4 / 8
第一章 初心者の躍動
第2話 サービス開始!の前日
しおりを挟む
【2185年初頭。あらゆる創作物で語られてきたフルダイブ型ゲーム機の発売が発表され、その名は【イマジナリー・ギア】と言った。
開発に成功したのは2150年頃に急成長した大企業・園崎財閥だった。創設者でもある園崎 武虎|《たけとら》は運営方針として打ち出したことは3つ『怠けぬこと・傲慢にならぬこと・夢を忘れぬこと』それさえ守れば奇人変人問わず人材を集め続けた。
当時の日本では異例なほどの個人主義とも言えるほど実力の在る者を年齢・人種・性別など一切考慮することなく出世させていった。その中に今回の【イマジナリー・ギア】を開発した『クリスタ・オルヴェール』と『鈴原 詩乃』の2名も、そうして抜擢された者達だった。
そして【イマジナリー・ギア】の発売から2年が経ち2187年の3月に世界初の完全フルダイブ対応ゲームソフト『アンリミテッド・ワールド・オンライン』が発表され、更に1年の歳月をかけ2188年7月26日の土曜日がサービス開始日に決まり。
ついに明日がその当日と成りました!現在どの店舗でもソフトは予約分が完売‼
ダウンロード版に関してもサイトがパンクするトラブルを起こしながらも無事に再開され順次購入可能‼
ご購入がまだの方はリンクからどうぞ!】
今日、登校してから耳にタコが出来そうなほど聞いた最新ゲームの配信の音声。
昼休みになっても生徒達がその映像を見ながら楽しそうに話している。
夏休み目前を狙っての発売に見事に引っかかっているクラスメイト達を見ると少し呆れてしまう。
ただ別に浮かれるのは悪い事ではない、けどせめて音量を落としてほしい…
「はぁ……」
「な~ぎ~さ~!」
「喧しいっ」
窓の外を眺めて気持ちを落ち着けている時に邪魔するように叫びながら突っ込んできたアホ…ではなく、幼馴染の園崎 竜吾を頭をキャッチして黙らせる。間近で男の顔を見る趣味はないが。程よい長さに綺麗に整えられた髪に綺麗な黒目、顔も無駄に整っているので性格が少しガキ…子供っぽくても人気はあるのだ。
そこまで考えて気持ち悪くなってきたのから視線を逸らした。
「…それでなんの用で来たんだよ」
「この状態で話すの⁉」
「あ゛ぁ゛?」
「いえっ何でもないです!お話しさせてもらいます‼」
ちょっと八つ当たり気味になってしまったけど、急に衝突する勢いで突っ込んでくる奴が悪い。
ただ話に集中してもらえなくても困るから逃げられない程度に力を緩める。
「ふぅ…えっと、明日からサービス開始する『アンリミテッド・ワールド』って知ってる…よな?さすがに」
「一応知ってはいる。こんだけ連日宣伝していれば嫌でも覚える」
「なら話が早い!一緒にやろうぜ‼」
「は?」
急に何の話かと思えばゲームへの勧誘と言う事か、でも俺に対してその発言は地雷だと知っているはずなんだけどな。
「なぁ~俺が機械系苦手なの知ってて誘ってんのかな~?」
そう言って俺は頭を掴んでいる手に力を強める。
だてに幼馴染をやってないんだから昔から俺の機械音痴を知っていながら、ゲームを俺に進めるなんてお仕置して欲しいって言う事だと判断した。というか普通にちょっとむかついた。
「いだだだぁ~~~‼そ、それは知ってるけど、イマジナリー・ギアなら別にボタン操作とかないし平気だろ⁉」
「あ、そう言えばあれを使うんだったか」
「いてっ」
イマジナリー・ギアと言う名称を聞いて竜吾の頭を掴んでいた手を離した。引き剥がそうと力を入れていた反動で床に倒れたけど、まぁ~気にしなくていいだろう。
確かにイマジナリー・ギアを使うのなら俺でもゲームをすることはできるかもしれないと思ったからだ。以前に竜吾の家に遊びに行ったときに『試してみない?』と言われて使用したことがある、その時の感想を言うなら【もう一つの現実】だろう。
本当に五感にも違和感がほとんどなく再現されていた。
