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五章
返事を・・・
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ルディさんに、早々に返事をしなければいけないと思いつつも、仕事で疲れている所にお邪魔するのも気が引けたので、お休みの日に少し時間を頂くことにした。
「メルティアナ。やはり、私も一緒に・・・」
「いいえ。私がちゃんとお伝えしないといけないことだから、レンは、家で待っていて欲しいわ」
「前回の事もありますし・・・」
「前回の事は・・・、トーリが居てくれたから大丈夫だったし、今回もトーリを連れて行くから大丈夫よ」
「・・・分かりました」
レンは、納得していなさそうな顔はしているものの、私の意見を尊重して引いてくれた。
彼を安心させる様に、気持ちを込めて、ぎゅっと抱きしめる。
そんな私に、覆いかぶさるように、抱きしめ返してくれる彼が、本当に愛おしい。
言葉にしなくても、愛を感じる事が出来るのね。
「メルティアナ。お気をつけて」
「えぇ。行ってくるわね」
レンと別れて、リコリスと共にトーリの元へと向かう。
相変わらず、私が到着する前に、馬車の前で、姿勢良く立っている。
最近のトーリは、リコリスに餌をあげるのが楽しいのか、ポケットに木の実を隠し持っているので、リコリスが、トーリを見かけると、肩に飛び乗る様になってしまった。
「メルティアナ様。おはようございます。リコリスもおはよう」
「トーリ、おはよう。今日も宜しくね」
挨拶している間に、リコリスは、トーリの掌の上で、木の実を抱えている。
餌付けされてるわね。
「さぁ、リコリス。馬車に乗るから戻っていらっしゃい」
私の声に反応し、リコリスは、トーリに挨拶する様に、頬をてしてしと叩いてから、私の肩に飛び移る。
さぁ・・・ルディさんの元へ参りましょう。
人を愛する気持ちを知ってしまった今では、ルディさんにお断りの返事をしなければならない事が、本当に心苦しい。
こんな私を想い、気持ちを伝えてくれた。
その気持ちは嬉しいけれど・・・私にはレンがいるから受け入れることは出来ない。
私もレンに気持ちを拒否されたらと考えると、胸が苦しくなる。
ルディさんは・・・ううん。私がいくら考えたところで、ルディさんの気持ちを量る事なんて出来ないわ。
複雑な気持ちを抱えたまま馬車は進み、ルディさんの家に到着した。
馬車から降り、トーリが家の扉をノックすると、すぐにルディさんが出迎えてくれた。
「メル。いらっしゃい。わざわざ来てくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ、お休みの日に時間を頂いてしまって」
「メルの為に、時間を作る事なんて、苦でもなんでもないよ。むしろ、会えるのは、嬉しいからね」
嬉しそうに微笑むルディさんに、罪悪感が沸いてくる。
ごめんなさい・・・。
「・・・そっか。メルの顔を見れば、どんな話しなのか、想像が出来ちゃうのは、困ったな。立ち話もなんだから、どうぞ」
話す前から、どんな話になるのか察してしまう程に、私は顔に出てしまっていたのね。
なんてこと・・・。
ルディさんに、促されソファーに腰を掛けた。
トーリは、近くの壁際に待機している。
「それで・・・良くない返事を聞くことになりそうかな?」
「ごめんなさい・・・」
「メル。謝らないで。どんな答えになろうとも、メルが悪いわけじゃない。人を好きになるのは、自分でどうにか出来るものじゃないからね」
「私・・・ルディさんに気持ちを伝えられて、良く考えてみたの。ルディさんと一緒にいると楽しいし、安心感があるって思ったわ。でも・・・愛しいと思う気持ちとは違うって気付いてしまったの」
「そう・・・。相手は、レンさんかな?」
「どうして・・・?」
「あぁ、メルが見ていないところで、彼がメルを見つめる瞳は、愛しいものを想う熱が込められていたからね。見ていて、こちらが胸を締め付けられる様な。メルに気持ちを伝えるつもりもないのだろうと思っていたが・・・」
