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クソ水晶の声が頭から消えて数分。俺は言われた言葉を思い出していた。

俺の魔法で証拠を探す?
創造魔法で探せばいいのか?
探す…探索?


「探索」


とりあえず声に出してみる。勿論、何の反応もない。当然だ、何を探すのかも曖昧なままただ魔法を発動しただけなんだから。
あのクソ水晶は他に何か言ってなかったか。

【創造魔法は諏訪慎一郎くんが創る魔法だから、思った通りの魔法を創れば良いんだよ】

だったか。
俺が創る魔法…。


「シムスさん、いますか?」


俺はとある事を試すために控えてくれているシムスさんに声をかける。
するとすぐに返事が返ってきて、俺の傍にシムスさんが来てくれた。


「お呼びでしょうか?」 


「すみません、ちょっと試したい事があるんですが協力していただけませんか?」


穏やかそうに笑みを浮かべたシムスさんは深く追求してくる事はせずに快く承諾してくれた。


「あるか、ないかで答えてください。シムスさんは物を無くしてしまった事はありますか?」


「ございます」


「それは、今現在も見付かってませんか?」


「見付かっておりません」


「それは、今必要なものですか?」


「必要なものではございません」


「それは、どの位の大きさですか?」


「手の平位の大きさでございます」


「それは、無くてはならないものですか?」


「いいえ、特に無くても困っておりません」


よし。

俺はシムスさんに礼をしてから、また声を掛けると言って一旦下がってもらう。
不思議そうにしてはいたが、何かを言及される訳ではなかったのでひとまず安心する。

シムスさんが無くした物。
現在も見付からず、手の平くらいの大きさで無くても困らないもの。

それらを思い浮かべて探索の魔法を唱えた。

途端に、脳裏に2つの映像が浮かぶ。
緑色の屋根の家と、その家の裏にある小さな小屋。
動物か何かの小屋だろう。

恐らく、その小屋の中にシムスさんの無くした物があるはず。
俺はもう一度シムスさんを呼んで先程見た光景を伝える。
最初に見えた映像…緑色の屋根の家はシムスさんの家らしい。
次に見えた動物の小屋のようなものは、シムスさんが昔飼っていた犬に似た動物の小屋らしい。
その小屋の中を探してくれと頼み、詳細は明日聞くと付け加えてまた下がってもらう。
次に部屋の外に立って護衛している1人を呼んだ。
仕事中だが、無理を言って協力してもらう。
先程のシムスさんのように質問をし、今度は大切な、今すぐに必要な物を探す。
再び探索の魔法を唱えて見えた映像を護衛騎士に伝え、見付かったら報告してもらうように頼んだ。

そうして1週間程の時間を掛けて王城で面識のある人に協力を頼んで探索の魔法の効果を試す。

誰がどんな物を探しているのか事細かに記載し、見えた映像も覚えている限り書き出した。

そうして見付かった物と、見付かった場所を書き記したものと照らし合わせていく。
ちなみに、シムスさんの捜し物は子供の頃履いていた靴の片方だった。確かに今現在必要な物ではないし、手の平サイズだ。
護衛騎士が探していた物は、奥さんのネックレス。無くしたと知った奥さんが酷く落ち込んでしまっていたらしい。

こうして沢山の人に協力してもらって試した結果、探索の魔法の精度は確実なものとなった。
俺がその探し物を分からなくても探せるのは大きな利点だ。何故なら漠然としたイメージでも探せるのだから。例えば、黒幕のワンドロークに繋がる物的証拠……等。

ただし、問題点もあった。例えば生き物…逃げ出したペットや迷子の子供等の自ら動ける生物に関しては確実ではない。何故なら探している対象そのものが動くからだ。探索の魔法は、魔法を使った時点での探し物の現在地が分かるだけだった。
更に言うと、探し物の現在地が分かった時の判明方法。
俺の頭の中に映像として場所が浮かぶのだが、その場所の説明に少々手間取った。しかも、上手く説明できても探している本人が分からない場合があったのだ。
そこで、判明方法を変えてみる事にした。俺が創り出す魔法だ。変えることだって出来るはず、と試してみたら案の定簡単に変えることが出来た。
変更した方法は簡単だ。頭に映し出された映像を、紙に切って貼り出すように映し出すというもの。
コピー機や、スキャナー等の機械を思い付いたが、その詳しい構造を理解できていない俺は切って張るという行為の方が安易に想像出来たため、そうした。その為には何も書かれていない真っ白な紙を用意する必要があった。
更に分かりやすく伝えるために詳細に書かれた地図を用意してもらい、その地図上に探し物がある場所を示す印が付くようにする。
簡単に言うと、探索の魔法を使えば用意した真っ白の紙に映像が勝手に浮かび上がり、地図には印が勝手に付くのだ。

今まで使ってきた創造魔法は、こうだったらいいな…という漠然とした気持ちで使っていた。
例えば暗記の魔法は本の中身を暗記できたらいいな…等。

探索の魔法は、明確な目的を持って使うもののため、その精度を確実に向上させるには試行錯誤する必要があった。
試行錯誤と言っても俺だけに分かるようにするのではなく、誰が見ても分かるように工夫しただけだが。

とにかく、魔法は完成させた。後はアレクに報告して世界各国の詳細な地図を用意してもらえば後はスムーズに事が運ぶだろう。というか、運んでもらわないと俺が困る。
俺は1日でも早く、第三騎士団に戻りたい。
ギルとレイドに早く会いたいのだ。
その為には手間は惜しんでいられない。

そんな自分勝手な思いを胸に秘めつつ、アレクの執務室へと足を運ぶのだった。



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