さすがに痛みは現実の100分の1程度に制限されていたけどな。普通の人間が現実と同じ痛みを仮想空間とは言っても味わえばショック死の危険性があるからな。
でも、それ以外の味覚や嗅覚などは完璧で再現された際高級フレンチの味は本物だった。
しかも現実で食べているわけではないから無限に食べられて太らない。
これは男女関係なく嬉しい事だと思う。
なんてことを考えている間に竜吾は楽しそうにニヤニヤ笑みを浮かべていた。
「どうだ?さすがの渚でも出来そうな気がしてきただろ?」
「確かにできるとは思うけど、俺はイマジナリー・ギアなんて持ってないぞ?」
「それは知ってる!」
「知ってて誘ったと…へぇ」
ゲーム機を持っていない奴をゲームに誘うなんて喧嘩売ってるようなもんだよな。
そう思って笑顔で近寄って行くと竜吾は見の危険を感じたのか必死な形相で距離を取る。
「ちょっ!落ち着け‼話は最後まで聞こうっ⁉」
「なら納得のいく理由を説明してもらおうか…」
「も、もちろん!持ってないのは知ってるから、ちゃんと親父達に言って用意してもらったんだよ!」
「あぁ~なるほど」
そこまで聞いてようやく理解できた。
こいつの名字からわかるようにイマジナリー・ギアの開発元の園崎財閥の現代表の実の息子なのだ。
その父親と言うことは現代表を意味して、そんな人がイマジナリー・ギア1つ私的な目的のためとはいえ用意できないわけがない。
「でも、いいのか?あれって今でも5~6万はするだろ?」
「そんなもの気にしなくていいって!どうせなら一緒にやった方が楽しいだろ!」
屈託のない子供のような笑顔を浮かべる竜吾に俺も思わず笑ってしまう。
こういうところがあるから嫌いになることができないのだ。
「わかった。そう言う事なら俺もプレイしよう」
「本当か⁉」
「ここで嘘つくわけないだろ……っていう事で、俺もやるからお前達もよろしくな‼」
ガタッ‼
教室の扉に向かって大きな声で話すと音を立てて揺れた。
その教室の扉を俺は眼を放さずにじーっと見ていると、ゆっくりと相手そこには予想通り3人の姿があった。
1人は小柄で遠目には女子にも見えるが高1男子の『篠崎 桜花』、後ろの男女は残念の事に俺の弟妹で坊主頭が弟『進藤 夏輝』でツインテールにしているのが妹の『進藤 夏帆』だ。
そんな3人は扉に少し体を隠すようにしながら出てきた。
「あ、あの~なんで気が付いたんですか渚先輩」
「扉の前から人の気配は感じてたからな。それがいつまでも移動しないで、数が3人だったから確実にお前らだと思った」
どこか遠慮がちに聞いてきた桜花に対して俺は正直に答える。
実際問題としてこれは難しい事ではない。ちょっと鍛えれば気配の察知くらいなら、ある程度は誰でも出来るようになる技術でしかない。
そう俺は思っているが周囲は違うようだ。
「「うわ~相変わらずの理不尽モンスター」」
「うるさいわ。と言うか、一々声をそろえるなって言ってるだろ?双子だからって連俊してまでやってるの知ってんだからな?」
「それは言わない約束だぞ兄さん⁉」
「なんで言っちゃうの~⁉」
夏輝と夏帆は詰め寄るような勢いで猛烈に攻めてくる。
だが前から双子だからとよく分からないキャラ付けの為、練習までして声をそろえるのは無駄とは言わないが必要性を感じなかった。そんなもん止めてしまえばいいとすら思っている。
それに練習している事は親しい奴は全員知っているんだから隠す意味も大してないしな。
「それよりも今回の話にはお前達も関わっていたってことでいいんだよな?」
あんな風に隠れて待っていたんだから竜吾とは協力関係にあったんだろうと分かっているけど、念のための確認だ。
「はい、せっかくですし渚先輩とも遊びたかったので」
「俺はゲームだったら兄さんに勝てると思ったからだ!」
「私はなんか面白そうだと思ったからだよ~」
3人は思い思いに答えた。
