VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム

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第一章 初心者の躍動

第2話 サービス開始!の前日

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【2185年初頭。あらゆる創作物で語られてきたフルダイブ型ゲーム機の発売が発表され、その名は【イマジナリー・ギア】と言った。
 開発に成功したのは2150年頃に急成長した大企業・園崎財閥だった。創設者でもある園崎そのさき 武虎|《たけとら》は運営方針として打ち出したことは3つ『怠けぬこと・傲慢にならぬこと・夢を忘れぬこと』それさえ守れば奇人変人問わず人材を集め続けた。
 当時の日本では異例なほどの個人主義とも言えるほど実力の在る者を年齢・人種・性別など一切考慮することなく出世させていった。その中に今回の【イマジナリー・ギア】を開発した『クリスタ・オルヴェール』と『鈴原すずはら 詩乃しの』の2名も、そうして抜擢された者達だった。

 そして【イマジナリー・ギア】の発売から2年が経ち2187年の3月に世界初の完全フルダイブ対応ゲームソフト『アンリミテッド・ワールド・オンライン』が発表され、更に1年の歳月をかけ2188年7月26日の土曜日がサービス開始日に決まり。
 ついに明日がその当日と成りました!現在どの店舗でもソフトは予約分が完売‼
 ダウンロード版に関してもサイトがパンクするトラブルを起こしながらも無事に再開され順次購入可能‼

 ご購入がまだの方はリンクからどうぞ!】

 今日、登校してから耳にタコが出来そうなほど聞いた最新ゲームの配信の音声。
 昼休みになっても生徒達がその映像を見ながら楽しそうに話している。

 夏休み目前を狙っての発売に見事に引っかかっているクラスメイト達を見ると少し呆れてしまう。
 ただ別に浮かれるのは悪い事ではない、けどせめて音量を落としてほしい…

「はぁ……」

「な~ぎ~さ~!」

「喧しいっ」

 窓の外を眺めて気持ちを落ち着けている時に邪魔するように叫びながら突っ込んできたアホ…ではなく、幼馴染の園崎そのざき 竜吾りゅうごを頭をキャッチして黙らせる。間近で男の顔を見る趣味はないが。程よい長さに綺麗に整えられた髪に綺麗な黒目、顔も無駄に整っているので性格が少しガキ…子供っぽくても人気はあるのだ。
 そこまで考えて気持ち悪くなってきたのから視線を逸らした。

「…それでなんの用で来たんだよ」

「この状態で話すの⁉」

「あ゛ぁ゛?」

「いえっ何でもないです!お話しさせてもらいます‼」

 ちょっと八つ当たり気味になってしまったけど、急に衝突する勢いで突っ込んでくる奴が悪い。
 ただ話に集中してもらえなくても困るから逃げられない程度に力を緩める。

「ふぅ…えっと、明日からサービス開始する『アンリミテッド・ワールド』って知ってる…よな?さすがに」

「一応知ってはいる。こんだけ連日宣伝していれば嫌でも覚える」

「なら話が早い!一緒にやろうぜ‼」

「は?」

 急に何の話かと思えばゲームへの勧誘と言う事か、でも俺に対してその発言は地雷だと知っているはずなんだけどな。

「なぁ~俺が機械系苦手なの知ってて誘ってんのかな~?」

 そう言って俺は頭を掴んでいる手に力を強める。
 だてに幼馴染をやってないんだから昔から俺の機械音痴を知っていながら、ゲームを俺に進めるなんてお仕置して欲しいって言う事だと判断した。というか普通にちょっとむかついた。

「いだだだぁ~~~‼そ、それは知ってるけど、イマジナリー・ギアなら別にボタン操作とかないし平気だろ⁉」

「あ、そう言えばを使うんだったか」

「いてっ」

 イマジナリー・ギアと言う名称を聞いて竜吾の頭を掴んでいた手を離した。引き剥がそうと力を入れていた反動で床に倒れたけど、まぁ~気にしなくていいだろう。
 確かにイマジナリー・ギアを使うのなら俺でもゲームをすることはできるかもしれないと思ったからだ。以前に竜吾の家に遊びに行ったときに『試してみない?』と言われて使用したことがある、その時の感想を言うなら【もう一つの現実】だろう。

