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しおりを挟むここは5つある小国の内の1つで、魔族が治める国トリステン。
俺は今、第三騎士団の仲間少数と共にトリステンへ来ている。
事の発端は俺の創った探索魔法だ。
アレクに報告した後、準備を整えてもらった上で探索魔法を使った。
用意してもらった真っ白な紙には4枚ほど絵が浮かび上がった。立派な屋敷の外観と屋敷内部の執務室、執務室内の本棚とその本棚がずれて奥に扉が写っている絵だ。
もう一つ用意してもらった地図には、魔族の小国トリステンの領土内にある辺境の街の場所に赤い印が浮かび上がっていた。
各国の主な街の詳細な地図はスティラ国に存在するものの流石に辺境の街の地図は無く、取り寄せるととても時間が掛かるという話だった。
その為、取り寄せるよりも実際にトリステンへ赴いて俺が写し出した絵を手がかりに屋敷を探しつつ、現地で地図を購入して探索魔法を使った方が早いと判断し、現在に至る。
ギルやレイド、ヒースやアレク、カインくんとシムスさんにさえ激しく止められた。俺は命を狙われているのだから当たり前だろう。
だが、地図を取り寄せるには時間が掛かるし、写し出した絵を手がかりに探すと言うのも時間が掛かる。
俺は何より時間が惜しいのだ。
なので、早期解決の為に俺が赴いた方が早いと判断した。
「敵にシンの情報が知られている可能性は低いが、それは前回の第三騎士団の任務時点での仮説であって、今もそうとは限らないんだよ?」
アレクの言う事ももっともだ。前回の第三騎士団の任務の時、敵は何のアクションもしてこなかった。だがそれは、敵に俺の情報が伝わっていないと結論付けるものではない。
前回の任務から1ヶ月近く経っている現在はどうなっているかさえ分からないのだ。
もし、敵に俺の情報が伝わっていたと仮定するならば、まず俺の見た目が1番ネックになるだろう。黒髪黒目はこの世界では珍しい……というか、殆どいないのだ。
だが俺には頼もしい創造魔法という力があるではないか。クソ水晶に言われた通り、俺が創り出す魔法が。
そう、創ったのだよ。変装出来る魔法を!
その名も変装魔法!そのまんまのネーミングだが、侮るなかれ。
この魔法、髪の色から瞳の色、更には髪の長さ、肌の色、果てには来ている服の色や形まで変えられるのだ。
残念なことに顔や体格を変える事は出来ないが、髪色が変われば大分印象も変わるので、例え情報が伝わっていたとしても特徴的な部分は隠せるのだ。
勿論、他の人にも使える。
怪しがられて引っ張ったりされても、魔法で変えているので魔法を解かない限りカツラのように取れたりしない。
その事を反対する人達に見せたところ、半数は納得してくれた。
ギルとレイドとヒースは案の定、それでもダメだと言ってきたので、ギルとレイドも連れて行く予定であることを言えば渋々納得してくれた。
更にトラスティさんとアールくんも連れて行くと言ったら、やはり俺が言った案が1番手っ取り早く確実だと判断したアレクがゴーサインを出してくれたのだ。
俺の護衛としてギルとレイド。証拠を探し出す為の人員としてトラスティさんとアールくん、更に3名を第三騎士団から派遣する話で纏まった。
団長と副団長を連れ出す事に誰も文句を言わなかったのは、解決しなければならない最重要案件である事と、第三騎士団の業務をヒース1人で回せるという事実があったからだ。
ヒースママンの能力は国家レベルなんだよ…。
他言無用で少しでも喋ったらあの世行きになるから言わないけど…。
墓まで持っていく所存。
そんなこんなで俺達8人はトリステンへ向けて小旅行…ではなく極秘任務で向かうわけだが、何も8人でぞろぞろ歩いて行く訳ではありません。当たり前だ、そんな事したら不審がられるに決まってる。
実は、後から加わった3人は元々斥候部隊である第七の出身で、結婚を機に第三に異動してきた人や、色々経験したいと部隊を転々と異動する人、好きな奴がいるからと異動した人だ。
3人目なんて不純極まりない理由だが…。
それでも実力はある人達だ。
その3人は、それぞれ旅人に扮して別々のルートを辿り時間差でトリステンへ向かう。
トラスティさんとアールくんは俺達3人が出発してから後からトリステンへ。
俺達3人…ギル、レイド、俺はというと…新婚旅行と称して向かう。
その設定いらなくね?
と声を大にして疑問をぶつけてみたが、そう言った設定は必要らしく、トラスティさんとアールくんは恋人同士の小旅行の設定らしい。
まぁ…何はともあれ、念の為全員に変装魔法を施して、連絡用の魔道具を渡して最終的な合流地点と日時を決めそれぞれ旅立っていった。
先に出発した元第七の3人は、独自に…というか第七に所属していた者のみが使える連絡手段があるらしく、魔道具は受け取らなかったが。
トリステンへ向かう道中、ギルが暴走したりレイドが暴走しかけたり2人して暴走したりと、ほぼ暴走しかしない2人に本来の目的を思い出させた俺を誰か褒めて欲しい。
ヒースママンを護衛にすれば良かったとか後悔してないんだからな。
ちゃんと護衛しろよとかブチ切れたりしてないんだからな。
とまぁ、そんな事は置いといて。
何とか無事に……色々無事にトリステンへ辿り着いた俺達3人は、他の仲間達との合流地点である宿屋へ向かう。
宿屋ではお互い知らない者同士で振る舞うが、街の様々な場所でさり気なく接触して情報交換する。
元第七の3人の情報では俺が魔法で写し出した絵に似た屋敷を既に数カ所探し出していた。だが外観が似ているので特定は出来なかったという。
トラスティさんとアールくんも候補の屋敷をそれとなく調べに行ったようだが、様式が似通った屋敷であったと報告があった。
同じ報告を受け取った俺達は、トリステンの街の詳細な地図を購入して早速探索魔法を使う。
白紙に映し出された絵は前回探索魔法を使った時と同じだった為、ギルが魔法で燃やして消す。
地図の方を見ると報告されていた候補の屋敷の1つに見事に赤い印が浮かび上がっていた。
地図に浮かび上がる印を見た途端、漸く事態が動くのだと安堵し思わず笑みが浮かんでしまったのは許してもらおう。
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