上 下
1 / 3
第一章 聖域の主

プロローグ

しおりを挟む

 魔法や魔物が存在して神と人の距離が近しい世界【グランド・オーブ】では様々な人類種達が生活していた。
 その中でも特に繁栄していたのは『人間・エルフ・ドワーフ・獣人・魔族』の5種族だった。

 人間は寿命は平均80年。突出した才能もなかったが数がとにかく多く、多様性と言う面で他種族より勝っていた。
 だが脆弱な種族であることは変わりなく、他種族に勝てなかった魔物が率先して襲ってくるようになった。
 それでも弱いがゆえに人間は集団で行動する術を早期に身に付け、集落や国と言った組織形態をいち早く確立した。結果として現在の大陸の半分近くを人間が王の国が占めているほどだった。

 エルフは肉体は弱かったが魔法に対して極端な才能を発揮して寿命が平均1000年。更には精霊と言う自然と近しい超常存在との親和性が高く、ゆえにかエルフは容姿端麗な者が多く他種族より奴隷として狙われることもあった。
 しかし太古からの知識を基にした高度な魔法技術に加え製薬や魔道具の制作にも精通していたエルフ達は黙ってやられることもなかった。
 そんな歴史もあり同族を保護し他種族にエルフの国は生まれ、現存する国では精霊国と魔導大国と呼ばれる2国はエルフの国となっている。

 ドワーフは人間よりは長生きするが平均寿命は500年ほどだった。更に屈強な体を屈指して基本的に鉱山のような場所で生活し採掘と金属加工を得意としていた。
 彼らの生み出す武器防具は例え軽く作られたような物を素人が使っても鉄を切り裂けるほどだ。
 ゆえに彼らの技術を求めて他の種族から襲われることもあったが、武器の素材を集めるために自ら魔物を狩るドワーフ達の戦闘技術は他種族を圧倒した。
 そしてドワーフ達は他種族に対して公平に武器を渡すが、どの種族に対しても味方しないことを宣言して鉱山都市国家を築き上げた。

 獣人は獣の特徴を持った人間種で寿命は平均150年ほど、基本的には森林などで狩りをして生活する。
 そんな彼らは他種族以上に抱えていたのは同族内でも差別問題を抱えていた事だ。動物の特徴とは言っても種類は多様で肉食・草食・雑食に夜行性の者も居て、似たような特徴の者達だけで集まるようになってしまって他種族よりも国を形成するのに時間を要することになった。
 でも、何年もかけて複数の集落で集まり話し合い一つのルールのもとに国を形成することに成功したのだ。
 その現在まで引き継がれた獣人の国のルールは『全種族で最強の者が王と成る』と言う単純な内容だった。

 そして最後の魔族は魔物が進化して生まれた人間種であった。
 ゆえに彼らはとてつもなく強く寿命も平均1000年を軽く超える。だが後から生まれた種族、それも魔物から派生して生まれたがゆえに他種族は受け入れてはくれなかった。
 最初こそ数人だったが徐々に増えて100人を超える頃、ついには魔族を排除しようとする他種族達に追い詰められて大陸を出ていく事にしたのだ。
 逃亡の旅の末にたどり着いた元の大陸よりも小さな大陸で魔族達は自分の国を作り、安息の地を手に入れて繁栄をした。


 そうして数多の種族の国々がある世界で各種族の王達が思想や思惑の関係なく、唯一共有して誓った内容があった。

   『大陸中央の聖域に対する、あらゆる干渉を禁止する』

 たった一文だが何故か各国は数百年経とうとも破ろうとする者は現れなかった。
 いや、正確には破ろうとすると他の種族から攻撃を受けて事前に潰されてきたのだ。それほどまでに全種族の根幹的部分に『!』と言う思いが強く根付いていた。
 しかし時間が流れれば始まりの理由を人は忘れていくものだ。

 2000年以上もの年月が流れると寿命の短い種族ほど聖域への不可侵に疑問を持ち始めるようになる。
 そして誓いの継承すらされない国も出てくるようになり、もはや長寿な種族の収める国以外では聖域の伝承は途絶え勝手なうわさも流れ始める。
 いつしか『聖域には太古の宝が大量に眠っている』なんて話も広がっていた。

 こんな話が広がれば確認しようと動くものが出てくるのが必定と言えた。
 それが原因で2000年ぶりに聖域の恐怖?が世界へと知れ渡ることを誰も予想できてはいなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。  しかし、ある日―― 「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」  父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。 「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」  ライルは必死にそうすがりつく。 「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」  弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。  失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。 「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」  ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。  だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。

つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。 そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。 勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。 始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。 だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。 これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。 ※他サイトでも公開

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

魔王を倒した勇者

大和煮の甘辛炒め
ファンタジー
かつて世界に平和をもたらしたアスフェン・ヴェスレイ。 現在の彼は生まれ故郷の『オーディナリー』で個性的な人物達となんやかんやで暮らしている。 そんな彼の生活はだんだん現役時代に戻っていき、魔王を復活させようと企む魔王軍の残党や新興勢力との戦いに身を投じていく。 これは彼がいつもどうりの生活を取り戻すための物語。 ⭐⭐⭐は場面転換です。 この作品は小説家になろうにも掲載しています

ある面倒くさがりな勇者が珍しく頑張るしかなくなった話

ファンタジー
稽古なんて面倒くさい。どうして勇者だからって、魔王を倒さなければいけないの?そんな事してないで、もっとのんびり行こうよ! 勇者である事が定められて生まれたハイシア・セフィー。面倒くさがりで稽古も勉強もほとんどサボる毎日を送っている彼女は、実は魔族とコミュニケーションがとれる子供だった。今日もいつもと同じように、森にあるスライムが集まる湖へ行くと、美しい少年と出会う。ランと名乗る少年は、ハイシアと共にスライムと遊ぶ友達になるが…。 ※6/9 公開分を初稿から改稿済みのものに差し替えました。 ※カクヨムさんでも追って公開始めました。先行はアルファポリスさんとなります。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

処理中です...