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五章
ガーデンパーティー
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庭園へ向かうと、拍手で迎えられ、「結婚おめでとうございます」と使用人達から声を掛けられ、手を振りながら「ありがとう」と声を掛け、親族の席へと向かう。
ガーデンパーティーでは、使用人達にも楽しんで貰いたかった為、貴族用のテーブル席と使用人用の立食形式の席を設けた。
貴族席と使用人席は、中央の噴水を境に左右に分かれているので、使用人達も叔父様達の視線を気にせず楽しめる様になっている。
まずは、親族の席へ挨拶へ向かう。
親族とは言っても、父方の弟家族と母方の祖父母が来ているだけで人数は多くはない。
「本日は、遠いところ、私達のためにお越し頂き、ありがとうございます」
私が挨拶をすると、叔母様が立ち上がり、私の手を握る。
「そんな堅苦しい挨拶はやめて頂戴。今日は本当に素敵なお式だったわ。あなたより美しい花嫁はどこを探してもいないわね」
「もう、叔母様ったら。ありがとうございます」
「それで、こちらが新郎よね」
そういうと、叔母様は、扇子を開き口元を隠すと、目を細めてレンの方へ視線を向ける。
予め、レンの素性は話してあるとは言え、やはり少し緊張してしまう。
私がしっかりとレンを紹介しなければ。
「はい。私の夫となったレンです。レン、こちらはマチルダ叔母様よ。小さい頃から可愛がって貰っているの」
レンには、今日までに親族についての情報は伝えてあるので、名前を聞くだけで、お父様の弟の奥様だということが、分かるはず。
「お初にお目に掛かります。レンと申します。本日は、式にご出席頂き、ありがとうございました。お会い出来て光栄です」
胸に手を当て、優雅に礼をとるレンに関心しながら、横目で叔母様の様子を窺う。
叔母様は、口元に当てた扇子をパチリと閉じて、笑顔を向ける。
「丁寧にご挨拶ありがとう。平民と聞いていたから、心配だったけれど、マナーにも問題ないみたいね。何より2人並んだ姿がとてもお似合いよ。可愛い姪っ子なの。必ず大事にすると私達にも誓って欲しいわ」
叔母様の言葉に、周りで様子を見ていた叔父様達も深く頷く。
その光景を見て、胸が熱くなり、込み上げるものがある。
「叔母様・・・みんな・・・」
レンは、隣にいる私の肩に手をやり、グッと抱き寄せ、私を見つめると、優しく微笑み、叔母様たちに視線を向ける。
「この命に変えても、彼女を第一に考え、大事にし、守ると誓います」
レンの誓いに、叔母様の瞳に涙の膜が張る。
涙が溢れ落ちないように、目元にハンカチを当てると、「しっかりと誓いを聞き届けたわ。2人とも幸せにね」と満面の笑みを向けた。
少し食事をしながら、雑談をし、席を外す。
噴水の向こう側にある使用人達のスペースへ向かうと、それぞれ楽しそうに食事を楽しんでくれていて、ホッとした。
私とレンが来た事に気付き、すぐに使用人達に囲まれてしまう。
「メルティアナ様、結婚おめでとうございます」
「まさかお嬢様の式に出ることが出来るなんて思っても見ませんでした。一生の思い出です」
使用人達から一斉に祝いの言葉を掛けられる。
「我が家で働く使用人達は、みんな私にとって家族みたいなものよ。私の方こそ、皆に見守られて式を挙げる事が出来て嬉しかったわ。来てくれて、ありがとう」
「お嬢様・・・」
あちこちで、鼻を啜る音が聞こえてくる。
もう、皆涙脆いんだから・・・私も人の事言えないけれど。
「さぁ、湿っぽくなってはダメよ。今日は、めでたい日なのよ。日頃の感謝も込めて、皆にお礼がしたいと思って、ハンドクリームを作ってみたの。良かったら受け取ってくれるかしら?」
使用人達は、どうしても手が荒れがちになってしまって、酷いときは、切れてしまうこともある為、保湿効果の高いハンドクリームを自作してみたのだ。
男性にも女性にも使いやすい香りを用いて、瓶もコロンと丸いタイプと、スタイリッシュな四角いタイプを用意した。
ガラス部分にも香りが分かるように、花の絵が彫られている。
毎日使うものだから、机の上に置きっぱなしにしておいても、可愛く、そして、格好良い為、雑然としないだろう。
「お嬢様、すでに私達は、お嬢様が作られたのど飴やパウンドケーキなど頂いており、感謝しております。それなのに、私達の為に、ハンドクリームまで・・・なんとお礼を申し上げていいのか」
彼女がそういうと、周りの使用人達も大きく頷き同意する。
「そんなに恐縮しないで欲しいわ。素直にありがとうって言って使って貰えると、私も準備した甲斐があるわね」
「お嬢様・・・本当にありがとうございます。私達、お嬢様にお仕え出来て、本当に幸せでした。これからも、ここでお嬢様の幸せを願っております」
すると、周囲にいた使用人達は、一斉に膝をつき、敬意を示す。
こんなに慕って貰えて、本当に私は幸せ者だわ。