「私、何も気付かずに・・・。レンから、気持ちを伝えられたわけではなくて・・・。私が自分の気持ちに気付いて、勢いで言ってしまったの」
「・・・そっか。その気持ちは私にも良く分かるからね。メルへの気持ちを抑え切れずに、告白して、その後・・・まぁ、その感じだと、レンさんとは上手く行ったみたいで、良かったよ」
「え・・・?」
「メルが幸せなら、私も嬉しいよ。まぁ、正直なところ、レンさんが羨ましいけどね。出来れば、私が隣でメルを幸せにしたかったからね・・・」
「ルディさん・・・。本当に、ありがとう。気持ちは本当に嬉しかったの」
「分かってるよ。メル、気に病まないで。メルが、いつまでも私の事を気にして、気に病んだら、気持ちを伝えなければ良かったと思ってしまうからね。メルさえ良ければ、今までの様に友人として接してくれると嬉しいかな」
「私の方こそ、これからも友人として接して貰えると嬉しいわ」
「じゃあ、そういうことで、今日はもうお帰り。レンさんが心配してるんじゃない?」
「どうして・・・」
「いやー、流石にね。トーリさんの目も鋭いし、前回の事気にしてるのが分かるからね。早く帰って安心させてあげて」
「・・・ありがとう」
ルディさんに、促され、早々に馬車に乗り込む。
本当に、優しい人。
私だけでなく、レンの事まで気にかけてくれて・・・。
こんな優しくて素敵な人なのに、どうして、私は、彼を愛すことが出来なかったのだろう。
申し訳なさで、涙が滲む。
馬車が、森へ到着すると、レンが待っていた。
家で待っていると思ったのに・・・。
「お嬢様。お帰りなさいませ」
「ただいま。レン」
「お嬢様・・・?少し目が赤い様ですが、何が・・・」
そういうと、レンは、トーリの方に視線を向ける。
「レンが、心配する様な事は、何も無かった。ただ、メルティアナ様の中で何か思う事でもあったのでしょう」
「そうですか・・・。家までは、馬で相乗りしても、宜しいでしょうか?」
「えぇ、構わないわ。それじゃ、トーリ、今日もありがとう」
「いえ、お気をつけてお戻りください」
レンが、馬に跨り、その前に横に腰を掛ける。
ゆっくりと馬を走らせる彼の体温を感じながら、また良く分からない涙が零れ落ちた。
「メルティアナ。やはり、私も一緒に・・・」
「いいえ。私がちゃんとお伝えしないといけないことだから、レンは、家で待っていて欲しいわ」
「前回の事もありますし・・・」
「前回の事は・・・、トーリが居てくれたから大丈夫だったし、今回もトーリを連れて行くから大丈夫よ」
「・・・分かりました」
レンは、納得していなさそうな顔はしているものの、私の意見を尊重して引いてくれた。
彼を安心させる様に、気持ちを込めて、ぎゅっと抱きしめる。
そんな私に、覆いかぶさるように、抱きしめ返してくれる彼が、本当に愛おしい。
言葉にしなくても、愛を感じる事が出来るのね。
「メルティアナ。お気をつけて」
「えぇ。行ってくるわね」
レンと別れて、リコリスと共にトーリの元へと向かう。
相変わらず、私が到着する前に、馬車の前で、姿勢良く立っている。
最近のトーリは、リコリスに餌をあげるのが楽しいのか、ポケットに木の実を隠し持っているので、リコリスが、トーリを見かけると、肩に飛び乗る様になってしまった。
「メルティアナ様。おはようございます。リコリスもおはよう」
「トーリ、おはよう。今日も宜しくね」
挨拶している間に、リコリスは、トーリの掌の上で、木の実を抱えている。
餌付けされてるわね。
「さぁ、リコリス。馬車に乗るから戻っていらっしゃい」
私の声に反応し、リコリスは、トーリに挨拶する様に、頬をてしてしと叩いてから、私の肩に飛び移る。
さぁ・・・ルディさんの元へ参りましょう。
人を愛する気持ちを知ってしまった今では、ルディさんにお断りの返事をしなければならない事が、本当に心苦しい。
こんな私を想い、気持ちを伝えてくれた。
その気持ちは嬉しいけれど・・・私にはレンがいるから受け入れることは出来ない。
私もレンに気持ちを拒否されたらと考えると、胸が苦しくなる。
ルディさんは・・・ううん。私がいくら考えたところで、ルディさんの気持ちを量る事なんて出来ないわ。
