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五章
ルディ視点①
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お酒を飲んで、ソファーで寝てしまったメルを抱き上げ、メルの家へ向かう。
トーリさんとレンさんは、静かに後ろに続く。
いつ、メルを渡せと言われるのか、気にしつつも扉の前まで来ると、トーリさんが、待ったを掛けた。
「レンに、メルティアナ様を渡して頂けますか?」
「部屋までだめですか?」
「流石に、メルティアナ様の許可なく、お部屋に入れることは出来ません」
「・・・・・・分かりました」
この前の祭りの時と同じ様に、メルをレンさんに渡す。
この体温が離れていく瞬間が、とても切なく辛い。
「メル、今日も楽しかったよ。またね」
優しく起こさない様に、額に口付けを落とす。
「また・・・貴方は」
「今回も見逃してください」
「はぁ・・・。それでは、家までお送りしますので、どうぞ」
「送られなくても大丈夫なんですけど」
「お酒も大分飲まれてますし、何かあっては、メルティアナ様が気にされますので、無事に家まで着いたか確認する必要があります」
「なるほど。メルの為か」
「はい」
「じゃ、お願いしないわけには行かないですね」
「レン。後の事は頼みますよ」
「あぁ、分かった」
レンさんが、メルを抱いて家に入っていくのを見送る。
あぁ・・・彼もメルが好きなのか。
メルを見つめる瞳が、とても優しく、それでいて熱を帯びている。
普段の彼とは違う。
メルが、見ていないからこそ、向けられる視線。
メルのすぐ近くにいることを許されている彼が羨ましい。
私もメルの側に居たい。
まだ、知り合ってそんなに経っていないけれど、想いは薄れる事なく、深まっていく。
早いかもしれないが、この想いを伝えたい。
その前に・・・リリーは、一体何をメルに言ったのだろう。
アランさんが、忠告と言ったということは、リリーはメルにとって良くない存在という事になる。
明日、リリーを訪ねに行って、確認しなければ。
少し甘えたところのある子だが、悪い事が出来る様な子ではないのだが・・・。
◇ ◇ ◇
店を訪ねると、リリーが元気に出迎える。
「あっ、ルディ兄!いらっしゃい」
「叔母さんは、体調どう?これ、差し入れ」
「美味しそうな果物が一杯!お母さんも喜ぶよ!お母さんは、すっかり元気になって、今は裏で休憩中だよ」
「そっか。それなら、叔母さんが戻ったら、交代でリリーが休憩に入るってことかな?」
「うん。折角だから、一緒にお茶しようよ」
「あぁ、丁度、リリーに話があってきたから、少しその辺見て回って待ってるよ」
「話?なんだろう。でも、ルディ兄と一緒にお茶出来るの楽しみ!」
嬉しそうな顔をするリリーに、これからする話を考えると、複雑な気持ちになる。
これから休憩で、お茶をするなら、何かお菓子でも買って行こうか。
メルのパウンドケーキ美味しいけど、メルに敵対心を持っているってアランさんが言っていたから、流石に出せないか。
お菓子の詰め合わせでも買って行くかな。
10分ほど、お菓子を買いながら、街をぶらりと歩き、店に戻ると、叔母さんが戻ってきていた。
「叔母さん、体調良さそうで良かったよ」
「やぁ、ルディじゃないか。お陰様で、元気だよ。果物もありがとね。後で、美味しく頂くよ。それにしても、相変わらずいい男だねー。恋人の1人でもいないのかい?」
「恋人の1人でも・・・ね」
「何だい?その言い方・・・良い人でもいるのかい?」
「想い人は居るけど、その想いが実かは分からないかな」
「そうかい・・・。その相手は、うちの子じゃないんだろう?」
「え?リリー?まさか」
「だろうと思ったけどね。リリーだったら、裏でルディが戻ってくるの待っているから行っておやり」
「あぁ、そうするよ。叔母さん、また」
リリーが待っている部屋の前で、一度深呼吸をする。
これから、聞かなければいけないことは、リリーに取っては良い話ではない。
出来るなら、揉める様なことはしたくないが・・・。
ノックをして、部屋に入ると、リリーがいつもの様に笑顔で迎えてくれる。
こうしてみると、小さい頃から何も変わらないんだけどな。
「ルディ兄!待ってたよ!さぁ、座って」
「待たせてごめんな。これ、休憩中にでも食べればと思って買ってきたから、どうぞ」
「わぁ、ありがとうー!ルディ兄大好き!」
「はいはい。大きな声を出すと、お店まで聞こえちゃうから、声抑えてね」
「ふふっ、ルディ兄が来ると嬉しくて、声が大きくなっちゃう」
うーん・・・。
やっぱり、昔から変わった様には見えない。
メルに、害をなす?
