VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム

文字の大きさ
上 下
6 / 8
第一章 初心者の躍動

第4話 チュートリアル

しおりを挟む
 1日経って今日、ついに昼過ぎにAOが正式にサービスが開始される。
 おかげで朝から大忙しで家事を全て終わらせ、昨日の教訓から久々に晩御飯は出前を事前に予約注文しておいた。

 ちなみに部活の為に出かけた夏輝は『俺も帰ってきたらすぐに行くから!絶対に2人だけで楽しむなよ⁉』と叫びながら走って行った。
 それを見送った俺と夏帆はどちらも頷く事はなく、悪戯っぽい笑みを浮かべて目配せをした。

「言うこと聞くわけないっての」

「だよね~」

 当たり前に夏樹を待ってやるつもりなんてなかった。それだけに俺と夏帆はお互いにすぐに分かれて課題なんかのめんどう事を素早く片付ける事を優先した。
 おかげで昼前にはやる事も終わって問題なくゲームに集中できる状況になっていた。

「18時半にはリビング来いよ」

「わかってる~」

 出前を予約した時間は19時だけど、その前には終わらせておかないと絶対食事忘れてのめり込むから念のために注意した。でも、夏帆の返事を聞く限りは効果はなさそうだ。
 ただ俺もちゃんと切り上げられる自身はないからタイマー機能で時間に成ったら知らせてくれるようにはしてある。

「さて、やりますか」『リンク・オン』

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――

「昨日ぶりですね!ナギさん‼」

 そしてログインしてすぐの目の前に居たのは昨日も見た案内妖精のスターリィの顔だった。
 ただ端に見える景色はキャラ作成の白い空間とは違って草原になっていた。その事が無性に気にはなったけど、一先ずは目の前で楽しそうに笑っているスターリィの相手が優先だろうな。

「あぁ、今日もよろしく頼むよ」

「はい!まっかせて下さい‼」

 頼られることが嬉しいのかスターリィは満面の笑顔で胸を張る。その姿に少し微笑ましく気が緩みそうになるけど我慢だな。

「それで今日は何をすればいいのかな?」

「今日はチュートリアルです!持っているスキルの使い方を覚える感じです」

「なるほど、理解した」

 前日までに初期のステータスなどを決めたからこそのチュートリアルって感じだな。
 戦闘は自前の技術で補えるとは思うけど、ゲームとしてのシステム的特性は俺もわからないから助かる。

「では、まずは火魔術からにしましょう!」

 そう楽しそうにスターリィが言うと何もなかったはずの草原に案山子が現れた。
 案山子は等間隔に並んでいて顔の部分には的のような円が描かれている。ようするに的ってことだな。

「あの案山子に向かって撃てばいいのか?」

「はい!最初の魔術系は『○○ボール』『○○ウォール』の2つが使えるようになってるんです。なのでナギさんは『ファイヤーボール』と『ファイヤーウォール』になりますね‼」

「なるほど、わかった」

「え?」

 スターリィの話を聞いて昨日から漠然と感じていたスキルの使い方がイメージできた。
 現実では味わいようのない感覚に興奮を抑えられない俺は早速とばかりに試してみる事にした。

「こうして…こうか」『ファイヤーボール』

 すると突き出した手の先にサッカーボールほどの大きさの火の玉が現れ、案山子目掛けて放たれた。
 案山子に直撃した火の玉は当たると同時に破裂して炎を撒き散らす。そして案山子は当たった頭部が焦げてなくなっていた。

「おぉ…結構迫力あるな」

「な、なん…」

「でも、感覚的にもう少し工夫もできそうなんだよな。もう一度」

「なんで使えてるんですか――⁉」

「うぉ⁉」 

 もう一度試そうとすると急にスターリィが慌てて顔の前に飛び出してきたので中断する事になった。
 ただ何を慌てているのかは分からなかった。

「何で使えるのかって、今ってそう言う時間だろ?」

「そうなんですけどっ!そうじゃなくて‼普通は私が説明してから使い方を理解できるはずなんですよっ」

「へぇ~でも普通にできたぞ」『ファイヤーボール』

 証明するように手を突き出して火球を放つが、先ほどの物とは違いサッカーボールより一回り小さく圧縮してあった。
 それが案山子に当たると『ドォ――ンッ!!』とより強い爆発を起こして案山子の上半身を弾け飛ばした。
 破片がパラパラと落ちてくる中でスターリィは案山子のあった場所を見て唖然としていた。

