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五章
レンと街へ③
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店内へ入ると、あのカフェの系列店だけあって、女性客が多かった。
男性客がいないわけではないけど、女性と2人で来ている・・・恋人同士という感じね。
私とレンも周りからは、そう見られてるのかしら・・・。
チラリと隣にいるレンを見上げる。
レンは、特に気にした様子もなく、変わりない。
「どうかしましたか?」
「いいえ。なんでもないわ。お店の雰囲気も系列店だけあって、花が沢山飾られていて、可愛らしいわね」
「はい。私も中に入るのは、はじめてですが、メルティアナが良く行くカフェに似た感じですね。個室の用意はないですが、仕切りで分けられている席があるそうなので、そちらの席を予約致しました」
「ありがとう」
私が、店内で帽子を外しても目立たない様にする為に、席を予約してくれたのね。
でも・・・目立つのは、私だけではない。
レンも十分に店内にいる女性たちの視線を集めている。
仕切られている席にして貰って良かった。
これだと、落ち着いて食事も出来そうに無いもの。
そうして、案内された席は・・・。
「こちらは、カップルシートとなっております。ごゆっくりお過ごし下さい」
そう言って、メニューを置いて、お店の人は去っていった。
2人掛けのソファーに、2人でどうしたものかと固まってしまった。
2人で座ったら、距離が近過ぎるわね。
でも、今更席を変更なんて出来ないわよね。
外で並んでいる人たちも居たし・・・。
「メルティアナ・・・。申し訳ございません。私の調べが不十分だった様です。今直ぐに店員を呼び戻して」
「いえ、このままで良いわ。混んでいるし、今から席の変更は難しいと思うわ。少し恥ずかしいけど、レンが問題なければ、座りましょう?」
「私は・・・メルティアナが良いのであれば・・・」
そう言って、出来るだけ端に寄る様にソファーに腰を掛けたレンに、クスリと笑いながら、私も席についた。
自分から、席の変更は必要ないと言ったけれど、これは・・・思った以上に近いわ。
少し動いただけで、肩が触れ合ってしまいそうで、落ち着かない。
世の中の恋人達は、普段からこんなに近い距離で過ごしているのかしら・・・。
「メルティアナ。何にしますか?この店のオススメは、オムライスというものなのですが、食べてみますか?」
レンの指差したメニューを見ると、とても美味しそうな料理が載っていた。
ふわふわの卵が乗っているのね。
美味しそうだわ。
「とても美味しそうね。オススメと書いてあるくらいだもの。きっと美味しいのよね。それにするわ」
返事をしながら、レンの方に顔を向けると、至近距離で絡む視線に、お互い固まってしまう。
数秒見つめあって、どちらともなく、視線を逸らす。
下を向き、熱った頬を冷やす様に両手を添える。
高鳴る心臓は、あまりにも煩く耳に響く。
「あの、その・・・食後のデザートは何になさいますか?」
「えっ?あ、そうね・・・。何が良いかしら」
お互いに、気まずさを誤魔化すように、再度メニューに視線を落とす。
どれも、恋人と食べることを想定されていて、一つのお皿に、大きめのデザートが乗っていた。
一人用は、メニューに見当たらない。
カップルシートと言っていたから、メニューもそれに合わせてあるのかしら。
どうしようかしら・・・。
顔は向けずに、視線だけをレンに向ける。
「・・・どれも美味しそうではありますし、メルティアナが好きなものをお選びください。取り皿を一つ貰い、私の分はそちらに取り分けますので」
取り分け易いものが良いわよね。
柔らかくて、崩れやすいものは、やめた方がいいわね。
普通のケーキが1番無難かしらね。
「それでは、このケーキにしようかしら。レンも食べられるかしら?」
「はい。美味しそうですね」
そう言いながら、薄らと微笑んだレンを、横目に見ることが出来た。
本当に、甘いものが好きなのね。
レンの好きなものが、一つ知れて良かったわ。
それからは、お互いに、少しぎこちなさを残しつつも食事を堪能する事が出来た。
