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五章

日頃の感謝を・・・

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 リス達が冬眠に入り、森も静かになり、少し寂しさも感じつつも、リコリスとレンと幸せな時間を過ごす事が出来た。

 本来であれば、式の準備で忙しくしているはずだけど、全てお兄様が準備を整えてくれるとの事だったので、のんびり過ごしている。

 貴族令嬢としての結婚であれば、多方面に招待状を送るなどしなければならないが、今回は、平民として式を挙げるので、誰にも招待状は送っていない。

 我が領にある教会で、今まで世話になった使用人や護衛騎士に見守られながら、式を挙げることになっている。
 式のあとは、邸の庭園で、無礼講で、ガーデンパーティーを開くと聞いた。

 今まで、使用人達には世話になって来たので、美味しいものを沢山食べて、楽しんで貰えたら嬉しい。
 でも、全てお兄様にお任せして、皆に恩返しが出来ないのも気になるわね・・・。

 既に、のど飴などは、邸に送って皆に使って貰ってるから、違うもので、何か私が出来るお礼は無いかしら。

 掃除や洗い物で、男女共に手が荒れたりすると思うから、ハンドクリームなんてどうかしら。
 蜜蝋を用意して、植物からオイルを抽出したり、花からエキスを抽出して精油を作って、ほんのり香るハンドクリームとか良いかもしれない。

 抽出方法は異なるけれど、ジャスミンとカモミールとレモン、ミントあたりの香りで作ろうかしら。
 折角だから、可愛い瓶に入れたいわね。
 女性用は、コロンとした丸い瓶にしましょう。
 あとは、瓶にそれぞれの花を細工して貰って、見て直ぐに香りが分かる様にしましょう。
 男性用は、可愛くなり過ぎないように、四角い瓶が良いかしらね。
 ジャスミンとカモミールは甘い香りだから、女性用にして、レモンとミントを男性用に用意しよう。

 瓶を注文したいから、一度お兄様に連絡を取らないといけないわね。

 「リコリス、お兄様に繋いでくれる?」

 私の膝からテーブルに飛び移り、リコリスの瞳が赤く染まっていく。

 『やあ、メル。どうしたのかな?』

 「お兄様、おはようございます。ちょっと作りたいものがありまして、瓶を沢山注文したいのですが、取り扱っている商会をご存知ですか?」

 『瓶?何か特別に細工をしたりするのかな?それとも普通に売っている瓶を購入したいだけかな?』

 「市販の瓶ではなく、特別に細工をして頂きたいのです」

 『それなら、職人を紹介してあげるよ。丁度、メルのドレスのサイズ調整をしなければいけないから、一度、邸に戻っておいで。その時に、瓶の注文もするといい。アランに話を通しておくから、アランの転移の魔道具で、帰っておいで。あぁ、レンのもサイズ調整したいから、一緒においで』

 「ありがとうございます。アランさんに声を掛けて見ますね」

 お兄様との通話を終えて、後ろ控えているレンに声を掛ける。

 「聞いていたでしょう?お兄様が、レンも連れて邸に戻ってくる様にって言っていたわ」

 「はい。私の衣装も調整が必要とのことでしたね」

 「えぇ。アランさんの魔道具で、邸に帰って来るようにって言っていたけど、今からアランさんのところに行っても大丈夫かしら?忙しそうにしていなかった?」

 「いえ、特に普段と変わらない様子でしたので、特別忙しいというわけではないと思いますが・・・聞いてみないとなんとも言えないですね」

 今から、家に訪ねに行っても大丈夫かしら。
 出来れば、お仕事の邪魔はしたくないけれど・・・。

 どうしようか考えていると、扉をノックする音が聞こえ、返事をする前に、扉が豪快に開いた。

 「さぁ、妹ちゃん。行こうか」

 「アランさん・・・」

 仕事の邪魔にならない様にと考えていたけれど、その必要はなかったみたいだわ。
 相変わらず、行動力が凄いわ。

 「フェルからさっき連絡貰ってね。今は急ぎの仕事もなかったから、すぐ行けるよ」

 特にこれといって持っていかなければならないものもないし、邸に行けば、ドレスや着替えもあるから、特に準備するものもないから、このまま行っても問題ないわね。

 あ、でも、レンは大丈夫かしら。

 「レン。貴方は、何か持っていく物などあるなら、今の内に準備を。私は邸にいけば、着替えもあるから、このまま何も持たずに行けるから」

 「私も、邸につけば、部屋に着替えなど置いてありますので、このまま飛んでも問題ありません」

 「じゃ、2人とも準備出来たってことで、行こうか」

 アランさんが、転移の魔道具を起動すると、視界が歪み、気付けば邸の前に立っていた。
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