 本当に五感にも違和感がほとんどなく再現されていた。
 さすがに痛みは現実の100分の1程度に制限されていたけどな。普通の人間が現実と同じ痛みを仮想空間とは言っても味わえばショック死の危険性があるからな。
 でも、それ以外の味覚や嗅覚などは完璧で再現された際高級フレンチの味は本物だった。

 しかも現実で食べているわけではないから無限に食べられて太らない。
 これは男女関係なく嬉しい事だと思う。

 なんてことを考えている間に竜吾は楽しそうにニヤニヤ笑みを浮かべていた。

「どうだ?さすがの渚でも出来そうな気がしてきただろ?」

「確かにできるとは思うけど、俺はイマジナリー・ギアなんて持ってないぞ?」

「それは知ってる!」

「知ってて誘ったと…へぇ」

 ゲーム機を持っていない奴をゲームに誘うなんて喧嘩売ってるようなもんだよな。
 そう思って笑顔で近寄って行くと竜吾は見の危険を感じたのか必死な形相で距離を取る。

「ちょっ!落ち着け‼話は最後まで聞こうっ⁉」

「なら納得のいく理由を説明してもらおうか…」

「も、もちろん!持ってないのは知ってるから、ちゃんと親父達に言って用意してもらったんだよ!」

「あぁ~なるほど」

 そこまで聞いてようやく理解できた。
 こいつの名字からわかるようにイマジナリー・ギアの開発元の園崎財閥の現代表の実の息子なのだ。
 その父親と言うことは現代表を意味して、そんな人がイマジナリー・ギア1つ私的な目的のためとはいえ用意できないわけがない。

「でも、いいのか?あれって今でも5~6万はするだろ?」

「そんなもの気にしなくていいって!どうせなら一緒にやった方が楽しいだろ!」

 屈託のない子供のような笑顔を浮かべる竜吾に俺も思わず笑ってしまう。
 こういうところがあるから嫌いになることができないのだ。

「わかった。そう言う事なら俺もプレイしよう」

「本当か⁉」

「ここで嘘つくわけないだろ……っていう事で、俺もやるからお前達もよろしくな‼」

 ガタッ‼

 教室の扉に向かって大きな声で話すと音を立てて揺れた。
 その教室の扉を俺は眼を放さずにじーっと見ていると、ゆっくりと相手そこには予想通り3人の姿があった。
 1人は小柄で遠目には女子にも見えるが高1男子の『篠崎しのさき 桜花おうか』、後ろの男女は残念の事に俺の弟妹で坊主頭が弟『進藤 夏輝なつき』でツインテールにしているのが妹の『進藤しんどう 夏帆かほ』だ。
 そんな3人は扉に少し体を隠すようにしながら出てきた。

「あ、あの~なんで気が付いたんですか渚先輩」

「扉の前から人の気配は感じてたからな。それがいつまでも移動しないで、数が3人だったから確実にお前らだと思った」

 どこか遠慮がちに聞いてきた桜花に対して俺は正直に答える。
 実際問題としてこれは難しい事ではない。ちょっと鍛えれば気配の察知くらいなら、ある程度は誰でも出来るようになる技術でしかない。
 そう俺は思っているが周囲は違うようだ。

「「うわ~相変わらずの理不尽モンスター」」

「うるさいわ。と言うか、一々声をそろえるなって言ってるだろ?双子だからって連俊してまでやってるの知ってんだからな?」

「それは言わない約束だぞ兄さん⁉」

「なんで言っちゃうの~⁉」

 夏輝と夏帆は詰め寄るような勢いで猛烈に攻めてくる。
 だが前から双子だからとよく分からないキャラ付けの為、練習までして声をそろえるのは無駄とは言わないが必要性を感じなかった。そんなもん止めてしまえばいいとすら思っている。
 それに練習している事は親しい奴は全員知っているんだから隠す意味も大してないしな。

