上 下
1 / 7

1.トラップ発動

しおりを挟む
「あらぁ、こんなところに宝箱よぉ~」


 と、ミリアの声が聞こえてコールスは振り返る。


 彼女が触れようとしている宝箱を素早く分析すると、視界が紫色に点滅した。


“呪詛トラップ有り”のサインだ!


「危ないっ!」


「キャァ!」


 コールスは慌ててミリアを横に押しのけた。


 途端に宝箱の蓋が開く。


 中から出てきた小さな球が閃光を放った。


「うわっ!」


 強い光に、思わず目を押さえてうずくまる。
 

「おい、どうした?」


 パーティーリーダーであるウォレスの声と、駆け寄ってくる複数の足音。


「びっくりしたぁ。宝箱を見ようとしたら、いきなりこの子に突き飛ばされたのぉ」


 と、ミリア。


「何があった?」


 と尋ねてくるウォレスに、コールスは目を押さえたまま答える。


「罠です。ミリアさんが開けようとした宝箱の中から、小さな球が出てきて光を放ちました」


「……ステータスを確認してくれ」


「はい」


 ウォレスにいわれて、コールスは自分のステータス画面を開く。


 何か呪いを受けたとしたら、それが何か分かるようになっているからだ。


 すると、視力が戻り始めたコールスの目に、信じられないものが飛び込んできた。


『全てのスキルの使用可能回数が残り1になりました』


 と、薄緑の画面に赤い文字が浮かんでいる。


「なんだ、これ!?」


 何らかのステータス異常が発生したことは間違いない。


(けど、こんなのは今まで見たことない!)


「スキルの使用可能回数が1?どういうことだ?」


 一緒に画面を覗き込んでいたウォレスが呟く。


 すると、ウォレスと一緒に来ていた回復術士のリュートが


「恐らく、そのままの意味だろうね。コールスくんが保有するスキルについて、それぞれ後1回ずつしか使えないということだ」


 と言った。


「そんな……」


 コールスは、急に目の前が暗くなったような気がした。

 
 獣人の特徴である、頭の耳がしょんぼりと垂れていく。


 ウォレスは、


「ミリアはどうだ?確認してくれ」


 と指示した。


 ミリアはステータス画面を開いて調べていたが、やがて顔を上げた。


「私は大丈夫よぉ」


「リュート。解呪する方法はあるか?」


 ウォレスがそうたずねると、リュートは眼鏡のつるをいじりながら


「いや、わ、私も初めて見るからな、こんな呪いは。街に戻れば何かわかるかもしれないが、今はなんとも言えんよ……」


 と自信なさげに言った。


 ウォレスは「えぇい!」と舌打ちをして、槍の石突で地面をドンと突いた。


 苛立いらだたし気にため息をつくウォレスの向こうで、ミリアはコールスたちに目もくれず、スカートの裾についた泥をしきりに払っている。


「仕方がない。とにかく、地上に戻ろう」


 とウォレスが言った。


「そうだな、この先は未知の領域だ。探索スキルが使えないのでは先には進めないからね」


 リュートが同意する。


 コールスは急いでステータスを閉じると、


「ご迷惑をおかけしましてすみません!」


 深々と頭を下げて謝った。


「謝まれたところでどうにもならない。……君を雇ったのは間違いだったな」

 
 ウォレスは吐き捨てるように言った。


「地上に戻り次第、君はクビだ!」


「そんな!」


 コールスは抗議しかけたが、既にウォレスは背を向けて歩き出していた。


 そのとき、


「すべてのスキルのレベルアップが完了しました」


 と、頭の中に音声が響いた。


「え、スキルレベル?」


(これも呪いの影響か?)


 再びステータス画面を開こうとしたが、


「何をしている、置いていくぞ!」


 クレスから厳しい声が飛んできた。


「す、すみません!」


 コールスは画面を開くことなく、走り出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仲間がいるから、冒険が楽しい。

堕天使ピエロ
ファンタジー
主人公の佐藤健(サトウ タケル)は自称女神である赤髪の少女の能力により異世界転移した。 自身が転移した翌日に転生して来た同級生の水町結花(ミズマチ ユイカ)とパーティを組むが、水町さんは史上最高とも言われる鬼才の持ち主であった。 最弱職である佐藤健と最強の水町さんのパーティの成長を見守るために、近衛騎士団から最強の女が派遣された。 この小説は、小説家になろうにも同時掲載しています。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

BLACK Tier【黒い怪物】

愛優
ファンタジー
裏社会代表の本部と呼ばれる場所。通称『黒国』 命が惜しければ敵対しない方がいいというのが裏の常識となっている。それほどに狂気じみた強さを持つのは出所も不明な若者だという。そして一部のマフィアやヤクザには皮肉を込めて影ではこう呼ばれているのであった。 『動く兵器』 と…

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...