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しおりを挟む森の奥へ進むこと数十分。
警戒しながら進んではいるが、大まかな魔物の位置は把握している為、気配察知を使いながら足早に奥へ進んでいる。
進んで行くにつれて殺気は明確になり、気分が悪くなる程にまでなる。
魔物側には既に存在が知られている。
こちらも気配察知で正確な位置を把握している。
数は5匹。
この部隊を率いている第五騎士団の副団長が目線で合図をする。
その合図を他の団員達へ伝え、魔物を囲むように半円状に広がる。
俺は一歩引いた後方で刀を抜き構えるが、後方支援メインである。
第五騎士団の副団長の掛け声を皮切りに、半円状に広がっていた団員達はそれぞれが定めた魔物へと剣を向けていく。
5匹いたうちの4匹は、その襲撃に抵抗し反撃を繰り出す。前足を大きく振り向かっていく団員を薙ぎ払う。鋭い爪を立てて引き裂こうとする。魔法を放ち森ごと焼き払おうとする。
俺はすかさず傷付いた仲間に回復魔法を使う。放たれた火の魔法に水の魔法をぶつけて相殺する。
そうして俺が邪魔をし回復する事で、反撃を繰り出す魔物は他の団員達の手によって討伐されていく。
残された1匹の魔物を討伐しようと距離を詰める。
が、そこでふと違和感を感じた。
先程まで感じていた殺気がない。
第五騎士団の副団長も感じたようで攻撃中止の合図を送り、一斉に武装解除する。
最後の1匹は先程から微動だにしていない。
警戒しつつ近付くが、なんの反応も示さない。
1人の団員が近くにあった枝を投げ付けてみる。
その枝は魔物に阻まれる事無く身体に当たった。
そしてその衝撃で魔物の身体はグラリと傾き、地面へと倒れ込む。
途端にその身体が黒い霧となり霧散していった。
どういう事だ?
既に死んでいた?
とにかく、この部隊で討伐しなければならない魔物はもういない。
来た道を戻り、3手に分かれた場所へ戻る。
他の2つの部隊が戻るまで周囲を警戒しての待機だ。
俺は索敵魔法を使ってギルとレイドが向かった方を探る。
レイドが向かった方向には既に魔物の影は無く、この場所に戻ってきている最中なのだろう。
ギルの方はまだ交戦中のようで、それでも魔物の数は減っていた。
強化魔法をかけているし、何かあれば伝令が飛んでくる。
俺は2人が合流するのを待った。
その内レイド達の部隊が戻り、負傷者の回復を行いつつ情報を交換する。
やはりレイドの方でも数匹の魔物は既に息絶えていたようで、軽い衝撃で霧散してしまったのだとか。
ギルの部隊も既に合流する為に移動を開始しているようで、俺は改めて森全体に索敵魔法をかける。
魔素溜まりが起きやすい地形のせいか、小さな魔物が数匹見付かった。
が、それ以外の魔物の影は無く任務は完了と言えるだろう。
十数分後、ギル達も合流したため負傷者の回復を行った後森から出るために移動する。
やはりギルの方も同様で、息絶えていた魔物がいたようだ。
もしかしたら、と思う。
岩山を破壊した時点で、既に限界を迎えていたのかもしれない。
既に死期を悟ったからこそ、森に止まった。
そう考えれば納得するが、今まで魔物がそんな行動を取ったという報告はない。
目にしていなかっただけかもしれないが、初めての事例だ。
国に詳しく報告し、調査しなければならないだろう。
この岩山に囲まれた森も、今後は討伐任務の対象になる。
岩山を塞いでしまえば簡単な話だがまた今回のように魔物に破壊され、その時に人的被害が出ては遅い。
警戒するにこしたことはないし、討伐すれば民へ安心も与えられる。
とにかく、今回の任務は完了した。
後は国に任せればいい。
森を抜け夕暮れ間近の風景に野営地が見え、俺はようやく安堵の息を吐いたのだった。
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