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五章
溢れる想い
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目が覚めると、ベッドに横になっていた。
「私・・・いつの間に寝たのかしら」
「お嬢様っ!お目覚めになりましたか!体調は、如何ですか?」
「レン・・・?」
身体を起こそうとしたところで、一瞬目の前が暗くなり、倒れそうになったところを、レンが素早く、支えてくれた。
「お嬢様。無理はなさらずに。水分を取った方が良いので、このまま支えておりますので、こちらをお飲みください」
「ありがとう・・・」
一口、水を飲むと、喉が渇いていたようで、そのままコップに入っている水を飲み干した。
「レン。私はどうかしたのかしら?」
「家に着くなり、お倒れになりました。すぐにアランさんがお医者様と邸の使用人を連れてきてくれまして、着替えなどは公爵家の使用人達がしてくれました」
「まぁ、ガルベリア家の皆さんには、ご迷惑をお掛けしてしまったわね。後日、お礼に伺わなければ・・・」
「お嬢様。今は、身体を休める事だけをお考え下さい。お医者様によると、慣れない環境で疲れが出たのだろうとの事でした。昨日も碌に眠れず、食事もちゃんとされていなかった様ですし、緊張など色々なものが重なって、お倒れになられたのかと」
森での生活は、リコリスや子ウサギちゃんたちに癒されながらの生活だったけれど、確かに、一人で生活するということは、自分でやらなければいけない事ばかりで、薬を作るなど、仕事もしていたから、自分でも気付かない内に、疲労が溜まっていっていたのかもしれない。
「自己管理も出来ないなんて、ダメね」
「私も、お嬢様の状態を把握出来ず申し訳ございません」
「レンが謝る事ではないわ。これからは、もう少し自分の体調に気を掛ける様にするわね」
「はい。そうして頂けると、私も嬉しいです。お嬢様が倒れた時は、生きた心地がしませんでした」
「心配させて、ごめんなさいね」
「さぁ、お嬢様。そろそろ横になって下さい。今日は、朝まで私が側についておりますので」
「レン・・・。あの、手・・・眠るまで、手を繋いでいて貰える?」
「え?」
「いえ、何でもないわ。お休みなさい」
恥ずかしくて、レンに背を向ける様に、横になる。
弱っているからと、子供の様に、甘えるなんて・・・。
「・・・お嬢様。私の手で、良ければ、喜んで」
レンの方を振り向くと、私に手を差し出していた。
レンも恥ずかしいのか、暗がりの中でも、耳が色付いているのが見て取れた。
差し出された手に、手を重ねると、ひんやりとした体温が心地良い。
手を繋いで、街をまわったりしていたのとは、状況が違うからか、胸が高鳴ってしまう。
「お嬢様、眠れそうにありませんか?」
「そうね。帰ってきてから、今まで寝ていたみたいだから、中々寝付け無さそうだわ」
「そうですか・・・。それでは、横になったままで、少し話をしますか?」
「話相手になってくれるの?」
「勿論です」
「ありがとう」
そうはいっても、何を話せばいいのか思い浮かばないわね。
レンは、何かあるかしら?
「お嬢様、今日は・・・お見合い如何でしたか?」
レンが、言いにくそうに、今日のお見合いについて聞いてきた。
レンも、お見合いが成功して欲しかったのかしら・・・。
「お相手のハルト様は、とても優しくて気遣いの出来る方だったわ。私の薬を購入したいと言って下さったの」
「・・・っ。良いお相手だったのですね。それは、良かったです」
繋がれた手に、少し力が入り、レンの表情を伺おうとするも、顔を背けられて、今どんな気持ちでいるのか分からなかった。
「良い方だったわ。自信に満ち溢れてて、幸せにする自信があると仰っていて・・・。女性なら誰しも惹かれる様なお方だったわ」
「・・・・・・」
「でもね。今回、婚約には至らなかったのよ」
「え・・・?」
「ハルト様が、私に想い人が居るなら、婚約するとお互いが不幸になると仰ったの。家のために嫁ぐのが、貴族令嬢としての義務であるというのに、ハルト様はそんなものには縛られないお方なのね。私の気持ちを優先した上で、相手と上手くいかなければ、婚約しようとまで仰ってくださったのよ。凄い方よね」
「想い人ですか・・・?」
更に握られた手に力が入る。
今度は、顔は逸らされる事なく、見つめられる。
「私も、ハルト様に言われるまで、自覚が無かったのだけれど・・・。私、いつの間にか好きになっていたんだわ」
「・・・・・・」
政略結婚が当たり前な貴族社会では、恋愛などと言ったものは、物語の中だけのものだと思っていた。
まさか、自分が誰かに恋するようになるなんて。
自覚した途端、好きという気持ちは、急速に高まって行き、想いが溢れ出す。
すぐにでも、気持ちを伝えたい。
あなたを愛していると。
身体を起こし、しっかりとレンを見つめる。
「私・・・。レン、貴方を愛しているの。貴方が、側にいないなんて考えられないの・・・」
言葉なく、身動き一つしないレンを見つめ続ける。
レン。貴方は、私をどう想っているの?
