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なんだ?
ココ何処だ?
辺り一面真っ白な空間。右も左も、上下も前後も分からない。
ただ1つ、見覚えのある物が目の前にふよふよと浮いている。そう、あのクソ水晶だ。
………………………叩き割るか。
『わー!!ちょ、ちょっと待って!割らないでくださいぃいい!!』
……チッ。
気付かれたか。
『あ、舌打ちはいけませぇん!てか気付いちゃうから!神様ですし!………コホン。お久しぶりです~、諏訪慎一郎くん!元気にしているようで何よりです!』
ココ何処だ?俺はまた死んだのか?死ぬような事した覚え無いんだけど。
『死んでないよ~。ココは諏訪慎一郎くんの夢の中です!神様にはノータッチ世界なので信仰とかそういうものがないからね、こうやって夢の世界をお借りしてコンタクトを取っている次第であります!』
あっそ。で?何?さっさと用件話せよ。俺は眠ぃんだよ。
『反応薄くない?!約1年ぶりの再開だよ?!』
うるせぇ、叩き割るぞ。
『すみませんでした。用件を話させていただきます』
で?
『えーっと、今人族の国で起きてる騒動についてね。神様のせいが大半なので手助けしようかなーと思いまして。リーデルハイムの世界には大国が3つ、小国が5つあるのは知ってるよね?』
知ってる。本で覚えた。それが?
『小国の内の1つ、獣族が治めるワンドロークっていう国が今回の黒幕だよ。その国にある本が原因。何代か前の獣族の王の事が書かれてある本なんだけど、その王が異様な程の魔力の持ち主でね。その魔力を使ってリーデルハイムを征服しようと企んだんだ。まぁ、人族にとっては脅威だったけど、魔族にとっては頑張って対抗できる程度の魔力量だったからあっさり倒されたんだけど』
それが何で魔王だの俺の命に関わる話になるんだ?
『うん、問題なのはその獣族の王の能力でね。殺した相手の命を糧に、強くなる能力があったんだ。所謂、敵を倒してレベルアップ!みたいな能力だね。殺す相手が強ければ強い程、その力は大幅にアップする能力。魔力量が多くて更に王様だった事もあって、当時の獣族の間では魔王と呼ばれていたみたい。』
本当にレベルアップみたいな能力だな。なんて面倒くせぇ…。
『うん、神様もそう思う。まぁ、当時の獣族ではとても英雄視されててね。その王様の事が伝記として後世に伝わったんだ。でも何処でどう変わったのか、願望が加わったのか、伝記として伝わった内容が全くのデタラメになってしまって、それがワンドロークに伝わった。確か内容は……世界を統べる魔王の誕生には、神にも等しい者の血が必要…とかなんとか。そこで運悪く神の遣いになっちゃった諏訪慎一郎くんの出番になってしまったという訳さ!』
出番じゃねぇわ。ふざけんな。割るぞ。
『わー!ごめんごめん!ごめんなさい!割らないでぇえ!!……と、とにかく!ワンドロークが黒幕です!神様はこの世界にあんまり干渉出来ないから助言しか出来ないけど!これもちょっとは干渉になっちゃうけど!でも神様のせいで転生する羽目になって、更には命を狙われちゃうとかいてもたってもいられなくて~!!』
分かった。分かったから泣くな。うざい。で?そのワンドロークってところを叩けば解決しそうなんだな?
『観察したところ、横の繋がりはないからね。ワンドロークの単独みたいだよー。まぁなんにせよ、ボランティア活動をしてる彼等は巻き込まれたみたいだから誤解さえ解けば元の正常な活動に戻ると思うよ。魔族の子達も関わってるのは一部の子達みたいだし。そんなこんなでお告げはこんな感じ~!』
お告げなんだ、これ……。
『夢の中での出来事ですから!ほら、夢枕に立つ!みたいなね~』
あっそ。じゃあ寝ていいか。
『待って待って!早くない?!もうお別れしちゃう気なの?!』
お告げ終わったんだろ?なら終わりだろが。それとも叩き割っていいのか?
『だめだめぇ!!割らないで!久しぶりに再開したんだからもっとおしゃべりしようよぉ!!そうだ、何か困ってる事とかない?!』
特に何もない。
『またまた~!何か1つでもあるでしょ?!』
……強いて言うならアレクの態度がおかしいくらいでそこまで困ってない。
『アレクって、あの王子様?あー…あれはほら、ねぇ?そこは察してあげてよ~。神様の口から言えなぁい!』
あっそ。ならいいわ。おやすみ。
『え?!嘘、本当に寝ちゃうの?!気にならないの?!わー!!ちょ、おしゃべりしたいよぉ!!』
うるせぇ、おやすみ。
まだギャーギャーと喚くクソ水晶を無視してそのまま目を閉じてしまうとぷつりと音が聞こえなくなった。
とにかく、有力な情報は手に入ったし、あのクソ水晶とこれ以上話してても睡眠時間が削られるだけだ。
俺はそのまま再び深い眠りに落ちていった。
翌朝目覚めるとギルとレイドが心配そうに顔を覗き込む視線とぶつかる。
「うなされていたぞ?大丈夫か?」
俺を抱き起こしてくれるレイドに礼を言いつつ、心配そうに声を掛けてくるギルに笑みを向ける。
「大丈夫。ちょっとクソ水晶……じゃなくて神からお告げ…いや、神託?もらっただけだから」
夢の内容はしっかり覚えている。ギャーギャー喚くクソ水晶の事も思い出してげんなりするが、神託という言葉に2人が驚いた顔をする。
大袈裟に言いすぎた…。
というのはもう後の祭りだ。俺は詳しく内容を話し、黒幕の正体を告げる。
するとギルはこの事を伝えてくると慌てて部屋を出て行き、レイドと共に部屋に残される形になった。
程なくしてギルはシムスさんと共に戻り、神託の内容を詳しく話すために団長室へ向かうことになった。
アレクが来るのだろう。
また話すのか…と憂鬱になりながらのろのろと着替えを始めるのだった。
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