とりあえず桜花は真面目でいい答えだけど、夏輝はゲーム内で締めよう。確かに俺はゲームは苦手だけど、あんなに現実との差異の少ないフルダイブ式のゲームで負けるわけない。
そして夏帆は…うん、放置でいいだろう。本人はものすごく楽しそうに笑っているしな。
「ま、どんな事情があってもいいけどな。この馬鹿に協力するのは程々にしろよ?」
「……え、この馬鹿って俺か⁉」
「?ほかに誰が居るんだよ」
「そうだけどさぁ…」
俺からのバカ呼ばわりに本気でショックを受けたようで竜吾は崩れ落ちた。
だが無駄にオーバーリアクションをするのは竜吾の癖のようなものだから気にする者は誰もいない。
「渚先輩はプレイヤーネーム何にするんですか?」
「ん?そうだな~考えるのも面倒だし、いつも通りかな」
「わかりました。なら明日一番にフレンドになりましょうね!」
「おう!分からないことあったら聞きたいしな」
「だったら初日は全員で集合しようぜ!兄さんに簡単にシステムくらい教えたほうがいいと思うしさ!」
「あぁ~それは助かるな。よし、いい提案したから今日の晩御飯は夏輝の好物にしてやろう」
「マジか⁉やったーーー‼」
「えぇ~ずるい~」
「ねぇー!誰か俺にも何か言ってよ‼」
「「「「黙れ」」」」
「はい……」
我慢の限界を迎えて叫んだ竜吾に対して俺達は辛辣な言葉を放つ。すると、さすがに意気消沈した様子で教室の隅でいじけ始めた。
さすがに言い過ぎたかな?と全員が思った時…
キーンコーンカーンコーン!キーンコーンカーンコーン‼
「あ、予鈴が鳴ったな」
「それでは渚先輩失礼します‼」
「ちょっ⁉俺を置いてかないでくれよ‼」
「今日の晩御飯は私の好物でよろしくね~」
「なんでだよ⁉」
夏輝と夏帆の2人はなんだかコントみたいなやり取りをしながら急いで自分達の教室へと戻って行った。
それを見送ってから俺は教室の隅を見る。
「お前は自分の席に戻らなくていいのか?」
「グスッ……本当に無視した…」
「そう言う反応がうざいから無視されんだよ。何回も注意されてんだろ?」
「そうだけどさ~!こう、ノリってものがあるじゃん⁉」
「知らねぇよ」
まだ納得いかなそうに何か言い続ける竜吾を前にして、俺は時計を見てさっさと席へと着いた。
「また無視かよ~」
「何が無視なんだ?」
「いや、渚がちょっとはしゃいだら煩いって相手にしてくれないんだよ」
「ほう、それも仕方ないんじゃないかな?授業の準備もしてないんだからなぁ~?」
「そうかも…だけ…ど」
そこまで言ってようやく自分が誰と話しているのか気が付いたようで竜吾は顔を青褪めさせた。
背後に居たのは俺達のクラス担任で体育教師でもある剛田 力也で、見ただけでわかるほど発達した見事な筋肉と髭の生えた強面男である。
しかも怒るとめっちゃ怖い。
「さて、では今日の放課後は指導室で少し話そうか?」
「はい…」
こうしてノリとテンションで騒いでいた竜吾は静かになるのだった。
少しは反省して今後は静かになってくれることを祈るか、たぶん…ほぼ確実に無理だろうけどな。
開発に成功したのは2150年頃に急成長した大企業・園崎財閥だった。創設者でもある園崎 武虎|《たけとら》は運営方針として打ち出したことは3つ『怠けぬこと・傲慢にならぬこと・夢を忘れぬこと』それさえ守れば奇人変人問わず人材を集め続けた。
当時の日本では異例なほどの個人主義とも言えるほど実力の在る者を年齢・人種・性別など一切考慮することなく出世させていった。その中に今回の【イマジナリー・ギア】を開発した『クリスタ・オルヴェール』と『鈴原 詩乃』の2名も、そうして抜擢された者達だった。
そして【イマジナリー・ギア】の発売から2年が経ち2187年の3月に世界初の完全フルダイブ対応ゲームソフト『アンリミテッド・ワールド・オンライン』が発表され、更に1年の歳月をかけ2188年7月26日の土曜日がサービス開始日に決まり。
