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五章

ようこそ我が家へ

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 結界の境目まで行くと、トーリが結界内で、待機していた。

 「メルティアナ様、ルディ殿をお連れしました」

 「ありがとう。ルディさん、こんな森の中まで、ようこそ」

 「メル、招いてくれてありがとう。こんな森の中に、素敵な家が建っていて、驚いたよ」

 「ふふっ。それでは、結界内に入れる様にしますので、私の手を取って、中に入って来て下さい」

 ルディさんに、手を差し出し、結界内に入ってくるのを見つめる。
 一度結界内に入れば、出入りが自由に出来る方法と、今回限りの方法とがあるが、ルディさんの場合は、我が家の護衛達とは違うので、出入りが自由に出来るのは、だめだと言われた為、今回限りの方法を取る事になった。

 「もう一度言わせて欲しい。今日は、招いてくれて、本当にありがとう。これ、メルの口に合えば嬉しいんだけどな」

 そう言って、ルディさんは、小さなブーケと共に、お菓子の入った可愛い籠を差し出した。

 「ありがとうございます。お花は、直ぐに飾ってきますね。お菓子は、お酒と一緒に頂きたいわ。少しアランさんの家で待ってて貰ってもいいですか?」

 「・・・それなら、私もメルの家に着いて行ってもいいかな?メルの家がどんな感じなのか、一度見てみたくて」

 「特に珍しいものがあるわけではないですが、それでも良ければ、構わないですよ」

 「ありがとう」

 白と黄色、ピンクの可愛らしい小さなブーケを堪能しながら、我が家へと向かう。
 肩にいるリコリスは、白い花を一本抜き取り、両手で握っている。
 
 「リコリスもお花が好きなのかしらね」

 「君にも、気に入って貰えて、良かったよ」

 「では、本当に面白いものなど、何もないですが、どうぞ」

 ドアを開け、ルディさんを我が家へ招き入れる。
 我が家へ来たお客様は、アランさん含め、これで2人目ね。
 今度、モカさんを誘って、ティーパーティとかしてみようかしら。
 今回は、モカさんは、お酒が一切飲めないから、不参加との事で、残念。

 「お邪魔します。・・・・・・いやー、凄いな」

 「凄いですか?」

 「キッチンも広いし、設備も凄い。リコリスと子ウサギ達の家も可愛いね」

 そういえば、一般的な家がどういう造りなのか知らなかったわ。
 小屋ではないけどとは思っていたけど、この家、一般的じゃなかったのかしら。

 「リコリス達のお家は、可愛く造って貰えて、私もお気に入りなの」

 「メルらしくて、良いと思うよ」

 「直ぐに、花を生けてくるので、ソファーに座って待っててくださいね」

 「分かった。ゆっくりでいいからね」

 部屋にいる時間よりも、リビングのソファーで寛いでるか、作業場にいるかだから、リビングに飾った方が良さそうね。
 水に茎を浸けながら、茎の先を斜めに切り、水を吸い上げやすい様にし、花瓶に生ける。

 コロンとした可愛い花瓶に、小花が良く似合うわ。
 ルディさんが座っているソファーの前のテーブルに花瓶を飾る。

 「可愛く飾って貰えて、花も喜んでそうだね。メルの家は、花瓶一つとっても可愛いね」

 「ありがとうございます。好きなものを厳選して購入しているので、そう言って貰えると嬉しいわ。さっ、アランさんを待たせてしまっているから、行きましょう」

 「そうだったね。まさか、メルの家のすぐ隣に家が建ってるとは思わなかったけど」

 「えぇ、私も始めは驚いたわ。アランさんが引っ越す事になったのも、急な事だったから・・・っと、その話は後にして、行きましょう」

 直ぐ隣に建っているアランさん宅へ向かうと、レンが静かにドアを開けてくれた。
 
 「ありがとう、レン。アランさんもお待たせしました」

 「レンさん、アランさん、お邪魔します」

 「やぁ、良く来たね。ルディさんだったね。お酒は一杯あるから、好きに飲んでくれて構わないから」
 
 アランさんの言葉に、ルディさんは部屋に視線を巡らせる。
 カウンターの後ろの棚に目を留める。

 あのお酒の量・・・やっぱり気になるわよね。

 「こんなに種類があると、私の持ってきたお酒を出すのは、気が引けるな」
 
 「いや、女性向けのお酒は置いてないから、ルディさんの持ってきたお酒はどんどん出してくれると助かるよ。ほら、妹ちゃん向きのお酒なんて、なさそうでしょ?」

 「妹ちゃん・・・?メルの事だよね?」

 「えぇ。アランさんは、お兄様の友人なので、私の事をそう呼ばれます。私もルディさんが用意してくれたお酒を楽しみにしていたので、気にせずに出して欲しいわ」

 「メルが楽しみにしてくれてたなら、嬉しいよ。女性に人気のあるお酒を数種類用意したんだ」

 そう言って、ルディさんは、テーブルの上にお酒を並べていく。
 全て、この前の果物屋さんで売られていた果実酒で、チェリー、ピーチ、マンゴー、オレンジ、レモン、ライチと6種類も用意してくれていた。

 「女性に人気があるだけあって、パッケージデザインも可愛らしくて、目でも楽しめるのが良いですわね」 
 
 「やっぱり、女性は、見た目も気にするからね。それと、これは、さっきメルの家に行った時に渡せば良かったんだけど、忘れててね。梅酒は、メルが気に入ってたから別で3本準備したんだ。好きな時に飲める様にとね。今回用意した果実酒の中に気に入ったものがあれば、言ってくれれば、プレゼントするよ」

 「まぁ、ありがとうございます。気を遣って貰ってばかりで、申し訳ないわ」

 「私が、好きでしている事だから、申し訳ないって思わないで欲しいな。素直に嬉しいって言って貰えるだけで、私も嬉しいからね」

 「あっ、私も忘れてたわ。この前、ハンカチをプレゼントし直しますって話してたものが、仕上がったので、お渡ししようと思っていたの」

 「あー・・・、高級過ぎて普段使いするのには、勿体無いって言ってたやつね。これ、生地が普段使いしているのと変わりないのに、メルが刺繍を入れただけで、高級感出るのが凄いな」

 「また、使わないなんて言わないですよね?」

 「そうだね・・・。勿体無いけど、流石に、使う為に作り直してくれたのを無碍には出来ないからね。使わせて貰うよ」

 「良かったわ」

 「ほらほら、2人とも、もういいかい?そろそろ座ってお酒を楽しもうじゃないか」

 「そうだったわ。いつまでも立ったままでごめんなさい」

 「こちらこそ、気が付かなくてごめん。さぁ、お酒を楽しもうか。素敵な料理も用意されているみたいだしね」

 「これは、レンが準備してくれたのよ。凄いでしょ」

 「レンさんが・・・凄いな。彼は、なんでも出来るんだね」

 「ふふっ。本当に、何が出来ないのか分からないくらいだわ」

 レンが、褒められるのは、自分の事の様に嬉しい。
 こんなに素晴らしい影がいて、誇らしいわ。
 
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