私は、ただの護衛対象で、主人でしかないのかしら?
「私・・・いつの間に寝たのかしら」
「お嬢様っ!お目覚めになりましたか!体調は、如何ですか?」
「レン・・・?」
身体を起こそうとしたところで、一瞬目の前が暗くなり、倒れそうになったところを、レンが素早く、支えてくれた。
「お嬢様。無理はなさらずに。水分を取った方が良いので、このまま支えておりますので、こちらをお飲みください」
「ありがとう・・・」
一口、水を飲むと、喉が渇いていたようで、そのままコップに入っている水を飲み干した。
「レン。私はどうかしたのかしら?」
「家に着くなり、お倒れになりました。すぐにアランさんがお医者様と邸の使用人を連れてきてくれまして、着替えなどは公爵家の使用人達がしてくれました」
「まぁ、ガルベリア家の皆さんには、ご迷惑をお掛けしてしまったわね。後日、お礼に伺わなければ・・・」
「お嬢様。今は、身体を休める事だけをお考え下さい。お医者様によると、慣れない環境で疲れが出たのだろうとの事でした。昨日も碌に眠れず、食事もちゃんとされていなかった様ですし、緊張など色々なものが重なって、お倒れになられたのかと」
森での生活は、リコリスや子ウサギちゃんたちに癒されながらの生活だったけれど、確かに、一人で生活するということは、自分でやらなければいけない事ばかりで、薬を作るなど、仕事もしていたから、自分でも気付かない内に、疲労が溜まっていっていたのかもしれない。
「自己管理も出来ないなんて、ダメね」
「私も、お嬢様の状態を把握出来ず申し訳ございません」
「レンが謝る事ではないわ。これからは、もう少し自分の体調に気を掛ける様にするわね」
「はい。そうして頂けると、私も嬉しいです。お嬢様が倒れた時は、生きた心地がしませんでした」
「心配させて、ごめんなさいね」
「さぁ、お嬢様。そろそろ横になって下さい。今日は、朝まで私が側についておりますので」
「レン・・・。あの、手・・・眠るまで、手を繋いでいて貰える?」
「え?」
「いえ、何でもないわ。お休みなさい」
恥ずかしくて、レンに背を向ける様に、横になる。
弱っているからと、子供の様に、甘えるなんて・・・。
「・・・お嬢様。私の手で、良ければ、喜んで」
レンの方を振り向くと、私に手を差し出していた。
レンも恥ずかしいのか、暗がりの中でも、耳が色付いているのが見て取れた。
差し出された手に、手を重ねると、ひんやりとした体温が心地良い。
手を繋いで、街をまわったりしていたのとは、状況が違うからか、胸が高鳴ってしまう。
「お嬢様、眠れそうにありませんか?」
「そうね。帰ってきてから、今まで寝ていたみたいだから、中々寝付け無さそうだわ」
「そうですか・・・。それでは、横になったままで、少し話をしますか?」
「話相手になってくれるの?」
「勿論です」
「ありがとう」
そうはいっても、何を話せばいいのか思い浮かばないわね。
レンは、何かあるかしら?
「お嬢様、今日は・・・お見合い如何でしたか?」
レンが、言いにくそうに、今日のお見合いについて聞いてきた。
レンも、お見合いが成功して欲しかったのかしら・・・。
「お相手のハルト様は、とても優しくて気遣いの出来る方だったわ。私の薬を購入したいと言って下さったの」
「・・・っ。良いお相手だったのですね。それは、良かったです」
繋がれた手に、少し力が入り、レンの表情を伺おうとするも、顔を背けられて、今どんな気持ちでいるのか分からなかった。
「良い方だったわ。自信に満ち溢れてて、幸せにする自信があると仰っていて・・・。女性なら誰しも惹かれる様なお方だったわ」
「・・・・・・」
「でもね。今回、婚約には至らなかったのよ」
「え・・・?」
「ハルト様が、私に想い人が居るなら、婚約するとお互いが不幸になると仰ったの。家のために嫁ぐのが、貴族令嬢としての義務であるというのに、ハルト様はそんなものには縛られないお方なのね。私の気持ちを優先した上で、相手と上手くいかなければ、婚約しようとまで仰ってくださったのよ。凄い方よね」
「想い人ですか・・・?」
更に握られた手に力が入る。
今度は、顔は逸らされる事なく、見つめられる。
「私も、ハルト様に言われるまで、自覚が無かったのだけれど・・・。私、いつの間にか好きになっていたんだわ」
「・・・・・・」
政略結婚が当たり前な貴族社会では、恋愛などと言ったものは、物語の中だけのものだと思っていた。
まさか、自分が誰かに恋するようになるなんて。
自覚した途端、好きという気持ちは、急速に高まって行き、想いが溢れ出す。
すぐにでも、気持ちを伝えたい。
あなたを愛していると。
身体を起こし、しっかりとレンを見つめる。
「私・・・。レン、貴方を愛しているの。貴方が、側にいないなんて考えられないの・・・」
言葉なく、身動き一つしないレンを見つめ続ける。
レン。貴方は、私をどう想っているの?
私は、ただの護衛対象で、主人でしかないのかしら?
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