ついに明日がその当日と成りました!現在どの店舗でもソフトは予約分が完売‼
ダウンロード版に関してもサイトがパンクするトラブルを起こしながらも無事に再開され順次購入可能‼
ご購入がまだの方はリンクからどうぞ!】
今日、登校してから耳にタコが出来そうなほど聞いた最新ゲームの配信の音声。
昼休みになっても生徒達がその映像を見ながら楽しそうに話している。
夏休み目前を狙っての発売に見事に引っかかっているクラスメイト達を見ると少し呆れてしまう。
ただ別に浮かれるのは悪い事ではない、けどせめて音量を落としてほしい…
「はぁ……」
「な~ぎ~さ~!」
「喧しいっ」
窓の外を眺めて気持ちを落ち着けている時に邪魔するように叫びながら突っ込んできたアホ…ではなく、幼馴染の園崎 竜吾を頭をキャッチして黙らせる。間近で男の顔を見る趣味はないが。程よい長さに綺麗に整えられた髪に綺麗な黒目、顔も無駄に整っているので性格が少しガキ…子供っぽくても人気はあるのだ。
そこまで考えて気持ち悪くなってきたのから視線を逸らした。
「…それでなんの用で来たんだよ」
「この状態で話すの⁉」
「あ゛ぁ゛?」
「いえっ何でもないです!お話しさせてもらいます‼」
ちょっと八つ当たり気味になってしまったけど、急に衝突する勢いで突っ込んでくる奴が悪い。
ただ話に集中してもらえなくても困るから逃げられない程度に力を緩める。
「ふぅ…えっと、明日からサービス開始する『アンリミテッド・ワールド』って知ってる…よな?さすがに」
「一応知ってはいる。こんだけ連日宣伝していれば嫌でも覚える」
「なら話が早い!一緒にやろうぜ‼」
「は?」
急に何の話かと思えばゲームへの勧誘と言う事か、でも俺に対してその発言は地雷だと知っているはずなんだけどな。
「なぁ~俺が機械系苦手なの知ってて誘ってんのかな~?」
そう言って俺は頭を掴んでいる手に力を強める。
だてに幼馴染をやってないんだから昔から俺の機械音痴を知っていながら、ゲームを俺に進めるなんてお仕置して欲しいって言う事だと判断した。というか普通にちょっとむかついた。
「いだだだぁ~~~‼そ、それは知ってるけど、イマジナリー・ギアなら別にボタン操作とかないし平気だろ⁉」
「あ、そう言えばあれを使うんだったか」
「いてっ」
イマジナリー・ギアと言う名称を聞いて竜吾の頭を掴んでいた手を離した。引き剥がそうと力を入れていた反動で床に倒れたけど、まぁ~気にしなくていいだろう。
確かにイマジナリー・ギアを使うのなら俺でもゲームをすることはできるかもしれないと思ったからだ。以前に竜吾の家に遊びに行ったときに『試してみない?』と言われて使用したことがある、その時の感想を言うなら【もう一つの現実】だろう。
本当に五感にも違和感がほとんどなく再現されていた。
さすがに痛みは現実の100分の1程度に制限されていたけどな。普通の人間が現実と同じ痛みを仮想空間とは言っても味わえばショック死の危険性があるからな。
でも、それ以外の味覚や嗅覚などは完璧で再現された際高級フレンチの味は本物だった。
しかも現実で食べているわけではないから無限に食べられて太らない。
これは男女関係なく嬉しい事だと思う。
なんてことを考えている間に竜吾は楽しそうにニヤニヤ笑みを浮かべていた。
「どうだ?さすがの渚でも出来そうな気がしてきただろ?」
「確かにできるとは思うけど、俺はイマジナリー・ギアなんて持ってないぞ?」
「それは知ってる!」
「知ってて誘ったと…へぇ」
ゲーム機を持っていない奴をゲームに誘うなんて喧嘩売ってるようなもんだよな。
そう思って笑顔で近寄って行くと竜吾は見の危険を感じたのか必死な形相で距離を取る。
「ちょっ!落ち着け‼話は最後まで聞こうっ⁉」
「なら納得のいく理由を説明してもらおうか…」