「それよりも今回の話にはお前達も関わっていたってことでいいんだよな?」

 あんな風に隠れて待っていたんだから竜吾とは協力関係にあったんだろうと分かっているけど、念のための確認だ。

「はい、せっかくですし渚先輩とも遊びたかったので」

「俺はゲームだったら兄さんに勝てると思ったからだ!」

「私はなんか面白そうだと思ったからだよ~」

 3人は思い思いに答えた。
 とりあえず桜花は真面目でいい答えだけど、夏輝はゲーム内で締めよう。確かに俺はゲームは苦手だけど、あんなに現実との差異の少ないフルダイブ式のゲームで負けるわけない。
 そして夏帆は…うん、放置でいいだろう。本人はものすごく楽しそうに笑っているしな。

「ま、どんな事情があってもいいけどな。この馬鹿に協力するのは程々にしろよ?」

「……え、この馬鹿って俺か⁉」

「?ほかに誰が居るんだよ」

「そうだけどさぁ…」

 俺からのバカ呼ばわりに本気でショックを受けたようで竜吾は崩れ落ちた。
 だが無駄にオーバーリアクションをするのは竜吾の癖のようなものだから気にする者は誰もいない。

「渚先輩はプレイヤーネーム何にするんですか?」

「ん?そうだな~考えるのも面倒だし、いつも通りかな」

「わかりました。なら明日一番にフレンドになりましょうね!」

「おう!分からないことあったら聞きたいしな」

「だったら初日は全員で集合しようぜ!兄さんに簡単にシステムくらい教えたほうがいいと思うしさ!」

「あぁ~それは助かるな。よし、いい提案したから今日の晩御飯は夏輝の好物にしてやろう」

「マジか⁉やったーーー‼」

「えぇ~ずるい~」

「ねぇー!誰か俺にも何か言ってよ‼」

「「「「黙れ」」」」

「はい……」

 我慢の限界を迎えて叫んだ竜吾に対して俺達は辛辣な言葉を放つ。すると、さすがに意気消沈した様子で教室の隅でいじけ始めた。
 さすがに言い過ぎたかな?と全員が思った時…

 キーンコーンカーンコーン!キーンコーンカーンコーン‼

「あ、予鈴が鳴ったな」

「それでは渚先輩失礼します‼」

「ちょっ⁉俺を置いてかないでくれよ‼」

「今日の晩御飯は私の好物でよろしくね~」

「なんでだよ⁉」

 夏輝と夏帆の2人はなんだかコントみたいなやり取りをしながら急いで自分達の教室へと戻って行った。
 それを見送ってから俺は教室の隅を見る。

「お前は自分の席に戻らなくていいのか?」

「グスッ……本当に無視した…」

「そう言う反応がうざいから無視されんだよ。何回も注意されてんだろ?」

「そうだけどさ~!こう、ノリってものがあるじゃん⁉」

「知らねぇよ」

 まだ納得いかなそうに何か言い続ける竜吾を前にして、俺は時計を見てさっさと席へと着いた。

「また無視かよ~」

「何が無視なんだ?」

「いや、渚がちょっとはしゃいだら煩いって相手にしてくれないんだよ」

「ほう、それも仕方ないんじゃないかな?授業の準備もしてないんだからなぁ~?」

「そうかも…だけ…ど」

 そこまで言ってようやく自分が誰と話しているのか気が付いたようで竜吾は顔を青褪めさせた。
 背後に居たのは俺達のクラス担任で体育教師でもある剛田ごうだ 力也りきやで、見ただけでわかるほど発達した見事な筋肉と髭の生えた強面男である。
 しかも怒るとめっちゃ怖い。

「さて、では今日の放課後は指導室で少し話そうか?」

「はい…」

 こうしてノリとテンションで騒いでいた竜吾は静かになるのだった。
 少しは反省して今後は静かになってくれることを祈るか、たぶん…ほぼ確実に無理だろうけどな。

 
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