複雑な気持ちを抱えたまま馬車は進み、ルディさんの家に到着した。
馬車から降り、トーリが家の扉をノックすると、すぐにルディさんが出迎えてくれた。
「メル。いらっしゃい。わざわざ来てくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ、お休みの日に時間を頂いてしまって」
「メルの為に、時間を作る事なんて、苦でもなんでもないよ。むしろ、会えるのは、嬉しいからね」
嬉しそうに微笑むルディさんに、罪悪感が沸いてくる。
ごめんなさい・・・。
「・・・そっか。メルの顔を見れば、どんな話しなのか、想像が出来ちゃうのは、困ったな。立ち話もなんだから、どうぞ」
話す前から、どんな話になるのか察してしまう程に、私は顔に出てしまっていたのね。
なんてこと・・・。
ルディさんに、促されソファーに腰を掛けた。
トーリは、近くの壁際に待機している。
「それで・・・良くない返事を聞くことになりそうかな?」
「ごめんなさい・・・」
「メル。謝らないで。どんな答えになろうとも、メルが悪いわけじゃない。人を好きになるのは、自分でどうにか出来るものじゃないからね」
「私・・・ルディさんに気持ちを伝えられて、良く考えてみたの。ルディさんと一緒にいると楽しいし、安心感があるって思ったわ。でも・・・愛しいと思う気持ちとは違うって気付いてしまったの」
「そう・・・。相手は、レンさんかな?」
「どうして・・・?」
「あぁ、メルが見ていないところで、彼がメルを見つめる瞳は、愛しいものを想う熱が込められていたからね。見ていて、こちらが胸を締め付けられる様な。メルに気持ちを伝えるつもりもないのだろうと思っていたが・・・」
「私、何も気付かずに・・・。レンから、気持ちを伝えられたわけではなくて・・・。私が自分の気持ちに気付いて、勢いで言ってしまったの」
「・・・そっか。その気持ちは私にも良く分かるからね。メルへの気持ちを抑え切れずに、告白して、その後・・・まぁ、その感じだと、レンさんとは上手く行ったみたいで、良かったよ」
「え・・・?」
「メルが幸せなら、私も嬉しいよ。まぁ、正直なところ、レンさんが羨ましいけどね。出来れば、私が隣でメルを幸せにしたかったからね・・・」
「ルディさん・・・。本当に、ありがとう。気持ちは本当に嬉しかったの」
「分かってるよ。メル、気に病まないで。メルが、いつまでも私の事を気にして、気に病んだら、気持ちを伝えなければ良かったと思ってしまうからね。メルさえ良ければ、今までの様に友人として接してくれると嬉しいかな」
「私の方こそ、これからも友人として接して貰えると嬉しいわ」
「じゃあ、そういうことで、今日はもうお帰り。レンさんが心配してるんじゃない?」
「どうして・・・」
「いやー、流石にね。トーリさんの目も鋭いし、前回の事気にしてるのが分かるからね。早く帰って安心させてあげて」
「・・・ありがとう」
ルディさんに、促され、早々に馬車に乗り込む。
本当に、優しい人。
私だけでなく、レンの事まで気にかけてくれて・・・。
こんな優しくて素敵な人なのに、どうして、私は、彼を愛すことが出来なかったのだろう。
申し訳なさで、涙が滲む。
馬車が、森へ到着すると、レンが待っていた。
家で待っていると思ったのに・・・。
「お嬢様。お帰りなさいませ」
「ただいま。レン」
「お嬢様・・・?少し目が赤い様ですが、何が・・・」
そういうと、レンは、トーリの方に視線を向ける。
「レンが、心配する様な事は、何も無かった。ただ、メルティアナ様の中で何か思う事でもあったのでしょう」
「そうですか・・・。家までは、馬で相乗りしても、宜しいでしょうか?」
「えぇ、構わないわ。それじゃ、トーリ、今日もありがとう」
「いえ、お気をつけてお戻りください」
レンが、馬に跨り、その前に横に腰を掛ける。
ゆっくりと馬を走らせる彼の体温を感じながら、また良く分からない涙が零れ落ちた。
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