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五章

お祭りを楽しむ

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 お祭りが開かれる会場内では、多くの出店が軒を連ねて居た。
 
 これ・・・、お祭りの為に、用意されたのよね。
 お祭りが終わったら、撤去する事を考えると、とても大変な作業だなと思った。

 この楽しそうな空間は、様々な人の協力により、成り立っているのね。

 二日間しかお祭りが無いのが勿体無い位、賑やかで楽しい雰囲気で、1週間程やってても良いのにと思ってしまった。

 「人が多くて、驚いたかな?」

 「えぇ、そうですね。いつもの街並みとは異なって、こんなにも多くの人が暮らしていたのかと、驚きました」

 「普段もそれなりに活気はあるけど、やっぱりお祭りとなると、多くの人が集まるから、凄いよね」

 「はい。それに、先ほどから、とても良い匂いがしていて、食欲が唆られますわ」

 「もしかしたら、あのお肉を焼いている店のことかな?先程から、タレとお肉の焼ける美味しそうな匂いが漂ってきてるからね」

 ルディさんが、指を差した方向には、お肉が串刺しになって、網の上で焼いている出店だった。
 手を引かれて、お店の前までくると、先ほどから良い匂いがしていたのが、ここの串焼きだと言うことが分かった。

 大きさは、2種類あり、男の人が食べても満足出来そうな程大きなお肉が刺さった串焼きと、女性や子供でも食べやすそうな大きさの串焼きとあり、とても親切だなと思った。

 「メルは、小さいのが良いよね?」

 「そうですね。大きいのは、流石に、それだけでお腹が一杯になってしまって、他の物が食べられなくなってしまいますから」

 「そうだね。私も、メルと同じ小さい方にしておくよ。折角のお祭りだからね。色んな物を食べないと勿体無い」

 「ふふっ。そうですね。今日は、自分の限界に挑戦したいです」

 「メルの限界・・・あまり、無理して食べ過ぎると、気分悪くなっちゃうからね」

 「えぇ、調子に乗り過ぎないように気をつけます」

 「メルが調子に乗るって言うのが、あまり想像出来ないけど、楽しんでくれるなら、それで十分だよ。これ・・・そのまま齧るんだけど、大丈夫かな?」

 「・・・そのまま齧る?小さく切ったりは、しないのですか?」

 「やっぱり、そうだよね。ほら、周りを見てご覧。ああやって、齧って食べるんだよ。メルからしたら行儀が悪く見えちゃうかもしれないけど・・・これも、祭りの醍醐味だと思って、真似して食べてくれると嬉しいんだけど・・・」

 「まぁ、本当に皆さん、そのまま齧り付いているのですね。したことがないとは言って居られないですね。皆さんがやっている事ならば、それに習いましょう」

 「良かった。食べながら、お店を・・・と思ったけど、流石に、始めての事ばかりだと、疲れちゃうと思うから、そこに腰を掛けて、ゆっくり食べようか」

 周りを見ると、立ったまま食べていたり、歩いてお店を眺めながら食べていたりと様々だった。
 確かに、このまま立ったまま食べるのは、難しそうなので、ルディさんの提案に甘える事にした。

 「気を使って頂き、ありがとうございます」

 「これくらい、気を使った内に入らない瑣末なことだよ。それと・・・敬語をやめて貰えると嬉しいかな。ほら、メルの護衛の彼と話している時みたいに、敬語は使わずに話してくれるかな?」

 「でも、ルディさんは、年上ですし・・・」

 「護衛の彼も、年上に見えるけど?」

 「トーリの場合は、主従関係にあるので、私が護衛騎士であるトーリに対して、敬語を使うのはおかしなことなので・・・」

 「なるほど。それじゃ、少しずつで良いから、変えられる様であれば、変えてくれると嬉しい」

 「えっと、分かったわ。急には、難しいので、敬語が混ざったりしてしまう事もあると思うけど、良いかしら?」

 「勿論、問題ないよ。さっ、食べようか。冷えたら硬くなってしまって、美味しさが半減してしまうからね」

 「それは、困りま・・・困るわね。頂きます」

 小さめのお肉だけど、大きな口を開けて齧る事が出来ない為、1つの塊を3口に分けて食べる。
 ルディさんは、ぱくりと一口で食べていて、男の人らしいなと思った。

 普段は、一口サイズにカットして、食べているので、齧り付きながら食べると言うことに、難しさを感じながら、食べ進める。
 味は、タレが甘辛く、お肉も柔らかく、とても美味しい。
 後で、沢山買って、マジックバッグ に入れて置きたいわね。

 「メル、タレが付いているよ」

 ルディさんが、私の口元についたタレをハンカチで拭ってくれる。
 子供の様で恥ずかしい・・・。
 マナーの先生がいたら、怒られていたわね。
 でも、お肉をカットして食べられないから、しょうがないわよね。

 「あっ、ありがとう・・・」

 ルディさんの手元にあるハンカチを、ジッと見つめる。
 あのハンカチは、私があげたものじゃないわね。

 「あー、気になる?メルがくれたハンカチは、勿体無さすぎて・・・しまってあるんだ」

 ・・・ハンカチって使うものなのに、勿体無いの?
 使わずに、しまっておくことに、なんの意味があるのかしら。
 

 
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