「皆、ありがとう。これからは、レンと2人で新しく家族を作って行くわね。さぁ、皆、立ち上がって、食事を楽しんで頂戴」
皆に祝福され、ガーデンパーティーは幕を閉じた。
ガーデンパーティーでは、使用人達にも楽しんで貰いたかった為、貴族用のテーブル席と使用人用の立食形式の席を設けた。
貴族席と使用人席は、中央の噴水を境に左右に分かれているので、使用人達も叔父様達の視線を気にせず楽しめる様になっている。
まずは、親族の席へ挨拶へ向かう。
親族とは言っても、父方の弟家族と母方の祖父母が来ているだけで人数は多くはない。
「本日は、遠いところ、私達のためにお越し頂き、ありがとうございます」
私が挨拶をすると、叔母様が立ち上がり、私の手を握る。
「そんな堅苦しい挨拶はやめて頂戴。今日は本当に素敵なお式だったわ。あなたより美しい花嫁はどこを探してもいないわね」
「もう、叔母様ったら。ありがとうございます」
「それで、こちらが新郎よね」
そういうと、叔母様は、扇子を開き口元を隠すと、目を細めてレンの方へ視線を向ける。
予め、レンの素性は話してあるとは言え、やはり少し緊張してしまう。
私がしっかりとレンを紹介しなければ。
「はい。私の夫となったレンです。レン、こちらはマチルダ叔母様よ。小さい頃から可愛がって貰っているの」
レンには、今日までに親族についての情報は伝えてあるので、名前を聞くだけで、お父様の弟の奥様だということが、分かるはず。
「お初にお目に掛かります。レンと申します。本日は、式にご出席頂き、ありがとうございました。お会い出来て光栄です」
胸に手を当て、優雅に礼をとるレンに関心しながら、横目で叔母様の様子を窺う。
叔母様は、口元に当てた扇子をパチリと閉じて、笑顔を向ける。
「丁寧にご挨拶ありがとう。平民と聞いていたから、心配だったけれど、マナーにも問題ないみたいね。何より2人並んだ姿がとてもお似合いよ。可愛い姪っ子なの。必ず大事にすると私達にも誓って欲しいわ」
叔母様の言葉に、周りで様子を見ていた叔父様達も深く頷く。
その光景を見て、胸が熱くなり、込み上げるものがある。
「叔母様・・・みんな・・・」
レンは、隣にいる私の肩に手をやり、グッと抱き寄せ、私を見つめると、優しく微笑み、叔母様たちに視線を向ける。
「この命に変えても、彼女を第一に考え、大事にし、守ると誓います」
レンの誓いに、叔母様の瞳に涙の膜が張る。
涙が溢れ落ちないように、目元にハンカチを当てると、「しっかりと誓いを聞き届けたわ。2人とも幸せにね」と満面の笑みを向けた。
少し食事をしながら、雑談をし、席を外す。
噴水の向こう側にある使用人達のスペースへ向かうと、それぞれ楽しそうに食事を楽しんでくれていて、ホッとした。
私とレンが来た事に気付き、すぐに使用人達に囲まれてしまう。
「メルティアナ様、結婚おめでとうございます」
「まさかお嬢様の式に出ることが出来るなんて思っても見ませんでした。一生の思い出です」
使用人達から一斉に祝いの言葉を掛けられる。
「我が家で働く使用人達は、みんな私にとって家族みたいなものよ。私の方こそ、皆に見守られて式を挙げる事が出来て嬉しかったわ。来てくれて、ありがとう」
「お嬢様・・・」
あちこちで、鼻を啜る音が聞こえてくる。
もう、皆涙脆いんだから・・・私も人の事言えないけれど。
「さぁ、湿っぽくなってはダメよ。今日は、めでたい日なのよ。日頃の感謝も込めて、皆にお礼がしたいと思って、ハンドクリームを作ってみたの。良かったら受け取ってくれるかしら?」
使用人達は、どうしても手が荒れがちになってしまって、酷いときは、切れてしまうこともある為、保湿効果の高いハンドクリームを自作してみたのだ。
男性にも女性にも使いやすい香りを用いて、瓶もコロンと丸いタイプと、スタイリッシュな四角いタイプを用意した。
ガラス部分にも香りが分かるように、花の絵が彫られている。
毎日使うものだから、机の上に置きっぱなしにしておいても、可愛く、そして、格好良い為、雑然としないだろう。
「お嬢様、すでに私達は、お嬢様が作られたのど飴やパウンドケーキなど頂いており、感謝しております。それなのに、私達の為に、ハンドクリームまで・・・なんとお礼を申し上げていいのか」
彼女がそういうと、周りの使用人達も大きく頷き同意する。
「そんなに恐縮しないで欲しいわ。素直にありがとうって言って使って貰えると、私も準備した甲斐があるわね」
「お嬢様・・・本当にありがとうございます。私達、お嬢様にお仕え出来て、本当に幸せでした。これからも、ここでお嬢様の幸せを願っております」
すると、周囲にいた使用人達は、一斉に膝をつき、敬意を示す。
こんなに慕って貰えて、本当に私は幸せ者だわ。
「皆、ありがとう。これからは、レンと2人で新しく家族を作って行くわね。さぁ、皆、立ち上がって、食事を楽しんで頂戴」
皆に祝福され、ガーデンパーティーは幕を閉じた。
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