「も、もちろん!持ってないのは知ってるから、ちゃんと親父達に言って用意してもらったんだよ!」
「あぁ~なるほど」
そこまで聞いてようやく理解できた。
こいつの名字からわかるようにイマジナリー・ギアの開発元の園崎財閥の現代表の実の息子なのだ。
その父親と言うことは現代表を意味して、そんな人がイマジナリー・ギア1つ私的な目的のためとはいえ用意できないわけがない。
「でも、いいのか?あれって今でも5~6万はするだろ?」
「そんなもの気にしなくていいって!どうせなら一緒にやった方が楽しいだろ!」
屈託のない子供のような笑顔を浮かべる竜吾に俺も思わず笑ってしまう。
こういうところがあるから嫌いになることができないのだ。
「わかった。そう言う事なら俺もプレイしよう」
「本当か⁉」
「ここで嘘つくわけないだろ……っていう事で、俺もやるからお前達もよろしくな‼」
ガタッ‼
教室の扉に向かって大きな声で話すと音を立てて揺れた。
その教室の扉を俺は眼を放さずにじーっと見ていると、ゆっくりと相手そこには予想通り3人の姿があった。
1人は小柄で遠目には女子にも見えるが高1男子の『篠崎 桜花』、後ろの男女は残念の事に俺の弟妹で坊主頭が弟『進藤 夏輝』でツインテールにしているのが妹の『進藤 夏帆』だ。
そんな3人は扉に少し体を隠すようにしながら出てきた。
「あ、あの~なんで気が付いたんですか渚先輩」
「扉の前から人の気配は感じてたからな。それがいつまでも移動しないで、数が3人だったから確実にお前らだと思った」
どこか遠慮がちに聞いてきた桜花に対して俺は正直に答える。
実際問題としてこれは難しい事ではない。ちょっと鍛えれば気配の察知くらいなら、ある程度は誰でも出来るようになる技術でしかない。
そう俺は思っているが周囲は違うようだ。
「「うわ~相変わらずの理不尽モンスター」」
「うるさいわ。と言うか、一々声をそろえるなって言ってるだろ?双子だからって連俊してまでやってるの知ってんだからな?」
「それは言わない約束だぞ兄さん⁉」
「なんで言っちゃうの~⁉」
夏輝と夏帆は詰め寄るような勢いで猛烈に攻めてくる。
だが前から双子だからとよく分からないキャラ付けの為、練習までして声をそろえるのは無駄とは言わないが必要性を感じなかった。そんなもん止めてしまえばいいとすら思っている。
それに練習している事は親しい奴は全員知っているんだから隠す意味も大してないしな。
「それよりも今回の話にはお前達も関わっていたってことでいいんだよな?」
あんな風に隠れて待っていたんだから竜吾とは協力関係にあったんだろうと分かっているけど、念のための確認だ。
「はい、せっかくですし渚先輩とも遊びたかったので」
「俺はゲームだったら兄さんに勝てると思ったからだ!」
「私はなんか面白そうだと思ったからだよ~」
3人は思い思いに答えた。
とりあえず桜花は真面目でいい答えだけど、夏輝はゲーム内で締めよう。確かに俺はゲームは苦手だけど、あんなに現実との差異の少ないフルダイブ式のゲームで負けるわけない。
そして夏帆は…うん、放置でいいだろう。本人はものすごく楽しそうに笑っているしな。
「ま、どんな事情があってもいいけどな。この馬鹿に協力するのは程々にしろよ?」
「……え、この馬鹿って俺か⁉」
「?ほかに誰が居るんだよ」
「そうだけどさぁ…」
俺からのバカ呼ばわりに本気でショックを受けたようで竜吾は崩れ落ちた。
だが無駄にオーバーリアクションをするのは竜吾の癖のようなものだから気にする者は誰もいない。
「渚先輩はプレイヤーネーム何にするんですか?」
「ん?そうだな~考えるのも面倒だし、いつも通りかな」
「わかりました。なら明日一番にフレンドになりましょうね!」
「おう!分からないことあったら聞きたいしな」
「だったら初日は全員で集合しようぜ!兄さんに簡単にシステムくらい教えたほうがいいと思うしさ!」