「な、え…は?」

「う~ん…もう少し行けそうな気がするんだけど、現状だとこれが精一杯かな」

 個人的には跡形もなく吹き飛ばせるほどの威力を目指していたんだけど、なんか圧縮している途中で遮るものがあるように操作ができなくなった。おそらくスキルレベルなんかによる限界値ってことなんだろうけど悔しいと感じてしまうのは仕方のない事だと思う。
 そうして俺が考察している間にスターリィも意識がッきりとしてきたようでものすごい勢いで問めてくる。

「どうなっているんですかナギさん⁉」

「え、なにが?」

「なんで初心者の貴方があんな高威力のファイヤーボールが使えるんですか⁉意味が分かりませんよ‼」

「そう言われてもな。大したことはしていないぞ?圧縮すれば威力が上がりそうだと感じたから、なんとなくで試したら…できた」

「そんな簡単に言わないでください!本来ならチュートリアルの後にクエストをこなしながら身に付ける技術をなんで!?」

 個人的には大したことをしたつもりはなかったけれどスターリィの反応を見る限り普通ではなかったようだ。
 詳しく説明してもらったことを要約すると『魔術系スキルはプレイヤーが普段するような動きとは別の認識が必要になる。スキルのアシストがあるので常人でも発動はできるが、最初から威力の調整までできる者はまずいない』という事だった。

「なるほどな。でも、感じる事が出来るんなら操ることもできるのは普通じゃないか?」

「本来は感覚を掴んでから徐々に練習するんですってば!少なくともチュートリアルで圧縮をしようとした人はいません!」

「マジか…」

 人とズレていると言われることは多いけど、まさか仮想現実の世界でも言われることになるとはおもっていなかった。ただ魔術の操作事態はいずれ他の者もできる可能性があるようだし必要以上に隠す必要はないようでよかった。
 変に隠すことが増えると動きずらくなる一方だからな。

 そうして説明を理解する事ができると俺としては早く次に移りたかった。

「説明はわかったから、もう一つの魔術を試していいか?」

「…はぁ、いいですよ。もう好きにしてください」

「よし!えっと、こうして…こう」『ファイヤーウォール』

 一応の許可を取ってから次の魔術を試す。
 発動すると前方約3mに炎の壁が現れた。目算に成るが高さ2.5m・横が約4m・厚さ約50㎝ってところで、適当な落ちていた石を投げるとしたから吹き上がる炎の勢いで弾き飛ばされた。
 今度は全力で投げ入れると炎に飲み込まれて貫通する前に威力が殺されて落ちてしまう。
 そして発動から5秒ほどで炎の壁は勢いを弱めて消えた。


「これは結構有用だな。でも、地面が焦げている所を見ると植物の多い所だと使うのは危険か…」『ファイアウォール』

 発動跡を見て少し考察してから、もう一度発動する。
 先ほどのファイヤーボールと同じように圧縮して強度を上げるようなイメージで使用したが大きく変化はなかった。近くに落ちていた石を同じように投げてみたけど結果も同じだった。

「操作できている感覚はあるけどなんでだ?」

「防御系の術は圧縮による強化は効率がわるいんですよ」

「どういうことだ?」

「はぁ…本当は私の担当じゃないんですけど…」

 疲れたように話すスターリィだったがなんだかんだ言いながら説明をしてくれるようだった。

「攻撃系の魔術は圧縮する事で解放時の威力が増すんです。でも、防御系魔術は圧縮しようとしても強度を上げられるほどに圧縮するにはスキルレベル5でようやく実用的と言えるでしょう」

「そう言う感じか…」

「なので防御系の魔術を改変したいなら消費MPを増やすイメージでやると良いです」

「ふむ、試すか…」『ファイヤーウォール』

 言われたようにイメージして使用すると先ほどまで以上に強く炎が噴き出して範囲もすべてが1割り増しほどになっていた。

「おぉ~~!こんな感じか」

「な~んで一回でやれるんですか。もう他のスキルも説明いらないんじゃないですか?」

「いや、さすがに一度は説明してくれないと困る」

 確かに俺の物事の習得速度は速いとは思う。けれど0から何かをできるようになるのは無理だ。
 事前知識としての説明があればそこから発展させることはできるんだけどな。

「まぁ~説明するのが仕事ですからやりますよ!」

「頼みます‼」

 どこか不貞腐れているようにも見えるけどスターリィは最後には笑顔で説明を再開してくれた。
 説明を大雑把にまとめると、基本的にスキルは『物理系・魔法系・採取系・生産系』の4系統に分ける事が出来て、魔術スキルは魔法系の1つだと言う。

