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五章

納品と誘い

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 何とも言えない気持ちのまま、お店を後にし、コーヒーショップへ向かう。

 「ねぇ、さっきの話のルディさんって言うのは、お酒に誘う予定の人かな?」

 「えぇ・・・そうなのですが・・・」

 このまま、誘っても良いのかしら。
 リリーさんが気分を害するわよね・・・。

 「もし、さっきの子の事を気にして、誘うのを悩んでいる様であれば、そう言う考えはやめた方がいい。妹ちゃんとそのルディさんとやらが、約束してた事に、彼女は何も関係ないからね」

 確かに、ルディさんとの約束を、リリーさんを気にして反故にするのも、おかしな話よね。
 ルディさんにも、失礼になるのよね・・・。
 
 それなら・・・。
 
 「あの、リリーさんもお誘いするのはどうでしょうか?それなら、リリーさんもルディさんと過ごせるし、良いかなと思うのですが」

 「いや・・・、それは止めた方がいいと思うよ。彼女が、ルディさんに想いを寄せていたとしても、それを彼が知らず、彼女に興味もなければ、ただの邪魔者でしかない」

 「邪魔者・・・?2人は、従兄妹なので、そんな邪険する様な関係では無いのですが」

 「うーん。こればかりは、彼がどう思っているか会ったこともないし、何とも言えないけど、彼女を誘うのは、おすすめしないとだけ言っておくよ」

 「私も同感です。彼女を誘うのは、止めた方がいいでしょう」

 「トーリまで・・・。分かったわ。2人がそう言うのであれば、リリーさんを誘うことは止めておくわね」

 私よりも人生経験が豊富な2人が言うのだから、きっとその方がいいのよね。
 私は、人間関係については、未熟だから・・・。

 コーヒーショップについたら、リコリスは、相変わらず看板犬のダフル君の背に飛び乗り、これでもかと体を伸ばして、寛いでいる。

 綺麗な毛並みの上は、さぞかし気持ちがいいのでしょうね。
 
 トーリが扉を開けて、中へ入ると、すぐにルディさんが声を掛けてくれた。

 「メル、いらっしゃい」

 「ルディさん、おはようございます。本日は、納品に伺いました」

 「それじゃ、こちらにどうぞ。・・・その、彼もメルの連れかな?」

 「あ、そうなんです。アランさんと言います」

 「どうも。今日は、コーヒーショップがどんなところが、気になって、一緒に連れてきて貰ったんだ。おすすめを一杯頂けるかな?」

 「畏まりました。それでは・・・席はどうしましょう?メルと同じに?」

 「いや、納品もあるだろうから、カウンター席で待たせて貰うよ」

 「わかりました。では、お好きな席にお掛け下さい。直ぐにお持ち致します。メルは、あちらの席で、品物を準備して置いてくれるかな?」

 「はい。分かりました」

 アランさんとは分かれ、トーリと端の席へ行き、納品する予定のパウンドケーキを取り出し、並べていく。
 仕上がりと数を確認し、報酬を貰えば、納品は完了する。

 「メル、お待たせ。じゃあ、早速確認するね」

 「はい、お願いします」

 「1、2、3・・・うん。数も品質も問題ないね。金額もいつもと同じになるけど、ちゃんと確認してね」

 「はい。こちらも大丈夫でした」

 「・・・メル?今日は、少し元気が無さそうに見えるけど、大丈夫?体調でも崩してたりするのかな?」

 「・・・え?」

 いつもと変わらない対応していると思ってたけど・・・。
 さっきの事が、少し尾を引いているのかもしれない。

 「いつもより、声が沈んでいるのと、笑顔も少し元気がない感じがするかな。体調が悪くないのであれば、何かあったのかな?」

 接客をしてるだけあって、変化にも敏感に反応出来るのね。
 でも・・・リリーさんとの事は、ルディさんには言えないわ。

 「何も・・・。あ、今日は、ルディさんをお酒にお誘いしようと思っていたんです。今度のお休みの前日にご招待したいと思うのですが、ご予定如何ですか?」

 「何もか・・・、分かった。メルが、そう言うのであれば、これ以上は、聞かないよ。お酒のお誘いは、喜んでお受けするよ」

 「良かった。それで、以前、我が家でと話していたと思うのですが、アランさんの家でも良いですか?」

 「え?彼の家?メルの家じゃなくて?」

 「えぇ。その・・・アランさんも一緒にお酒が飲みたいと言ってまして・・・それで、彼の家であれば、お酒も沢山あって、楽しめるだろうと言う事になりまして。ダメですか?」

 「いや・・・うーん。まぁ、元々、メルがトーリさんとレンさんと一緒にお酒を飲むって言うのに、私も混ぜて欲しいとお願いした立場だからね。参加者が増えても、私が何か言うことはないよ。メルが、それがいいって言うのであれば、私もそれに従うよ」

 「ありがとうございます。実は、レンとトーリは、お酒を飲まないと言うので、アランさんとルディさんと私の3人でお酒を楽しむことになります」

 「あー・・・、彼らは、護衛だからってことかな。それと、敬語。まだ無理そうかな?」

 「あっ、つい癖で・・・。敬語を取って話すと言うのも、難しいですわね」

 「護衛の彼らと同じ様に接してくれるだけでいいんだけどな」

 「彼らは、主従関係にあるので、また友人とは接し方が異なるので、難しいですわね。その・・・今まで友人が居なく、唯一の友人がモカちゃんだったので、まだまだ接し方が難しいのです」

 「そう・・・。無理強いしたくないから、気長に待つことにするよ」

 「ありがとう。ルディさんは、いつも優しいですね」

 彼は、いつも私の意見を尊重してくれる。
 優しい彼の事を、好きになったリリーさんの気持ちも分かる様な気がするわ。
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