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五章

人に合った贈り物を

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 「不思議そうな顔をしているね。メルがくれたハンカチは、嬉しかったんだよ?ただ、ハンカチが上質過ぎて、普段使うのには勿体無いと感じるんだよね。何処かに正装して、出掛ける時に、使うのが丁度良い感じだね」

 「そうなのですね」

 お礼として、ハンカチを渡したけれど、人に寄って、使いやすさと言うのが違うのね。
 ルディさんの場合は、普段使いして貰いやすい様な生地にすれば良かった。
 お礼だからと言って、上質な生地を使えば良いと言うことでも無かったのね。
 相手の事をちゃんと考えなければ、本当のお礼にならないわね。

 木綿のハンカチを取り寄せて、また刺繍して渡そうかしら。
 それなら、普段使い出来るわよね。

 「あの、ルディさん。良ければ、普段使いしやすい生地のハンカチを贈らせて貰っても良いですか?」

 「え?嬉しいけど、メルが大変じゃ・・・」

 「いえ。刺繍は、淑女の嗜みとして、習っていたから、そんなに大変じゃ無いんですよ。だから、気にしないで?」

 「・・・貰っても、また使えずに、しまう事になりそう・・・」

 「え?今度は、生地のランクを下げて、普段使いしやすい物にするので、気軽に使って貰えますよ」

 「いや・・・生地とか、そう言うことではなくて・・・。メルが刺繍してくれたハンカチだと思うと、汚したくなくて」

 「私の刺繍は、プロの方のとは、比べ物にならないので、そこまで気にしなくても」

 「いや・・・」

 私が刺繍をしたハンカチだから、使いにくいのかしら?
 もう、既製品を渡した方が、お礼になるのかしら。
 そんなことを考えていると、女性が声を掛けてきた。

 「あれー!?ルディ兄!お昼からお祭りに参加してたんだね!」

 「リリーか」

 声を掛けてきたのは、ルディさんの知り合いの様で、ふわふわの赤毛のサイドを編み込んで、広がらない様に、纏めてあり、年は、私と同じ位の女性だった。

 その女性は、隣にいる私に気付き、誰?と言うような表情をしていた。
 私もあなたのこと知らないから、あなたも私のことを知らないわよね。

 「ルディ兄、この方は、どなた?」

 「リリーの店と、私の店に納品してくれている、メルティアナさんだよ」

 「メルティアナ・・・。あーっ!分かった!うちに、薬を納品してくれているお嬢様ね!喉飴を改良してくれて、ありがとー!私、喉が弱くて、すぐ咳が出ちゃうのよね。もう、良くお世話になってるの」

 薬の納品・・・。
 シーナさんの言っていた娘さん。
 と言うことは、ルディさんの従兄妹。
 それで、「ルディ兄」なのね。

 「初めまして。メルティアナを申します。お母様のシーナさんには、お世話になっています」

 「やだー!そんな畏まらないでよー!私は、リリーって言います。宜しくね」

 元気に、挨拶をしてくれたリリーさんは、すぐにルディさんの方に向く。

 「ルディ兄!私、お友達と逸れちゃったんだよね。だから、一緒にお祭り回っていい?」

 「は?」

 「だってー、人多すぎて、友達探すの大変だし。1人でお祭り参加しても、面白く無いでしょ?だから、ね?メルティアナさんも良いですよね?」

 えっと、ここは、なんて返すのが良いのかしら。
 私は、ルディさんに誘って貰った立場だから、ルディさんに伺いを立てなくちゃダメよね。
 でも、リリーさんは、ルディさんの従兄妹なんだし、問題無いのかしら?

 どうしようかと、ルディさんの顔を伺う。

 「・・・・・・リリー。悪いが、今日は一緒に回れない」

 「どうして・・・?ルディ兄。その胸の花・・・」

 リリーさんは、ルディさんの胸に飾られている花と私の髪飾りを見比べて、悲しそうな顔をした。
 

 

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