市井では、安価で、こんなに美味しいものがあるのね。
これからは、もっと街に出て、市井での暮らしを知っていきたいわ。
男性客がいないわけではないけど、女性と2人で来ている・・・恋人同士という感じね。
私とレンも周りからは、そう見られてるのかしら・・・。
チラリと隣にいるレンを見上げる。
レンは、特に気にした様子もなく、変わりない。
「どうかしましたか?」
「いいえ。なんでもないわ。お店の雰囲気も系列店だけあって、花が沢山飾られていて、可愛らしいわね」
「はい。私も中に入るのは、はじめてですが、メルティアナが良く行くカフェに似た感じですね。個室の用意はないですが、仕切りで分けられている席があるそうなので、そちらの席を予約致しました」
「ありがとう」
私が、店内で帽子を外しても目立たない様にする為に、席を予約してくれたのね。
でも・・・目立つのは、私だけではない。
レンも十分に店内にいる女性たちの視線を集めている。
仕切られている席にして貰って良かった。
これだと、落ち着いて食事も出来そうに無いもの。
そうして、案内された席は・・・。
「こちらは、カップルシートとなっております。ごゆっくりお過ごし下さい」
そう言って、メニューを置いて、お店の人は去っていった。
2人掛けのソファーに、2人でどうしたものかと固まってしまった。
2人で座ったら、距離が近過ぎるわね。
でも、今更席を変更なんて出来ないわよね。
外で並んでいる人たちも居たし・・・。
「メルティアナ・・・。申し訳ございません。私の調べが不十分だった様です。今直ぐに店員を呼び戻して」
「いえ、このままで良いわ。混んでいるし、今から席の変更は難しいと思うわ。少し恥ずかしいけど、レンが問題なければ、座りましょう?」
「私は・・・メルティアナが良いのであれば・・・」
そう言って、出来るだけ端に寄る様にソファーに腰を掛けたレンに、クスリと笑いながら、私も席についた。
自分から、席の変更は必要ないと言ったけれど、これは・・・思った以上に近いわ。
少し動いただけで、肩が触れ合ってしまいそうで、落ち着かない。
世の中の恋人達は、普段からこんなに近い距離で過ごしているのかしら・・・。
「メルティアナ。何にしますか?この店のオススメは、オムライスというものなのですが、食べてみますか?」
レンの指差したメニューを見ると、とても美味しそうな料理が載っていた。
ふわふわの卵が乗っているのね。
美味しそうだわ。
「とても美味しそうね。オススメと書いてあるくらいだもの。きっと美味しいのよね。それにするわ」
返事をしながら、レンの方に顔を向けると、至近距離で絡む視線に、お互い固まってしまう。
数秒見つめあって、どちらともなく、視線を逸らす。
下を向き、熱った頬を冷やす様に両手を添える。
高鳴る心臓は、あまりにも煩く耳に響く。
「あの、その・・・食後のデザートは何になさいますか?」
「えっ?あ、そうね・・・。何が良いかしら」
お互いに、気まずさを誤魔化すように、再度メニューに視線を落とす。
どれも、恋人と食べることを想定されていて、一つのお皿に、大きめのデザートが乗っていた。
一人用は、メニューに見当たらない。
カップルシートと言っていたから、メニューもそれに合わせてあるのかしら。
どうしようかしら・・・。
顔は向けずに、視線だけをレンに向ける。
「・・・どれも美味しそうではありますし、メルティアナが好きなものをお選びください。取り皿を一つ貰い、私の分はそちらに取り分けますので」
取り分け易いものが良いわよね。
柔らかくて、崩れやすいものは、やめた方がいいわね。
普通のケーキが1番無難かしらね。
「それでは、このケーキにしようかしら。レンも食べられるかしら?」
「はい。美味しそうですね」
そう言いながら、薄らと微笑んだレンを、横目に見ることが出来た。
本当に、甘いものが好きなのね。
レンの好きなものが、一つ知れて良かったわ。
それからは、お互いに、少しぎこちなさを残しつつも食事を堪能する事が出来た。
市井では、安価で、こんなに美味しいものがあるのね。
これからは、もっと街に出て、市井での暮らしを知っていきたいわ。
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