もしかして、これ俺が悪いんじゃ……」

 「え?」

 彼はそれからも小さくぶつぶつと独り言を言っていたため、なんて言っているのか聞き取れなかった。
 何が悪かったんだろう。
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