 そして次に教えるのは採取系なんだそうだ。

「その何とか系って普通最初に説明しないか?」

「仕方ないじゃないですか。少し張り切りすぎて忘れちゃったんですよっ」

「まぁ…そう言う事なら仕方ないか。で?採取系ってどう使えばいいんだ?」

「採取系は基本的には常時発動型《パッシブ・スキル》という物になります。ナギさんの場合だと採掘・採取・伐採の3つですから、そこらへんを見ていて光っているように見える場所はないですか?」

 スターリィに言われ周囲を見渡してみると草原の中に光っている場所を見つけた。
 光っている場所へと近づいて触れてみるとピコン‼と機械音が鳴って『薬草×2を手に入れた』と表示が現れた。

「こうなるのか」

「チュートリアル中は薬草が採取できるようになってるんですけど…さすがに違う物を採取してたりしませんよね?」

「薬草2個って表示されたな」

「では問題ないですね‼」

 採取された物を聞いたスターリィは今日一番の良い笑顔を浮かべていた。
 ここまで露骨に嬉しそうにされると何とも言えない気持ちになるけれど自分が混乱させていたのはわかっているから何も言えない。
 それから続けて伐採と採掘なわけだけど道具が必要だった。

「採取はステータスのDEXとLUCの値次第で決まります。同じく伐採と採掘にもステータスの数値が影響しますけど、同時に斧やツルハシで叩く時の動きなどの判定次第で品質に影響が出ます」

「つまり、丁寧にやらないとゴミになるってことか…理解した」

「斧とツルハシは初級の物が配られているはずですから、それを使ってください」

「わかった」

 言われて自分の持ち物を確認すると、初級と書かれたアイテムが幾つか入っていた。
 他のも見てみたい気持ちはあったけど今回は諦め、言われた通りに斧とツルハシを取り出した。すると近くの岩や木に薬草を採取した時と同じような光点が現れた。

 最初に近くにあった木に斧を振るうと光点の位置が少し移動した。
 それに合わせて微調整しながら10回ほど斧を振るうと木が倒れて目の前に『木材×5を入手した』というメッセージが現れた。
 同じように岩にツルハシを振るうと今度は光の強さが変わった。
 なんとなく光の強さに合わせて力の強弱を合わせると感覚的に上手くいっているか、反対にミスしたかがよく分かった。そして『石×3と銅鉱石×2を手に入れた』と出ていた。

「おぉ~初めてで鉱石2つも無事に入手できるなんてすごいですね」

「いや、体感だったけど次はもっといける気がする」

「そう言うのは後回しでお願いしますね?一向におわらないですかね」

「わかってるよ」

 さすがに自分の事に集中し続ける癖がバレてしまっているのでスターリィに少しくぎを刺されてしまった。
 これ以上の時間の浪費は俺としても良くないし、大人しく従ってチュートリアルを進めていく。残りは別に難しいことはなかったので少し説明を聞いて、その通りに実行するだけで終わった。

「説明がうまくて助かったよ」

「あんまり仕事をした気はしませんけど、お礼を言われて悪い気はしませんね」

 どこか釈然としない様子ではあったがスターリィは少し嬉しそうにしていた。
 でも、本当に俺としても説明をしてくれる存在はありがたかった。おかげで手探りでやるよりも大幅に時間を短縮する事が出来た。

「では、もうお別れになります」

「そうか…少し残念ではあるな」

「ふふふ!また機会があれば会う事が出来ますよ」

「なら楽しみに待つとするよ」

「はい!その時まで元気に、この世界を楽しんでください‼」

 笑顔のスターリィを最後に光に包まれ、視界が開けた時にはまるで中世にタイムスリップしたかのような石畳の街の中へと立っていた。


しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

同級生の女の子を交通事故から庇って異世界転生したけどその子と会えるようです

砂糖流
ファンタジー
俺は楽しみにしていることがあった。 それはある人と話すことだ。 「おはよう、優翔くん」 「おはよう、涼香さん」 「もしかして昨日も夜更かししてたの? 目の下クマができてるよ?」 「昨日ちょっと寝れなくてさ」 「何かあったら私に相談してね?」 「うん、絶対する」 この時間がずっと続けばいいと思った。 だけどそれが続くことはなかった。 ある日、学校の行き道で彼女を見つける。 見ていると横からトラックが走ってくる。 俺はそれを見た瞬間に走り出した。 大切な人を守れるなら後悔などない。 神から貰った『コピー』のスキルでたくさんの人を救う物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...