「あぁ~それは助かるな。よし、いい提案したから今日の晩御飯は夏輝の好物にしてやろう」
「マジか⁉やったーーー‼」
「えぇ~ずるい~」
「ねぇー!誰か俺にも何か言ってよ‼」
「「「「黙れ」」」」
「はい……」
我慢の限界を迎えて叫んだ竜吾に対して俺達は辛辣な言葉を放つ。すると、さすがに意気消沈した様子で教室の隅でいじけ始めた。
さすがに言い過ぎたかな?と全員が思った時…
キーンコーンカーンコーン!キーンコーンカーンコーン‼
「あ、予鈴が鳴ったな」
「それでは渚先輩失礼します‼」
「ちょっ⁉俺を置いてかないでくれよ‼」
「今日の晩御飯は私の好物でよろしくね~」
「なんでだよ⁉」
夏輝と夏帆の2人はなんだかコントみたいなやり取りをしながら急いで自分達の教室へと戻って行った。
それを見送ってから俺は教室の隅を見る。
「お前は自分の席に戻らなくていいのか?」
「グスッ……本当に無視した…」
「そう言う反応がうざいから無視されんだよ。何回も注意されてんだろ?」
「そうだけどさ~!こう、ノリってものがあるじゃん⁉」
「知らねぇよ」
まだ納得いかなそうに何か言い続ける竜吾を前にして、俺は時計を見てさっさと席へと着いた。
「また無視かよ~」
「何が無視なんだ?」
「いや、渚がちょっとはしゃいだら煩いって相手にしてくれないんだよ」
「ほう、それも仕方ないんじゃないかな?授業の準備もしてないんだからなぁ~?」
「そうかも…だけ…ど」
そこまで言ってようやく自分が誰と話しているのか気が付いたようで竜吾は顔を青褪めさせた。
背後に居たのは俺達のクラス担任で体育教師でもある剛田 力也で、見ただけでわかるほど発達した見事な筋肉と髭の生えた強面男である。
しかも怒るとめっちゃ怖い。
「さて、では今日の放課後は指導室で少し話そうか?」
「はい…」
こうしてノリとテンションで騒いでいた竜吾は静かになるのだった。
少しは反省して今後は静かになってくれることを祈るか、たぶん…ほぼ確実に無理だろうけどな。
83
お気に入りに追加
981
あなたにおすすめの小説

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

同級生の女の子を交通事故から庇って異世界転生したけどその子と会えるようです
砂糖流
ファンタジー
俺は楽しみにしていることがあった。
それはある人と話すことだ。
「おはよう、優翔くん」
「おはよう、涼香さん」
「もしかして昨日も夜更かししてたの? 目の下クマができてるよ?」
「昨日ちょっと寝れなくてさ」
「何かあったら私に相談してね?」
「うん、絶対する」
この時間がずっと続けばいいと思った。
だけどそれが続くことはなかった。
ある日、学校の行き道で彼女を見つける。
見ていると横からトラックが走ってくる。
俺はそれを見た瞬間に走り出した。
大切な人を守れるなら後悔などない。
神から貰った『コピー』のスキルでたくさんの人を救う物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

10秒先が見えるだけの普通で不遇な付与術士だった僕は、死の宣告が出来るギルド職員になりました
まったりー
ファンタジー
普通の付与魔法士だった主人公は勇者PTで強くなり、ある日スキルが進化して未来が見える様になりました。
スキルを使い勇者PTを強くしていきましたが、未来を見た時自分が追放されることを知り、その未来を避ける為に未来予知のスキルを使いましたが、どんなに繰り返してもその未来は変わる事はありませんでした。
そして、勇者PTにいる情熱が無くなり、他の道を歩むことに決めた主人公は冒険者ギルドの職員になり、死なない様助言をするようになりました。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる