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五章

恥ずかしい

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 夕食の前に、トーリから伝言を預かったと、レンから紙を一枚と小さなブーケを一つ渡される。
 手紙と花?何かしら・・・。

 読んでみると、ルディさんが、リリーさんの事で、謝罪したいと言うことと、お詫びとして花を添えた事などが書かれていた。
 リリーさんの事・・・。
 お酒の席で、彼女に確認するって言っていたけれど、もう確認に行ったのね。
 リリーさんのことは、ルディさんが謝る事ではないのに。

 今度の休みに、会いたいと書いてあるわね。
 リリーさんの事については、気にしなくて大丈夫と伝えても、きっとルディさんは気にするわよね。
 素直に謝罪を受け入れた方が、きっとルディさんも安心するわよね。

 「レン。トーリに、了承の旨、伝えて貰える?」

 「畏まりました」

 リリーさんとの話し合いは、どうなったのだろう。
 謝罪というからには、リリーさんは、ルディさんからお叱りを受けたのかしら・・・。
 好きな人から叱られるのは、きっと辛いわよね。

 私との事なんて、大したことではないのに。
 危害を加えられたわけではないし、言葉で少し言い募られただけで・・・。

 でも、ルディさんが女性と親しくなる度に、リリーさんがあのような態度を取るのは問題かもしれないから、今回の事は、良い機会だったのかもしれない。

 これ以上、私がリリーさんの事を考えてもしょうがないわよね。
 トーリには、リリーさんと会うのはやめた方が良いと言われているから、結局、薬の納品もトーリが行く事になった。
 リリーさんも、私の顔を見たくないと思うし、お互いの為に、その方が良いのかもしれない。
 私は、街に行く機会も少ないから、そう簡単に遭遇することもないし。

 ルディさんとリリーさんの間で、話がなされたという事であれば、もうこの件は済んだこと。
 
 「お嬢様、食事の準備が整っております」

 「ありがとう。今、行くわ」

 レンの作ってくれた夕食を食べ、明日に備えて早く寝る事にした。
 
 ◇ ◇ ◇

 朝食を済ませて、一旦、レンは家に戻り、着替えに行く。
 私も、外出着に着替える。

 リコリスの首輪と同じボルドーのリボンがアクセントになっている、白いワンピースを着る。
 ブーツもリボンにカラーを合わせる。
 これだけでは、肌寒いので、厚手のストールを纏う。

 準備が整った所で、レンが迎えに来た。

 「お嬢様、準備は宜しいでしょうか?」

 「えぇ、行きましょう」

 部屋の扉を開け、レンに声を掛ける。
 
 「レン?」

 行きましょうと声を掛けたのに、レンが動こうとしない。
 どうかしたのかしら。

 「いえ・・・その、服の色がまるで・・・」

 「服の色?」

 何かおかしかったかしら。
 白いワンピースに、ボルドーのリボン・・・。

 目の前にいる、レンを見つめる。
 白髪はくはつに、黒に近い濃い赤い瞳。

 ・・・・・・これ、レンの色じゃない!
 私、なんで今まで気付かなかったの!

 「ごめんなさいっ、気付かなかったわ。今すぐ着替えてくるから待ってて貰えるかしら?」

 「いえ、大丈夫です。お嬢様、そのままで良いので、行きましょう」

 「え?でも・・・」

 「私が、余計な事を申しました。とても良くお似合いです。隣を歩けるのが、嬉しいです」

 「・・・・・・ありがとう?」

 レンの色を纏っていると思うと、なんとも恥ずかしい気持ちになるけど、レンがこのままで良いというので、待たせてしまうのも悪いので、そのまま街へ行く事になった。
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