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五章

花を・・・

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 「メル、夕方の部が始まる前に、花を買い直したいんだけど、良いかな?」

 「花を?」

 「あぁ、それぞれ着けている花が違うから、なんていうか・・・おかしいだろう?」

 確かに、始めはお揃いの花をつけていたものね。
 一緒に回るには、お揃いの花を着けるのが、決まりだったかしら。

 「そうですね。では、どうしましょうか」

 「また入り口まで戻ることになるけど、構わないかな?」

 「えぇ」

 「じゃ、行こうか」

 歩いてきた道を戻り、花が売っている場所まで行くと、色んな種類の花が置いてあった。
 ただ、ルディさんが始めにくれた白い花は置いていなかった。

 「私も、今つけている花を外して、メルとお揃いの花にするから、好きな色の花を選ぶといいよ」

 どうしようかしら。
 実は、今着けている黒薔薇も気に入ってはいるのだけど・・・。
 でも、レンに返した方が良いだろうし、見たところ、黒薔薇は売っていない。

 ルディさんも着ける事も考えると、ピンクは可愛過ぎるわね。
 青薔薇なんて良いかもしれないわね。

 「ルディさん、これにします」

 「青薔薇か。上品で、メルに良く似合いそうだね。すみません。これをセットでお願いします」

 ルディさんは、花を購入すると、すぐに私の髪に着けてくれた。

 「メルは、髪色が淡いから、濃い色の花が良く映えるね。似合っているよ」

 「ありがとうございます。えっと、私もルディさんに着けますね」

 髪に花を着けて貰ったので、私もそれに習って、ルディさんの胸元に花を着ける。

 「はい、出来ました」

 花を着け終わり、ルディさんを見上げると、思ったよりも近い距離で、ドキリとした。

 「ありがとう・・・。この距離は、不味いな」

 「あっ、そうですよね。私も思ったよりも、近いなと思いました」

 そう言い、一歩下がろうとした所で、腰に手を回され、下がる事は出来なかった。

 「メル・・・さっき、リリーに言ったことは、どういう意味か聞いても?」

 「リリーさんに?」

 「そう。私と同じと言っていたでしょ?」

 「えぇ、ルディさんが私と2人で回りたいと言っていたので、私も同じ意見だとお伝えしたのですが・・・」

 「・・・はぁ。そうだよね。いや、分かってたんだけどね」

 「えっと、何か問題でも・・・?」
 
 「いいや、問題ないよ。それじゃ、お祭りを回ろうか。そろそろお酒が出される時間だから、おすすめのお店を紹介するよ」

 「はい、楽しみです」

 ルディさんが、言いたかった事は、良く分からなかったけれど、問題がないと言っていたので、大丈夫かな。
 それよりも、お酒が楽しみだわ。
 初めて飲むから、少し心配ではあるけれど、お兄様が毎晩嗜んでいるんだもの、きっと美味しい飲み物のはずだわ。

 「この店なんだ。日中は、果物を売っているんだけど、お祭りの時だけ、果実酒を販売していてね。メルには、果実酒が良いんじゃないかなって思って、目星をつけておいたんだよ」

 「果実酒・・・果物のお酒と言うことは、甘いのかしら?」

 「そうだね。とろみがあって、甘くて、ロックで飲んでも、割って飲んでも美味しいから、試飲して、好みなのを見つけるのが良いよ」

 「試飲が出来るのは、良いですね。でも、種類が多くて、どれが良いのか・・・」

 「そうだね。梅酒なんてどうかな?ロックでも割っても美味しいし、女性も良く飲んでいる印象かな。私もたまに飲むよ」

 「じゃ、それを頂こうかしら」

 ルディさんが、お店の人に、3種類の試飲を頼んでくれた。
 ロック・水割り・炭酸割りと言うのが、主な飲み方みたい。

 それぞれ、一口ずつ頂き、私は・・・梅酒のロックが美味しいと感じた。
 このまま、ぐいぐいと飲んでしまいそうな飲みやすさだった。

 初めてのお酒だけど、飲めるのね。
 もしかしたら、私・・・お酒が強いのかもしれないわ。
 お兄様と血が繋がっているんですもの。
 きっと、お兄様に似て私もお酒飲めちゃうのね。

 これ買って帰って、家でも夜飲んだりして、少し大人な時間を楽しむのも良いかもしれないわ。
 だって、私、成人したんだもの。
 
 「ルディさん。このロックと言うものが、気に入ったので、一杯頂きたいのですが」

 「お、メルもロックが気に入ったんだね。私も飲む時は、ロックなんだよ。好みが同じで嬉しいよ」

 試飲をして、気に入ったお酒があった場合は、席に座って、お酒とおつまみを楽しむと言う。
 テーブル席とカウンター席があるが、普段とは違う雰囲気を味わいたかったので、カウンター席をお願いした。

 一杯飲み終わった時には、何かふわふわとした気持ち良さを感じた。
 お酒って、美味しいし、楽しい気分になるのね。
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