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しおりを挟むスティラ国の調べでは、残党と見られる組織は後5つ程残っているらしい。
残党と言っても、既に主戦力と思われる者達は捕らえられ相応の罰に処されているので残るは本当に微々たる戦力だ。
放っておいても害にはならない。ただ未だに魔道具を壊して回っているらしいが、それでも騎士団による討伐任務の回数が上回っている為、魔物の数も徐々に減ってきているというのが現状だった。
魔物が思うように増やせずにいる現状に焦りを見せて神の遣いを暗殺に来るかもしれないという考えもどうやら杞憂のようだ。
何故なら、末端には魔道具を破壊しろ、としか命令が下されていないからだ。
この事実は黒幕達への取り調べにより判明した事で、魔王誕生の詳細を知っている者はワンドロークの元上層部、それも一部の者だったらしい。
故に、未だに残っている残党達は魔道具破壊のみを健気に続けているだけで、俺に危害を加える可能性は低いと判断された。
そう。
今日から俺は第三騎士団に復帰する事になったのだ。
念の為だとまだ護衛は必要なものの、3名以上で行動すれば問題ないだろうと判断されてようやく俺は戻ったのだ。
「おかえり、シン」
無事に第三騎士団に戻れたという事で、内輪で祝ってもらっている最中です。
あまり大々的にはしたくないという俺の希望を聞いてくれて、本当に親しい者達との小さな祝宴を開いて貰った。
場所は勿論、宿舎だ。
メンバーはギル、レイド、ヒース、トラスティさん、アールくん、俺。
酒を持ち寄ってギルの私室を借りての宴会です。
めっちゃ楽しい。
ヒースとアールくんは明日に支障が出ない程度に飲んでいる。
ギルとレイドはそもそも強いらしいので気にせず飲んでいるが、トラスティさんと俺は既にヤバめである。
特にトラスティさんは飲み過ぎたのか何なのか、最早夢の住人になっている。今はアールくんの膝枕で心地よさげに寝ている。
かく言う俺も、ギルとレイドに身体を支えてもらっていなければ座っていられない状態で、頭をゆらゆらと揺らしている始末。
因みにまだ二杯目は空になっていない。
「そろそろお開きにしましょうか。シンさんもトラスティさんも随分酔われてますし」
そんなヒースママンの一言でお開きになった。未だに夢の中のトラスティさんを、ヒースとアールくんがズルズルと引きずって行くのを見送り俺はギルに運んでもらってベッドに寝かせられる。
「ん~…まだねないぃ…」
本当は今すぐ眠れる程に睡魔は訪れていたが、久々に2人とゆっくり過ごせるのだと思うと我が儘も言ってみたくなるもので。
「そうは言ってもな…眠そうだぞ?」
起き上がろうとする身体をレイドに制され、ゆるゆるとギルに髪を撫でられると一瞬寝そうになってしまう。
慌てて髪を撫でるギルの手と寝かそうとするレイドの手を取って握ると、のろのろとした動きで起き上がる。
「ねむいけどなぁ…せっかくふたりとゆっくりできるのにー…もったいないぃ…」
最早ただの駄々っ子である。
俺は握った2人の手を額に持っていきグリグリと押し付ける。
それからわざとらしくチラリと視線を向けてみる。
案の定、2人は嬉しそうに笑みを浮かべてくれた。ベッドに座り込む形の俺の両隣に2人が座ってくれたので、俺の我が儘を聞き入れてくれたことに自然と笑みが溢れる。
「全く……シンはズルいな。俺達が喜ぶことをいつもしてくれる」
「惚れた弱みだ……仕方ない…」
呆れたような口調で言いつつも、その顔には笑みが浮かんでいる。
握った手はそのまま指を絡ませ合い、慈しむように手の甲にそれぞれ唇が寄せられた。
両手に感じる2人の温もりに、俺からもお返しとばかりにそれぞれの頬にキスを送る。
「やっと…ふたりのとこにもどれた…」
心からの言葉だった。
両隣から感じる温もりに自然と安堵の息を吐き出していた。
「「おかえり、シン」」
「ん、ただいま…」
2人からの迎える言葉に、だらしなく頬が緩んでしまうのを感じる。
やっぱり、2人の傍にいる時が1番安心する。
暖かく迎え入れてくれるからこそ感じる安心感。
ようやく俺は、帰ってきたのだと実感した。
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