上 下
33 / 103
五章

---アルフォンス視点⑧---

しおりを挟む
 仕事に没頭する余り、仕事が片付き、休みが増えてしまう。
 そして、今日も朝から時間を持て余して、読書をしていると、フェルナンド殿から手紙が届いた。

 手紙では、詳しく話せないが、メルについて重要な話があるとの事だったので、すぐに返事を出し、その日の内に会う約束を取り付けた。

 「良く来てくれた。掛けてくれ」

 「殿下、本日は、急なお願いを聞いて頂き、ありがとうございます」

 「いや、メルについて重要な話と言われれば、何よりも優先したい」

 「そう言って頂き、安心しました」

 人に聞かれて良い話ではなさそうなので、人払いをして、紅茶を一口飲み、気持ちと落ち着かせる。
 どの様な話なのだろうか・・・。

 「それで・・・話というのは?」

 「実は・・・先日、メルが男達に襲撃されました」

 バンッ!

 予想だにしない事に、礼儀も忘れ、テーブルに手をつき、詰め寄る。

 「なっ!襲撃と言ったのか!メルは!メルは無事なのか!?」

 「はい。メルは馬車に乗っていた為、犯人達を見ることもなく、護衛達が対処致しましたので、擦り傷一つ負って居ません」

 「そうか・・・」

 メルに、何事もなく、ホッとして、テーブルから離れ、姿勢を正す。

 「それで、ただ襲われたと言いに来た訳ではないのだろう?」

 「はい。破落戸達に、メルの襲撃を依頼した者がおりました」

 「行きずりの犯行ではなく、メルが狙われたのか。私に話すということは、相手は貴族か」

 「・・・高位貴族で、メルに敵意を持っている令嬢・・・と言えば、誰だか殿下も想像がつくのではありませんか?」

 「まさかっ!ユトグル公爵令嬢かっ!?」

 「あぁ、やっぱり心当たりがお有りのようですね」

 ・・・心当たり。
 彼女は、学園にいた頃から、何かとメルに絡む傾向にあったから・・・だが、まさかメルの襲撃を依頼する程とは。

 そういえば、先日廊下で出会した時も、私が未だに婚約者を決めないのは、メルが原因かと聞いてきたか。
 あの時のやりとりが切っ掛けとなって、今回の騒動に発展したのか・・・。

 「彼女が主犯と言うことは、原因は私か」

 「恐らく」

 「私に不満があるのであれば、私に言えばいいものを、何故メルを標的に・・・」

 「直接ユトグル公爵令嬢に、聞いたわけではありませんが、殿下が婚約者を決めないのは、メルの所為だと思っているのでしょう。それならば、邪魔なメルを片付ければ済む話です。メルさえ居なくなれば、殿下は、他の令嬢を選ばざるを得ない」

 「そんなっ!それは、あまりにも極端過ぎないか・・・」

 「彼女の性格を考えれば、そういう考えに行き着くと予想は出来ますが・・・。失礼を承知で言わせて頂きますが、殿下がメルを諦めてくれていれば、この様な事態になることは避けられました。メルの平穏な生活を壊して欲しくはないですね」

 「すまない・・・。私の考えが甘かった様だ。今回、フェルナンド殿が、私に会いに来たということは、相手が公爵令嬢であるが故か」

 「はい、流石に筆頭公爵家のご令嬢ともなると、私も下手に手を出すことが出来ませんので、殿下にお願い出来ないかと思いまして」

 「確かに・・・。公爵は、人格者だというのに、どうして娘が、あの様に育ってしまったのか・・・。今回の件は、私の不徳の致すところだ。私の方で対処させて頂く。近い内に、公爵を呼び出して、令嬢についての処罰を決めようと思う。報告するまで待って貰えるだろうか?」

 「はい。ご連絡をお待ちしております。それでは、本日はこれで失礼します」

 フェルナンド殿が部屋を出ていき、背もたれに寄りかかる。

 「はぁー・・・、私の所為か・・・」

 ただ、メルと共に歩んで行きたいと思っているだけなのに、何故メルに危害を加えようとするのか。
 メルに何かあったとしても、彼女を婚約者にすることなど考えられないというのに・・・。

 私の所為で、メルに怖い思いをさせてしまったのは、本当に申し訳ない事をしたし、このままでは、メルに合わせる顔もない。

 ユトグル公爵令嬢には、相応の罰を受けて貰う。
 公爵令嬢と言えども、何をしても許されるわけではないということを、身を持って、知って貰おうか。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。