そんな風には見えないのにな・・・。
トーリさんとレンさんは、静かに後ろに続く。
いつ、メルを渡せと言われるのか、気にしつつも扉の前まで来ると、トーリさんが、待ったを掛けた。
「レンに、メルティアナ様を渡して頂けますか?」
「部屋までだめですか?」
「流石に、メルティアナ様の許可なく、お部屋に入れることは出来ません」
「・・・・・・分かりました」
この前の祭りの時と同じ様に、メルをレンさんに渡す。
この体温が離れていく瞬間が、とても切なく辛い。
「メル、今日も楽しかったよ。またね」
優しく起こさない様に、額に口付けを落とす。
「また・・・貴方は」
「今回も見逃してください」
「はぁ・・・。それでは、家までお送りしますので、どうぞ」
「送られなくても大丈夫なんですけど」
「お酒も大分飲まれてますし、何かあっては、メルティアナ様が気にされますので、無事に家まで着いたか確認する必要があります」
「なるほど。メルの為か」
「はい」
「じゃ、お願いしないわけには行かないですね」
「レン。後の事は頼みますよ」
「あぁ、分かった」
レンさんが、メルを抱いて家に入っていくのを見送る。
あぁ・・・彼もメルが好きなのか。
メルを見つめる瞳が、とても優しく、それでいて熱を帯びている。
普段の彼とは違う。
メルが、見ていないからこそ、向けられる視線。
メルのすぐ近くにいることを許されている彼が羨ましい。
私もメルの側に居たい。
まだ、知り合ってそんなに経っていないけれど、想いは薄れる事なく、深まっていく。
早いかもしれないが、この想いを伝えたい。
その前に・・・リリーは、一体何をメルに言ったのだろう。
アランさんが、忠告と言ったということは、リリーはメルにとって良くない存在という事になる。
明日、リリーを訪ねに行って、確認しなければ。
少し甘えたところのある子だが、悪い事が出来る様な子ではないのだが・・・。
◇ ◇ ◇
店を訪ねると、リリーが元気に出迎える。
「あっ、ルディ兄!いらっしゃい」
「叔母さんは、体調どう?これ、差し入れ」
「美味しそうな果物が一杯!お母さんも喜ぶよ!お母さんは、すっかり元気になって、今は裏で休憩中だよ」
「そっか。それなら、叔母さんが戻ったら、交代でリリーが休憩に入るってことかな?」
「うん。折角だから、一緒にお茶しようよ」
「あぁ、丁度、リリーに話があってきたから、少しその辺見て回って待ってるよ」
「話?なんだろう。でも、ルディ兄と一緒にお茶出来るの楽しみ!」
嬉しそうな顔をするリリーに、これからする話を考えると、複雑な気持ちになる。
これから休憩で、お茶をするなら、何かお菓子でも買って行こうか。
メルのパウンドケーキ美味しいけど、メルに敵対心を持っているってアランさんが言っていたから、流石に出せないか。
お菓子の詰め合わせでも買って行くかな。
10分ほど、お菓子を買いながら、街をぶらりと歩き、店に戻ると、叔母さんが戻ってきていた。
「叔母さん、体調良さそうで良かったよ」
「やぁ、ルディじゃないか。お陰様で、元気だよ。果物もありがとね。後で、美味しく頂くよ。それにしても、相変わらずいい男だねー。恋人の1人でもいないのかい?」
「恋人の1人でも・・・ね」
「何だい?その言い方・・・良い人でもいるのかい?」
「想い人は居るけど、その想いが実かは分からないかな」
「そうかい・・・。その相手は、うちの子じゃないんだろう?」
「え?リリー?まさか」
「だろうと思ったけどね。リリーだったら、裏でルディが戻ってくるの待っているから行っておやり」
「あぁ、そうするよ。叔母さん、また」
リリーが待っている部屋の前で、一度深呼吸をする。
これから、聞かなければいけないことは、リリーに取っては良い話ではない。
出来るなら、揉める様なことはしたくないが・・・。
ノックをして、部屋に入ると、リリーがいつもの様に笑顔で迎えてくれる。
こうしてみると、小さい頃から何も変わらないんだけどな。
「ルディ兄!待ってたよ!さぁ、座って」
「待たせてごめんな。これ、休憩中にでも食べればと思って買ってきたから、どうぞ」
「わぁ、ありがとうー!ルディ兄大好き!」
「はいはい。大きな声を出すと、お店まで聞こえちゃうから、声抑えてね」
「ふふっ、ルディ兄が来ると嬉しくて、声が大きくなっちゃう」
うーん・・・。
やっぱり、昔から変わった様には見えない。
メルに、害をなす?
そんな風には見えないのにな・・・。
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