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2日間のベッドの住人生活が嘘のように、身体は軽い。
この世界に来て何回か満月を体験したが、その度に不思議な世界だとつくづく思う。

今の俺の身体は、妊娠できる身体になっている。
子宮と膣、それから女性器が身体に作られているのだ。
と言っても、普通に過ごす分には股間には何ら違和感はない。
最初の頃は本当に身体が変化したのか疑問に思って確認したんだよな。
鏡のように綺麗に姿を映すものは金持ちくらいしか持ってないから直に触って確認した。

だって半信半疑だったもんで!

そしたら、きちんと…という言い方も変だが身体は変化していた。
尻の穴と、睾丸…玉ですな。その間に女性器…と思われるものがあった。
前世でそこまで経験は無かったので触っただけでは断言出来ないが、本来無いハズのものがあるという事はそういう事なのだろう。

それにしても、変化する過程のあの体調変化はどうにか出来ないものか。

誰かが近くにいればいいが、もし誰もいない所で体調変化が始まってしまったらどうすりゃいいんだ。
前兆も無く、突然体調変化が始まるので割と迷惑している。

本来ならば30日周期で訪れる満月の日をきちんと把握しておけば良い話なのだろう。
だがいくら満月の2日前だからと気を付けていても、その体調変化の時間があまりにも不規則なのだ。
ある日は2日前になった途端に始まり、ある日は2日前が終わりそうな時に始まった。昼や夕方なんてのもあった。
それならば2日前から休んでおけば問題ないという考えもある。確かに他の体調変化をする団員は、休んでる者もいる。
だが俺は、いつ起きるか分からないだけで元気なのに休むという事をしたくなかった。
気持ち的に、だが。

休んで仕事を持ち込んで…等と考えてもみたが、持ち込みできるような仕事は俺にはない。
なので通常は他の団員同様に俺も休みを取っている。
だが中には休む必要の無い軽度の体調変化の者もいるようで、そういった者は朝の訓練の代わりに1日中デスクワークだ。

そういった者がいる中俺の症状は、全身の虚脱感、目眩、息切れ、微熱。
せめて虚脱感だけでも無くしたい。そうすれば突然体調変化が起きても自分で部屋に戻れるし、わざわざ誰かの手を借りる必要も無くなる。


今日は体調変化も収まった満月。
全ての業務を終えたらちょっと先輩に話でも聞きに行こうと朝の訓練の準備をする。
先輩というのは勿論騎士団員の先輩で、俺のように体調変化を経て妊娠が出来る身体になる人が第三騎士団には他に十数名いる。
その内の1人がトラスティさんだ。前に俺の護衛をしてくれた人。他にも気軽に身体の事を聞ける先輩はいるが、経験的に1番年上のトラスティさんに聞くのが良いだろう。

朝の訓練を終えてトラスティさんに声をかける。
夕食後に聞きたい事があるからと部屋に訪れてもいいかと聞けば、快く受け入れてくれた。



夕食後、約束通りにトラスティさんの部屋を尋ねた。扉をノックするとすぐに返事が返ってきたので一言声をかけてから部屋へ入る。
宿舎の部屋の作りは同じで、ベッド、三段チェスト、テーブルに椅子が2脚が俺の部屋と同じように置かれている。長年騎士団に居るためか、私物も多くある。

椅子に座るように進められて遠慮なく座らせてもらうと、トラスティさんはテーブル向かいの椅子へ腰掛ける。
それを見て早速口を開いた。


「時間取って頂いてありがとうございます。早速なんですけど、トラスティさんって昨日までの2日間って何か対策してました?」


「昨日までの対策ってのは、変化のこと?」


「はい。変化する症状が少しでも軽減されればいいなと思ってて。トラスティさんの症状がどんなものかは分からないですけど、満月前でも普通に書類仕事してますよね?何かしてるのかな、と思って」


「あぁ、成る程ね。ちなみにシンくんの症状ってどんな感じ?」


「俺のは全身の虚脱感と、目眩、息苦しさ、微熱ですね。せめて虚脱感だけでも無くしたいんですけどね…。身体に力が入らないんで、割と困ってます」


「結構酷い症状だね。まぁ団長達が喜んでお世話してくれそうだけど」


そう言って笑うトラスティさん。
確かにギルもレイドも嫌がる素振りは見せず、それどころかやり過ぎだと思うほど世話をしてくれる。
一昨日はあのデレクくんさえ甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。


「私も若い時は寝込むほど症状が酷くてね。月日が経つにつれて軽くはなってきてたけど、それでもベッドから出られなかったよ」


「じゃあやっぱり何かしてるんですか?」


俺の問い掛けにトラスティさんは頷く。それから椅子から立ち上がりベッド脇に置かれている三段チェストの1番上の引き出しを開けると、そこから手の平サイズの包みを取り出して戻ってきた。


「これは特殊な薬草を私の症状に合わせて調合したものだ。私が世話になっている王都の薬師ならシンくんの症状に合わせた薬草を調合して持たせてくれると思うよ」


そう言って薬師の名前と店の場所を羊皮紙に書いて手渡してくれた。
俺はそれを受け取ると丁寧に礼を述べてトラスティさんの部屋を後にする。

部屋に戻る途中、ギルとレイドに捕まってギルの私室へ強制連行された。
何故トラスティさんの部屋から出てきたのか等と詰め寄られたが、理由を話したら世話が出来なくなるとか言って少しがっかりしていた。

過保護か!

とツッコミつつその日はイチャイチャだけで済ませて3人仲良く眠った。

次の休みには必ず教えられた場所に行こう、と決意して両サイドから伝わる温もりにすぐに夢の中へ旅立った。



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