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五章

提案

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 「少し、お待ち頂けますか?」

 「トーリ。どうしたの?」

 「3人での行動は、側から見て、あまり良いものではないので、レンを連れて行って貰えますか?」

 「え?」

 「は?」

 私とレンの声が重なる。

 「いや、トーリ。何を言ってる?私は、陰ながら護衛するのが仕事で・・・」

 「分かってるが、このメンツを見ても、まだ、そう言い続けるか?」

 「・・・確かに。だが、トーリでも問題ないんじゃないのか?」

 「いや、私とメルティアナ様だと、ただの主従関係にしか見えないからな。その点、レンであれば・・・まぁ、そういう感じには見える」

 「・・・分かった。それでは、お嬢様。私も一緒に行動致します」

 「良く分からないけれど、トーリと話がついたと言うことね。ルディさん、レンも一緒しても良いですか?」

 「・・・リリーもついてきちゃってるし、レンさんを断る理由はないからね。メルの安全を考えれば、レンさんも一緒に行動した方が、いいのかもしれないね。私は、構わないよ」

 「ありがとうございます。じゃ、レン。まずは、お嬢様呼びは、やめて貰えるかしら?流石に、その呼び方は目立つと思うのよね。お祭りの間だけでも、先程の様に、メルと呼んでくれるかしら?」

 「畏まりました。お嬢・・・メル」

 先程は、違和感なく、すんなり名前で呼んでいたと言うのに、今は少し言いずらそう。
 
 「ねぇ、今まで、黙って見てたけど、彼は誰なの!?」

 ここで、リリーさんが、レンについて聞いてきた。
 流石に、行動を共にするわけだから、紹介しないわけにもいかない。
 
 「えっと、彼も私の護衛の1人で・・・」

 「メルティアナさんって、一体、何人の護衛がいるの!?」

 え?何人だろう。
 この前の襲撃の時には、5人って聞いたけど、その後、増やしたと聞いたし、今回のお祭りでも色々手配したと聞いたから・・・増えているのよね。

 トーリに視線を向けると、静かに首を振る。
 私が知る必要がない情報ということね。

 「多分、5人くらいだと思うわ。でも、何処に潜んでいるか分からないから、気にしなくても大丈夫よ」

 「確かに、言われないと気付かない・・・。メルティアナさんの護衛って、男前しか慣れないの?」

 「え・・・?」

 そう言われると、レンは整った顔をしているけど、トーリも優しげな雰囲気はあるけれど、目鼻立ちが整っているのよね。
 
 「メルティアナ様の護衛に付く者は、腕の立つものだけです。厳選されておりますので」

 私の代わりに、トーリが答えてくれた。
 厳選・・・きっと、お兄様が、選んでくれているのよね。

 「そうなんだ・・・。ねぇ、4人になったんだし、彼は、メルティアナさんの護衛でしょ?じゃ、彼がメルティアナさんと手を繋ぐべきじゃない?ね?ルディ兄は、私と手を繋げば良いよね」

 「何を馬鹿なことを・・・。元々、私とメルだけで、回る予定だったんだよ。それをリリーが割り込んできたんだろ。どうして、私が、リリーと手を繋がないといけないんだよ。それなら、レンさんに手を繋いで貰え良いだろ」

 え・・・?
 レンとリリーさんが、手を繋ぐの?
 出会ったばかりなのに?

 「申し訳ありませんが。私は、お嬢様の護衛なので、手が塞がる様なことは、出来ません」

 「あー・・・、そうですね。変なこと言ってしまいました。すみません」

 「いえ、お気になさらずに」

 結局、私とルディさんが手を繋ぎ、その後ろを、リリーさんとレンがついてくる事になった。
 勿論、2人は手を繋いでいない。

 リリーさんも、特にレンに興味がない様で、話し掛けている様子も見られない。
 どちらかというと、ルディさんを見つめて、話したそうにしている。

 リリーさんもお兄ちゃん子なのね。
 やっぱり、ルディさんの隣を交代してあげた方が良かったかしら。

 でも・・・今日、誘われているのは、私だから、やっぱり私が隣を歩くべきなのよね。
 そうじゃなければ、誘ってくれたルディさんに、失礼になるわよね。

 人間関係は、中々に難しい。
 学園で、円滑な人間関係について、学んでおくべきだったわね。

 
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